巻頭言
池 東旭の


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池 東旭
(ソウル在住/
国際ジャーナリスト)





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永遠なる覇権も
同盟もない

──トランプ再選?
 血なまぐさい年明けだ。新年早々、北朝鮮は米朝合意を破棄、核実験と弾道ミサイル発射再開を宣言した。1月3日、イランの革命防衛隊司令官・ソレイマニがバクダッド空港で米軍の無人機による攻撃で殺害された。イランは報復を宣言した。事実上の宣戦布告だ。世界至る所で米国に対する同時多発テロが始まる。11月3日の大統領選挙を控え、弾劾に直面するトランプは苦境に立たされた。
 少し前まで、トランプ再選は楽観視された。好調な米国経済、30%を超す不動の支持層、それに共和党が過半数を占める上院で弾劾否決は確実だった。だが2016年大統領選挙でもヒラリー候補が終盤まで優勢だったが落選した。ヒラリーの得票はトランプを300万票も上回ったが、全国50州の選挙人団投票で苦杯をなめた。今、トランプは中東や北朝鮮外交で失点続きだ。米国史上、弾劾される3人目の大統領の屈辱を晴らし、再選を確実にするためにトランプは、ソレイマニ殺害を直々命令した。オバマ大統領もオサマ・ビン・ラディン暗殺で支持率が急騰した先例がある。戦争となれば国民は否応なく大統領を支持する。だが国内世論は割れた。同盟国も懸念する。ロシア、中国はイラン支持だ。トランプは際限のないテロと報復の泥沼に踏み込んだ。

──宴のあとの日本
 パクス・アメリカーナ(米国の覇権による国際秩序)は崩壊した。EU離脱後の英国とヨーロッパの混乱、香港のデモ、リビア内戦へのトルコ参戦等々、テロとデモが野放しだ。令和・日本も安穏ではない。安倍政権も長期執権の疲労が鮮明だ。中東や北朝鮮リスクだけではない。巨大天災が起きれば東京オリンピックは吹っ飛ぶ。1940年東京五輪は戦争で中止、80年モスクワ大会もソ連のアフガン侵攻で西側諸国がボイコットした片肺大会になった。五輪のお祭りが終わっても、宴の後始末に大変だ。高齢化・少子化で人口が縮む日本列島は国際競争で後れを取っている。1人当たりGDPで日本は香港、シンガポールに抜かれた。しかし復活・再生の道筋が見えない。
 朝鮮半島南北も激動の真っ只中だ。ソウル都心で連日「文大統領弾劾、下野」を叫ぶデモは鎮静の兆しが見えない。4月15日総選挙で有権者は文在寅政権の従北・反企業路線を審判する。文政権は与党に有利な選挙法を強行採決した。だが景気悪化、対北宥和路線の挫折、相次ぐ外交失敗が逆風だ。しかし野党も朴槿恵弾劾の後遺症で敵前分裂した。総選挙で与党が過半数を確保すれば文政権の反日離米は加速する。

──空洞化する米韓同盟
 米韓同盟は空洞化した。米国は駐韓米軍分担金を今の年間10億ドルから50億ドルへの増額を要求して交渉は膠着状態だ。トランプは海外駐屯米軍の費用対効用を見直す。韓国で駐韓米軍不要論が台頭した。67年たった米韓軍事同盟はもはや賞味期限だ。韓国人は「米国の核の傘から抜け、中国の傘の下に移るのが得策」と主張するとか、「核を持つ北と経済で強い南が統一すれば日本を圧倒する強国になれる」など幻想を抱く。
 だが、当の北の金王朝も危機的状況だ。国連の経済制裁で北の経済は窒息寸前。北が戦力を誇示しながら、自力更生を絶叫するのはその反証だ。金正恩も米軍の暗殺計画(斬首作戦)に怯えている。イランと北朝鮮リスクが高まる中、米韓同盟消滅、駐韓米軍撤収が公然と語られている。60年に締結された日米同盟は60年経過した。日英同盟は21年、日独伊3国同盟は5年しか続かなかった。日本も日米安保体制の根本的見直しに迫られる。
 永遠なる覇権、同盟などはない。予兆なしに、ある日突然消滅する。
 Everything was forever until it was no more(すべては永遠だった、それがなくなるまでは……)。=敬称略=
(ソウル在住/国際ジャーナリスト)


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