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 日米国交回復以来初の椿事、1年間空席の米駐日大使

 アメリカの駐日大使がすでに1年間不在になっており、「トランプ政権の日本軽視の表れ」(在京外交筋)とみられている。
 トランプ大統領の友人で、投資会社取締役だったハガティ前大使は、2020年の上院選に出馬するため、昨年7月に帰国した。その後、空席が続いたが、トランプ大統領は今年3月、ワシントンの保守系シンクタンク、ハドソン研究所のケネス・ワインスタイン所長を次期駐日大使に指名した。欧州専門家の同所長は、日本を再三訪問して安倍晋三首相とパイプを築き、自ら大統領に売り込んだようだ。
 ところが、米国の新型コロナウイルスの拡散で議会の審理が混乱し、いまだに上院での批准審議の見通しが立たない。ヤング公使が臨時代理大使を務めているが、「駐日大使不在が1年も続くのは、1952年のサンフランシスコ講和条約で国交を回復して以来、初めて」(米国専門家)という。
 首相官邸が喧伝する「安倍・トランプの個人的親交」からは考えられない事態で、台湾や北朝鮮、尖閣諸島で有事が起きても、日米同盟が機能不全を起こしかねない。
「上院の大使承認プロセスは凍結状態です。11月3日の大統領選で民主党のバイデン候補が当選すれば、大統領は民主党系人物を指名するはずで、ワインスタイン大使の人事は吹き飛びます。政権交代なら、大使指名は来年春以降となり、批准を経た新大使の赴任は来年夏でしょう」(ワシントン特派員)
 その場合、米国の駐日大使不在が2年も続くことになる。茂木敏充外相は6月、NHKテレビで、「日米同盟は史上最良」と豪語したが、米側は日本を重視しているとは思えず、大統領選の結果次第で異例の事態になる可能性が出ている。


 日米両政府が直面する米軍基地のコロナ問題

 沖縄の米軍基地で新型コロナウイルスの感染が爆発した。米軍は7月、8月に大規模な異動時期を迎え、大勢の米兵や軍属が基地の集中する沖縄へ押し寄せた。住民の間でも米軍発の感染が広がりつつある。
 米国は感染者数、死者数とも世界一。日本政府は米国からの入国拒否を続けているが、日米地位協定によって米兵の出入国はノーチェックで検疫も行われていない。米軍は出国前と入国後にそれぞれ14日間、隔離しているというが、無症状者へのPCR検査は行っておらず、隔離は意味をなしていないことになる。
 米軍は、海兵隊の普天間基地とキャンプ・ハンセンでクラスター(集団感染者)の発生を認め、両基地を「シャットダウン(閉鎖)した」と発表した。しかし、両基地ともゲートで検温するだけで米兵や日本人従業員の車は普段通り出入りしている。
 発症状況からみて感染拡大が疑われるのは、米国の独立記念日にあたる7月4日の前後。各基地の内外で大規模なパーティーなどが開かれ、大騒ぎしたことがわかっている。
 しかし県や市町村が基地に立ち入ろうとしても、日米両政府によって基地は聖域化され、どうすることもできないのが現状だ。玉城デニー知事は16日、キャンプ・ハンセンから米兵を乗せたタクシー運転手のコロナ感染を発表。県民の間に感染が拡大することが懸念されている。
 一方、山口県の岩国基地では羽田空港経由で入国した3人の感染が判明したが、虚偽申告した揚げ句、基地内へと逃げ込んだ。沖縄の米軍基地で広がる感染問題は、沖縄だけの問題ではない。日米両政府による対処が求められる段階を迎えている。


 安倍首相のお気に召したオンライン飲み会の効用

 安倍晋三首相は6月某日、人に勧められて初めてオンライン飲み会を経験した。相手は、首相に近い自民党幹部だ。その飲み会ではよくしゃべり、よく笑い、そしてよく飲んだという。
 党の若手議員ともしばしばオンライン飲み会をしているこの幹部によると、首相がこの日のために選んだ飲みものは、1本数万円の高級ワイン「ケンゾーエステート」の赤。オンライン飲み会や会議のサービスツールは各種あるが「セキュリティー上、危ないものもある。総理との飲み会でどれを使ったかは言えない」(同幹部)とのこと。
 安倍首相はオンライン飲み会の後、その幹部に「とても面白かった」と感想を伝えてきた。この飲み会がきっかけになったのか、安倍首相はその後すぐ夜の会合を3カ月ぶりに再開している。相手は麻生太郎副総理兼財務相、菅義偉官房長官、甘利明自民党税制調査会長の3人だ。第2次安倍政権発足以来、政権を支えてきた中心メンバーである。東京・虎の門の高級フランス料理屋でワインを飲みながらステーキを食べた。
 この会合をメディアが大々的に取り上げ、秋の内閣改造・党役員人事や衆院解散の時期を巡って協議したなどと憶測されたが、この会合を引き金に永田町に解散風が吹き出したのも事実だ。今後、リアルな会合は世間への宣伝効果に使い、肝心な話はセキュリティー万全なオンライン協議になりそうだ。


 可変保険料率導入で金融機関の経営を圧迫

 金融庁は金融機関の経営破綻に備える預金保険の仕組みを見直し、金融機関の健全性に応じて預金保険料率を変える「可変保険料率」の導入に向けて本格的な検討に入る。
 金融機関は預金量に応じて一定の割合で預金保険料を納めているが、現行その料率は金融機関の健全性の違いにかかわらず同率が適用されている。一方で「可変保険料率」は、各金融機関の財務の健全性に応じて支払う保険料率を変えるものだ。
 金融機関の破綻が相次いだ1996年度に実効料率は0.84%に引き上げられた。その後、金融システムが不安視されたことから料率は高止まりしたままだったが、ようやく2012年度から順次引き下げられ現在は0.033%となっている。
 そして、金融システムが安定した時期をとらえて、「可変保険料率」の導入に舵を切ろうというのが今回の狙いで、金融機関の自己資本比率のほかに、不良債権比率など資産の状況、収益力、金融危機への耐性力を示す流動性など4項目を中心にスコアリングされる見通しだ。金融庁は内部の判断指標として金融機関をA〜Dの4段階で評価する「金融検査評定制度」を有しており、同制度が「可変保険料率」算定のベースとなるとみられる。
 ただし、「可変保険料率」は、相対的に高い保険料を課された金融機関の経営を圧迫し、経営をさらに厳しくしかねないジレンマも内包していることも事実なのである。


 前代未聞の域外適用、香港国家安全維持法の脅威

 香港に適用された「国家安全維持法」は今後の東アジアの地政学にも歴史的転換点をもたらすことになった。域外適用の考え方で書かれたこの法律は、極端に言えば、世界中のどこでも中国を非難したことで犯罪者扱いになり、逮捕される可能性を示している。また、その捜査にはICPO(国際刑事警察機構)を使う可能性が高い。
 ICPOは中国政府に拘束された前総裁がその期間中に組織全体を中国寄りにしたため、その捜査には協力する可能性が高い。また、中国政府が以前より制定している国家総動員法と併せて、ほぼ東アジアの対象拠点としていた香港、台湾、沖縄への足掛かりをつくった状況だ。
 日本に関しては国連憲章にある敵国条項が最大の障害になる可能性もある。実質的に有名無実化されているとはいえ、常任理事国の1カ国である中国にとっては日本を侵略する際のカードに使う可能性もある。
 中国は現在、犯罪人引渡条約を39カ国と締結し、刑事司法協力条約を52カ国と締結している。それらの国々は中国当局からの要請があれば、協力せざるを得ない義務を負う。その中で、日本人にとって要注意なケースが、韓国で中国批判をした場合、このケースに当たるのではといわれている。また、香港で飛行機を乗り換える場合も要注意だ。
 赤化統一を今後台湾や沖縄に行う場合、この法律は重要な統治手段になる可能性がある。また、北朝鮮が韓国に対し赤化統一をもくろむ場合もこのやり方は有効だ。共産党の下で、独裁的な統治を行う場合、自由と民主主義に慣れてきた国民をいかに従わせるか、あらゆるノウハウを詰め込んだのがこの法案だからだ。


 実質格下げ処分された分科会の前途多難

 政府は医学的見地から助言を行ってきた「新型ウイルス感染症対策専門家会議(専門家会議)」を廃止し、新型コロナウイルス感染症対策の特別措置法に基づく分科会に衣替えした。当の専門家会議の会見中に西村康稔経済再生相が廃止を発表し、記者からの質問に専門家会議の尾身茂副座長が「えっ、知らない」と返答して話題になった。分科会は正確には新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づいて設置された「有識者会議」の下に置かれる。
 そもそも専門家会議は、新型コロナウイルスの感染拡大にどうしていいか分からなくなった安倍内閣が急遽つくった組織だ。メンバーは国立感染症研究所や地域医療機能推進機構、川崎市健康安全研究所、日本医師会など基礎研究から臨床まで感染症の専門家を集めた。発言でも「人と人との接触八割減」「新しい生活様式」などを提言し、国民に大きな影響を与えた。アメリカで感染症対策の司令塔になるCDC(疾病予防管理センター)の役割を担ったといってよい。
 だが、専門家会議が活躍すればするほど、安倍晋三首相の影が薄れたのも事実。官邸から「法的根拠がない」と言いたてる批判や「経済をどうするのだ」と不満が噴出した。加えて、議事録を残していないことも露見。経済再開を望む政府との意見の相違や不満から廃止へと進んだ。
 当然、分科会は経済再開のお墨付きを得ることが狙いであることは明らかだ。だが、新型コロナと経済の共存は難しい。世界中で経済を再開したら感染が拡大したのは周知の事実。分科会に専門家会議のメンバーが多くいるといっても、各分野のメンバーが加わったら、それこそ「船頭多くして舟、山に登る」ことになりかねない。


 3冠狙う伊藤忠がファミマ完全子会社化

 伊藤忠商事が50.1%資するファミリーマートに対しTOB(株式公開買い付け)の実施を決めた。完全子会社化した上で非上場とする。時価総額、株価ではすでに業界の雄である三菱商事を超え、利益でも業界トップになるにはファミマの利益の取り込みを積み増す必要がある。業界「3冠」を目指す伊藤忠・岡藤正広会長CEO(最高経営責任者)の思いが見え隠れする。
 ファミマはこれまでM&A(合併・買収)を重ねて店舗数を増やしてきた。2009年にエーエム・ピーエム・ジャパン、16年にはサークルKサンクスを傘下に持つユニーグループ・ホールディングスと統合すると店舗数は1万7500店に達し、当時2位のローソンを抜き去った。
 しかし、大手3社の中でファミマは失速。19年度の平均日販はセブンの65万6000円、ローソンの53万5000円に対し、ファミマは52万8000円になった。20年度の予想は前年度比7000円減の52万1000円と見込むなど、商品力の低下は鮮明となっている。
 この状況にしびれを切らしたのが岡藤会長だ。業界3冠を狙うには中核子会社であるファミマの成長は不可欠。コロナウイルス感染の長期化で巣ごもり消費が増えれば、米アマゾンなどネット通販が力を増す。伊藤忠は昨年7月、ファミマやポケットカードなど生活関連ビジネスをまとめた新組織「第8カンパニー」を設置。ファミマを軸とした新サービスの開発を急いできた。今後は会員向けの宅配や顧客データを使った商品開発を伊藤忠主導で進める。


 1年天下に終わるのか利益首位の住友不動産

 三井不動産の2021年3月期の最終利益は前期比35%減の1200億円にとどまり、住友不動産(前期比8%減)の1300億円を下回る予想だ。ついに利益首位に躍り出た住友不動産だが、コロナ禍が収まり、三井不動産のホテル・商業関連事業が立ち直るまでの「1年天下」だともみられている。
 住友不動産は東京のオフィスビルの棟数ですでに首位で、借金は多いもののビルを転売しないため、保有面積に比例する賃料収入は増える。マンション販売戸数も首位の年がある。住友不動産は、分譲マンションでも、土地の入札で競り負けず、市況にかかわらず値引きなしの営業力で完売させる。ただ、テレワークの普及もオフィス事業が得意な住友不動産には逆風だという指摘がある。テレワークを続けると、東京都心の空室率は15%近くまで上昇し、賃料も2割程度下がる可能性があるというシンクタンクの予測もある。
 では、住友不動産は苦手の商業に本腰を入れるのか。8月に大型複合商業施設の有明ガーデンをグランドオープンさせ、羽田空港でも羽田エアポートガーデンを今後開業する。有明ガーデンは、200店以上の大型商業施設、国際会議にも対応する8000人収容のシアター、劇団四季の専用劇場、750室の高級ホテル、計1540戸のタワーマンション3棟で構成する。その威容は、三井不動産もうならせるような初の総合大型開発だ。その下馬評は「住友不動産の社風は体育会系であり、頭の柔らかさが必要な商業開発には不向きだ」と低かった。しかし、有明の評価は予想を覆す出来で、コロナ禍がなければ、滑り出しは「順調だったはず」と関係者は悔しがる。


 東京五輪延期で晴海フラッグ訴訟沙汰

 東京五輪延期を受けて、選手村を改修して分譲される晴海フラッグのマンションの入居が2023年3月から1年延期される。購入者らはデベロッパー側に、引き渡し延期の補償を求める意向を伝えたが、補償内容に満足な回答がない場合は協議の上、住民が個別に訴訟に踏み切る意向だ。
 7月までに販売したデベロッパー側は、延期に伴う補償を行わないことを購入者に個別に伝達した。コロナウイルス感染症などを理由に、複数の顧客と対応するのを避けてきた。またデベロッパーは、解約すれば、購入者が払った手付金は返却するが、業界慣行の手付金の2倍返しはしない。解約したくない場合は、延期期間の時期が正式に決まるまで態度は保留し、引き渡し日の正式決定後に決める。あるいは契約をこのまま続行するが、基本的に補償はなしで納得する、というものだった。
 前記の3択の回答について、購入者が困っている点は多い。小中学生の子供を抱え、子供の教育に支障が出る。中央区は晴海の小中学校の開校も23年春から24年春に延期したためだ。このほか、今住んでいる家を賃貸に回し、その家賃収入をローン支払いに充てる算段も狂ってしまう。また、一年余計に賃貸住宅に住まなければならない場合は、追加家賃が発生する。
 都有地(選手村)の開発業者への土地売却についての住民訴訟の原告によると、用地は時価の九割引程度で業者側に払い下げられた。デベロッパー側は「晴海フラッグの価格は、最寄り駅の遠い同じような有明の物件より安い」といった声にも敏感だったが、五輪延期でどの程度の負担の増減になったのか?


 新たな資金調達手段で期待されるデジタル証券

 ブロックチェーン技術を活用した新たな資金調達手段「デジタル証券」が注目を集め始めている。STO(セキュリティー・トークン・オファリング)と呼ばれるもので、五月に施行された改正金融商品取引法を受けて発行が可能になった。具体的な仕組みは、企業等が電子的なセキュリティー・トークン(証票)を発行して投資家から資金を調達し、その見返りに投資家は収益分配を受け取る権利が与えられる。
 類似した資金調達手段としてはICO(イニシャル・コイン・オファリング)=暗号資産(仮想通貨)の発行による資金調達があるが、明確な法的規制がなく、裏付けとなる資産も不透明であったことから、詐欺事案が多数発生するなど社会問題化していた。このため改正金融商品取引法では、新たに「電子記録移転権利」という概念を導入し、同権利を株式や債券と同等の「第一項有価証券」として位置付けるとともに、投資家への分配について裏付けとなる実物資産を担保するよう規定された。
 また、STOでは、トークンの発行・照合・管理についてブロックチェーン技術が活用されるのが特徴で、一連の事務コストが大幅に低減される。すでに昨年十月には自主規制団体として「日本STO協会」(会長・北尾吉孝SBIホールディングス社長)も設立されている。
 STOについては、野村ホールディングスの子会社「ブーストリー」がさまざまなデジタル・トークンを発行・取引可能なプラットフォーム「ibet(アイベット)」を公開しているほか、みずほ証券は個人向けデジタル社債の発行について実証実験を開始している。「デジタル証券」の今後に期待が集まる。


 社会情勢の変容で曲がり角のホームセンター

 6月上旬、LIXILグループ(リクシル)の瀬戸欣也社長が、「(ホームセンター)6位の上場子会社のLIXILビバを、同業のアークランドサカモトに売却する」と発表した。瀬戸氏はホームセンター事業に慎重で、五月にはイタリアの同事業子会社を米国企業に売却していた。
 MonotaR0をはじめ10余社を起業し成功させた過去の足跡から「プロ経営者」と称される瀬戸氏は、ホームセンター事業を「曲がり角を迎えている」と受け止めた。果たして業界再編の加速でホームセンター市場は活性化するのか、利益率が好転し市場規模は横ばいを脱するのか。斯界に明るいアナリストは、「再編加速、というより『曲がり角』というほうが現実的」とし、次の点を挙げた。
◎少子高齢化の進捗、人口減少、都市部への人口集中により、郊外に店舗を構えるホームセンターに足を運ぶ消費者は減少し、売上高減へ。
◎ネットショップは在庫を抱えず、品揃えは豊富。消費者にとってリアルショップは利便性において不利。
◎戸建て住宅の需要が減少しマンション派が増加しているが、ホームセンターの主軸商品は「DIY」関連商品で戸建て住宅派向け。
◎ホームセンターの商品は均一的。差別化の乏しさは、かつても今も変わっていない。
◎LIXILビバの買収で、アークランドサカモトの売上高は業界5位となるが、上位4社(カインズ、DCMHD、コーナン商事、コメリ)の市場占有率は40%以下。各社のシェアは10〜15%。「現状のシェアを守ることに精いっぱい」の状況にある。
 まさに曲がり角か──。


 資産売却を進めるSBG、「虎の子」の英アームも?

 2020年3月期の連結営業損益が1兆3646億円の赤字となったソフトバンクグループ(SBG)。「大赤字」に伴う株価下落を抑えるために自社株買いを実施したり、膨らんだ負債を圧縮するため約4.5兆円の資産売却を進めているが、その中に「虎の子」である半導体大手の英アームも含まれているようだ。
 アームは16年にSBGが約3.3兆円で買収。半導体の設計図を顧客企業に提供し、ライセンス収入を得るビジネスモデルだ。半導体メーカーはその設計図とソフトウエアを組み合わせることで手軽に半導体を開発できる。スマホ向けで九割のシェアを握り、余勢を駆ってサーバー向けへ領域を広げたものの、協業で強化を狙った「IoT」事業は伸びず、今秋に切り離すことを決めた。
 SBGはアームの上場を視野に入れるが、米中摩擦が経営の火種となっている。
 SBGは新型コロナウイルスによる経済低迷を受け、10兆円ファンド「ビジョン・ファンド」の投資先企業の価値が目減りして業績が落ち込み、「ビジョン・ファンドに資金を拠出したサウジアラビアのムハンマド皇太子もSBGのパフォーマンスに不満を持っている」(大手証券アナリスト)との声もある。
 当初、SBG率いる孫正義氏はアームを中国アリババ集団とのクラウドなどと結び合わせて、IoTなどへの進出を目指したが、コロナ禍で投資先同士を連携させて事業価値を創出する「群戦略」は綻びつつある。どう立て直すのか、孫氏は追い詰められている。


 選択と集中からコングロへ、勝ち組日立に残された課題

 日立製作所によるスイス重電大手ABBの送配電事業(パワーグリッド)買収が完了した。買収に投じた資金は負債の引き受けを含め過去最高の1兆円超。約3万6000人の従業員も加わり、グループ従業員の外国人比率は5割を超えた。「日立全体を真のグローバル企業に飛躍させる素晴らしいアセットだ」と東原敏昭社長は胸を張った。7月1日にはABBのパワーグリッド事業を継承する「日立ABBパワーグリッド」(西野壽一会長)も発足している。「日立は日本株式会社のフロントランナーに返り咲いた」(メガバンク幹部)との声が挙がるほどだ。
 だが、ここに至る道のりは平たんなものではなかった。リーマン・ショック後の2009年3月期は7873億円の連結最終赤字に転落、「日立もここまでか」とも噂された。しかし、そこから事業の「選択と集中」を徹底、「営業利益率が5%以下の事業はどんどん潰した」と東原社長は振り返る。その対象は、グループの「御三家」といわれた日立化成も例外ではなかった。日立と日立化成の経営陣の間では株式売却を巡り紆余曲折があったが、最終的に日立化成株の過半が昭和電工に売却された。また、画像診断機器事業は富士フイルムに売却され、三菱重工との合弁を解消し、火力発電事業からも撤退している。
「選択と集中」により筋肉質となった日立の事業ポートフォリオだが、それでも巨大なコングロマリットであることに変わりはない。この点について東原社長は、「コングロマリットであるゆえに持続可能な経営ができる。コングロでなければコロナ危機でヘッジはできなかった」と前向きにとらえている。ガバナンス上も現状の規模が適正ということであろう。
 一見死角がないように見える日立だが、課題も残されている。英国ウェールズで進めていた原発建設の凍結問題だ。総額3兆円を超える大型事業だが、出資者集めが難航し、昨年凍結を決めた。19年3月期に約3000億円の損失も計上している。水面下では売却交渉が進められており、中国広核電力が関心を示しているとされるが、日立は米中経済摩擦を考慮して、中国資本への売却には消極的だ。この英原発案件の解消が試金石といえそうだ。


 エネルギー転換の舵はようやく脱石炭火力へ

 政府が「脱石炭」へのエネルギー転換に舵を切る。経済産業省は7月3日、二酸化炭素(CO?)の排出量が多い老朽化した石炭火力発電所を段階的に削減する方針を表明した。2030年度までに現在、国内に140基ある石炭火力のうち老朽化が進み低効率な9割程度、およそ100基を休・廃止する方向で、総合資源エネルギー調査会(経済産業相の諮問機関)が年末をメドに詳細を詰める。
 日本の総発電量に占める石炭火力の割合は18年度で32%を占め、38%の天然ガス火力に次ぐ規模だ。それだけに、福島第1原発事故以降、膠着してきたエネルギー政策の大転換にも映る。加えて、政府は成長戦略に位置付けるインフラ輸出の一環で海外から厳しい目が向けられていた石炭火力の輸出についても、新規の公的支援の条件を厳格化する方針も打ち出した。
 一連の方針転換により、主要7カ国(G7)で唯一、石炭火力の新設計画があるなど国際的な批判にさらされてきた「環境後進国」の汚名を返上できるかが注目される。しかし、経産省は新型で高効率の石炭火力は維持し、新設も認めるとあっては、胸を張った脱石炭といえるかは疑問だ。
 梶山弘志経産相が石炭火力休廃止の方針を示した同じ3日、ドイツはすべての石炭火力を38年までに廃止する法案を議会で可決した。欧州ではすでに英国、フランスが脱石炭を表明している。
 さらに、パンデミック(世界的大流行)にまで発展した新型コロナウイルスによるエネルギー需要の縮小を背景に、先進国を中心に脱石炭の流れは一段と加速している。ロックダウン(都市封鎖)もあり英国では石炭火力を使わず再生可能エネルギーなど他の電源で需要をまかなえ、米国ですら再生エネの発電が石炭火力を上回った。
 これに比べ、日本の現状は大きく見劣りする。日本のエネルギー政策は原発を含め安倍晋三政権が真正面から向き合わず、経産省任せにしてきたのが現実だ。今回、脱石炭を打ち出したにしても、国際批判にやっと重い腰を上げたかに映るだけで、実効性のある施策を打ち出せなければ環境後進国との烙印は消せない。


 接触確認アプリも税の無駄、トラブルと陽性者登録少数

 新型コロナウイルスの感染者と濃厚接触した可能性をスマートフォンに通知する接触確認アプリ「COCOA(ココア)」が、運用開始から1カ月以上もたつのに、トラブル続出の上、効果があったという話を聞かない。鳴り物入りで始まったが、またもや壮大な税金の無駄遣いと揶揄されている。
 COCOAは、まず、アプリの利用者同士が1メートル以内に15分以上いた場合に接触記録がスマホに蓄積される。次に、ある利用者が検査で陽性となった場合、厚生労働省に申告すると「処理番号」が発行される。そして、陽性判明者が「処理番号」をスマホに入力して登録すれば、過去14日間に接触した人のスマホに濃厚接触の通知が届く仕組みになっている。感染者との接触が早期にわかれば、感染拡大を抑える有力なツールになると期待された。
 ところが、6月19日のスタート早々、発行されていない「処理番号」を入れても「完了」のメッセージが出てしまう不具合が発生して「処理番号」の発行を停止。7月3日に再開したものの、10日には陽性の登録ができない不具合がわかり、再び「処理番号」の発行を停止。15日になってようやく3度目のスタートをした。
 アプリが効果を発揮するためには、人口の6割以上の参加が必要とされるが、この時点でアプリのダウンロード数は約700万件と、たったの6%。肝心の陽性登録数に至っては、わずか3件。膨大な資金を注ぎ込んだシステムがまったく活用されていないことが判明した。厚労省も「自分が陽性者だと登録するのは、とても勇気がいる」と運用のハードルが高いことを認める。
 COCOAの導入でも熟慮を重ねたようには見えない。アベノマスクやGoToトラベルと同じだ。「個人情報は取得しないので、多くの皆さんにアプリをダウンロードしてほしい」と呼びかけた安倍晋三首相の希望的発言は、プライバシー侵害を懸念する国民から一蹴されてしまったようだ。このままでは、思いつきで始まった「コロナ愚策」がまた一つ増えただけと言われかねない。


 有力国タイ参加先送りでTPPの年内拡大困難に

 太平洋を取り巻く日本など11カ国による大型自由貿易の枠組み「環太平洋連携協定(TPP)」の年内拡大が困難な状況になっている。拡大の第1弾と期待されたタイの参加の見通しが立たなくなったためで、中国頼みだったサプライチェーン(供給網)の強化につなげたい日本の思惑に狂いが生じそうだ。
 11カ国で船出したTPPはその後、タイや英国、中国、インドネシアが強い関心を寄せ、中でもタイは5月までに参加方針を閣議決定し8月のTPP閣僚級会合で参加交渉の開始を表明する見通しとなっていた。
 タイには多数の日本企業が進出している。タイがTPPに加わり、貿易障壁が取り除かれれば、サプライチェーンの中国依存度が減り、日本にとっては大きなメリットとなる。日本政府は頻繁に高官をタイに派遣し、TPP参加を後押ししてきた。
 ところが、タイ国内で参加への警戒感が強まってきた。TPPの参加国は「植物の新品種の保護に関する国際条約」の批准を義務付けられる。このため、農業団体は多国籍企業が特許を持つ種子が利用できなくなると懸念を表明。タイ原産の種子すら特許が原因で使えなくなる恐れがあると反発している。また、医療関係者からは医薬品の入手が困難になると警戒する声が上がっている。
 タイ政府内でTPPを推進してきたソムキット副首相が7月に閣外に去ったことも、早期参加を難しくしている。ソムキット氏はプラユット首相の懐刀として長年タイの経済政策を統括してきたが、与党内で優遇されてきたソムキット氏に近いグループへの風当たりが強まり、辞任に追い込まれた。TPP参加を目指して国内外で調整を進めてきたタイ商務省の交渉責任者は「長い道のりが残されており、年内参加は無理だろう。来年参加できるかも分からない」と弱気な言葉を漏らしている。


 追徴課税1兆円超は無効、欧州委がアップルに敗北

 欧州連合(EU)の下級審に相当する一般裁判所はこのほど、米IT大手アップルに対する最大130億ユーロ(約1兆6000億円)もの追徴課税をアイルランド政府に命じた4年前の欧州委員会の決定について、無効とする判決を下した。
 欧州委はEU競争法をたてに域内における公平な競争の促進を目指し、多国籍企業による課税逃れや、アップルなどGAFAと呼ばれる米IT大手を厳しく取り締まってきたが、今回の判決は大きな失点となった。
 欧州委は、アイルランドでの法人税引き下げを通じたアップルへの税制優遇措置について、EUの規則上、違法な国家補助に当たるとして、追徴課税を命じていたが、一般裁はアップルだけが税制優遇を受けていたとする欧州委の主張は誤りであり、違法性を十分に示せていないと判断。アイルランド政府は「課税は適正に行われた」と判決を歓迎。アップルも、「世界最大の納税者であることを誇りに思っている」(広報)と、課税逃れはしていないとの立場を改めて表明した。欧州委はEU司法裁判所(最高裁判所に相当)に上訴するとみられる。
 IT大手への課税問題を巡っては、EUは統一的な「デジタルサービス税」導入を目指しているが、企業誘致を目指す加盟国では反発も根強い。司法裁の最終的な司法判断は、競争政策と産業政策の間のバランスを左右する、重要な節目になりそうだ。


 コロナ放置に認知症? トホホな米大統領2候補

 米国での新型コロナウイルス感染者増加の勢いが止まらない。特に南部のフロリダ、テキサス、そしてカリフォルニアの各州で勢いが増している。マスク着用義務は次第に浸透してきたが、特にこれらの州の夏の気温は40度を超えることもあり、実情は若者を中心にマスク着用ができていない。また、南部でのトランプ支持層の中核をなすキリスト教福音派の人たちは、教会での集会を欠かさず、かつ、自分たちは神に祝福された白人なので、コロナウイルスには感染しないと考える信者も多い。
 トランプ大統領の対応は依然として経済一辺倒。治療体制の拡充や医療保険制度に関心がない。ウイルスはすでに感染力が強力なタイプに変異したとみられている。
 上院共和党ではこのままいけば、再選でのトランプ氏の歴史的な惨敗に伴い、上院の議席も大幅に減ると分析しているが、トランプ氏に盾突く動きはない状況だ。
 一方、民主党のバイデン大統領候補は、コロナ感染を避けるため、デラウエア州の自宅にとどまることが多い。しかし、高齢に伴う認知症の症状が出ており、大統領職が4年間できるのか疑われている。注目の副大統領候補は女性と限定したため、バイデン氏に何かあった場合に次の大統領職を遂行できる実績ある人物となれば、エリザベス・ウオーレン氏とカマラ・ハリス氏しかいないといわれる。だが、片や考え方が急進的、片や両親とも米国人ではない点が選挙でマイナスとされ、ヒラリー・クリントン氏の名前さえ挙がる。トランプかバイデンかの選択だけで今の米国の現状が良くなるのか、有権者から不安の声が聞こえる。












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