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日本商工会議所の三村明夫会頭


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連合の神津里季生会長


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■社会保障


迷走する全世代型社会保障検討会議
“改革”の実態はまたも“弱い者いじめ”

■少子高齢化が進む中で求められる年金、医療、介護の財政基盤強化とシステム改革を強調する安倍首相だが、持続可能な社会保障の確立には程遠い"改革"になりそうだ──

 安倍晋三首相の肝煎りで発足した全世代型社会保障検討会議が迷走している。この会議を通して政府は年金、医療、介護の財政基盤強化を目指すが、「入るを量りて出ずるを制する」方針に反し、在職老齢年金制度改革では高所得者の給付拡大策を提案。さすがにこれは与野党の反撃にあい頓挫した。加入者拡大を目指す厚生年金の適用対象企業拡大では、中小企業の代弁者の商工会議所の猛反発を受けている。迷走の原因は100年安心と持続可能な社会保障の確立という大義名分の裏でうごめく“弱い者いじめ”。消費増税に続いてデフレ要因満載の改革になりそうだ。
              ◇

建前は高齢者の
就労意欲促進だが


 改革案づくりを担う全世代型社会保障検討会議(議長・安倍晋三首相)を取り巻く環境は厳しい。少子高齢化が進む中で求められるのは年金、医療、介護の財政基盤の強化。一方で労働力不足に備えたインセンティブの付与や、団塊世代が75歳の後期高齢者入りする2022年を見据えた財政的な展望を示す必要もある。何よりも社会保障制度を安定させるための不可欠の条件は経済の安定的な成長である。
 9月2日に開かれた第1回会議の冒頭で安倍首相は、「全世代型社会保障への改革は、最大のチャレンジであります。少子高齢化が急速に進む中で、これまでの社会保障システムの改善にとどまることなく、システム自体の改革を進めていくことが不可欠です」と改革への意欲を表明した。
 これまでの社会保障改革はどちらかといえば部分的な手直し、悪くいえば弥縫策にとどまってきた。これに対して「最大のチャレンジ」は「改善」ではなく「改革」と力を込める首相。だが、これまでの議論をみるかぎり、改革の実態は財政基盤の強化という名の“弱者いじめ”に見えてくる。
 それを象徴するのが「在職老齢年金制度」の見直し。日本の雇用制度では60歳が1次定年、64歳まで雇用延長され、65歳で大定年を迎えるのが一般的。これに合わせて年金の給付も60歳から基礎年金、65歳から厚生年金の給付が始まる。
 こうした中で定年後も働き続けている人がいる。この人たちを対象にしているのがこの制度だ。一言でいえば在職中の年金を一定の賃金を超えた分カットする制度だ。
 6月に閣議決定した「骨太の方針2019」では、「就労意欲を阻害しない観点から、将来的な制度の廃止も展望しつつ、速やかに制度の見直しを行う」との方針が示されていた。
 これを受けて厚生労働省は年金カットの基準となる賃金水準を当初、65歳以上の場合、現行の47万円を62万円に引き上げる案を提案した。対象者(2018年度末現在)は約41万人(在職受給者の約17%)、これに伴う年金の支給停止額は約4100億円にのぼる。これを62万円に引き上げると対象者は23万人(同9%)となり、支給停止額は1900億円に減少する。つまり年金財政は2200億円の負担増となる。
 在職老齢年金制度の基準緩和と高齢者の就労意欲の関係については、はっきりとした因果関係が確認されているわけではない。制度の対象となる高齢者は比較的恵まれている人で、年金受給者全体の1%程度にすぎない。その割に基準緩和に伴なう財政負担は大きくなる。
 厚労省は、最終的に65歳以上は現行基準を維持、60〜64歳については28万円を47万円に引き上げることで収束を図ろうとしている。とはいえ、この見直しは「入るを量って出るを制する」という改革理念に反する。そればかりか、給付が増える分をどこかで補填しない限り、年金財政は悪化の一途をたどる。そこで登場するのが厚生年金の加入者拡大策である。

厚生年金加入を
「従業員50人超」に


 厚労省は8月、5年に1回行われる財政検証の結果を公表した。それによると年金財政は出生率の低迷、平均余命の伸長、物価や経済成長率の低迷といった要因に左右され、長期的には悪化の一途をたどるとの見通しが示された。これを受けて財政基盤強化に向けた対策がいくつか示されている。その中の1つが厚生年金加入者の拡大策である。現行では「従業員501人以上」が最低要件だが、これを段階的に引き下げ最終的には「50人超」に引き下げる案が有力だ。
 50人超の企業の従業員で (1) 週20時間以上 (2) 月額賃金が8.8万円(年収106万円)以上 (3) 勤務期間1年以上に該当する従業員を強制的に厚生年金に加入させる。これによって加入者が新たに125万〜325万人増える。さらに賃金基準を5.8万円に下げれば、加入対象は1050万人に拡大する。
 国民皆年金実現のためにはありうる選択肢だろう。問題は対象がいずれもパートやアルバイトなど低所得者であることだ。厚生年金の保険料は企業と従業員が折半することになっており、加入者基準を引き下げることによって中小企業や零細企業と、そこで働く低所得者が保険料を負担することになる。
 日本商工会議所の三村明夫会頭(写真上)は11月21日に開かれた検討会議で「慎重に検討する必要がる」と加入者拡大にクギを指した。同氏は過去10年を振り返りながら「この間、社会保険料は26.4%増えているのに対して賃金は3.4%しか増えていない」と、保険料負担と給与の伸びのアンバランスを指摘している。
 これに対して連合の神津里季生会長(写真下)は「雇用形態の違いや企業規模の大小によって社会保険への適用の有無が異なることは、働く者にとって不合理である」と加入者拡大に理解を示した。
 大企業の労働組合を代表する神津氏、中小・零細とはいえ経営者を代表する三村氏、労使の主張の違いは日本の社会保険制度の将来に影を落とす。国民皆年金というT理想Uの裏で、高所得者を優遇し低所得者にしわ寄せが及ぶT改革Uがまかり通る可能性がある。

医療、介護も
抜本的改革が必要


 全世代型社会保障検討会議は年明けから医療、介護についても本格的な検討を始める。少子高齢化の中で増え続ける医療費や介護費用。厚労省の試算によると2018年度に39.2兆円だった医療費は、2025年度に47.8兆円、2040年度には66.7兆円に増える見込み。介護費も同10.7兆円が、同15.3兆円、同25.8八兆円に増える。
 国民皆保険が実現しているとはいえ、健保財政も赤字含みの運営を余儀なくされている。増え続ける給付をどうやって賄うか、ここでも抜本的な改革が求められている。
 改革案として75歳以上の後期高齢者の窓口負担を現行の1割から2割に増やす、病院に行く度に一定の金額を支払う定額負担制度の創設、ジェネリック医薬品の普及といった項目が俎上にのっている。介護については市町村や県といった保険者に対して、介護の質を高めるためのインセンティブ交付金の創設などが検討項目として上がっている。
 少子高齢化が進む中で社会保障改革は日本の将来を左右する。安倍首相が強調するようにもはや「改善」では焼け石に水、改革も相当思い切ったことをやらないと国民全体が安心することはないだろう。背水の陣の検討会議だが、現状は利害調整に比重をおいた改善ベースから1歩も踏み出していないように見える。
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