巻頭言
池 東旭の


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池 東旭
(ソウル在住/
国際ジャーナリスト)





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コロナ・パンデミックと
元に戻らない世界

──ウイルスとの世界戦争
 コロナ・パンデミックは目に見えないウイルスと戦う世界戦争になった。すでに感染1200万人、死亡60万人(7月20日現在)を超えた。国境は封鎖され、人の往来と物流はストップだ。市民に外出禁止、隔離、休校やPCR検査が強制された。人々の暮らしは戦時を彷彿させる。防毒面に代わりマスクを着用。灯火管制はないが、不要不急の旅行は禁止で娯楽施設と食堂営業も規制された。病源隠蔽の責任問題で米・中・WHO(世界保健機関)の間で攻防が続く。各国は試行錯誤の防疫対策を反復する。戦争は莫大な戦費がかかる。新型コロナウイルス大戦でも政府は失業、医療、福祉対策に赤字を度外視した巨額の緊急財政出動に追われる。カネを惜しんで対策を疎かにすれば政権は吹っ飛ぶ。
 このコロナウイルスとの戦争は百年前の第1次大戦後の歴史をなぞる。第1次大戦で覇権国イギリスは没落した。同じ時期、スペイン風邪が全世界に大流行した。そのあと第2次大戦まで戦間期、覇権国空白の中でナショナリズムが台頭し、スターリン、ムソリーニ、ヒトラーなど独裁者が次々出現した。国際協調は姿を消し、世界は大不況にみまわれ、第2次大戦に突入した。

──人を見たらコロナ感染者と思え
 コロナ大乱がいつ収束するか、予断できない。第2波、第3波も襲来する。ワクチンを開発すれば新型肺炎は克服できるという。しかしコロナ・パンデミックが終息しても世界は元に戻れない。国際秩序は壊れ、市民の暮らしは一変した。「人を見たらコロナ感染者と思え」で対面接触を避ける。在宅勤務、休校・自宅学習、テレビ会議など日常生活も様変わりした。インバウンド旅行者に対する拒否反応が増え、鎖国ムードが広がっている。
 国際環境も激変した。グローバリズムは退潮して、各国で孤立主義と自国優先の利己主義が強まり、独裁的政権が登場した。アメリカが主導した国際秩序はとっくに崩れた。アメリカ・ファーストのトランプ大統領は国際協調のルールを無視して勝手に行動する。75年前、アメリカは国際連合(UN)を要とした国際秩序を構築した。だがトランプはWHO、ユネスコなど国際機構を解体している。同盟国にも海外基地撤退など恫喝する。
 米国内でも人種差別問題で白人対有色人の対立は内乱直前だ。1860年の南北戦争以来最大の国内危機である。だれが次の大統領になっても、傷ついたアメリカの国際的威信は元に戻らない。野望に燃える習近平中国国家主席は、一帯一路戦略で米国に挑戦した。だが、覇権国家に必要かつ十分な要件(政治、軍事、経済、イデオロギー)を満たせない。
 コロナ禍後の世界は多極・分極化する。リーダー不在の中、仁義なき弱肉強食のジャングルになる。

──近代の黄昏
 武力衝突の気配は世界中に広がっている。中国は1国2制度の公約を反故にして香港を接収した。次の標的は台湾だ。尖閣も例外でない。経済制裁とコロナ禍のダブルパンチで苦境の金正恩北朝鮮労働党委員長は対北宥和に汲々する南を、武力行使をちらつかせて威嚇する。イスラエル対パレスチナやイランなど中東紛争は時限付き爆弾だ。局地紛争が核戦争に飛び火する可能性は一段と高まった。でも皆は、まさか核戦争が起こると信じない。しかし、戦争はいつも誤判からはじまり、惨憺たる理解で終わる。
 平和を望むなら戦争に備えよ、という。14世紀ヨーロッパを襲った黒死病で住民の半分が死亡、中世の黄昏になった。今、コロナ・パンデミックは世界史の区切り点だ。世界は「まさか」の連続だ。1年前の今、東京オリンピック延期など夢にも思わなかった。6カ月前までCOVID-19の単語もなかった。予言は当たらないのが相場だ。しかし、良い予言は当たらないが、悪い予言はよく当たる。
(ソウル在住/国際ジャーナリスト)


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