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中村哲医師はアフガンの現状を伝え、米国の無差別攻撃を非難し、日本の進む道を説いた


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■中村哲医師の“遺言”


「日本は西洋対イスラム教の
対立に呑まれるな!!」

■中村哲・ペシャワール会現地代表が凶弾に倒れ、その活動の尊さが語られている。その中村哲医師は、自衛隊派遣や憲法9条改正にノーと、声を大にしていた──(ジャーナリスト 八牧浩行)

 アフガニスタンで30年以上にわたり貧者、弱者のための医療や開拓・民生支援の活動を続けてきた中村哲・ペシャワール会現地代表が凶弾に倒れ、深い悲しみが広がっている。中村氏は“遺言”とも言える多くの言葉を残した。現地の住民の立場に立ち、その文化や価値観を尊重することが大切だと訴え、「日本は西洋対イスラム教の対立に呑まれるな?」と力説。「自衛隊の給油支援」や「憲法9条改正」にノーを突き付けていた。

干ばつと戦乱で
村が消えた

 中村哲さんが遺した言葉を振り返ると、特に3年前に日本記者クラブで会見した際の発言は「魂の叫び」の迫力があった。そのさわりを再現する。
 アフガン戦争の真っただ中に、ソ連軍や米欧軍が侵攻した。戦死者は200万人に上り、600万人が難民になった。ありとあらゆる感染症が蔓延した。診療所を積極的に開設し、あらゆる治療をするようにした。片道一週間かかる高地から来る患者も多く、途中で息絶える子どももいた。
 一九九八年頃、ゲリラグループが対立し、内戦状態になった。私たちは患者をほったらかして、逃げるわけにはいかない。タリバン政権が誕生した後、2000年に世紀の大干ばつに見舞われた。1200万人が被害を受け、うち400万人が飢餓状態で、100万人が餓死寸前だった。次々に村が消えた。水がなく食べ物も摂れない子どもが栄養失調で死んでいった。薬では飢えや乾きは直せない。

「ピンポイント攻撃」は
米国の虚言で無差別爆撃

 2001年9月11日、ニューヨーク同時多発テロが発生。翌日から米軍による報復爆撃が始まった。空爆でテロリストを掃討することは難しい。タリバン政権と言っても、普通の市民は普通に暮らしていた。
 世界の大勢は米国の空爆を支持したが、私たちは反対し、空爆下で食料を配った。
 米国はじめ世界中がヒステリック(感情的)になり、テレビの解説者は野球かサッカーのゲームを見るように評論した。米国は人道的な「ピンポイント攻撃」なのでテロリストだけを攻撃すると言っていたが、実際は無差別爆撃だった。真っ先に子どもや女性、老人が犠牲になった。
 食糧を必要な人に配給できるか迷ったが、ボランティアが頑張ってくれた。
 米軍の進軍とともにケシが栽培され、アフガンは不名誉な麻薬大国になった。生活に困窮した女性が外国人相手に売春し、権力者に取り入る人間が得をするようになった。生活に困れば、米軍や反政府勢力の傭兵になる。
 豊かだった村が数年で砂漠化したので、2003年に緑の大地計画をスタートさせ、用水路をつくった。最初は電気も機械もないので一般的な機器は使えず、ツルハシとシャベルだけの手作業だった。
 2010年に完成した用水路は約1万6000ヘクタールを潤し、約60万人の生活を支える。急流河川なので農業は集約的で日本に近い。日本で完成した技術が役に立つ。
 すべて武力だけでは解決しない。人々が和解し、人と自然がいかに折り合っていくのかが今後の課題となる。
 現地住民の立場に立ち、現地の文化や価値観を尊重することが大切だ。
 治安の問題は国によって違う。日本人はイスラム教とかかわりがないという先入観で動くリスクが大きい。日本だけは西洋対イスラム教という対立の構図の中に呑みこまれないでほしい。個人ではどうしようもないことだが、国家が配慮することが重要だ。

自衛隊派遣は
有害無益

 このほか各種メディアでの中村医師の訴えは今後に生かすべきものばかり。主な発言を以下に列記する。
■2001年10月13日、テロ対策特別措置法案を審議する衆院特別委での参考人発言
 現地の人々が望んでいるのは、治安の安定と生きるための仕事である。そういう人々の上に爆弾を降らし、それを新法(特措法案)は支援しようとしているのだ。日本政府もすでに復興支援(インフラ整備や軍閥の武装解除)に1200億円以上、戦争支援(自衛隊による給油活動)に、600億円以上を費やしている。
(以下、本誌をご覧ください)
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