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逃亡した先で熱弁をふるうのだが……(写真/時事)


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弘中惇一郎弁護士の胸中も複雑だろう


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■国際的逃亡劇


ゴーン元会長が逃げ切れないと見た
問われていた罪の数々は何だったか

■年末年始の話題をさらった「ゴーン逃亡劇」は、文字通り絵になる活劇だった。だが、そもそもゴーン被告は、日本の司法を批判するが肝心の問われた犯罪への反証、弁明がない──

 日産自動車の元会長、カルロス・ゴーンは昨年12月29日午後2時半、帽子を深くかぶって東京・麻布の自宅を出た。そして、次に姿を見せたのは第2の郷里レバノンだった。大晦日の31日、世界中のメディアが、公判を控えたゴーンの逃亡を一斉に報道し、全世界を驚愕に陥れた。ハリウッド映画を彷彿とさせるような脱出劇に世界はのけぞり、脱出の経緯も詳細に報道されている。逃亡支援グループが20回以上も日本を訪問し、10カ所以上の空港を下見した末に発見した「日本の盲点」が問われている。
              ◇
検察を悪者に仕立てた
ゴーン流に一定の効果


 ゴーンは1月8日にレバノンで記者会見し、2時間半にわたって日本の検察を断罪する熱弁をふるった。「日本のアナクロ的な人質司法に抗議したい。検察は私を捕らえて、ただ『自白しろ、自白しろ、そうすれば終わる』としか言わなかった」「有罪率が99.4%という日本の異常な司法制度のもとに置かれた」等々。自身の正当性を訴えるため日本の検察を悪者に仕立てる。検察は攻守ところを変えて守勢に回ることになった。もとより口下手で内弁慶な検察の情報発信能力では、海外メディアを味方につけるゴーンにかなわない。
 海外脱出という前代未聞の手口の鮮やかさに注目が集まるが、これによって浮き彫りになったのは、「お人よし国家」日本のお粗末さだった。
 真っ先に間抜けぶりをさらしたのは、東京地裁と、そして「無罪請負人」「レジェンド」と呼ばれた弘中惇一郎弁護士らであった。東京地検特捜部は一昨年11月、有価証券報告書の役員報酬を過少記載した金融商品取引法違反容疑で逮捕したのを皮切りに、中東のオマーンの販売代理店を経由してゴーン自身に不正に資金が還流していた会社法違反(特別背任)などで合計4回逮捕し、ゴーンはトータル130日間勾留された末に、昨年4月にやっと保釈された。検察はこの保釈に対して「証拠隠滅や逃亡の恐れがある」と強硬に反対し、東京地裁の島田一裁判官は「証拠隠滅を疑う合理的な理由がある」と検察の言い分を一定程度認めつつも、しかし、保釈を認めた。
 地裁の島田判事が保釈を容認した背景の1つは、外国人の著名経営者を長期間勾留することに対して欧米から強い人権侵害批判がなされたことがあっただろう。加えて弘中弁護士や高野隆弁護士が、保釈後のゴーン居宅の出入り口に監視カメラをつけたり携帯電話の通信機能を制限したりする条件を提示し、裁判所も刑事弁護の第一人者である彼らの申し出に渡りに船とばかり飛び乗った。

ゴーン弁護団の
「お人よし」ぶり


 確かに、江戸時代の「お白洲」的な遺風が強く残る刑事司法の世界は後進的である。特捜検察が証拠を改竄してまで厚労省の村木厚子局長を有罪に持ち込もうとした記憶も新しい。拘束して無理やり自白を強要する「人質司法」は一向に改まらない。
 だからこそ裁判所も弁護人も良かれと思って保釈したのだろうが、これがすっかり仇になった。公判を控えた著名経営者がまさか逃亡しまいという「性善説」に立ったところ、ゴーンはそれを平気で裏切ったのだ。
 弘中も高野も顔に泥を塗られたのに、「この密出国を『暴挙』『裏切り』『犯罪』と全否定できない」(高野のブログ)といまだに言っているところが、まさに「お人よし」である。皮肉なことだが、結果的に「逃亡の恐れがある」と保釈に反対していた検察が正しかったのだ。
 東京地検はゴーン逃亡後、夫人のキャロル・ナハスについて偽証容疑で逮捕状を取り、リーク情報ならばすぐに飛びつく産経新聞社会部記者を使って「事件関係者とスマホのアプリで隠語を使って口裏合わせをしていた」とか「ゴーンに有利な証言をするように圧力を依頼していた」とキャロルの悪ぶりの印象操作に躍起だが、だったら先に逮捕しておけばよかった。今となっては「後の祭り」である。公判を前に刑事被告人に海外逃亡を図られるとあっては、特捜部長の森本宏の大失態である。
 今年は東京五輪があるのに、X線検査もなしで密出国できることが露見し、日本の警備がいかに杜撰かを見せつけた。これには世界中のテロリストも仰天だろう。それにもかかわらず、安倍晋三首相は迷惑顔で、財界人との会食で「日産の社内で解決してほしかった」と漏らすところが情けない。国家の威信を傷つけられ、主権が侵害されているのだから、本来は声を大にして怒るべきことなのだ。憲法を改正して日本を一人前の国家にしようと、格好だけはタカ派の安倍自身が平和ボケしていることを図らずも世界中に教えた。
「お人よし国家 日本」の隙穴ばかりが露呈した今回のゴーン逃亡劇だが、かといってゴーンに正義があるわけではない。

ゴーン不正調査
社内調査の経緯


 あれこれ声高に弁解しているが、ゴーンが逃亡したのは裁判で争っても有罪は避けられないと悟ったからである。日産はゴーン逃亡後の1月16日、東証に提出した改善状況報告書の中で彼の悪事を詳細に描き出した。それによると、2009〜17年度の9年間、日産が公表していたゴーンの報酬は総額87億円だったが、実際は210億円だった。日産は10年、オランダにベンチャーキャピタル「ジーアキャピタル」を設立したが、資金の拠出先はベンチャー企業ではなく、リオデジャネイロやベイルートに取得したゴーンの豪邸だった。
 ルノーと日産の合弁会社「RNBV」からは、ベルサイユ宮殿を使った結婚パーティー、リオのカーニバルやカンヌ映画祭のゲスト招待、パリのマルモッタン美術館の夕食会、カルティエの贈答品の購入など、ゴーンの個人的な贅沢を楽しむ支出がなされていた。家族を乗せるコーポレートジェット機の私用は6000万ドルにもなった。
 日産はこの調査に米大手法律事務所レイサム&ワトキンスを起用し、電子メールなど24万5000通を調べ、70人以上にインタビューを行っている。したがって、ゴーンがいかに「捏造」と強弁したところで理非は明らかである。彼に勝ち目はない。
 ゴーンは記者会見で「日本政府を巻き込んだ陰謀があった」と主張し、謀議を働いた6人の名前を挙げた。西川廣人元社長、今津英敏元監査役、川口均元副社長、ハリ・ナダ専務執行役員、大沼敏明秘書室長、それに経産省出身の豊田正和社外取締役である。
 だが、名指しされた豊田は、つめかけた記者たちに開口一番「私が経産省出身だから、そう言っているんでしょうが、まったく茶番ですね。名誉棄損で訴えたいくらいですよ」と怒り心頭だった。その上で「自身の不正をカムフラージュするために言っているんでしょう」とゴーンの本心を推測した。
 そもそもゴーンの不正調査は、ジーア社が設立当初から「投資先が曖昧」「活動実態が不透明」と社内で悪評が絶えなかったことにある。新日本監査法人が11年以降、3回もジーア社の実態を問いただしていたが、同社は非連結会社として設立されたため、日産財務部も定かにわからない。役員らでつくる内部統制委員会でも「おかしいんじゃないか」という声が上がり、調査を試みたが、ゴーンの側近のグレッグ・ケリー代表取締役が「なんの問題もない」と立ちはだかる。
 結局、今津が14年に監査役になると、監査役室主導で社内調査することになった。今津はオランダまで調べに出かけたが、ペーパーカンパニーの下にペーパーカンパニーが連なる複雑な構造のため、徒労に終わった。「何かおかしいことをしているとは思いましたが、何をやっているのかがわからなかった」と日産幹部。意図的に見えにくくしているジーア社の状態を知って、今津はゴーンに疑念を持つようになったが、さりとて確証がない。
 暗礁に乗り上げた調査に突然、突破口が開けるのは一八年春、マレーシア出身の法務担当ハリ・ナダが今津に内部告発したことだった。
(敬称略 以下、本誌をご覧ください)
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