ダミー
ダミー

←8月号へ                                       

 149日間休日なしで「安倍一強」に黄信号

 永田町では安倍晋三首相の体調に関する話がしきりに流れている。8月17日、急きょ慶應義塾大学病院で検診を受けた。コロナ禍と集中豪雨の対応策で疲労が蓄積しているための検査だと説明されている。
 周辺によると、連日のコロナ禍対策本部会合で、会議終了後にメンバーが部屋を退出しても安倍首相はひとり椅子に座ったまま目を指でマッサージする姿が見受けられる。7月上旬に首相執務室で吐血したという未確認情報も流れた。持病の潰瘍性大腸炎が悪化しているのだろうか。
 安倍首相は、コロナ禍の緊急事態宣言発令中も含め夜会合を控えた149日間、休日なしで官邸に出ずっぱりだった。夕食は官邸か公邸で秘書官らと日本料理の「なだ万」が調理した弁当を食べていた。華、琴、扇、彩菜の膳、匠の膳など五種類ある弁当をローテーションで回していた。食べ終わると、東京・富ヶ谷の自宅へ帰る日々だった。緊急事態下のネーション・リーダーといえども、宅配弁当だけの食生活は貧しすぎる。昭恵夫人は家で夕食を用意しないのか……等々の事情は安倍官邸の「トップシークレット」に入るらしく、関係者も口を濁す。
 今井尚哉首相補佐官らは、7月23日からの4連休プラス2日間、首相にまとまった休暇を取らせようと山梨県鳴沢村の別荘訪問とゴルフを計画していた。しかし、この時期に郊外で休暇を楽しめばさらなる批判を招きかねないと判断、取りやめている。首相周辺は8月15〜17日のお盆休み、特段のことがない限り夏休みを取らせる覚悟を固めていたが、これも思い通りにいかなかった。安倍一強の求心力は、今や体調不良も重なり永田町では遠心力へと向きを変えている。


 ポスト安倍に追い風吹かず石破氏は戦略変更を模索か

 7月21日、ポスト安倍を目指す自民党の石破茂元幹事長は都内で行った岸田文雄政調会長らとの会食の際、「誰が首相になってもあいつだけは許さないなんていう政治はやめようや」と提案。そこには「ポスト安倍」候補として世論調査ではトップを走りながら、一向に政権獲りへの道筋が見えてこないことへの焦りが見てとれたという。
 元来、石破氏の最大の悩みは、党外の支持に比べて、党内基盤が極めて脆弱なことだ。過去2回の自民党総裁選で自身と戦った石破氏に強い敵意を抱いているとされる安倍氏が圧倒的な多数派を形成。「石破封じ」に躍起となっているためだ。岸田氏への禅譲戦略もその延長線上にある。
 もっとも、安倍政権の新型コロナウイルス感染症への対応のまずさから、内閣支持率は続落。求心力回復への「切り札」となるはずの早期の衆院解散のカードは色褪せつつあるどころか、安倍政権の早期退陣説すらささやかれ出した。
 本来なら石破氏には追い風のはずだが、自民党内では依然として石破氏への視線は冷ややかだ。石破氏の焦りの背景もそこにあったろう。
 党員投票頼みの石破氏には安倍氏が来年秋の総裁任期満了前に総理・総裁職を突然辞任し、緊急事態の対応として自民党の党則に定める規定に従って両院議員総会で後任を決める──というのは「厳しい展開」。このため石破氏は「国会議員だけの後任総裁選出は何としても阻止する」としてきた。しかしここへきて石破派内からは、健康不安説が強まる首相の早期退陣を見越して、路線変更を模索する動きも出てきた。
 石破氏周辺の1人は言う。「今の流れでは石破さんには展望が開けない。安倍さんが突然退陣する事態となれば、国会議員投票だけで岸田さんや麻生副総理らから後継が選ばれることになっても任期は来年秋までだ。石破さんは、党員投票も行われる任期満了の総裁選で勝負を懸ければいい。それまでは岸田さんや麻生副総理でつなぐことになっても、石破さんは黙って協力すればいい」。
 この戦略でどこまで存在感をアピールできるか。石破氏にとっては大きな賭けとなろう。


 外務省OBがヘボでも高い勲位を得られる理由

 さしたる業績もない日本外務省OBが死後、従三位などの高い勲位を授与されることに、他の省庁から疑問の声が出ている。
 8世紀の律令制以来の伝統がある位階は通常、死後に贈られるが、今年1月、故人の元駐クウェート大使に従三位が授与された。元大使は1974年、日本赤軍を名乗る中東過激派がクウェートの日本大使館を占拠し、館員を人質にとった時の大使。「女装して小部屋に隠れ、犯人グループに見つかると命乞いをした」(外務省関係者)エピソードがある。
 従三位は、日露戦争で騎兵隊を指揮してロシアのコサック騎兵部隊を封じ込めた秋山好古陸軍大将も受けているが、日露戦の英雄と「命乞い大使」を同レベルに扱うのは日本の歴史を冒とくするものだ。
 外務省OBで近年、従三位を受けた人は、まだまだいる。北方領土問題解決の絶好のチャンスだった1990年代後半に何もしなかった駐ロシア大使や、パワハラ騒ぎがあった元駐イラク大使もその一人。さらに、駐ニュージーランド大使時代、酒気帯び運転で当て逃げし、警察から出頭やアルコール検査を命じられても外交特権を盾に拒否した元大使も従三位。スキャンダルは地元紙が大きく報じたが、本省には虚偽の報告をしていたのだろうか。
 戦後、官民で功績のあった人物に贈られる位階は、関係組織が内閣府に申請し、内閣府が判断するシステムだが、外務省は実績のない無名大使でも高い位を申請するという。
「大使ポストが増えたので、大学4年時の入省試験に合格すれば後は何もしなくても大使を2、3カ所務められ、手当も多い。死後も高い名誉を与えられる。これほど楽な商売はありません」(外務省霞クラブ記者)
 外交成果も皆無の亡国の役所・日本外務省の抜本改革が不可欠だ。


 地検特捜部が内偵するイージス・アショア利権

 配備中止が決まった地上配備型ミサイル防衛システム「イージス・アショア」の導入過程に、東京地検特捜部が重大関心を寄せている。
「レーダー選定で、米国のロッキード・マーチンとレイセオンが熾烈な戦いを繰り広げ、ロッキード・マーチンが競り勝ち、LMSSRを納入することになった。これに反発する防衛省制服組が政界やメディアに告発を行い、それが検察に伝わり、特捜部が内偵に入った。詳細な事件チャートも出回って、司法記者の取材合戦も始まっている」(防衛省関係者)
 実際、イージス・アショアに関しては、2017年12月の閣議決定で導入が決まり、18年4月から防衛省が選定作業を開始。同年6月末には「眼」となるレーダーをLMSSRとし、「頭脳」となるソフトウエアをベースライン9に決定した。その際、「まずロッキード・マーチンありきではないか」という批判の声が上がっていた。
「LMSSRは未開発で、これから製作される。それにベースライン9は1世代前のソフトウエア。さらにいえば、米軍は24年から最新鋭のイージス艦で、レイセオンのSPY-6とベースライン10の組み合わせを採用する。米軍との相互運用性のないレーダーをなぜ導入するのかと、海上自衛隊の現場は不満だった」(軍事アナリスト)
 もともとイージス・アショアは、トランプ大統領の強い要求を受け、安倍首相の政治判断で購入が決まったもの。イージス艦のレーダーをSPY-6に奪われたロッキード・マーチンが、総力をあげて巻き返しに出て、米ミサイル防衛局や日本に攻勢をかけた。
 実績と相互運用性の観点から劣勢だったLMSSRが選定された背景には、そんな売り込みがあり、その過程で元防衛相が主宰するシンクタンクなどからのキメ細かなフォローが行われたという。
 防衛省OBが作成したとされるチャートにはその詳細が描かれている。これが事実なら検察は、とても看過できるものではない。
 イージス・アショアの配備中止は、6月16日、河野太郎防衛相が、「迎撃ミサイルに技術的な問題が発覚、配備計画を進めるのは合理的ではない」と停止を宣言、その後、中止となった。予算化された1兆円事業の中止など前代未聞。背景には、怪しい防衛利権が渦巻いていた?


 米軍の大幅負担増要求と対峙する防衛省の「奇策」

 米軍が駐留する各国のうち、世界一の負担額となっている在日軍関係経費。この経費の中で、来年3月に期限切れとなる基地従業員の給与や基地の光熱費などを含む特別協定をめぐり、大幅な負担増を求めるのが確実な米国防総省に対し、防衛省はある「奇策」を検討している。
 奇策とは日米両政府の関心事である「衛星コンステレーション」を日米で共同開発し、共同運用することだ。衛星コンステレーションとは、宇宙の低軌道に数百基もの監視衛星を打ち上げて、敵ミサイルを追尾する衛星群のこと。
 ロシアや中国が開発中の極超音速滑空体と呼ばれる新型ミサイルは、大気圏の上層部を滑空しながら、マッハ5程度の超音速で飛翔し、目標に向かって落下してくる。水平線の向こうから突然、現れるため、地上レーダーでは探知が遅れるが、宇宙から監視する衛星コンステレーションは、発射から落下までを漏れなく監視できる。
 わが国の宇宙をめぐる政策は劇的に変化した。1969年の国会決議で宇宙の平和利用を定め、自衛隊による衛星利用などを制限してきたが、2008年の宇宙基本法制定で安全保障分野に道を開いた。今年6月に改定した宇宙基本計画は、明確に宇宙を「戦場」と規定し、米国、ロシア、中国と足並みを揃えた。
 防衛省幹部は「米国防総省が『衛星コンステレーションを一緒にやらないか』と協力を打診してきた。改定した宇宙基本計画とも符号するので、省内では前向きにとらえている。特別協定の日米協議にも間違いなくプラスになる」という。
 ただ、米政府と連携すれば、自衛隊の情報をもとに米軍がミサイルを発射する事態も予想され、憲法で禁止された「武力行使の一体化」に踏み込みかねない。日米同盟の深化がもたらすジレンマといえそうだ。


 新金融庁長官は国際派、局長クラス人事も歪み解消

 金融庁の遠藤俊英長官(61)が退任し、後任の新長官には金融国際審議官の氷見野良三氏(60)が昇格する人事が7月20日付で発令され、関連人事も動いた。
 氷見野氏は富山県出身、東大法卒で1983年に旧大蔵省(現財務省)入省、金融行政を中心に歩みバーゼル銀行監督委員会事務局長、証券課長、銀行1課長、総務企画局・監督局各審議官を経て、2016年に金融国際審議官に就いた国際派。3年間に及んだバーゼル事務局長時代には金融危機に備え銀行の自己資本を積み増すバーゼル2の策定に関与、各国の利害が絡む難しい案件だったが調整役として見事にまとめ上げた。この時に培った欧米金融当局者とのパイプが最大の強みだ。また、昨年9月には、主要国の金融当局でつくる金融安定理事会(FSB)常設委員会議長に日本人で初めて就任した。
 氷見野氏は早くから将来の長官候補と目され、16年に金融国際審議官に就いた。金融国際審議官は財務省の財務官に相当し、国際畑の最上級ポストだ。「19年開催のG20東京サミットの運営責任者の1人として白羽の矢が立った」と金融庁関係者は指摘していた。
 官僚には珍しい一山メガネがトレードマーク。毎夜、就寝前に海外の古典を原文で朗読することが日課で、50代から中国語の勉強も始め、いま中国語アプリにはまっている。古典は仕事のビタミン剤と語るほどの文化人だ。フランスの彫刻家「マイヨール」の伝記や、中国の易経をソポクレスに当てはめた『易経入門 孔子がギリシア悲劇を読んだら』などの書籍も上梓している。また、大手銀行を所管する銀行1課長時代には、リスク管理担当者を集めた私的な勉強会を設けるなど、密かに人脈づくりにも励んでいる。
 長官人事に合わせ、局長クラスの異動もあった。氷見野氏の後任には総合政策局長の森田宗男氏(85年入省)が回り、後任の総合政策局長には中島淳一企画市場局長(85年)、その企画市場局長には古沢知之証券取引等監視委員会事務局長(86年)が就任した。また監督局長の栗田照久氏(87年)は留任となった。これで森長官時代にいびつになっていた年次の逆転がほぼ解消したことになる。
 金融国際審議官に就いた森田氏は、国際通貨基金(IMF)に出向するなど、10年におよぶ海外経験がある。氷見野氏の後任として適任。しかも、我が国初のペイオフ案件となった日本振興銀行の破綻処理を手掛けるなど国内行政の経験もあり、「破綻処理のエキスパート」という呼称も冠されている。
 今回の氷見野氏の長官就任で、金融国際審議官から長官へというルートができたことになり、森田氏も将来が嘱望される。


 日本郵政が西室時代の「負の遺産」トール売却へ

 日本郵政は、業績不振のオーストラリア物流子会社トール・ホールディングスについて、野村証券とゴールドマン・サックスをアドバイザーに起用し、売却に動き出した。
 トールは、日本郵政が株式上場する直前の2015年5月に6200億円を投じて買収したもので、アジア太平洋地域を中心に50カ国、1200拠点を展開するトール買収を通じて、グローバルロジスティクス(国際物流)への脱皮が目指された。しかし、「買収額は市場価格の1.5倍と高額で、高値掴みの感は拭えなかった」(市場関係者)と、買収当初からその先行きを危ぶむ声は絶えなかった。
 当時の日本郵政関係者によると、「トール買収を主導したのは西室泰三社長(当時)で、ドイツポストによるDHL買収という成功例がモデルだった」という。しかし、資源価格下落などを受けたオーストラリア経済の低迷でトールの業績も落ち込み、17年3月期に4003億円の減損処理に追い込まれた。その後、経営陣の入れ替えやリストラ、不採算事業の売却など再建を進めたが、20年3月期も86億円の営業損失を計上するなど業績は低迷している。そこに、かんぽ生命による保険不適切販売と新型コロナ感染拡大が追い打ちをかけ、「このまま赤字を出し続けるトールを抱え続ける余裕は失われつつある」(中央官庁幹部)とされる。
「トール買収は15年11月の上場を見据えた市場への成長戦略のメッセージだった」(当時の日本郵政関係者)とされるが、思惑とは逆に負の遺産化しているわけだ。かんぽ生命の不適切販売もあり、日本郵政、ゆうちょ銀行、かんぽ生命の上場3社の株価は低迷しており、上場時に株式を取得した投資家は含み損を抱えた状態にある。国が保有する株式の追加売却も先送りを余儀なくされたままだ。
 日本郵政グループの新社長に就いた増田寛也社長は、西室氏がトール買収を決めた当時の郵政民営化委員会の委員で、トール買収には反対していた。西室氏の負の遺産からの決別に動き出した日本郵政だが、「トールは持参金でもつけないと売れないだろう」(市場関係者)というから、先行きはまったく不透明だ。


 原発国有化などセットで高まる東電解体論

 来年で東京電力・福島第1原子力発電所の事故から10年がたつ。22兆円もの廃炉や賠償などへの負債を負う東電。筆頭株主である政府によって巨額の負債返済と、経営再建を進めているが、「電力自由化で小売り分野を中心に厳しい状況が続いている」(東電幹部)。
 最大の「業績回復策」は東電が抱える原発の再稼働だが、「新型コロナウイルス感染で安倍政権の支持率が下がるなか、選挙に不利に働く原発の再稼働に向けての議論は進んでいない」(自民党幹部)という。
 現在、東電は年間5000億円程度の経常利益を上げているが、このなかから、廃炉や賠償、除染などの費用を賄っているため、決算で公表する経常利益はここ数年、2500億円前後で推移している。2017年度からの中期計画では26年度までに3000億円超、さらにその後は4500億円以上の連結経常利益を見込んでいる。さらに、政府が抱える東電株の売却で賠償などの費用を返還する計画もあるが、この際の株価の前提は1500円。現在の東電の株価は300円台とかなり開きがある。
「ほとんど計画は空手形になっている」(東電幹部)中で浮上しているのが東電解体論だ。各大手電力会社は自由化ですでに小売り・配送電などを分離しており、これを東西の2つの電力会社に集約、再稼働が進まない原発は国有化するという案だ。東電はすでに中部電力と火力発電部門を統合してJERAを設立している。先に経済産業省が打ち出した低効率の石炭火力発電の廃止や原発の国有化などをセットに、東電を解体する可能性が高まっているのだ。


 政府内で浮上したJAL・ANA国際線統合

 コロナウイルス禍で苦境に喘ぐ国内の航空各社。ANAホールディングス(HD)は借入金や融資枠の設定などで六月までに約一兆円の資金を確保しているが、2020年4〜6月期は売り上げの減少に加え、航空券の払い戻しや航空機のリース代、借入金の利払いなどで月平均約600億円の資金が流出。今後1年程度の運転資金のメドはついているが、「旅客減が長引き、財務状況が悪化すると社債発行や融資を受ける際に資金調達コストが跳ね上がるため、その前に資本面で拡充は欠かせない」(ANAHD幹部)として、日本政策投資銀行や民間金融機関と5000億円規模の資本調達に向けた協議を始めた。
 日本航空(JAL)は新型コロナの影響が拡大して以降、6月末までにみずほ銀や三菱UFJ銀などから融資枠と合わせて、5000億円規模の資金を調達。同月末時点の現金および現金同等物は3943億円と、3月末時点に比べて652億円増えたが、ANAHDと状況は変わらず、「いずれは劣後ローンなどで資本を厚くする必要に迫られる」(大手証券アナリスト)という。
 こうした中、政府内で浮上しているのが、ANA、JALの国際線の統合だ。「国際線だけなら合計シェアは25%程度と、独占禁止法にも抵触しない」(政府関係者)という。
「このままコロナ禍が長引けば、ANA、JAL傘下の格安航空会社(LCC)が破綻に追い込まれるのは間違いない。その前にLCCも含めて国際線を統合するのは大きな効果がある」(同)との声は日ごとに高まっている。


 富裕層向け事業の統括者は山一証券最後の組合委員長

 三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は傘下の証券会社2社を統合、富裕層ビジネスの大幅強化に乗り出す。8月1日に三菱UFJモルガン・スタンレー証券と富裕層取引を専門とする三菱UFJモルガン・スタンレーPB証券を合併させ、「陣容も2022年までに現状の3倍弱にあたる1600人体制にする」(MUFG関係者)という。
 国内で1億〜5億円の金融資産を持つ富裕層は110万人を超える。三菱UFJでは、このうち主に総資産3億円以上の「ハイエンド」と呼ばれるスーパーリッチ層に狙いを定めて顧客開拓に力を入れる方針だ。
 陣頭指揮を執るのが、1997年11月に自主廃業した山一証券の最後の労働組合委員長だった浜田直之氏だ。合併後の存続会社となる三菱UFJモルガン・スタンレー証券の副社長である。浜田氏はヘッドハンティングされ、今年四月に同社に入社。富裕層向け(ウェルスマネジメント)事業を統括している。
 大蔵省(当時)証券局に梯子を外され、急転直下、自主廃業を余儀なくされた山一証券。野澤正平社長の涙の会見はいまも語り草になっているが、その経営層と対峙する立場の労働組合委員長が浜田氏だった。「シンガリ組と同様に、浜田氏は廃業後一年近く山一証券に残り、周囲の社員の行く末を見届けて会社を去った」(先の関係者)という。その後、外資系金融機関などで経験を積み、直近はブラックロック・ジャパンのマネージング・ディレクターを務めていた。
 米モルガン・スタンレーと連携を深め、「世界に通用するスケールの大きな富裕層部門をつくりたい」と意気込む浜田氏。山一証券で見せたT男気Uに周囲の期待は高い。


 業績悪化が止まらぬ日産、ルノーの経営介入強まる?

 2021年3月期の連結最終損益が6700億円の赤字になる見通しの日産自動車。20年3月期の6712億円に続く大幅な赤字となる。営業損益は4700億円の赤字となり、過去最大となる。過去の拡大路線が行き詰まって業績が悪化していたところに新型コロナウイルスが追い打ちをかけた格好だ。
 トヨタ自動車は7〜12月の国内生産がコロナ感染拡大前の計画に比べ九割まで回復する見通し。SUBARUも6月下旬から国内工場を通常操業に戻した。一方の日産は七月も栃木県の工場などで生産調整を続けており、回復の遅れが目立つ。
 日産は10年代にインドやインドネシアなど新興国で生産能力を増強したが販売が伸びず、稼働率は低迷し続けた。苦境打開のために手を染めたのが米国での値引き販売だ。結果として、中古車の引き取り価格も下がるなど、ブランド力が低下する悪循環に陥った。6月のインセンティブ(販売奨励金)は約4800ドルと、依然として業界平均(約4000ドル)を大幅に上回っている。
 資金流出も止まらない。自動車事業のフリーキャッシュフロー(FCF)は4〜6月期だけで8157億円の赤字となった。FCFの赤字で現金流出が1年半続くと「20年3月末に1兆円あったネットキャッシュが、ほぼ全額失われる」との大手証券アナリストの指摘もある。
 日産からの持ち分法投資利益が17年まで5割以上を占めてきた筆頭株主のルノーからの経営介入も強まりそうだ。日産の業績悪化でルノーも19年に10年ぶりの最終赤字に転落した(本誌26ページ参照)。「これ以上、日産の業績低迷が続くようだと、子会社化し日産を取り込む動きが強まってくる」と日産幹部も警戒する。


 米マクドナルドが日本マクドナルド株売却

 外食産業最大手の米マクドナルドは、日本法人である日本マクドナルドホールディングス(HD)の保有株式を売却する方針を打ち出した。米国本社のケビン・オザン最高財務責任者(CFO)がカナダとシンガポールの法人を通じて現在50%弱を保有する日本マクドナルドHD株を売却し、35%程度までに縮小する意向を示したものだ。
 米国は新型コロナウイルスの感染者数が世界最多で、米本社はコロナ禍の直撃を受けて米国内で計画する店舗閉鎖を加速し、年内に200店程度を閉鎖するなど大規模なリストラを進めている。日本マクドナルドHD株の売却は財務・投資戦略の見直しの一環とみられる。
 一方で、日本マクドナルドHDの業績は、8月12日に発表した1〜6月期の連結営業利益は前年同期比1%増の147億円と、コロナ禍で日本の外食産業が総崩れする中にあって一人気を吐いた。しかも、総売上高の三%を経営指導料として米本社が受け取る契約を結んでおり、コロナ禍で大健闘している日本マクドナルドHDは米本社にとっては孝行息子に違いない。
 日本マクドナルドHD株売却について、米本社のオザンCFOは「日本事業の強固な実績と現地の経営陣への信頼に基づいて、株式を段階的に減らす時期だと判断した」と話すものの、売却時期や手法は明らかにしていない。
 米本社による株売却は不確定な部分も多く、それだけに、狙われた孝行息子が米本社に翻弄される事態も十分に予想される。


 テレワークの先を行くタニタの働き方改革

 コロナ禍で一気に普及したテレワーク(リモートワーク)だが、これを先取りした働き方改革だと注目される企業が、体重計や体組成計で知られるタニタだ。
 タニタでは、3年前の2017年から、同社で仕事を続けてもらいながら個人事業主として独立することを支援するという、珍しい制度を導入している。タニタを一旦退職し、改めて同社とは業務委託契約を結んで、タニタを仕事先の1つとして働いてもらうというものだ。
 谷田千里社長は「働き方改革は長時間労働にメスを入れることが主眼になり過ぎ。そうではなく、上司・部下の関係を超えて、もっと社員が生き生きと自発的に仕事ができるようにするにはどうするか、そこを考えるのが本筋」としてきた。
“社員とフリーランスのいいとこ取り”とタニタが称するこの制度、同社でも活用している人材はまだ24人にすぎない。安定して保証された正社員の身分を、おいそれと自分から捨てる勇気を持てる人は、まだまだ少ないということだろうか。
 だが、テレワークを最大限に利活用することで、郊外や地方に移住する人も増え始め、コロナ禍が長期化すれば否応なく働き方も変わる。それは、外資流の単なるモーレツ成果主義とはまた違った、自分らしさを取り戻すための働き方革命ということになるかもしれない。
 タニタの試みは、ウィズコロナ、アフターコロナ、あるいはニューノーマルといわれる時代のTスタンダードUになっていく可能性も十分にありそうだ。


 アクティビストに転身した敏腕経済記者のターゲット

「あの男が帰ってきた」──。そういわれている松浦肇氏。日本経済新聞証券部で健筆をふるい、ニューヨーク特派員に就任。パリジェンヌの夫人が彼の地を気に入り、当時の産経新聞社の住田良能社長のスカウトによって産経新聞ニューヨーク特派員に転身した人物である。兜町とウォール街に精通した彼が2度目に転じたのが、なんと投資ファンド。香港系のリム・アドバイザーズでマネジャーを務める。父親は外交官の松浦晃一郎元ユネスコ事務局長だ。
 松浦氏の転身の背景には、書くことではなかなか世の中が良くならないと文筆に限界を感じたことがあるという。村上ファンドなどアクティビスト(行動する投資家)に魅力を感じ、コーポレートガバナンス不全の企業を膺懲(ようちょう)したく思った。
 そんな彼に格好の獲物と映ったのが、介護・保育大手のニチイ学館だった。創業者の寺田明彦会長が昨年9月に急死。生涯現役でいるつもりだった会長は相続対策を怠った。明彦会長の持ち分と資産管理会社の持つニチイ株44%を相続で分配するとともに、遺族は発生する多額の相続税を納付しなければならない。
 寺田一族の窮地を知ったサラリーマン社長の森信介社長は、ニチイの社外取締役であるベインキャピタルの杉本勇次代表に相談し、杉本氏は自身の率いるベインを金主にしてマネジメント・バイアウト(MBO)することを勧めた。そうすれば寺田一族はMBOに応じる格好で株を売って換金し、相続税を納付できる。納税後の残った資金を非上場化されるニチイに再投資して株主でいられるからだ。併せて森氏も再投資する側に回り、会社の持ち主になれる。
 杉本、森両氏はコロナウイルスで社会が騒然とする中、記者会見も行わずにMBOを決定。これに「おかしい」と?みついたのが、松浦氏である。経済産業省が昨年「公正なM&A指針」を公表し、不公正がまかり通らないようMBOのルールを厳格化したが、杉本、森両氏はこれを無視。ベインには法曹関係者から「経産省の指針は『望ましい』のであって『やらなければならない』ものではない」との解釈助言があったという。これが松浦氏には既得権益者が談合して利益をむさぼるものに見えた。自身の属するリムで再三再四、ニチイのMBOを批判する公開質問状を公表し、杉本氏を追い詰めた。
 ベインのMBOは当初ニチイ株を1500円と値付けしていたが、1670円に引き上げ、アクティビストのエフィッシモまで抱き込まざるを得なくなった。松浦氏は記者時代さながら、紙爆弾のように公表し続けた公開質問状で、杉本、森両氏に筆誅を下した格好だ。


 崖っぷちに立つ造船ニッポンの象徴

 総合重工業各社にとって祖業ともいえる造船事業が最大の危機を迎えている。かつて世界に冠たる「造船王国」を牽引してきた各社の造船事業は、低コストで勝る中国、韓国の追い上げに敗れ、事業縮小に明け暮れるばかりで、もはやかつての姿はみる影もない。
 そんな崖っぷちに立たされた「造船ニッポン」を如実に表したのは、三井E&Sホールディングス(HD、岡良一社長)だ。8月5日に、広島県福山市に本拠を構える造船専業大手のツネイシホールディングスとの資本提携を発表し、自前での建造撤退の検討も明らかにした。三井E&SHDの旧社名は三井造船である。祖業はいうまでもなく造船事業で、2018年4月に持ち株会社に移行し、現社名に変更した。
 ツネイシHDとは業務提携しており、今回の資本提携は完全子会社の三井E&S造船がツネイシHD傘下の常石造船の出資を受け入れるというもの。三井E&SHDは筆頭株主の地位を維持し、ツネイシHDとの事業の一体運営により生き残りを目指していく計画だ。
 岡社長は、今後の造船事業は「設計が中心となる」と話しており、建造はツネイシの海外での協働が主体となるとみられる。三井E&SHDは、すでに千葉工場(千葉県市原市)での商船建造からの撤退を決め、玉野艦船工場(岡山県玉野市)での商船建造の撤退も検討中。また、艦船事業部門も三菱重工業への売却に向けて協議に入っている。
 国際競争力の低下や需要低迷で不振に陥ったままの総合重工系の造船事業のテコ入れは三井E&Sだけでなく、各社一様だ。
 三菱重工は既に造船事業を大幅縮小し、商船事業を分社化して、創業地である長崎造船所の香焼工場(長崎市)を専業の大島造船所に売却する方向だ。国内商船建造量で第2位のIHI、日立造船系のジャパンマリンユナイテッド(JMU)にしても、今秋には国内最大手で専業の今治造船の出資を三割受け入れる。
 総合重工にとって造船事業の存亡は、厳しい国際競争下で中韓と戦い、存在感を高めてきた国内専業大手に委ねるしかない状況だ。総合重工がリードしてきたかつての造船ニッポンからは主客逆転した構図で、まさに崖っぷちに立たされた今の姿を象徴する。
 しかし総合重工各社は、造船事業以外にも解決しなければならない事業を抱える。事業の総合化を維持したまま企業価値を毀損してしまう、コングロマリット・ディスカウントのワナから抜け出せるか?


 エコプロダクツで急成長、トランザクションの評判

 東証一部に籍を置くトランザクションが、時流を反映する企業として注目され始めている。同社は、オリジナル雑貨や販促用雑貨の製造販売企業だ。事業柱の中軸の1つが「エコプロダクツ」。環境負荷を低減させる商品の開発・製造・販売を行い、具体的な商品には、国内一のシェアを誇るエコバッグがある。
 廃プラ対策の一環として、スーパーやコンビニなどのレジ袋が有料化され、追い風を受けた。同社は、エコバックの3年後の需要を、約1300万枚増の約3500万枚と見込んでいる。
 同じカテゴリーにタンブラー・サーモボトルがあるが、これもペットボトルを使わない「マイボトル」の普及が後押しとなり、3年後には約140万個増の約370万個を想定する。
 時代の流れに乗った。もちろんそればかりでもあるまいが「第3次中期経営計画(2020年8月期〜22年8月期)」には勢いがある。売上高208億円(今8月期計画比18%強増)、営業利益31億円(同36.5%増)、営業利益率14.9%(同12.8%増)、純利益20億7000万円(同36.4%増)」を掲げている。
 同社の石川諭社長は、「高い粗利益率を実現するため、自社サイトの取り組みを強化する」としている。これまでにも約1万社の卸売事業者に向けた「MARKLESS STYLE」、エンドユーザーに向けた「販促STYLE」を運営してきたが、「7月からサイトのリニューアルを進めてきた。売上高の15%をEC(電子商取引)からの受注にシフトさせたい」という。
 またトランザクションには、アナリストからもこんな評価が聞かれる。
「オリジナル商品の取り扱いで大事な要因となるのが、最終工程の最大限の内製化。既存設備の拡充や新設備の導入で生産性を高めるほかに、中国・東南アジア・南アジアでの生産に関しても人件費動向や原材料費、為替動向まで勘案し、生産地の選択に徹している」、「機に対して敏。マスクやフェイスシールドにも積極的に取り組んでいる」。
 第3四半期の営業利益は22億2400万円。通期計画に対する進捗率は98%。株価も「勢い」を反映。新型コロナ禍相場に連れ安して3月には611円まで下落したが、7月に1256円まで切り返し、本稿作成中の時価は1194円。戻り足が強い。


 中期経営計画に集中砲火、受信料や子会社再編が再燃

 NHKは、8月に公表した次期中期経営計画案(2021〜23年度)で衛星放送やAMラジオのチャンネル数の削減などを打ち出し、これまでの「拡大路線」からの方針転換を発表したが、「受信料や子会社の改革はまったく手つかず」と集中砲火を浴びている。
 1月に就任した前田晃伸会長(元みずほフィナンシャルグループ会長)の主導で作成された次期中期経営計画案は、「スリムで強靭なNHKへの変革」を標榜した。まず、現在7000億円超の事業規模について、番組制作費の見直しなどで630億円程度を削減し、6000億円台への縮小を明記。また、4チャンネルある衛星放送のうち、「BS1」「BSプレミアム」「BS4K」を2チャンネルに整理・削減。AMラジオは「第1」「第2」を1チャンネルに統合。さらに、ネットの常時同時配信については、費用を抑制的に管理するという。
 次期中期経営計画案を発表した記者会見で、前田会長は「NHKを本気で変える覚悟を示した」と胸を張った。だが、総務省が求めてきた「業務・受信料・ガバナンス(組織統治)」の三位一体改革に対する回答になったとは、とても言い難い。
 肝心かなめの「公共メディア」の役割や責任はあいまいなまま。NHK問題の根幹である受信料の見直しには手をつけず、新たな値下げやネット受信料の導入には踏み込まずじまい。子会社の再編や整理も素通りした。何より、改革案の目玉に位置づけた衛星チャンネルやラジオチャンネルの削減は、時期を明示しておらず、単なる努力目標に終わりかねない。
 一連の改革案は、高市早苗総務大臣の要望をとりあえず反映させた内容で、そこには「拡大路線」を突っ走ってきた肥大化への批判をかわそうという思惑が透けて見える。
 案の定、新聞各紙は、社説に取り上げて「公益性軽視の帳尻合わせ」(毎日新聞)「これで肥大化是正が進むのか」(読売新聞)「合理化急げ」(産経新聞)「スリム化は結構だが…」(朝日新聞)と、一斉に批判した。
 高市総務大臣も「チャンネル削減はスケジュールの具体化を」「受信料の見直しは視聴者への還元を優先的に」「新放送センターの建設はコストの削減を」「営業経費の削減は具体的な手法や規模を明らかに「子会社整理などの経営改革は全体像を具体化すべき」と次々に注文をつけた。
 NHK批判の高まりは、コロナ禍でも影響を受けにくい受信料収入を確保できるNHKに対し、広告収入が激減した民放界のやっかみもないではない。とはいえ、メディア界とは無縁だった前田会長の意気込みは、くすぶっていたNHK問題の火種を再び燃え上がらせたようだ。


 コロナ患者急増の沖縄で医学部附属病院の内紛

 新型コロナウイルス感染症で入院患者数が増え続ける中、全国でもっとも医療機関が逼迫しているのが沖縄だ。中核となる医療機関はコロナ対応に追われているが、こともあろうに沖縄医療の頂点に立つ琉球大学医学部附属病院で、患者会を巻き込んだ内紛が起きているのだ。
 騒動の発端は、今春就任したばかりの口腔外科の教授と、これまでの医療を担ってきたスタッフたちとの軋轢だ。その背景にあるのが医科と歯科の縄張り争いで、地元医療関係者も頭を抱えている。
 琉球大学医学部は沖縄県民の強い要望で、1981年に創設された県内唯一の医学部。沖縄には歯学部がないかわりに同医学部附属病院に歯科口腔外科を設置し、高度な口腔外科手術を担ってきた。特に、口唇口蓋裂センターでは口唇口蓋裂の子供の手術を一手に引き受けており、患者から絶大な信頼を得てきた。
 ところが、今春、前任の教授の退官に伴い、後任の教授選考が行われ、選ばれたのは論文の数をこなしているが実際の治療経験に乏しい典型的な研究者タイプ。口唇口蓋裂手術がまったくできず、必要な専門医の認定資格さえもない人物だった。しかも、これまで同病院口腔外科の看板でもあり評価が高かった口唇口蓋裂手術を手掛けてきた医療スタッフの追い出しを図り、実際に退職を余儀なくされたスタッフもいるという。
 この事態に、病院内の医療スタッフや口唇口蓋裂の患者会などが新教授に反旗を翻し、署名活動を開始。口唇口蓋裂や障害者歯科などに関心を寄せる全国の医療関係者や患者などに、現体制反対の署名の呼びかけを始めた。
 沖縄の歯科医療関係者はこう話す。
「沖縄には歯学部がないため、地元歯科医師会の強いバックアップで実現した歯科口腔外科だった。ところが、病院側としては歯科口腔外科を廃止して、医科系の診療科を増設したいと考えている。その布石として、手術ができず、専門医などの資格がなく、治療実績がない論文だけの教授を選び、ゆくゆくは歯科口腔外科の手術や治療を縮小しようとしている」
 沖縄県では唯一の専門的な口腔外科手術を行ってきた同病院にも、昔から続く医科(耳鼻咽喉科)と歯科(口腔外科)の根強い縄張り争いがいまだに影を落としている。


 中国の3戦にからめ取られた沖縄

 中国による尖閣諸島、台湾、沖縄への強硬策が一段と顕著になっている。中国の北朝鮮化といわれ、その手法はより独善的になっている。日本政府も尖閣は死守する構えを見せ、対応に追われているが、沖縄県では知事やマスコミも含めコロナ禍対応に追われ中国への警戒感が薄い。
 中国は大きな戦いをする前に、まず敵への破壊工作を行う。具体的には、中国人民解放軍政治工作条例に書かれている「世論戦」、「心理戦」、「法律戦」の「3戦」を仕掛ける。沖縄ではすでに長年の工作で十分な成果を上げ、軍事力が行使できる段階と見ている。また、日本の中枢に対しても自民党指導部、マスコミ、中国留学生を優遇する文部科学省など、重点的な工作をしてきている。
 一方、東シナ海をめぐる中国の動きを注視してきた米国も、具体的な対抗処置を取り始めた。沖縄での宮古島海峡が中国側に取られると、中国の原潜がハワイや米国西海岸まで到達する能力を持ち始めたことに気づいたからだ。現在ポンペオ国務長官が南シナ海と東シナ海への対応を任されている。彼がとる対応は、沖縄での米軍による先制攻撃態勢、上海への爆撃機のデモンストレーション、中国沿岸に米国の原潜を配置して、いつでも北京、上海、そして三峡ダムを破壊できることだ。
 しかし、日本や米国にとって気になる動きが7月にあった。それは国連人権理事会で、中国の香港国家安全法を支持したのは54カ国で、反対の27カ国の倍になったという点だ。この点からも推察できるのは、尖閣も中国の領土として支持する国々がこれだけいるということで、日本にとってはその切り崩しを行う必要がある。


 コスト無視で突っ走る中国の高速鉄道

 中国は人口50万人以上の都市をすべて新幹線(中国では「高速鉄道」と総称)で結び、2035年までに総延長営業キロ数を7万キロメートルにすると経営母体の「中国鉄路集団」が発表した。実に日本の新幹線の23倍の総延長となる。
 中国新幹線の20年第1四半期の赤字は613億元(約9200億円)。国内需要が激減し、とりわけ東北部は開業以来、赤字が続いている。19年度末までに中国新幹線の赤字は82兆円に膨らんだ。この時点で営業キロ数は3万5000キロメートル。日本の11倍だ。その日本では、JR東海がコロナ禍で赤字転落となったことが現実を如実に物語る。
 7万キロメートル達成までの建設予算は最低に見積もって70兆円。しかも主要都市には新幹線がすでに開業しているため、新路線は辺疆、山奥、寒冷地、砂漠地帯になる。
 中国の経済政策には原則がない。コスト無視。ひたすらGDP拡大のためノルマを課してGDP成長率をプラスにもっていくのが習近平国家主席の基本方針だからだ。同時に現在の従業員や関連企業の雇用維持、下請け産業の倒産防止策である。
 他方、海外での中国版新幹線プロジェクトは軒並み破綻している。その象徴はインドネシアだ。例外はトルコのイスタンブール─アンカラ間、エチオピアのアジスアベバ─ジブチ間くらいだ。ファーウェイが西側から排斥されて中国国内で強引にスマホ販売を強化しているのと新幹線2倍計画も同じ事情なのだろう。


 レッドブル創業者の孫、タイ当局が渋々再捜査へ

 栄養ドリンク「レッドブル」の創業者の孫が、2012年にタイで起こした引き逃げで、捜査当局がこの孫に不利になる証拠を次々ともみ消していた実態が明らかになった。
 レッドブルの元となったタイの清涼飲料水「クラティンデーン」の創業者の孫ウォラユット・ユーウィッタヤー容疑者は、バンコクで高級車フェラーリを猛スピードで運転中、バイクに乗った警官を轢いて死亡させ、そのまま逃走した疑いが持たれている。司法当局は5年後の17年になり、ようやく逮捕状を出したが、ウォラユット容疑者はその直前に自家用機で逃亡。国外を転々としながら悠々自適の生活を送っている。
 捜査当局は今年7月、訴追しない方針を突然決定。その根拠とされたのは「容疑者は時速80キロメートル以下で走行していた。警官のバイクはフェラーリの前にふらっと飛び出した」という新たな証言だった。過失は犠牲者の警官にあったというわけだ。
 ウォラユット容疑者はひき逃げ直後の検査で、アルコールとコカインが検出されたが、「人をはねて混乱し、酒を飲んだ」という供述が信用され、事後の飲酒と判断された。また、歯科医が「歯の治療でコカインを使用した」と証言し、薬物使用の立件も見送られた。
 しかし、富裕層優遇と疑われる措置に国民の怒りが爆発。歯科学会は「コカインは100年以上前から歯の治療に使っていない」と指摘し、「容疑者は何歳か」と揶揄する声が上がった。監視カメラの映像から、フェラーリは時速177キロメートルで走行していたという専門家の分析結果が出るに至り、当局も再捜査を行わざるを得なくなった。一方、容疑者に有利な証言をしていた男性も事故死。闇は深い。


 コロナ禍対応の「優等生」、ベトナムで高まる反中感情

 中国・武漢での新型コロナウイルス感染症の拡散が世界に知られ始めた今年1月の段階で、素早く水際対策や防疫活動に取り組んだのがベトナムだった。迷走する日本を尻目に当初、国際社会から「新型コロナウイルス感染症対応の優等生」と評価されてきた。
 ところが、7月下旬から国内感染事例が少しずつ増え始め、同月末には初めて死者も出た。こうした変わりように、国を挙げて感染抑止に躍起のベトナムでは、歴史的に反中感情が高まっている。第2波の発生源とされるのは、中部の中心都市で観光開発も進むダナン。7月下旬に99日ぶりに感染者が確認された後、ダナンを旅行や仕事で訪れた人が地元に戻る際にウイルスを運ぶ格好となって、最大都市ホーチミンや首都ハノイなどにも広がった。
 問題は「不法入国した中国人がダナンにウイルスを持ち込んだ可能性がある」(外資系企業幹部)ことだ。
 ベトナムは古くから中国の侵略・支配を受けてきたため、中国に対しては不信・嫌悪の感情が非常に強い。武漢の新型コロナウイルスに国際社会が着目し始めた頃から「中国の説明を信用できないと考えていた」(外交筋)という。ベトナムが今年1月、中国政府や武漢市の保健当局を標的としたサイバー攻撃を行って関連情報やデータの収集を図ったことを欧米メディアなどが報じたのは、その証左だ。
 2003年に重症急性呼吸器症候群(SARS)が世界を震撼させた際の経験も、ベトナムの対中警戒感を高めた。当時、中国経由でハノイに到着したアジア系男性を端緒にSARSがベトナムでも蔓延したとされるため、「中国は災いばかりもたらす」という気持ちが根強いのだ。
 そうした状況下で今回、中国からの不法入国者によって新型コロナウイルスが持ち込まれた疑いが浮上したことで、「ベトナム国民の中国への怒りは凄まじい」(日越関係に詳しい消息筋)という。米国など各国がコロナ禍に翻弄されるのを見計らったように、中国が南シナ海での示威行動を活発化させている事実も、ベトナムの神経を逆撫でしている。
 初動で得点を稼いだ格好のベトナム政府・共産党は、第2波に苦慮している。厄介なことに雨期を迎え、蚊が媒介する感染症のデング熱なども拡大しやすくなっている。もし新型コロナウイルスの感染者が急増すれば、医療現場の対応が追いつかなくなる恐れもある。
 早期に事態を収拾できない場合、国民の不満の矛先が「1党支配を続ける共産党に向かう可能性も否定できない」(前出の消息筋)とみられる。党は来年一月にも次期指導部を選出する党大会を開く見通しで、それを控えて政治・社会の混乱は何としても避けたいところだ。


 巻き返しを狙い策動開始、極右「同盟」サルビーニ党首

 コロナ禍のピークが過ぎつつあるイタリアで、極右「同盟」のポピュリスト政治家、サルビーニ党首が、巻き返しを目指して本格的に策動を開始している。
 昨夏に自ら仕掛けた政変に敗れて下野したが、7月末に難民の間で新型コロナウイルス感染が広がったことに関して政府を強く非難するなど、旗印の排外政策をアピール。さらに、ロックダウンを含む政府の新型コロナウイルスへの対策を「過剰だ」と糾弾する集会に、人気歌手のアンドレア・ボチェッリさんと参加して気勢を挙げた。
 野党への転落直前には38%に達した「同盟」の支持率は、直近は26.5%まで低下している。ただ、第2次コンテ政権で連立する中道左派の民主党(19.6%)、左派ポピュリスト「5つ星運動」(16.4%)などを抑えて、依然トップの座を維持している。
 兼ねてから難民への強硬姿勢で危機感を煽っていたサルビーニ党首は、イタリア北東部、トレビーゾの難民キャンプで133人の新型コロナウイルス感染の陽性者が出たのを機に、「今やトレビーゾが感染の中心地。難民の上陸をやめさせ、国を危機に巻き込んだ政府に責任をとらせるべきだ」とまくしたてた。また、欧州連合(EU)についても、「少数が儲けているだけの単なる商業銀行で、イタリア人の夢をめちゃくちゃにしてしまった」などと、過激な発言を繰り返している。
 ただ、政権離脱で1度失われた党内の求心力を取り戻すのは容易なことではない。「同盟」は、豊かなイタリア北部の分離・独立を求める「北部同盟」からサルビーニ党首の下で全国政党に衣替えしたが、党内には原点回帰を求める根強い声があり、以前のように1枚岩とはなっていない。9月の地方選でも苦戦が予想されている。
 また、政府・与党も上院での採決で、サルビーニ党首の免責特権のはく奪を採択するなど、対抗措置を講じて警戒を強めている。同党首は第1次コンテ政権の内相として行った難民船の接岸拒否などで、2件の訴訟を抱えており、判決によっては議席を失う可能性もある。これに対しては「(当時の)コンテ首相も同意していた」などと、徹底的に争う構えを見せている。


←8月号へ                 Top                 

ダミー
ダミー
ダミー

(C)2020 株式会社エルネオス出版社. All rights reserved.
〒105-0003 東京都港区西新橋1-22-7 丸万7号館4F 
TEL.03-3507-0323 FAX.03-3507-0393 eMAIL: info@elneos.co.jp