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 アベノマスクで終わる? 「台本営発表」の裏方

 安倍政権は「アベノリスクで始まり、アベノマスクで終わる」と、いまだに悪評ふんぷんの布製2枚のアベノマスク。466億円の予算をつけたが不良品が多く、回収して検品代に8億円かかる。困窮学生への支援予算が7億円なので「税金の使い方が間違っている」と国民の怒りは沸点に達している。
 アベノマスクの言い出しっぺは、佐伯耕三首相秘書官(1998年旧通産省入省)である。3月初め、佐伯秘書官は安倍晋三首相)に全世帯への一律配布を進言した。了承を得た後、首相官邸内に経産省の若手官僚を1本釣りして「マスクチーム」を結成、密かに準備してきた。
 佐伯氏は2017年7月、それまでの首相秘書官補佐官(内閣副参事官)から史上最年少で首相秘書官に引き上げられた。安倍政権の主要政策立案すべてにかかわっている今井尚哉首相補佐官(兼首相政務秘書官、88年旧経産省入省)の覚えがめでたかったからだ。海外向け首相スピーチは谷口智彦内閣官房参与(慶應大学大学院教授)が担当し、国内向けは佐伯氏が、と役割分担していた。
 コロナ禍の拡大で首相外遊が激減した昨年末から現在まで首相演説の草案はすべて佐伯氏の手によるものだという。佐伯氏草稿を今井補佐官が目を通し、最終的に安倍首相自身も朱を入れているが、スピーチ草稿全体が書き換えられるわけではない。プロンプターに投影する台本を丸読みの首相記者会見は「台本営発表」と揶揄される。本誌5月号の連載で金田一秀穂氏が指摘していたが、空疎に響く言葉の羅列は国民にもメディア関係者にも評判が悪かった。
 さて愚策の象徴が全国5000万世帯に行き渡るのはいつになることやら。


 韓国はコロナ対策で削減、日本は削減なしの防衛費

 新型コロナウイルスの感染対策に充てるための2020年度補正予算が4月30日、国会で成立した。期せずして韓国でも同じ日に新型コロナ対策費を含む補正予算が成立した。
 韓国の補正予算の特徴は、国防費を9047億ウォン(約795億円)削減して財源に充てたことだ。削減するのはF35戦闘機の購入費などで、韓国国防部は「本年中に予定した支払いを来年に延ばすこととし、米政府と協議中だ」と発表した。
 翻って、日本はどうだろうか。「アベノマスク」や1人10万円の給付を盛り込んで組み替えた補正予算25兆6900億円の財源の大半は赤字国債で、防衛費削減の話は一切出なかった。
 日本は、韓国が削減したのと同じタイプのF35戦闘機の導入を進めているが、議論を経て導入したのは最初の42機分だけで、残り105機の導入は、安倍晋三首相がトランプ米大統領に「バイ・アメリカン(アメリカ製を買え)」と迫られて、閣議了解という異例の形で政治決定した。
 20年度の防衛費に計上されたF35戦闘機は九機で1156億円になる。このうちの数機でも購入を先送りして財源にすれば、新型コロナ感染拡大を防ぐため、店舗に休業を要請しながら十分な補償金を支払えない財政不足の都道府県が助かるのは間違いない。
 日本と韓国とでは国情が異なるとはいえ、5兆円をはるかに超え、戦後最大となった防衛費を削減する案が日本で浮上しないのは不思議というほかない。


 金融庁公表の事例にみるコロナ対策融資の肝

 新型コロナウイルス感染拡大と緊急事態宣言による事業者の資金繰り確保を目的に、政府は政府系金融機関を通じた実質無利子・無担保の特別貸付に乗り出し、民間金融機関に対しても実質無利子・無担保の融資実行と既存借入の条件変更等に柔軟に対応するよう強く要請している。
 金融庁は金融機関の取り組み状況について3月6日以降、特別ヒアリングを行い、その結果を公表・更新しているが、この中で、融資対応の肝となるいくつかの好事例を取り上げている。
 まず融資の迅速対応について、1.事業者から条件変更等の相談があった場合に、審査を行うのではなく、まず3カ月の元金据置ないし期限延長を直ちに実施し、その後にじっくり事業者の話を聞く、2.事業者からの相談を受け、これまでの事業実績の評価に基づき、今後も事業継続してもらうために1年間の元金据置及び期限延長を実施、3.新規融資に関し、返済財源等に見通しが立たない場合、いったん6カ月程度の短期資金の貸出で対応し、その間に資金面・事業面でどのような対応策が考えられるのか、事業者とともに検討──などが挙げられている。
 また、不動産賃貸や個人の住宅ローンを含む支援についても、1.事業者のテナント料負担が軽減されるよう、テナントビル所有者への融資について一年間の元金据置を実施、2.住宅ローンの返済猶予の求めに対して、まず6カ月間元本を据置き、条件変更手数料も無料とした上で、6カ月後の状況を踏まえて対応を再検討──などが挙げられている。
 融資の実効性は、まさに金融機関が顧客目線で迅速に対応できるかどうかにかかっている。


 新型コロナで脚光浴びるネットファクタリング

 新型コロナウイルス禍で営業自粛を余儀なくされている観光業や飲食業など中小事業者の駆け込み寺として「ネットファクタリング」が脚光を浴びている。ファクタリングとは債権を期日前に買い取ってもらうサービスで、利用する事業者は入金期日前に債権を現金化できる。
「ネットファクタリングはオンラインで申し込みを受け、AI(人工知能)で審査を行うのが主流で、最短即日入金される迅速さが売り。一種のクラウドファンディングだ」(大手銀行幹部)。金利に相当する手数料は2〜10%程度が一般的。債権額から同手数料を差し引いた金額で買い取る。事業者には日本で初めてネットファクタリングを手掛けた「オルタ」、オルタと協業する「フリー」、マネーフォワードの子会社「MF KESSAI」などがある。
 金融機関もネットファクタリング事業者との連携に積極的で、りそな銀行、東日本銀行、山陰合同銀行などが「オルタ」と提携し、顧客紹介を行っているほか、新生銀行は「オルタ」と合同会社「anew(アニュー)」を設立し、比較的金額の大きい法人向けネットファクタリングに進出している。金融機関はネットファクタリング会社に顧客を繋ぐことで紹介手数料を得られるメリットがある。
「百万円前後の小口のネットファクタリングは、すぐさま現金が手に入る格好のサービス。持続化給付金が入るまでのつなぎ資金として使い勝手がいい」(飲食業経営者)というわけだ。ただ、「コロナバブル」ともいえるネットファクタリング急増には不良債権リスクも付き纏うことは忘れてはならない。


 警戒が必要な銀行の不動産売り込み

 歴史的な金融緩和で、信託銀行など金融機関がSPC(特別目的会社)や合同会社、ファンドを使って不動産を動かし、それを売買仲介するなどして何度も転売する物件(案件)に「要注意」の声がかかり始めた。すでに都心の地価は2年前に実勢価格のピークを打ち、銀行の転がし物件が目についている。信託銀行は、取引先にこうした物件を「売りませんか」と日参しているわけだ。その物件は、同じ信託銀から買わされたものであることが多い。
 そうした銀行は、取引先や自行の不良資産の切り離しや決算対策から、コロナ不況下でも強引な取引を平然と行う。売買に引き込まれる事業会社は通常より深い登記簿チェックや信用調査が不可欠になるのはいうまでもない。「うちは同じ物件でもう3度も回し……」という話もある。
 カネ余りはコロナ状況下でも続く。だから、金融機関は、Jリート、私募債、ファンド、SPC、合同会社、個別融資などさまざまなルートを通じて、ホテルやビルにお金をつぎ込んだ。不動産の証券化(金融化)を担う信託銀行が絡むケースは、物件の普通の売買以外の形で信託受益権を取引するケースが多い。取引にからむ合同会社名など実態が乏しい証券化のためのペーパーカンパニーの存在も見抜かねばならない。
 利回りのベースになる不動産鑑定の結果も決して丸呑みできないのが転がし物件の特質だ。信託銀に任せれば「安心」なんて、実は時代錯誤なのだ。オフィス賃料は4月から下がり始め、空室が増えている。稼働率が1割前後に落ちたホテルは「不良資産」にすぎなくなった。


 日鉄とJFEが取り込みを狙う神戸製鋼

 2020年3月期の連結最終損益が680億円の赤字(前期は359億円の黒字)に落ち込んだ神戸製鋼所。2月には20年3月期の連結最終損益を150億円の赤字と予想していた。しかし国内造船向け需要が縮む鋳鍛鋼品の製造設備や航空機向けチタン製品の設備などで計499億円の減損を計上した。
 神鋼は鉄鋼事業だけでなくアルミ・銅事業や建設機械事業、電力事業も展開。「売り上げ構成で4割を占める鉄鋼事業の減少を他の事業で補うのを強みとしてきたが、その戦略が裏目に出た」(大手証券アナリスト)という。事業別に見ると、鉄鋼事業の経常損益が213億円の赤字(同47億円の黒字)となったのに加え、アルミ・銅事業が204億円の赤字(同15億円の赤字)と「ダブルパンチ」となった。日本製鉄やJFEなどライバルも高炉の休止などで苦しい状況は変わらないが「最後は財務力がものをいう。研究開発や設備への更新ができないと競争から振り落とされる」(同)。
 劣後する神鋼を狙うのが日鉄とJFEだ。神鋼は資産圧縮の一環として鋼管事業や防護柵など道路関連事業を他社に売却しているが、「両社にとって不要な事業を事前に切り離してもらっている」(日鉄関係者)と好都合に映る。日鉄は神鋼の大株主。JFEは神鋼の加古川製鉄所やアルミ事業を取り込んで、日鉄に並ぶ規模を獲得したいという思惑がある。
 神鋼の強みは自動車のエンジンなどに使われる「線材」と呼ばれる特殊鋼にあるともいわれる。中国勢も特殊鋼には強くなく、不況時にもそれなりの利幅が確保できるので両社にとって垂涎の的だ。今後の日鉄、JFEの動向が注目される。



 コロナ後の株主総会はバーチャル+リアル?

 株主総会が集中する6月を前に、企業の総務関係者の間で「ハイブリット型バーチャル株主総会」という聞きなれない名称のサービスが話題となっている。みずほ信託銀行が証券代行業務の一環として共同開発し、提供し始めたサービスで、「予想を超える数の引き合いが寄せられている」(みずほ信託銀行)という。
 ハイブリット型バーチャル株主総会とは、「取締役や株主等が一堂に会する物理的な場所で株主総会(リアル株主総会)を開催する一方で、リアル株主総会の場に在所しない株主がインターネット等の手段を用いて遠隔地から参加・出席することができる株主総会」(経済産業省)を指す。リアルな株主総会とバーチャル(インターネット)での株主総会が融合された形となるためハイブリット型といわれる。
 この新たな形式の株主総会について経産省は、「新時代の株主総会プロセスの在り方研究会」を設置して議論を重ね、今年2月にハイブリッド型バーチャル株主総会を実施する際の法的・実務的論点および具体的な取り扱いを明らかにする実施ガイドを取りまとめた。みずほ信託のサービスは、この実施ガイドに沿って実際に企業がハイブリット型バーチャル株主総会を開催できるようにシステム面を含めサポートする仕組みだ。
「新サービスは新型コロナウイルス問題が浮上する以前から準備していたものですが、結果的に感染拡大を防止する効果もあることから採用を検討する企業が増えています」(みずほ信託関係者)という。
 ただし、バーチャルな形で参加する株主は、その場で議決権を行使できるわけではない。このため議決権行使については開催日前までに書面を郵送する必要があるが、この面ではみずほ信託と三井住友信託が共同開発した「スマホ行使」を使えばネットでも行えるという。株主はスマートフォンで「QRコード」を読み込めば議決権を行使できるサービスで、2018年6月開催の株主総会からサービスを提供している。
 株主総会は企業と株主が対話する最高の意思決定機関だが、個人株主の議決権行使率は約三割と低迷。また、新型コロナウイルス感染拡大で企業決算のとりまとめが遅れており、経産省は株主総会に株主の来場を禁止することができるとの指針をまとめた。招集通知書などに記載し、議決権を事前に行使するよう促すことを提案している。これまでも「株主が出席していなくても開催が可能」としていたが、コロナで密集が生じかねないこともあり、指針で表現を強めた。それだけにハイブリット型バーチャル株主総会を介した企業と株主の対話促進が期待される。


 コロナ禍で株主総会延期、配当・議決権に混乱発生

 新型コロナウイルス感染症の影響で決算発表、株主総会が異常事態となっている。3月期本決算会社は2338社で全上場会社の60%超、そのうち少なくとも539社が決算発表を延期。国内の緊急事態宣言、海外の都市封鎖で監査業務が遅れているためだ。中には延期発表をしないで延期している会社もあって株主を混乱に陥れている。
 決算開示では新型コロナ禍で前20年3月期は大幅減額修正、今21年3月期は業績予想数字を未公表とする会社が続出。コロナ禍の影響・打撃は深刻でしかも広範囲だ。
 大きく揉めそうなのが、決算の遅れに伴う株主総会の遅れだ。3月期決算会社は、通常は3月末が基準日でそこから3カ月以内、すなわち6月末までに株主総会を開催する規定となっている。ところが、決算発表が大幅に遅れて、株主総会を6月中に開けない会社が出てきている。東証、経産省、法務省などが懸念しているのは、基準日が3月末からズレるという問題だ。株主の権利である配当、株主総会の議決権を得る基準日が変わる可能性がある。各社の決算担当者などは、「これは揉める」と事態を深刻に受け止めている。
 例えば、東芝などは決算発表を6月5日に延ばし、株主総会開催は7月以降になる。東芝は株主総会の議決権は5月15日を基準日にした。その一方で配当の権利は3月末の株主にすると発表。5月15日までに株式を売却した株主は配当を受け取れるが議決権は失う。
 オリンパスも株主総会が7月下旬に延期となる。オリンパスは株主総会の議決権、配当の基準日を5月31日に再設定している。3月末の株主で権利を取ったということで株式を売却した場合は議決権、配当とも無権利になるので混乱は必至だ。日本板硝子は株主総会が7月以降にズレ込み、配当の権利は3月末としているが、株主総会の議決権は6月4日を基準日としている。
 最も揉めそうなのが配当の権利だ。配当取り目的で三月期末に株式を購入する多くの投資家の当てが外れることになる。オリンパスは議決権、配当とも基準日を変更したが、東芝、日本板硝子などが配当の権利を従来通りに3月末にしたのはそうした考えからだ。東証、経産省、法務省ともやむをえないと是認する方向だが、東芝、オリンパス、日本板硝子などはこの異常事態を株主にどう申し開きをするのだろうか。


 中高年の先生がネック、大学のオンライン講義

 全国の大学がコロナ禍で学内への立ち入りを禁止した代わりに、ネットを利用したオンライン講義を続々と始めているが、先生も学生も事務局も初めての体験だけにトラブルが続出して大混乱。文部科学省の集計によれば、ほとんどの大学が、何らかの形でオンライン講義を実施しているという。4月早々にスタートした東京大を皮切りに、ゴールデンウイーク明けには、京都大はじめ早稲田大や日本大などの主要大学が一斉にオンライン講義に踏み切った。
 最大のネックとなったのは、学生との対面によるリアルな講義に慣れ親しんできた中高年の先生たちだ。突然すべての講義がネットに切り替わることになったため、授業計画を記したシラバスの書き直しを迫られ、これまで無縁だったシステムの短期間での習熟を余儀なくされた。講義の深化を考える以前の環境整備の作業に悩まされ、開講を迎えざるを得なくなってしまった。
 一方、デジタルネイティブの学生たちは、オンライン講義そのものへの抵抗感は小さいものの、パソコンやデータ通信など受講するためのネット環境を整えられないケースが続出、講義を受けられない事態が相次いだ。また、大学事務局も誤算が続いた。想定を上回る大量のアクセスが集中して中枢システムがダウン、講義中に通信が途切れたり、ソフトの利用制限にひっかかるなど、予期せぬ事態の対応に追われた。
 どの大学も当面、オンライン講義を継続することになりそうだが、望んで採用した方式ではないだけに手探りが続く。学生に不利益が生じないことを願うのみだ。


 労災の対象にならないウーバー配達員が反旗

 巣ごもり生活を余儀なくされる中、街で目につくのが専用のリュックを背負ったウーバーイーツの配達員。ついには、ロンドン五輪フェンシング銀メダリストの三宅諒選手が、遠征費用などを稼ぐ一方、トレーニングにも?がるということで、配達員となり1日、4〜5件ペースでデリバリーをこなしているという。
 だが、身分は雇用契約のない個人事業主だ。ウーバーイーツの雇用関係は複雑で、運営主体は米配車大手のウーバー・テクノロジーズで、ウーバーイーツは同社が日本で手掛ける宅配サービス。ところが、配達員との契約はオランダ法人のウーバーポルティエBVとの間で結ぶことになっており、日本にウーバージャパンはあるものの、配達員との契約交渉などは行わず、「窓口業務」という位置づけだ。
 困るのは事故などの補償である。個人事業主なので、事故による死傷事故に労災保険は適用されない。見舞金制度はあるものの、医療費は25万円が上限。業務中の事故の場合、全額補償する労災保険との差は大きい。そこで配達員の有志が、昨年十月、労働者としての身分を求めて、ウーバーイーツユニオンを結成、団体交渉に入ろうとしたが、ウーバージャパンはオランダ法人との契約であることを理由に、交渉に応じない。そこでユニオンは不当労働行為だとして、東京都労働委員会に救済を申し立てた。
 高速で街を駆け抜けていれば、事故の危険はつきまとう。個人事業主ではなく、労働者としての権利を求めても、交渉先が節税目的のオランダ法人では話にならない。配達員にはそんなリスクがあることを知るべきだろう。


 新型コロナワクチンで注目されるmRNA技術

 新型コロナウイルス感染症ワクチンの開発が急ピッチで進んでいる。これまでのワクチン開発は、数年かかるのが当たり前だったが、それが大幅に短縮される見通しだ。
 ワクチンは有効性と安全性が確保されるのが大原則だが、とかく問題になるのは安全性だ。副作用や接種でその病気を発症してしまうこともある。安全性を慎重に確認する必要があるから時間がかかる。
 今回のワクチン開発で、最も有望視されている新技術がmRNAワクチンだ。核酸(RNA、DNA)を使ったワクチンで、数年前から注目されている最先端の創薬技術、核酸医薬の一つだ。従来型の病原体の毒性を弱めたり不活化したりしてつくるタイプのワクチンに比べ、安全性が高く、病原体培養の手間を省くことができ、開発期間が短縮できる。
 この技術で世界をリードしているのが米国とドイツで、特に米国のベンチャー企業であるModerna社はNIH(米国立衛生研究所)とともに、開発のトップを走る。米国には他にも有力なベンチャー企業があり、複数の臨床試験が始まっている。
 日本だが、技術的に米独に引けを取っているわけではない。昨年、東京医科歯科大学ではmRNA技術を使って世界初となる脊椎損傷を回復させる動物実験に成功。注目されているのがmRNAの弱点である生体内で不安定になる性質を改善し、細胞内に効率的にmRNAを届ける技術を開発したことだ。
 米独ベンチャーが強さを見せている中、日本の核酸医薬の技術が、安全性と有効性が高いワクチン開発に大きく貢献すると期待されている。


 保険大手ロイズの支払額は米国同時テロ時に匹敵か

 世界有数の再保険組織として知られるロイズ・オブ・ロンドン(ロイズ保険組合)はこのほど、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う保険金支払額が最大約43億ドル(約4600億円)に達する可能性があるとの試算を発表した。2001年の米同時テロを受けて支払った保険金額に匹敵する規模になるという。
 新型コロナ禍を受けて各種のイベントや不動産関連の契約がキャンセルされている。こうした異常事態を受けて保険金請求が膨らみ、ロイズの負担額は30億〜43億ドルに上る公算が大きいとしている。この試算には生命保険の支払額は含まれていない。
 今回の試算は、新型コロナ禍に伴い各国で導入されている外出制限措置などが第2・四半期(4〜6月)を通じて実施されるとの想定に基づいている。ただ、外出制限が世界的に第3・四半期(7〜9月)まで維持されるような事態になれば、保険金支払額はさらに膨らむ可能性があると予想。同時テロ超えもあり得るとの見方を示している。
 ロイズは、新型コロナ禍に伴う世界全体の保険、再保険合わせた支払額(生命保険除く)についても、今年は1070億ドルに達すると試算。さらに、株式など金融市場の急落を受け、保険会社が保険金支払いの原資に充てるため行っている資金運用も痛手を被っており、そうした投資損失も960億ドルに達する可能性があるという。
 保険金支払額と投資損失を合わせれば2030億ドル(約21兆8200億円)に上り、世界の保険業界の負担額としては、過去最大の水準になるとしている。


 コロナ対応に称賛の裏で統制強化へ動くベトナム

 世界の国・地域の中で、新型コロナウイルスの感染拡大阻止に成功していると称賛されるのがベトナムだ。1月下旬以降、中国滞在歴のある外国人の入国規制や休校指示、国民の移動制限、商業・遊興施設の営業停止などの措置を矢継ぎ早に実施し、5月中旬時点では感染者を300人余りにとどめ、一人の死者も出ていない。「適切な手段を打ち出し、国民がそれを信頼して要請・指示に応じた」(外交筋)と評価されている。
 共産党が一党支配体制を敷くベトナムでは、住民管理や社会統制が徹底している。それが今回、コロナ対応を整然と遂行するのに役立ったのは間違いないが、国際人権団体などは「『成功体験』に味をしめて、国民への締め付けが今後強まる恐れがある」(西側NGO幹部)と懸念する。
 党や政府が警戒するのは、国民の間で体制への不満が高まって党の権威が揺らいだり、抗議デモが国際人権団体や海外ジャーナリストの目に触れるような事態だ。特にSNSで流布する情報に神経を尖らせており、年明け以降、コロナ禍に合わせて規制に乗り出した形だ。
「誤った情報」「『違法』とされる情報」とベトナムで言う場合、党批判や反体制的な主張が含まれるのは半ば常識だ。「コロナ関連のデマや流言飛語が社会不安を惹起するのを抑えるという大義名分の下、都合の悪い情報を遮断する仕組みを整えた」(前出NGO幹部)側面が否定できないだろう。


 避難先のバングラからロヒンギャが大量脱出

 ミャンマーで迫害を受けている西部ラカイン州のイスラム教徒少数民族ロヒンギャが国軍の掃討作戦に遭い、隣国バングラデシュに大量に逃れてから間もなく3年。ロヒンギャが今度はそのバングラデシュから相次いで脱出している。
 バングラデシュ沖で2月、難民キャンプからマレーシアに向かおうとしたロヒンギャの乗った木造船が沈没、少なくとも15人が死亡、数十人が行方不明になった。全長13メートルの木造船には130人が乗り込み、すし詰め状態だった。4月には500人を乗せた船がマレーシアに上陸を拒否され、70人が命を落とした。
 ロヒンギャ難民が密航業者に払う手数料は1人当たり700ドル(約7万5000円)という法外な値段。おまけに、脱出には命の危険がつきまとう。割に合わない脱出をなぜ難民があえて試みるのか。
 きっかけとなったのは、昨年8月に難民が行ったミャンマーへの早期帰国の実現を訴える集会。バングラデシュ当局は集会後、キャンプ周囲に有刺鉄線を張り巡らせ、インターネット通信を遮断した。キャンプは孤立し、外部情報が全く得られない状況に陥った。今年に入ってからは人権活動家がキャンプを追い出され、食料難が深刻化。仮設トイレはあふれ出し、ごみは散乱したままで、衛生状態が劣悪となっている。
 それにも増して難民の生活を脅かしているのは治安の悪化だ。バングラデシュ治安当局の監視が行き届かなくなったキャンプは、暴力組織による誘拐や薬物取引、性的暴行が横行する無法地帯と化している。
 難民代表は「このような状況では戦うか逃げるしかない。新型コロナウイルスの感染拡大で各国が難民の受け入れを拒む中、今も数百人のロヒンギャが小型船で漂流している」と、国際社会に支援を訴えている。


 ポストコロナの新常態でもGAFAの盛況は続く

 新型コロナウイルスにより米国は四月の失業率が14.7%と戦後最悪に陥るなど、リーマンショックを上回る経済危機に瀕している。半面、グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップルの「GAFA」をはじめとしたIT企業は、これと裏腹に在宅勤務や巣ごもり消費の拡大などコロナ禍による社会生活の変容を捉えて勢いづいている。その姿からはアフター・コロナに訪れるであろう新常態(ニューノーマル)の実像も浮かんでくる。
 コロナ禍で一気に市場がT蒸発Uした米国で、GAFAの1-3月期決算はいずれも増収を確保し、存在感を示した。老舗のマイクロソフトもクラウドサービスが好調で、前年同期に比べ14.5%の増収と気を吐いた。市場評価もうなぎ上りで、いまやこれらプラットフォーマーと呼ばれるIT大手がアフター・コロナの新常態を担うと目される。
 確かに、厳しい外出制限を余儀なくされた米国では一気に在宅勤務が進み、ネット通販の流れも加速した。それはプラットフォーマーにとどまらず、広くIT企業に特需をもたらした。外出制限から動画配信のネットフリックスの有料会員数は3月末に全世界で1億8286万人に達し、昨年12月末から1577万人増えた。
 企業社会にテレワークが広がった結果、ビデオ会議需要が拡大し、米ズーム・ビデオ・コミュニケーションズの「Zoom(ズーム)」が注目を浴びた。セキュリティー面での懸念があったものの、昨年12月に約1000万人だった1日当たりの利用者は今年4月に3億人に膨らんだ。
 この急成長に目をつけ、フェイスブックは四月下旬にビデオ会議サービスの拡充策を発表。マイクロソフトは「Team(チーム)」、グーグルも「Meet(ミート)」で追随する。老舗の百貨店や衣料チェーンが相次ぎ経営破綻、ボーイング、ゼネラル・エレクトリック(GE)といった名門企業が軒並み苦境にさらされている。その最中のIT企業の勢いは、アフター・コロナにおける新常態の姿を連想させる。実際、米ツイッターは5月12日、希望する社員に在宅勤務を永久に許可すると発表し、新常態の到来を予感させた。
 日本でも主要製造業が総崩れの中で、リストラ一辺倒だったNECがテレワークなどを追い風に、2020年3月期の連結最終利益で23年ぶりに過去最高を記録した。経団連も14日に発表された政府の緊急事態宣言解除後の産業界が守るべき対策のガイドラインに沿い、引き続きのテレワークを奨励する。コロナ禍を契機に働き方や生活に大きな変容が求められる。












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