巻頭言
池 東旭の


photo
池 東旭
(ソウル在住/
国際ジャーナリスト)





購読のお申し込み

デジタル雑誌のお求めは
こちらよりどうぞ




こちらからも
お求めいただけます。

photo


コロナ以前、以後
リセットされる世界

 コロナ・パンデミックは目に見えぬウイルスが敵の世界大戦だ。地球全体の感染者は300万人、死者は20万人に達する勢いだ。犠牲者は今後1000万人台を超すと陰鬱な予測もある。第1次大戦の犠牲者は3000万人(兵士、民間人合計)、第2次大戦は6000万人だった。しかも欧米の罹患、死亡者はアジア、アフリカを上回った。理想の福祉国家と思われた先進・欧米の幻想は消えた。世界全体が繋がっていたサプライチェーンは断ち切られた。ヒト、モノ、カネの流れは中断され、経済活動はマヒした。失業、休業、倒産ラッシュの津波が押し寄せた。封鎖された都市で人影が消えた。史上最悪の1929年大不況でも見られなかった光景だ。外出自粛で閉じ込められた人々のストレスは積もり積もった。災厄の発生源・中国や事態を糊塗した世界保健機関(WHO)、感染対策で後手後手に回った政府への憤怒は噴火直前のマグマになった。
 
──トランプ再選も赤信号
 コロナは11月の米国大統領選挙を直撃した。トランプ大統領は医療専門家の助言を聞かずコロナ脅威を楽観した。しかし米国の感染、死亡は爆発的で世界で最多だ。株価は暴落、失業者も史上最高の2000万人に増えた。トランプ大統領は財政支援2兆ドル撒布と産業現場の再開(5月1日)を主張する。だがコロナ収拾前の職場復帰は人命軽視と批判された。職場再開命令の権限をめぐり大統領と全米50州の州知事が対立した。経済が好転しなければトランプ再選も危ない。ヨーロッパで難民問題も下火になった。ジョンソン英国首相は重症から一命をとりとめたが、EU離脱は宙に浮いたままだ。アフリカ、中南米はコロナ感染の初期だ。これからウイルスは全世界に猖獗して年を越す。

──安倍政権のコロナ退治
 日本に対する海外の視線も厳しい。東京オリンピック開催にこだわり、コロナ対策を先送りして感染を拡大させたと非難もある。緊急措置発表も時期を逸し、逐次で小出しの対策と批判される。安倍内閣の進退はコロナ退治の成敗にある。パンデミックが終息しなければ来年の五輪も難しい。
 韓国は、4月15日の総選挙で文在寅政権が圧勝(300議席のうち180議席)した。コロナ対策の大盤振る舞いの公約など執権党のプレミアムが効いた。保守野党は朴槿恵政権の呪縛から抜け出せず惨敗した。文政権は政局の主導権を握ったが状況は厳しい。経済はピンチだ。ポピュリズムによる見境ないバラマキで財政赤字のブレーキがない。コロナ不況は輸出依存度八割のコリアに致命的だ。北朝鮮はミサイル発射など挑発を続ける。米韓関係は冷えきった。駐韓米軍費用分担交渉で米国は5億ドル、韓国は1億ドルを主張して決裂した。4月から米軍基地の韓国人労務者9000人の半数は無期限休業中だ。ハリス駐韓米国大使も辞任を表明するなど、米韓同盟は最悪だ。日韓関係の改善は今後も期待できない。
 
──現代のたそがれ
 各国は恐慌対策に天文学的金額の財政手段を総動員した。1929年大恐慌は10年後の1939年に勃発した第2次大戦で脱出できた。不況打開の秘策は戦争しかないと不吉な予言がある。1918年のスペイン風邪は3年間、全世界で3000万人、日本でも40万人が犠牲になった。
 ワクチンが開発できればパンデミックは克服でき、日常生活も正常化するという。だが人々の暮らしは元に戻れない。国際連帯は霧散した。グローバリズムは退潮して内向きのナショナリズムの時代へ移行する。イン&アウト・バウンド景気は消え、国際機関への信頼は復活しない。中世のたそがれは14世紀西欧の人口の1/3が死亡した黒死病からはじまった。西欧優位の近・現代もコロナ・パンデミックで幕を閉じる。後世史家は2020年を境目に現代史をコロナ以前、以後のBC、AC(Before Corona、After Corona)と区切って記録する。

(ソウル在住/国際ジャーナリスト)


ダミー
ダミー
ダミー

(C)2020 株式会社エルネオス出版社. All rights reserved.
〒105-0003 東京都港区西新橋1-22-7 丸万7号館4F 
TEL.03-3507-0323 FAX.03-3507-0393 eMAIL: info@elneos.co.jp