巻頭言
枝廣淳子の


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枝廣淳子
(幸せ経済社会研究所所長)





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しなやかに立ち直る
暗闇の先への指針

 気候危機への対処も十分にできていないうちに、世界は新型コロナウイルス危機に巻き込まれました。出口の見えない真っ暗なトンネルの中にいるようです。果たして出口はどこにあるのでしょうか。それまでにどれだけの被害や損害が出てしまうのでしょう。感染防止は徹底的にすべきですが、一方で経済活動を再開しないと、事業者や地域経済・日本全体の土台が崩れてしまいかねない……。
 いうまでもなく、私たちの願いは、人類と社会と暮らしがずっと続いていくこと、つまり持続可能性です。「有限の地球の上で無限の経済成長を続けようとすることは持続可能ではない」ことを、システム思考をベースとしたシミュレーションで明らかにし、世界に警鐘を鳴らした『成長の限界』が最初に出版されてから約50年。私たちはいまだに持続可能性の難題に直面しています。この『成長の限界』の著者、デニス・メドウズとドネラ・メドウズが立ち上げた、世界の研究者・実践家のネットワークがあります。私はこのグループに20年ほど前から参加し、『成長の限界』の続々編である『成長の限界 人類の選択』を翻訳しました。同書は、多くのデータやシミュレーションを展開して成長の限界について解き明かしていますが、最終章では「では、どうしたら持続可能性をつくり出せるのか」を「5つの大事なこと」として提示しています。コロナウイルス危機や気候危機に懸命に対処しようとしている皆さんに贈ります。

(1) ビジョンを描くこと
 ビジョンを描くとは、想像すること。「何を本当に望んでいるのか」を、まずは大まかに、そして細かいところまで思い描いていきます。思い描くのは、あくまでも「自分が本当に望むこと」です。人からそう望むようにと教えられたことや、それで我慢することに慣れてきたことではありません。コロナ危機の向こうに、どのような事業や暮らしや地域を望んでいるのでしょうか。テレビや人々の論説ではなく、自分の心の声に耳を傾けましょう。

(2) ネットワークをつくること
 ネットワークにはさまざまな形態があります。人生のある側面についての関心を共有する人々が、連絡を取り合い、データや手法、アイデアや励ましを送り、お互いを尊敬し、支え合っています。権力や義務、物質的なインセンティブなどではなく、共有されている価値観や、「ひとりではできないこともみんなでやればできる」という認識でつながっている人々です。ネットワークに参加していることで、「自分ひとりではない」と思うことができます。コロナ危機や気候危機対して、同じような思いや認識の人々がきっといます。ネットワークの力を活用できないでしょうか?

(3) 真実を語ること
 嘘は情報の流れを歪めます。情報の流れが嘘によって歪んだり途切れたりすると、システムはきちんと機能できなくなります。他の人に話をする時は常に、嘘に立ち向かい、真実を断言するよう、努力することが大事です。

(4) 学ぶこと
 持続可能な世界をつくり出すために「行う」べきことはたくさんあり、そのために学ぶべきこともたくさんあります。学ぶとは、ゆっくり進み、物事を試し、その行動がもたらす影響に関する情報を集めようとすることです。誰もが、間違いを犯し、その間違いについて真実を語り、そして先に進んでいくことによって学ぶのです。

(5)愛すること
 自分自身もほかの人たちも、同じ社会の一部だと考えるようにならないかぎり、うまくいかないでしょう。そのためには、思いやりの気持ちが必要です。自分のまわりにいる人たちだけではなく、遠くに暮らす人々や将来世代への思いやりを持てるようになること。
 明けない夜はありません。大変なことがあっても、しばし落ち込むことがあっても、しなやかに立ち直る強さが私たちには備わっていると信じています。頑張りましょう!
(幸せ経済社会研究所所長)


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