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 安倍首相からの禅譲が有力、岸田氏の危惧は力量不足

 2月半ば、東京都内のホテルで自民党の岸田文雄政調会長の出身校である私立開成高校OBの国会議員、官僚らでつくる「永霞会」(岸田会長、約550人)の総会が開かれた。この会は2017年9月に発足し、「岸田応援団」の色彩が濃い。一方、安倍後継に向けた岸田ビジョンは側近の木原誠二衆院議員(財務省ОB)がまとめ、今春「岸田政権構想」として講談社から刊行する予定だったが、折からのコロナウイルス禍でタイトルや発売時期が未定だ。
 自民党有力者の一人は「安倍首相が後継者として岸田氏を決めているのは間違いない」と言う。だが、岸田氏のリーダーシップ、識見、国家観の欠如など首相の資質は「安倍氏に比べ著しく劣る。オーラも感じられない」と嘆く。
 この有力者が言うには、安倍首相の腹は、九月に最強布陣の内閣改造・党役員人事を断行、二階俊博氏を副総裁、岸田氏を幹事長に起用する。岸田氏は、就任翌日から全国行脚して自分の国づくりや国家観を具体的に示した上で外交・安保、財政・金融、社会保障政策、そして日進月歩のデジタル社会への対応プランなどを地方の党員・支援者に説明していく時間をとった後、安倍首相は辞任する。そうしないと、任期満了での党則に則った総裁選では石破茂元幹事長に勝てないと言い切る。
 両院議員総会で総理・総裁に選ばれてもリーダーシップを発揮できず短命政権になる、と危惧する。さらに岸田氏の周辺には、身を粉にして支える政治家や官僚出身者が見当たらないとも言い「木原氏が政権構想を描くようでは明らかに力不足だ」と、岸田氏の前途に溜息を吐く。


 安倍首相の年内退陣で麻生氏が後釜を狙う算段

 一方、新型コロナウイルス危機で、安倍晋三首相が厳しい政権運営を強いられる中、首相経験者の麻生太郎副総理・財務相が安倍氏の早期退陣を見越して再登板の機会を虎視眈々と狙っているようだ。「麻生氏としては将来の岸田政権発足を念頭に置いており、来年九月までの総裁任期を終えれば、岸田政権に協力する考え」(自民党関係者)とされる。ただ、あえて安倍氏の年内退陣を前提に再登板を目指す理由は2つある。
 第一は、首相の座にあった2009年衆院選で自民党が敗北し、野党に転落したことへのリベンジ。もう一つは「岸田氏のキングメーカーとなることで、その後の政界で影響力を発揮することを目指している」(同)。そこからは、「安倍、麻生両氏による“キングメーカー争い”の様相も浮かんでくる。
 一方で安倍、麻生両氏とも、石破茂元幹事長の政権だけは阻止したい点では一致しているが、石破氏はこのところ各報道機関の世論調査で、次期首相候補として最も高い支持率を得ている。そこで、党則に定めている「特に緊急を要するときは、党大会に代わる両院議員総会においてその後任を選任する」との規定を適用できるかが焦点となる。
 ただし、党内には安倍首相周辺でも「両院議員総会で後継総裁を決めたら、世論の反発で党が持たなくなる」との声が聞かれる。麻生氏の再登板戦略はかなりハードルが高そうだが、五輪延期で安倍氏が突然、引責辞任した場合は、現実味を帯びてくる可能性も否定できない。


 プーチン5選の道を原油価格暴落が後押し

「院政に移行」と報じられていたロシアのプーチン大統領が3月、一転して2024年の5選出馬を可能にする憲法改正を推進したことで、終身指導者へ道が開かれた。翻意の背景に何があるのかロシアで臆測を呼んでいる。
「1月の改憲発表であれほど、自らの退陣や後継移行を力説していた大統領の公約破り。背景にはコロナ問題があり、3月に入ってコロナウイルスが世界に拡散し、世界経済危機の様相を呈する中、やはり自分しかロシアを救えないと思ったのではないか」(モスクワ特派員)
 とりわけ、プーチン氏の翻意を促したのは原油価格の暴落のようだ。コロナ問題による需要減や産油国の協調減産失敗などから、2月に1バレル=60ドル台だった原油価格が3月中旬、暴落して遂に30ドルを割り込んだ。ロシアの輸出の7割、国内総生産(GDP)の1/3は石油・ガスだけに、経済危機の到来は必至だ。
「2008年のリーマンショックで最大の被害を受けたのがロシアで、翌年の成長率は-8%。この時はメドベージェフ大統領で、モスクワなど大都市での反政府運動の高揚につながった。原油価格下落による経済危機や社会不安を見込んで、先手を打 ロシアでは、ソビャーニン・モスクワ市長やパトルシェフ安保会議書記ら有力側近がプーチン氏の続投を強く働きかけたとさったようだ」(商社筋)
れ、側近の説得も翻意の背景にあるようだ。エネルギーを国策利用してきたプーチン政権は、原油価格とともに国力を回復させたが、かつて原油価格の暴落が旧ソ連を崩壊させたように、今回も経済の破綻につながりかねない。コロナによる原油価格の下落が、恒久政権移行を後押ししたようだ。


 長引く「黒川問題」で揺らぐ検察庁の反撃策は?

 検事は、それぞれが検察権を行使する任務を与えられた独任制官庁である。その強い権限ゆえ統一した見解を持たねばならず、検事総長のもと「一体の原則」が貫かれている。
 そこに手を突っ込んできたのが安倍政権で、内閣人事局を通じて各省庁を牛耳ったのと同じ手法で検事総長人事に口を出した。1月31日、黒川弘務東京高検検事長の任期を半年、延ばすことを閣議決定。森まさこ法務大臣の居直り答弁もあり、国会で野党が「検察人事への介入だ」と、強く批判している。
 国会論戦は、与野党の駆け引きの側面もあり、いずれ終息するが、問題は「一体の原則」が揺らぐ「法務・検察」の内部である。一体どのような状況なのか。
「稲田伸夫検事総長は、『プリンス』の林真琴名古屋高検検事長を今夏、自分の後任にするつもりで内部の調整を終えていた。それをひっくり返されて面白いハズがない。黒川擁護派は少なく、2年の慣例をすっ飛ばし、自分が留任して黒川氏を退任に追い込むかもしれない」(検察関係者)
 官邸が、「稲田じゃダメだ。(総長を)黒川にしろ!」と動いたのは、検察が1月15日、河井克行前法相、妻の案里参院議員の強制捜査に踏み切ったからだ。検事長定年は63歳で、2月8日に誕生日を迎える黒川氏を総長に据えるには、定年延長しかなかった。
 秋元司元内閣府副大臣を昨年末、収賄で逮捕し、河井夫妻に手をかけ、次に狙うのが菅原一秀前経産相ということで、「稲田検察」はどこまで政界捜査を続けるのか、という恐れが政権内部に広がった。捜査するのは特捜部など第一線だが、最終的にゴーサインを出し、官邸に報告を上げるのは検事総長。そこで「稲田じゃダメだ」につながったが、黒川氏自身は、「官邸べったり」という評価を気にし、司法記者にはこう漏らしているという。
「俺は、自分の役割をこなしただけ。検事長となってからは秋元捜査をサポートしたし、仮に検事総長になっても自民党政治家の不正が発覚すれば、遠慮なく捜査する」
 役割とは、法務省官房長、法務事務次官として、東京高検検事長になるまでの7年半も政界窓口を務めたこと。政界とのT癒着Uも仕方がないというT言い訳Uだが、だから「政界捜査ができなかった」(司法記者)という指摘もあり、検察内部に反黒川派が多い理由である。「自分から退任すればいいのに」という批判もある中、黒川氏は居座って稲田氏の禅譲を待つのか。夏まで神経戦が続きそうだ。


 自衛隊災害派遣隊員から感染者が出なかった理由

 自衛隊は3月19日、新型コロナウイルスをめぐる災害派遣を終了した。活動は49日間に及び、延べ8700人の隊員を投入した。患者と濃厚接触する隊員もいたが、感染者はゼロ。約23万人いる隊員からも国内感染者は出ていない。どのような防護策を取っているのか。
 実は自衛隊に感染症対策で災害派遣が命じられたのは今回が初めてだ。活動は1月31日から始まり、ピーク時の2月中旬には、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」に約140人が投入されていた。
 任務は「船内の消毒」「診療や薬の配布」「薬の仕分け」「検査で陽性となった患者の搬送」の4項目。防護基準は厚労省の示した基準よりも厳しくしたという。船内では防護服を着用し、手袋を2重にした上、防護服とのつなぎ目を粘着テープでふさいだ。飛沫感染を防ぐため、ゴーグルも着用した。
 クルーズ船からの下船者や中国からの帰国者を収容した国税庁税務大学校などを使った宿泊支援にも約80人が投入されたが、隊員は船内同様の重装備だった。
 クルーズ船に派遣された厚労省職員や検疫官の中からは6人の感染者が出ているが、自衛隊は途中から投入された予備自衛官の医療スタッフを含め、感染者はゼロだった。
 自衛隊トップの山崎幸二統合幕僚長は今回の災害派遣を振り返り、「他省庁と連携して実施することをまず明確化した。その内容に沿って『1人の感染者も出さない』ことを目標に高い使命感と責任感をもって任務にあたった」と述べた。
 災害派遣された隊員らは防衛省がチャーターした民間船舶2隻に宿泊しており、万一の際、部隊に感染を広めない工夫もされていたという。
 フランスから帰国した幹部一人が感染した以外、国内感染者はいない。共同生活が基本の自衛隊でなぜ、感染者が出ていないのか。陸上自衛隊の将官の1人は「ふだんから部隊ごとのライバル意識が強く、各隊長らが『うちの部隊から感染者は出さない』と明言し、隊員に健康管理を徹底させている」と打ち明ける。有事に備えた自衛隊ならではの危機管理体制が背景にあるようだ。


 新型コロナがもたらす違法貸金業者の跋扈

 新型コロナで最も被害を受けているのが、自粛ムードで客足が止まった飲食、民泊・ホテル、旅行、イベント関連などの中小零細業者だ。大手チェーン店ならば内部留保で多少はしのげるが、駅前飲食店で家族経営の中華、蕎麦、定食、居酒屋などは、客足が止まって、「明日の仕入れ、来週の支払い」にも困っている。
 政府は、緊急経済対策を打ち出し、信用保証協会を通じた融資を拡充、無利子無担保の枠を広げるなど危機対応に当たっているが、それではとても間に合わない。「窓口に寄せられた相談が六万件とか。順番がいつ回ってくるかわからない状態で、融資が実行されるのが1カ月、2カ月後だと、倒産するしかない」と、窮状を訴える業者が多く、対応はいかにも遅い。
 そうした中で聞かれるのが「商工ローンがあったらな……」という嘆きである。周知のように、過激な回収が批判されて2006年に貸金業法が改正され、100万円以上の金利上限が15%となった。同時に過払い金返還訴訟も始まって、06年末の約1万2000社が18年末には1500社を割り込み、「貸金業」というビジネスモデルが終焉を迎えようとしている。だが、中小零細企業にとって「急ぎのカネ」は必要だ。
「入金の当てがあり、それまでの間、しのぐだけの資金があればいい、という業者さんは少なくない。ところが、年利15%では100万円を貸しても1カ月後の返金を受ける際の利益は1万2500円。これでは商売が成り立たないと、廃業していった業者は少なくない」と貸金業協会幹部はいう。
 そこで、貸金業者の穴を埋めるように、売掛債権の売買を装う「偽装ファクタリング」、ショッピングカードのクレジット枠を利用した「カードの現金化」、SNSを利用して金融業者でもないのに貸し付けを行う「個人融資」などの違法業者が増えている。ネットを開けば、そうした違法業者が堂々と勧誘、法定金利の数十倍を徴収するようなケースが増えている。
 かつて出資法の上限の29.2%までの金利が認められていた時代、無担保で貸せて利益を確保でき、ビジネスが成り立っていた。従って、それほど大胆な上限金利引き上げが求められているわけではない。コロナ不況で表面化した問題発覚を機に、貸金業法の再見直しが論義されそうな気配だ。


 株価の急落で日銀に債務超過の懸念

 FRB(連邦準備制度理事会)は3月15日に緊急の追加利下げに踏み切り、政策金利を0%にすることを決めた。FRBは今年に入り、矢継ぎ早に利下げに踏み込んでいる。このFRBの動きを受けて、日銀も3月18、19日の金融政策決定会合を前倒し、16日に3年半ぶりに追加緩和に踏み切った。
 内容は、(1)年間六兆円を目途に買い上げているETF(上場投資信託)を2倍の12兆円に増やす、(2)REIT(不動産投資信託)の買い入れ額を年間900億円から2倍の年間1800億円に増額する、(3)企業への直接的な資金繰り対策として社債やCP(コマーシャルペーパー)の購入について9月末までに2兆円増やす、(4)民間金融機関が融資を増やすよう資金供給の枠組み(8兆円規模)を創設して9月末まで0%で貸し出す──というのが柱だ。
 だが、市場の反応は冷淡で、日経平均株価は一時500円を超す下げで、4営業日連続の下落。市場ではさらなる緩和策としてマイナス金利の深掘りが俎上に上っている。黒田東彦総裁も16日の会見で、「マイナス金利政策が限界で、これ以上できないということはない。深掘りが必要なら実施する」と答えている。
 実施した場合は、副作用として金融機関のさらなる収益圧迫要因となることから、金融機関への悪影響に目配りする必要がある。「地方金融機関は新型コロナによる地域経済への影響を回避するため、中小企業への資金繰り対策に汗を流している。その地域金融機関の首を絞めるマイナス金利の深掘りに踏み切ることは、相矛盾する政策とならないか」(地銀幹部)との声は根強い。
 一方で気になるのは、日銀がETFの買い入れを増額するなど、追加緩和策に踏み出したことで、日銀のバランスシートの悪化が懸念されることだ。日銀の買い入れたETFはすでに30兆円を超えており、日経平均株価が1万9500円を割り込むと含み損になる。今回の追加緩和にもかかわらず株価は下落しており、日銀はETFを追加購入した直後に損失が出ている可能性が高い。このままで推移すれば、いずれ日銀は一般企業でいうところの総資産を自己資本等(資本金、引当金勘定、準備金)で割った自己資本比率がマイナスに転じ、債務超過に陥る可能性も棄てきれない。
 もちろん、日銀は日銀券を発行する発券銀行であり、自己資本を銀行券で割った自己資本比率は8%超を維持している。いずれにしても、こうしたリスクを冒してでも日銀が追加緩和に踏み込まざるをえないところに、今回の新型コロナウイルスの深刻さが見て取れる。


 ベア見送りに賃上げ低迷、アベノミクスに赤信号

 3月11日に集中回答日を迎えた今春闘は、日本製鉄など鉄鋼大手が2020年度、21年度の2年間、賃金改定の基礎となるベースアップ(ベア)を見送った。春闘相場を担うトヨタ自動車も13年以来7年ぶりとなるベア・ゼロを回答し、大手製造業を中心にここ数年にない厳しい回答が相次いだ。
 米中貿易戦争を発端に中国経済が減速し、世界経済に不透明感が増してきた矢先に襲った新型コロナウイルスに、経営側が抱いた強い危機感を反映した結果だ。同時に、第2次政権発足以来、政治介入による「官製春闘」で執拗に経済界に賃上げを迫ってきた安倍晋三首相にも痛手となった。
「パンデミック(大流行)」にまで発展した「コロナショック」は、世界的な金融市場の混乱から急激な円高・株安を誘い、政権に大型経済対策を迫り、アベノミクスのシナリオが完全に狂い出した最中だけに、今春闘の不調はアベノミクスへのTとどめの一矢Uにも映る。
 連合が3月13日発表した今春闘の第1回集計は定期昇給とベアを合わせた賃上げ率が平均1.91%で、7年ぶりに2%を割り込んだ。連合の神津里季生会長は「新型コロナによる足元の問題が交渉に影響したとは見ていない」とし、賃上げの流れは継続しているとの認識を示した。
 しかし、今後交渉に入る中小企業などはすでに新型コロナによる深刻な影響が表れ、今春闘は最終的に一段の厳しさが予想される。足元の日本経済は消費税増税に伴う19年10〜12月期に続き、新型コロナの影響で20年1〜3月期のマイナス成長は避けられず、リセッション(景気後退)入りが濃厚だ。
 アベノミクスの生命線だった円安・株高への誘導は吹き飛び、金融、実物経済ともに打つ手なしで、急激な株安は3月期決算企業に株式評価損が発生する。安倍政権が注力したインバウンド需要にシフトしてきた小売り・サービス、旅行・観光などはコロナショックで企業倒産が多発する事態も訪れよう。低調な今春闘はその一端にすぎない。
 コロナショックはすでに非正規を中心に雇用・所得環境の悪化を招いており、リーマンショック級の不況の再来も視野に入る。首相は3月14日の記者会見で、新型コロナの感染拡大防止と同時に「機動的に必要かつ十分な経済財政政策を間髪入れずに講じる」とし、4月の大型経済対策で政策を総動員する姿勢を示してはいる。
 グローバル経済下において、ヒト、モノ、カネの流れが途絶えてしまうという世界観を一変させたコロナショックでアベノミクスは引導を渡された形だ。超長期政権の安定感だけが売りの安倍政権は、危機対応に正面から向き合う180度の政策転換を迫られる正念場だ。


 銀座の土地建物売買で安田本家が相続対策か

 銀座中央通りの銀座シックスの向かいにあるアバクロンビー&フィッチの店(アバクロの1棟借り物件)が入る土地建物の高値売買が繰り返されている。
 複数の銀座通の話は、坪当たり4.4億円(売買総額は350億円前後か)とされた相続評価額は、建物込みで同1億円台とみられる。富裕層にとっては、借金(資産を減らせる負債を増やす)をして、これを同4.4億円で買えば、かなりの相続資産を圧縮できる。しかも前回の取引で「同3億円台」の実績があるのも買い手にとっては、追い風となっているようだ。
 アバクロビルの坪当たり4.4億円の売買には、かつての三井、住友、三菱など4大財閥の一角の旧安田財閥が関係していた。安田財閥に縁のある東京建物の関連SPC(特別目的会社)や安田不動産の関連会社、その私募ファンド、安田系の組織である名を冠する安田家系列と見られる会社も介在するという指摘がある。安田財閥の創始者の安田善次郎のひ孫の安田弘氏は、麻生太郎財務相とは「はとこ」だ。
 安田財閥創業者が曽祖父で、2代目安田善次郎(安田財閥2代目当主)が祖父、安田一(安田財閥3代目当主)を父とする華麗なる家系の真ん中にいる。安田一族の相続対策の可能性は極めて高く、京都の高級ホテルも最近、同じような手法で外資企業から買われたため、関西でも話題になりそうだ。
 さて、この取引、外資の高額取引の実の当事者は誰だったかという視点だけに拘泥すれば、「本当の買い手は誰なのか?」が見えにくかった取引だ。安田財閥本家の安田弘氏の相続対策が主眼の大型高額売買とみるのが合理的だ。
 路線価など公的地価は、地価の上昇局面では時価を後追いする形で上がっていくことが多い。商業地としては全国で最も高額の部類に属する銀座4〜6丁目は、相続税対策に使われやすい。「銀座の土地・建物を欲しいという地方の富裕層〈高齢者〉は非常に多い」という。相続税対策の切り札の1つという側面があり、投資利回りからは購入できない「別世界でのアノ世対策の取引」が幅を利かすわけだ。


 富士通が次世代を睨みデジタル事業の新会社設立

 「富士通とは異なる新たなカルチャーのもとで、柔軟かつ機動的に活動していく」。富士通の時田隆仁社長はデジタル事業を手掛ける子会社「リッジラインズ」(東京・千代田区)の設立記者会見でこう強調した。新会社は人工知能(AI)などを活用してビジネスモデルの変革を顧客に提案するDX事業を手掛ける。社長には、IT(情報技術)企業など向けの著名コンサルタントとして知られる、PwCコンサルティング副代表執行役の今井俊哉氏を迎えた。
 リッジラインズは外部からその道のプロを呼んで本体に刺激を与えるいわゆる「出島」だ。すでにパナソニックが米グーグルからナンバー2の松岡陽子氏を招いてシリコンバレーに拠点を設けているほか、トヨタ自動車も国防高等研究計画局(DARPA)からロボット研究の第1人者といわれるギル・プラット氏を招聘し、自動運転車の開発の陣頭指揮をとっている。
 富士通がこの「出島」にかける思いは、人事報酬制度の刷新にもある。
 リッジラインズは、当面は富士通本体や富士通総研などからの出向者がほとんどだ。しかし、1〜2年の試行後は本格的な成果反映の報酬体制を採用する予定だ。イメージで言えば、プロ野球やプロバスケット選手のように「年俸+出来高、3年契約」の体系に移行する。期待に見合った成果が得られれば、契約通りの報酬が得られるが、期待を下回れば年俸はダウンする。日本では外資系企業やコンサルタント会社が採用する報酬体系だ。富士通では、この欧米型の成果反映型報酬制度をいずれは本体に移植するという。富士通本体の賃金体系も年功序列から熾烈な成果報酬制度に移行していくわけだ。
 背景にはGAFAに対する対抗意識がある。有能なAI技術者やソフトウエアエンジニアを確保するには、今の報酬ではなかなか振り向いてくれない。しかも、デジタルビジネスは変化のスピードが速く、年功序列時代のように1から新人を教育していては間に合わない。
 トヨタも電機各社と同様、自動運転やカーシェアなど「CASE」と呼ばれる変革期を迎えている。従来のガソリン車の開発・販売を手掛けながら、自動運転車や電気自動車(EV)など次世代車の開発も手掛けないといけない。次世代車の分野のライバルはグーグルやアップルだ。年功序列・終身雇用といった日本型経営を維持してきたトヨタでさえも人事報酬体系の見直しを迫られている。多くの大企業もこうした動きに追随することになりそうだ。


 苦境の名門レナウンに触手を伸ばす企業は?

 アパレルの名門レナウンが窮地に陥っている。2月25日に発表された2019年12月期決算は、営業利益が約79億円の赤字となり、2期連続の赤字に転落した。「中国のグループ会社から売掛金53億円が回収できなかったことが響いた」(大手信用情報機関)もので、決算短信に「継続企業の前提に関する注記」が付いた。経営の先行きに黄色信号が点灯した格好で、市場では「経営の立て直しに向け、レナウンの買収話が囁かれ始めた」(大手証券幹部)という。
 レナウンは04年に紳士アパレル大手の「ダーバン」と経営統合。さらに10年以降は中国の繊維大手の山東如意科技集団有限公司が第三者割当による新株発行で筆頭株主となり、山東如意グループ入りしている。今回の売掛金回収延滞は、この山東如意グループの恒成国際発展有限公司との取引で発生したもので、「米中貿易摩擦の影響などから(恒成国際発展の)資金繰りが厳しいため支払いが難しかった」(大手信用情報機関)とされる。最終的に恒成国際発展有限公司から売掛金を回収するのは難しいとみられている。
 さらに、昨年10月からの消費税増税や暖冬などの影響で重衣料が苦戦、百貨店向け販売も低調なことから、赤字から脱却するのは容易なことではない。特に、「中国経済については新型コロナウイルスの拡大により影響が本格化するのはこれから」(大手証券幹部)といえ、中国資本の傘下に入っているレナウンの先行きを危ぶむ声が絶えない。
 そうした中、投資ファンドや有力企業が名門レナウンの買収に動くのではないかと噂されている。「赤字ながらレナウンの自己資本比率は47.4%と高水準を維持しており、親会社である山東如意科技集団との関係は変わらない」とされるが、現預金は昨年2月の約90億円から12月末には約53億円にまで減少している。「レナウンは山東如意科技集団と組むことで、14億人の人口を持つ中国市場へ足がかりを築く戦略であったが、計画通りの成果が上げられないでいる。そこに今回の新型コロナショックが重なる中、資本関係を解消する可能性は十分ある」(市場関係者)とされる。
 レナウンは中国資本に代わる新たなパートナーを探す必要に迫られるわけだが、「レナウンブランド」は魅力に富む。市場では「勝ち組のニトリが業務領域の多角化からレナウンに触手を伸ばすのではないか」(同)との見方も浮上している。名門レナウンから当分目が離せない。


 前途多難の関電の新体制、大阪市が人事に介入も

 金銭の不正受領問題で揺れる関西電力。岩根茂樹社長が退任、後任には副社長だった森本学氏が就くことが決まった。森本新社長は経済産業省が出した業務改善命令を受けて、「強い覚悟を持って改革を行う」と語ったが、ここにきて原発反対を訴える筆頭株主の大阪市が人事に介入する姿勢を示してきた。
 関電は第3者委が調査報告書に企業統治を確実にするため提言した会長職への外部人材の起用を検討している。経団連前会長の榊原定征氏が有力視されているが「経団連で原発再稼働を容認してきた榊原氏を推す声に維新の会の松井一郎氏が率いる大阪市が反対する可能性もある」(関電幹部)と警戒する。
 また、原発の立地自治体では厳しい声が根強い。関電は当面、高浜原発(福井県高浜町)1号機の早ければ6月の再稼働を目指しているが、福井県の杉本達治知事は「関電との信頼関係を損なっている状態だ。まず県民の信頼を回復する努力をしっかりしていただき、それからそういった(地元同意の)話に入っていくんだと思う」と距離を置いた。
 さらに、東日本大震災後に減額していた役員報酬の一部を退任後に補填していた問題も発覚。松井市長は「本当にとんでもない話だ。経営陣の中に、我々の思いを持つ人を提案していきたい」と人事介入も辞さない。「うまく対応しないと株主代表訴訟などで大阪市の言いなりになってしまう」(前出関電幹部)。森本新体制は発足当初から波乱含みだ。


 製造業の復権が難しい経団連の新しい顔ぶれ

 経団連は、6月2日の定時総会で選任する新任の副会長と審議員会(会長の諮問機関)の副議長の人事を内定した。新任副会長にはみずほフィナンシャルグループの佐藤康博会長、三井不動産の菰田正信社長、三井住友フィナンシャルグループの太田純社長、三井物産の安永竜夫社長の四氏を起用する。
 特筆すべきは、昨年副社長に就いた三菱UFJフィナンシャル・グループの平野信行会長に加え、3メガバンクグループ首脳が副会長にそろい踏みする点だ。「経済の血液」を担う金融は黒子に徹し、産業界と一定の距離を置くべきとの考え方は経団連会員には根強く、3メガ首脳がそろって副会長に座るのは異例中の異例に映る。
 経団連の中西宏明会長(日立製作所会長)としては、自ら提唱した先端技術で社会課題の解決を目指す「ソサエティー5.0」の推進に向け、金融とITを融合したフィンティックで産業界にシナジーを起こしたいとの思いがにじむ。しかし、新任の四副会長はすべて非製造業出身であり、新体制後も18人の副会長の1/3にすぎない6人が製造業出身という構成は、経団連での製造業の発言力が増すとも思えない。
 半面、審議員会の副議長人事には注目すべき点もある。パナソニックの津賀一宏社長とソニーの吉田憲一郎社長という現役の社長が内定。両社は電機業界を代表して副会長を送り出してきたT経団連銘柄Uだ。近年は業績悪化で社内改革を優先し、経団連活動に距離を置いてきた。それが審議員会副議長とはいえ同業の中西会長が両氏を起用した狙いには、次の副会長狙いでかつて大きな勢力を誇った電機業界のT先祖返りUにより「製造業復権」に懸ける意図も見え隠れする。


 敗戦処理を託された東京商品取引所の新社長

 日本取引所グループは、子会社で原油などの商品先物取引を手掛ける東京商品取引所の次期社長に、経済産業省所管の経済産業研究所上席研究員の石崎隆氏を充てる人事を決めた。6月の東京商品取引所の株主総会を経て正式就任する。現社長の浜田隆道氏は退任する。
 この人事について経済産業省の幹部は、「石崎氏は経産省で商品先物行政に携わった経験があることから白羽の矢が立ったのだろうが、敗戦処理の感は否めない」と指摘する。というのも東京商品取引所は日本取引所グループとの統合により7月から証券と商品を一体で取り扱う「総合取引所」へと脱皮するが、金先物や白金、貴金属やゴムなど商品先物の大半は同じ日本取引所グループ傘下の大阪証券取引所に移管され、東京商品取引所には原油やガソリンといったエネルギー関連商品のみが残る形になるためだ。
「東京商品取引所の主務官庁は経産省と農林水産省。日本取引所グループの主務官庁は金融庁で、両社が単純合併すると、東京商品取引所は日本取引所グループに吸収され、経産省は天下り先を失いかねなかった。このため苦肉の策として東京商品取引所に原油などエネルギー関連商品を残した」(経産省幹部)
 この統合アイデアを出したのは現社長の浜田氏で、東京商品取引所は残る原油や石油製品などに加え、電力先物を上場させることで「総合エネルギー市場」へ脱皮する構想を描いている。果たして新社長となる石崎氏はこのまま「敗戦処理」に突き進むのか、それとも新たな「総合エネルギー市場」へと飛躍できるのか、まさに正念場を迎える。


 グノシーが虚偽広告配信、罪深い「懲りないやつら」

 スマートフォン向けニュース配信大手の「Gunosy(グノシー)」の完全子会社が、架空のクチコミや無断で借用した写真を使って化粧品や育毛剤の虚偽の広告を制作・配信していたことが明るみになった。この手の話は後を絶たないが、れっきとした東証1部上場企業の「犯罪」はネットメディアの信用をますます貶めただけに、罪は深い。
 100%子会社の「digwell(ディグウェル)」の手口は、こうだ。ダイエットのサプリメントの場合、アルバイトのライターたちが、ネット上に拡散している写真を組み合わせて「ビフォーアフター」の画像を作り、「ダイエットに成功した」と効能を強調するウソのコメント(クチコミ)を書き込んでいた。シミ取り美容液の場合は、匿名の「シミに悩む40代の女性」が、シミのない人物の写真を掲示して「シミが消えた」と喜ぶ架空のストーリーを作っていた。そうした虚偽広告は、数十種類にも及ぶという。
 問題は、それだけにとどまらない。一連の虚偽広告は、グノシーのアドサーバーを通じて配信されたため、信用力の高い通信社や新聞社をはじめ生活情報サイトなど多くのサイトに幅広く掲載されてしまったのだ。グノシーは、「日本インタラクティブ広告協会(JIAA)」に「社内のガイドラインに抵触していた」と報告したが、肥満やシミに悩んでいる人たちを弄んだことは間違いない。
 売り上げを伸ばすためなら、罪悪感もなく、デタラメな情報を流す実態がまたも明らかになってしまった。ネットメディアを運営する「懲りないやつら」には、モラルや自制心のかけらもないようだ。


 新型コロナウイルスで加速する医療のIT化

 新型コロナウイルスで混乱が続く医療現場だが、この騒動をきっかけに新しい変化も起こり始めている。患者と直接接触しないですむオンライン診療やオンライン服薬指導を行う医療機関が増えているのだ。
 オンラインによる遠隔医療はすでに一部で実施されていたが、一般の医療機関ではなかなか普及しなかった。その理由の一つがオンライン診療や服薬指導を行える条件が厳しいことだ。初診は必ず対面診療が必要で、病状が安定していて、同じ薬を継続して飲んでいること。また、薬局で処方薬をもらう場合も、患者と対面して服薬指導を行う必要があったからだ。
 ところが、新型コロナ対策で、厚生労働省は急遽条件を緩め、オンライン診療や服薬指導などがやりやすくなった。これまでは薬を変更する場合には対面が必要だったが、オンライン診療でも可能になった。患者をオンラインで診療した医師が、処方箋をファクスなどで薬局に送り、薬局はオンラインで患者に服薬指導を行える。自宅から出られない患者のために、薬局が患者の自宅に薬を届けるサービスも可能だ。
 発生源とされる中国では、多くの患者をさばくために、AIを使った新型コロナ肺炎の診断が行われている。新型コロナ肺炎は、他の細菌性肺炎やインフルエンザによる肺炎と違い、症状がなくてもCT画像に白い影が広範囲に出る。この特徴を生かして、AIにCT画像を読み取らせて診断するという仕組みだ。
 日本でも、新型コロナを機に、AIやITを診療や診断に活用する動きにより拍車がかかるかもしれない。


 金正恩体制が揺らぎ、予断許さぬ朝鮮半島情勢

 北朝鮮で今後、大きな異変が生ずる可能性が高まっている。1つには金正恩体制が揺らいでいることと、もう1つは新型コロナウイルスが国内に浸透し、制御できないほどの混乱を招きつつあるからだ。
 金正恩の健康はかねてより問題ありとされてきたが、1月にはフランスの医師団が極秘で彼のもとを訪問し、治療にあたったといわれる。36歳ながら、135キログラムの体重で、そのため腹部の脂肪吸引手術を受けたが、術後は良くないとされている。3人の子供はまだ10歳以下で、そのため、実妹の金与正が権力を継承しつつある。彼女は現在、北朝鮮労働党組織指導部の第1副部長の肩書で全面に出始めたが、その部長職にあった李万建は汚職容疑ですでに解任されているので、今や、名実ともに「兄妹政権」になっている。
 しかしこの体制が軍部に支持されているかは予断を許さない。というのも、国民のみならず軍部にも多数のコロナ肺炎患者が出ており、その対処を誤ると軍首脳部がクーデターに打って出る可能性が高いのだ。
 中国での発生を受けて直ちに国境を閉めた北朝鮮だが、それにより中国からの消費財と食料の輸入が滞り、経済制裁の下で、苦しい生活を送る住民たちの不満の高まりが避けがたいところまできている。
 北朝鮮にとって最後の望みは韓国の文政権からの援助だ。文在寅大統領に親書を送り連帯のメッセージを出して、食料と薬品の援助を暗に匂わせたようだが、当の韓国も感染者が急増しており、また、近く経済破綻も起きるとの予想もあることから、今後の朝鮮半島情勢は予断を許さないものになってきている。


 健康保険制度維持に難問、2億円超の高額治療薬承認

 新型コロナウイルス騒ぎの最中の2月下旬、厚生労働省の薬事・食品衛生審議会がノバルティスファーマの遺伝子療法薬「ゾルゲンスマ」の承認を了承した。対象は2歳未満の「脊髄性筋委縮症」。この疾患はSMN1遺伝子が機能しないため筋力が低下する希少疾患で、生後6カ月までに発症すると、2歳までに死亡するという超難病だ。
 ゾルゲンスマはウイルスベクターと呼ぶ運び屋を使い、正常な遺伝子を投与することで治療する遺伝子治療だが、注目されるのはその薬価だ。すでに承認されているアメリカでは212万5000ドル(約2億2500万円)の薬価がついている。日本で薬価が決まるのは5月頃になるが、2億円くらいになりそうだといわれている。
 高額薬価といえば、小野薬品工業の抗ガン剤「オブジーボ」が100ミリグラム入り1瓶で73万円の薬価がついた時、「年間3500万円になり、保険財政が破綻する」と大騒動になった。慌てた政府は強引に半値に下げさせ、さらに値下げさせて現在は17万円だ。その後、希少疾患の白血病治療の遺伝子改編CAR−T療法の「キムリア」が登場、薬価は3500万円に跳ね上がった。
 ただ、キムリアは患者の白血球をアメリカに送って遺伝子を改編するなど、作業時間がかかるため患者数が限られ、高額薬価問題は棚上げになっている。
 ところが、ゾルゲンスマの承認で、今後、登場する新薬は桁が1桁違う億単位になるとみられる。厚労省ではゾルゲンスマは希少疾患薬である上、既存のバイオジェン社の治療薬「スピンラザ」があり、使い分けされるだろうとしている。だが、ゾルゲンスマは単回(1回)投与で済むため、医療機関はゾルゲンスマを使いたがる可能性が高い。
 加えて、ゾルゲンスマ承認と同時に厚労省はノバルティスの「ラクスターナ」という網膜障害疾患治療薬を再生医療等製品として指定した。承認に向けた第3相治験を行うことを了承する意味で、来年には承認が予想される。
 このラクスターナは、遺伝子変異による網膜障害を引き起こし、失明に至る難病の遺伝子治療薬だ。すでに承認されているアメリカでは両眼の治療で1億円の薬価になっている超高額薬で、オブジーボどころではない。しかも今後、登場する新薬はほとんどが億円単位になるとみられている。
 このままでは、完治したら薬価を支払う成功報酬制にするか、別途、基金を創設して補助するなどの方法でも導入しない限り、現行健康保険制度は維持できなくなりそうだ。


 ムエタイでクラスター、国技から新型コロナ拡散

 タイの国技ムエタイの会場で新型コロナウイルスの小規模感染集団クラスターが発生し、伝統の格闘技を誇りとする国民の間で衝撃が広がっている。バンコクの会場内で感染した観客がウイルスを地元に持ち帰り、地方に拡散させる事態になっており、タイ政府はムエタイ会場を一時閉鎖する異例の措置を取った。
 ムエタイは13世紀には軍に取り入れられていたとされる歴史ある競技で、「タイ式キックボクシング」とも呼ばれて外国人観光客の人気スポットにもなっている。
 ムエタイを管理しているのは、タイ政治にも強い影響力を及ぼしている陸軍。担当する福利厚生局のラチット局長が3月6日に観戦したところ、10日後に陽性反応が出て、「陸軍幹部の感染者第1号」になった。ラチット局長はこの10日間に陸軍の会議に出席し、幹部と濃厚接触している。陸軍は将軍を含む軍人36人に自宅待機を指示するなど対応に追われた。
 ラチット局長が観戦した試合は東部チャチュンサオ県の幹部も観戦していた。幹部は翌7日に結婚式5カ所、寺の行事2カ所、葬式1カ所をはしご。8〜14日にも冠婚葬祭の行事に立て続けに出席し、15日に感染が判明した。あちこちでウイルスをばらまいた可能性があり、関係者を不安に陥れている。
 6日の試合で司会を務めた著名な俳優で歌手のマシュー・チャンタワニットさんも感染した。マシューさんの妻の人気歌手もその後、感染が確認。セレブ夫妻は子供2人を残して病院に隔離された。
 タイでは当初、感染者は微増にとどまっていたが、3月中旬から急増。多くがムエタイ観戦者とその濃厚接触者で、国技が感染拡大を助長した結果となっている。


 新型コロナの発生源を世界的権威が明言

 各国からの新型肺炎での損害賠償請求を恐れている中国の習近平主席だが、すでに感染源とみられる武漢のウイルス研究施設は取り壊され、その関係者300人余りも処分したとされる。その後、公式の場ではウイルスの発生源を突き止めるようにとの指示を出している。
 その一方で、ウイルス感染ルートを調べてきた各国の情報機関やウイルスの遺伝子情報の解析を進めている専門家たちからは、ほぼ、出処は武漢研究所のウイルスと認定されている。カナダのウィニペグから中国人の女性研究員によって持ち出されたコロナウイルスの原株は、武漢のウイルス研究所において生物化学兵器として開発する目的で、人工的にHIVのたんぱく質に似たものが挿入されたという。
 今、世界中で注目を集めているのが、イリノイ大学のフランシス・ボイル教授による説明だ。世界的権威で、生物兵器禁止条約の起草者でもある教授は、今回のウイルスは中国が開発した生物新兵器で、WHOのテドロス事務局長も知っているはずとしている。
 現在の生物兵器禁止条約は、その検証手段に欠けていたため、1994年に検証手段を導入するという議定書を作る決議を行っているが、その後、進展していない。条約には当然、中国、米国、日本も署名をしているが、こうした兵器を開発し、生物兵器戦を意図した国および国家元首に刑事責任を問うのはこの条約の下では難しい。だが、最近では国際刑事法裁判所の下で、国家元首による人道上の罪を問うことは可能となっている。今後の動きに注目だ。


 中国は泣きっ面に蜂? コロナの次は蝗害か

 武漢で発生したコロナ(トランプ大統領は「中国ウイルス」と命名)の大騒ぎの陰に隠れたが、中国の当局が深刻に懸念している別の災禍が蝗害である。蝗はイナゴのことだ。
 FAO(国連食糧農業機関)が東アフリカ(主にケニア、エチオピア、ソマリア)を襲っている昆虫被害に関して警告を出したのは1月だった。
 蝗、バッタ、ヨトウムシ(蝗の幼虫)の大群は偏西風に乗ってすでにインド、パキスタンを襲っている。この農地を食い荒らせば、彼らは次の目標を狙う。予測される針路は中国国境と接する新彊ウイグル自治区という見方もあるが、中国当局はパキスタンからチベット高原に入り、雲南省、青海省の農業地帯におよぶ可能性が1番強いとみているようだ。
 パール・バックの『大地』にも描かれた蝗の大群は農作物を食い尽くし、農民は餓死、逃亡、田畑は荒れ放題となってしまう。間違いなく飢饉が襲う。
 中国のGDPに対する農業の貢献度は7.2%、農業人口は6億人前後。51%の都市化が進んだとはいえ、農繁期になれば都会の工場へ出ていた出稼ぎ労働者らが大挙して故郷へ帰る。
 昨年から中国ではアフリカ豚コレラで四億四千万頭の豚を殺処分したため豚肉の値段が急騰し続け、加えてエボラ出血熱の流行があった。そして昨師走からの新型コロナウイルス感染の大流行は全世界を恐怖に陥れている。
 まさに泣きっ面に蜂。蝗害が続けてやってくる気配が濃厚となった。






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