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日本の将来がかかる安倍外交のありようが問われ、一連の中東外交にも注目が集まる。写真は19年6月の安倍・ハメネイ会談(首相官邸HPより)


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東郷和彦 1945年1月10日生まれ。68年東京大学卒業、同年外務省入省。98年条約局長、99年欧亜局長、2001年在オランダ大使等歴任。現職は京都産業大学教授、世界問題研究所長、静岡県対外関係補佐官。
北方領土交渉の進め方に小手先の議論は通じない(別海町)

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■特別寄稿───東郷和彦(京都産業大学教授・世界問題研究所長)


安倍政権下の日本外交の分析と
日ロ平和条約締結問題への提言

■現下の国際情勢は米中関係に翻弄されている。両国の貿易戦争はもちろん、イラン問題など然り。この中で安倍政権は山積する外交課題にどのように取り組んでいけばよいのか――

米中対立への
日本の対応


 激動する世界政治の対立の最大の根源は、衆目の一致するところ、現状維持の大国・米国と、現状変更を目指す大国・中国との激突にある。冷戦の終了時(1989年)には、経済・政治・軍事・文化すべての面で勝利者となった米国は、イスラムからの政治的な挑戦(9.11同時多発テロ=2001年9月11日)と、国内金融市場からの危機(リーマンショック=08年)という2回の危機を経てその世界的指導力に陰りを見せ始めた。
 他方、中国は、?小平の改革開放(1978年)から一挙に力をつけ始め、江沢民政権を経て、胡錦濤政権下で08年には韜光養晦(天安門事件で国際社会から批判されていた中国が、国力を蓄えるまで才能、野心を隠す政策)をやめ、10年にはGDP世界第2位に浮上した。第18回共産党大会(12年)で党総書記に選出された習近平は「中華民族の偉大なる復興」を打ち出し、「一帯一路」、「中国製造25」などの野心的な政策を提示。第19回党大会(17年)では「富強・民主・文明・和諧・美麗の社会主義現代化強国」を標語に、2049年までに米国に匹敵する大国になるとの目標を鮮明にし、18年の全人代では期限のない国家主席の地位に就き、自らの権威政治をもって国を率いる姿勢を鮮明にした。
 米国オバマ政権(09年1月〜17年1月)を17年1月に引き継いだトランプ政権は、さまざまな面で世界との不協和音を撒き散らしながらも、対中国政策では、与野党一致して中国への強い警戒感を露わにした。
 特に従来の地政学的対立に加え、第4次産業革命の下、人工知能(AI)、ロボット、5G、大量データ、サイバー・宇宙戦争など、デジタル技術の覇者が世界の覇権を握るという見方が急増している。デジタル覇権の世界ではすでに、相互分離(mutual decoupling)によるアメリカ指導下のGAFA(Google・Amazon・Facebook・Apple)と中国指導下のBATH(Baidu=百度、バイドゥ、Alibaba=阿里巴巴集団、アリババ、Tencent=騰訊、テンセント、Huawei=華為技術、ファーウェイの総称)との間で世界は二分化しているとの見方もある。
 こういう激変の時代に安倍政権は12年の末に第二次内閣として復権した。対米関係では直に積年の主張だった「安保条約五条に基づくアメリカの対日防衛義務」と「憲法9条の解釈としての集団的自衛権の不行使」の非対称性の解消の問題に着手、「平和安保法制」(16年施行)における「危機存立事態」で「自衛を必要とするのと同じ危機が日本について発生するときは集団的自衛権を行使しうる」という解決策を見いだした。
 中国との間では、前民主党政権が行った尖閣諸島のいわゆる「国有化」によって外交関係が設定された1972年以来最悪の事態に陥っていた状況では、まずは、国家安全保障局の設立、「積極的平和主義」を基礎とする安全保障戦略、防衛予算の拡大などの「抑止」の政策をとり、徐々に「対話」政策に移行。習近平主席との最初の会談(14年)、「一帯一路」についての接点模索(17年)、安倍晋三総理の公式訪問(18年)、習近平主席の公式訪問(20年予定)と対話の水準を上げてきている。
 日本にとって、米国は大切な同盟国であるが、中国はまた、共存していかざるを得ない大切な隣国である。山積する問題はもちろんあるが、安倍内閣の米中との間合いのとり方には、高い評価があってしかるべきだと思う。

他の友好国との
関係の強化


 日本としての米中に対する間合いが決まれば、次に考えなければならない課題は、戦略的な重要性を有するその他の国との友好関係の強化とそれによる外交力の向上である。
 日本にとっての戦略的な友好国たりうる国として、地政学的、地経学的な位置から考えれば、まずは北東アジアにおける韓国とロシアが挙げられる。北朝鮮は次期尚早である。豪州・主要ASEAN・インドは重要であるが北東アジアの外縁に位置すると考えたほうがよいと思う。
 韓国について言えば、小渕・金大中会談(1998年)から『冬のソナタ』ブーム(03〜04年)の頃に、両国が戦後和解を真に実現できたという見方もあった。しかしそれは幻想でしかなく、徴用工問題に対する韓国最高裁判所の小法廷判決(12年)が、文在寅政権の下で大法廷判決によって確定判決になった時(18年)から両国関係は、1965年の正常化以降最悪と言える状況となった。
 19年11月に韓国政府がGSOMIA(軍事情報包括保護協定)の廃棄を当面撤回し、12月24日の安倍・文在寅の首脳会談をもって極めて薄い基礎の下にあるとはいえ、多少なりとも対話に基づく関係改善の兆しが見えてきている。日本外交の戦略的方向性に沿っていると言えよう。
 日本外交にとっての喫緊の重要性を持つ地域は東アジアに限定されるわけでもない。特に日本の一次エネルギー供給の39%を占める石油の87%をいまだに依存している中東(『エネルギー白書2019』)の重要性は看過できない。トランプ政権下で米国とイランとの緊張が激化しているが、日本は「同盟国アメリカと友好国イラン」という立場を堅持していて揺るぎがない。安倍総理のイラン訪問(19年6月)、ロウハニ大統領の訪日と湾岸への自衛隊の独自出動決定(同年12月)、サウジアラビアを核とする総理の中東訪問(20年1月)とつながるバランス感覚は見事というほかはない。
(以下、本誌をご覧ください)
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