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 党内に不況和音があっても首相は年末総選挙に自信

 安倍晋三首相が重厚内閣づくりのため密かに目論んでいるとされる年末の総選挙に向けて与野党の動きが激しくなっている。しかし、自民党内には、かなりの不協和音が存在している。
 まず9月に選挙対策委員長に就任した下村博文氏の下では選挙戦は戦いにくいという不安が上がっている。また、憲法改正に関しても、かつての高村正彦副総裁のように与野党間の地ならしをする人物が党内の重鎮クラスにいないことも不安材料だ。
 一方、総選挙を引き延ばしすると、安倍政権を取り巻く状況が悪化するのも事実。まず景気の行方だ。米中貿易摩擦の悪影響が今後顕在化し、それと消費税増税の悪影響が重なり、日本経済が下降線をたどる可能性は高い。さらに、原発再稼働政策を推進してきた安倍政権にとって、関西電力のスキャンダルは今後の広がり次第で、政権の致命傷ともなりかねない。先の内閣改造で任命した新大臣のレベルが低く、今後閣僚たちの失言やさらなるスキャンダルが発覚すれば、解散権の行使すらできなくなるほど追い込まれる可能性もある。
 しかし、選挙の専門家たちの見立ては今の野党の不人気ぶりでは到底自民党には勝てないと見る向きが多い。また、野党サイドでは候補者の多くがすでに7月に同日選があるとあおられ、事務所開きなどで選挙資金を使ってしまっている経緯がある。そこで今の状況で勝利できるとの確信が安倍首相にはあるようだ。


 菅官房長官が都知事選で小池下ろしに執念燃やす

 小池百合子東京都知事は来年7月30日に任期満了を迎える。前回都知事選で小池氏に大敗を喫した自民党は「今度は何としても雪辱する」と、対決姿勢を強めている。とりわけ「小池嫌い」で鳴る菅義偉官房長官は「引きずり下ろしたい」と執念を燃やしている。
 先の内閣改造で初入閣した菅原一秀経産相と荻生田光一文科相の2人は東京選出の「党人派」で、自民党東京都連の反小池急先鋒だ。無派閥から入閣した河井克行法相と小泉進次郎環境相も「菅シンパ」。さらに高齢閣僚の竹本直一科学技術相、北村誠吾地方創生・規制改革相も菅氏と親しく、よしみを通じている。小池氏に煮え湯を飲まされ続けてきた安倍晋三首相も当然「反小池」である。
 厄介なのは小池氏と旧知の仲の二階俊博幹事長が「小池氏が立候補したら、自民党が応援するのは当たり前だ」と発言し、党内が「腸ねん転現象」を起こしていること。二階氏と小池氏は、新進党、自由党、保守党、さらに自民党を通じて旧知の間柄で、今も時々会っている。小池氏は前回都知事選で約291万票を獲得した。今度はそこまでは行かないという予想が多いものの、小池氏に勝てる候補を探すのは至難の業だ。
 自民党内では対立候補として、参院選東京選挙区で全国最多の約114万票を獲得した丸川珠代元五輪相や鈴木大地スポーツ庁長官らの名前が挙がる。ただ、丸川氏でもさらに五十万票上乗せしないと勝負に持ち込めないとされる。参院選でブームを巻き起こした左派ポピュリズム政党「れいわ新選組」の山本太郎代表が出馬したら、自民党候補と小池氏の保守分裂の中で漁夫の利を得るのではという見方もある。五輪で世界中の人々を迎え入れる開催都市の「顔」は果たして誰になるのか。


 難題山積で手腕問われるJICの新社長は「青組」

 菅原一秀経済産業相が10月4日、官民ファンドの産業革新投資機構(JIC)の社長に、元みずほ証券社長の横尾敬介氏の起用を発表すると、メガバンクの幹部は「JICの再建は赤組から青組に移ったということですね」と評価した。赤組とは三菱UFJフィナンシャル・グループ、青組とはみずほフィナンシャルグループを指す金融界の隠語だ。
 JICは産業革新機構の後身として昨年9月に発足、社長に三菱UFJフィナンシャル・グループ元副社長の田中正明氏が就いた。しかし、「経営陣の報酬が高すぎる」との批判が高まり、経産省が提示した報酬案を撤回したことに、田中氏など経営陣が反発。そして昨年末に「もはや法治国家ではない」との捨て台詞を残して田中氏が辞任。残る民間出身の役員8人も揃って辞任した。
 実は歯車は、昨年9月のJIC設立当初の記者会見から微妙に狂い出していた。田中氏は9月25日の社長就任会見で記者の質問に答え、「(JICは)ゾンビ企業の延命のために投資はやらない」と明言した。これを聞いた関係省庁のある幹部は、「ゾンビ企業とは不愉快だ」と吐き捨てたほどだった。
 経産省は「150人超の候補者から、経営陣に求められる素質を持つ人を慎重に選んだ」と説明する。その白羽の矢が立ったのが横尾氏だった。旧興銀出身で、ニューヨーク支店勤務もあり、長く資本市場回りを経験した横尾氏は適任。菅原経産相も「トップとして複数のファンドを立ち上げた」とキャリアを評価した。しかし、子会社INCJはジャパンディスプレイなど、これまでに出資した難題企業群を抱える。再建は容易ではない。


 宇宙防衛で始まる「予算青天井」の宇宙戦争

 防衛省は来年度予算で524億円を投じ、「宇宙防衛」に乗り出すことを決めた。安倍晋三首相は9月にあった自衛隊高級幹部会同で「『航空宇宙自衛隊』への進化も夢物語ではない」と訓示し、宇宙分野での防衛力強化に意欲を見せた。防衛省は手始めとして、来年度、航空自衛隊府中基地に「宇宙作戦隊」を発足させ、防衛省統合幕僚監部に「宇宙領域企画班」を新編する。
 目玉の1つは、宇宙空間の状況を監視する人工衛星(SSA衛星)の導入費を計上したこと。SSA衛星は光学望遠鏡を搭載し、不審な動きをする他国の衛星や宇宙ゴミを宇宙空間で監視する。また地上からも監視する計画で、山口県山陽小野田市に直径約15メートルのパラボラアンテナ6基からなる監視レーダー施設を建設する。
 防衛省が宇宙空間での監視に乗り出すのは、中国やロシアの脅威が高まっているためだ。米国防情報局(DIA)が今年2月にまとめた「宇宙での安全保障に対する課題」によると、中国とロシアは、宇宙で活用する電子的な戦闘システムやレーザーのような指向性エネルギー兵器、ミサイルなどを開発しており、米国などの人工衛星の破壊や妨害を目指すとみられる。
 とはいえ、自衛隊の「宇宙防衛」は緒についたばかり。来年度、米国コロラド州の米空軍基地で実施する「宇宙基礎課程」に要員を派遣し、宇宙全般に関する知見を習得するところから始める。防衛省としては当面、宇宙の監視能力強化を目指すが、次には中国、ロシアからの攻撃に対処する方法を考えなければならない。どのような兵器にいくら投じる必要があるのか、防衛省幹部は「まったくの未知数」という。
 まさに「予算青天井」の宇宙戦争が始まろうとしている。


 関電不祥事問題で電力事業の抜本的再編も

 福井県高浜町の元助役から多額の金品を受け取ったとして八木誠会長や岩根茂樹社長ら経営トップが辞任する事態に追い込まれた関西電力。この影響が広がるなか、いらだちを募らせるのが官邸や経済産業省・資源エネルギー庁だ。
「参院選も終わり、封印していた原発再稼働に向け議論を始めようとしてきた矢先の不祥事。原発に対する国民の不満・不安を増幅させてしまった」(自民党議員)と怒りをあらわにする。関電は原発比率が国内九電力会社のなかで最も高いため、原発が再稼働できないと経営を直撃する。
 東京電力が福島第1原発の事故を受け、長く担ってきた業界調整のかじ取り役を関電に譲ってきたが、「東西両トップの電力会社が機能不全となるなかで、原発事業を抜本的に再編しないといけない」(官邸幹部)という議論が出てきた。
 東日本と西日本では周波数が異なるほか、原発の型も違う。このため、東京電力ホールディングスと中部電力の2電力に原子炉を納める日立製作所、東芝のメーカー2社を合わせた4社は原発事業の共同化に向けた検討についてこのほど合意したが、この4社を核にした「東日本」電力会社と、関電を中心にした「西日本」電力会社に原発事業を再編する案などが浮上している。
 政府は電力料金の引き下げを狙って、新電力の参入を認めたり、再生エネルギーの買い取り制度などを仕掛けたりしてきた。しかし「当初の想定より電力料金は下がらず、新規の電力会社も育ってきていない」(経産省幹部)と不満を隠さない。今回の不祥事をきっかけに、政府の「反撃」が強まることは不可避なようだ。


 関電不祥事問題が大阪万博とIRに飛び火

 その関電の問題は関西財界全体にも影響を及ぼし始めている。
 関西は2025年の国際博覧会(大阪・関西万博)など重要イベントを控えるが、次期会長候補として名前が挙がっていた八木氏の退任で関西経済連合会は大きな痛手を負うことになった。中核企業である関電の要職離脱で大阪万博や、その後のIR(統合リゾート=通称カジノ法)の大阪誘致など、資金面や人材面でどうカバーするか、暗雲が漂う。
 関電はこれまでに4人の関経連会長を輩出してきた。かつては関西国際空港の誘致や関西学術研究都市など、地番沈下が続く関西経済立て直しのために、活動資金の工面や事務局スタッフの派遣もしてきた。そんな中で、次期関経連会長の本命とされた関電・八木氏の退任は「非常に痛い」というのが関経連内で共通する声だ。
 もっとも懸念されるのは大阪万博の資金集めだ。民間で会場建設費400億円強を賄う必要があり、会長企業の住友電工は20億円、他の副会長企業の大半は10億円、関電は15億円を寄付する見通しだった。さらに来年以降、IR誘致合戦が本格化する。大阪は今のところ一歩リードするが、横浜に加え、東京が本格的に名乗りを上げると、一気に形勢が不利になる可能性がある。二階俊博・自民党幹事長のお膝元である和歌山も名乗りを上げており、「和歌山にさらわれるかもしれない」(関経連幹部)との声も出始めている。


 怪我の功名で危機感煽り、イデコの契約数が急増

 こういうのを怪我の功名というのだろうか。「2000万円問題」がきっかけとなって、「個人型確定拠出年金(iDeCo=イデコ)」の契約が急増している。頼りない「公助」に見切りをつけた個人が「自助」に動き始めたようなのだ。金融庁にとって家計資産をリスクのない「貯蓄」からリスクのある「投資」へ誘導することは長年の懸案だった。
 国民年金基金連合会がまとめたイデコの加入状況によると、今年度に入ってからの新規加入者は4月、5月、6月と2万〜3万人台にとどまり、前年同期比の実績は3カ月連続でマイナス。前年度から見れば6カ月連続のマイナスだった。
 日本人の家計金融資産は直近で1860兆円。内訳は現預金が50%を超え、保険を含めると80%近くが貯蓄型の金融資産だ。株式や投信など投資型の資産は全体の15%弱にすぎない。50%超の米国は特別としても、約30%の欧州にも遠く及ばない。おまけに日本の預貯金金利は1年定期預金金利で0.01〜0.03%程度の低金利状態。投資型資産にはリスクがつきまとうが、度を越した安全志向は金融資産の拡大を抑える要因になる。
 そんな中で金融審議会が6月、65歳以上の高齢者が円滑に老後の生活を送るには、「2000万円の金融資産が必要」との報告書をまとめた。参院選挙を控えていたこともあって政府も与野党も、このワンフレーズに過敏に反応。麻生太郎財務大臣が報告書の受け取りを拒否するという異例の事態に発展した。この間、世間には老後の生活に対する不安が一気に広まった。メディアも軒並み不安を煽り立てた。
 そこで個人の一部がリスク資産であるイデコを選択した。報告書が公になったのが6月初旬、7月には参院選挙が控えていた。世間には報告書に対する批判が渦巻いていた。7月の新規契約者は3万6778人(前年同期比8.5%増)と7カ月ぶりに前年度を上回った。8月は4万4303人(同14.6%増)と急増している。
 政府は全世代型社会保障検討会議を立ち上げ、少子高齢化で揺らいでいる社会保障の見直しに乗り出した。社会保障は「自助」「公助」「共助」が機能して初めて国民の安心感を生み出す。2000万円問題は裏返せば「公助」に頼れない現実の反映でもある。となれば「自助」でしのぐしかない。イデコの急増は「公助」に見切りをつけ「自助」を優先する国民意識の反映かもしれない。そうだとすれば、金融審の“幻の報告書”は、過去のどんな報告書よりもエポックメーキングだったことになるのだろう。


 融資拡大で銀行が期待、動産の担保権創設を検討へ

 法務省は企業が保有する機械や在庫などの動産を対象とした新たな担保権を創設する検討に入った。今年3月から研究会を立ち上げ、法制化に向けての検討を進めており、早ければ来年秋にも民法などの改正を法制審議会に諮問する見通しだ。
 これは不動産を対象にした抵当権や質権と並ぶ新たな民法上の「担保物権」として動産を位置付けるもので、法的な裏付けができれば担保の優先順位などが明確になり、利便性が飛躍的に高まる。「ABL(動産・債権担保融資)が本格的に拡大する起爆剤になるかもしれない」(地銀幹部)と期待されている。
 ABLは土地や建物といった不動産に代わり生産設備や在庫、売掛債権などの動産を担保に金融機関が企業に融資する仕組み。2000年代に入り新たな金融手法として浸透し始め、金融庁や中小企業金融を所管する経済産業省を中心に政府もその普及を後押ししてきた。一般社団法人「流動化・証券化協議会」の集計によると、18年3月末時点のABLの残高は前年同期比14.5%増の7兆4351億円。残高は毎年、着実に伸びている。ただ、伸び率は足下では減少傾向にある。
 ABLでは企業が保有する生産設備の所有権を金融機関に移す「譲渡担保」と呼ばれる手法が採られているが、その手続きは金融機関と企業の契約書に盛り込むことで成立するため、担保に差し入れた事実が第三者から分からない。このため、同一の設備を担保に複数の金融機関が融資するケースでは、譲渡担保が成立した時期を巡りトラブルとなる恐れがあり、二の足を踏んでしまう。しかし今回の法制化で、こうした紛争リスクが回避されることになる。
 ABLの環境整備は「都銀懇話会」が13年10月、政府に提出した「規制緩和要望書」の中で、「ABLに関する規制緩和」を盛り込んだのが始まり。銀行がABLを取り扱う際、譲渡担保に係る第三者対抗要件の具備を図る必要があるが、現状の動産・債権譲渡登記制度には多くの課題が残されているためだ。例えば、個人の動産・債権が対象外であるほか、変更・更生登記手続きが認められないなど実務上の制約がある。
 米国ではABLは事業向け融資の約20%を占めるほど主流の融資形態となっている。経産省の「ABL研究会報告書」では、ABLの潜在市場は78兆円と試算されており、金融機関関係者の期待も大きい。


 金高騰の陰に中銀の買い、ただし日銀は蚊帳の外

 金価格が高騰している。「国内の販売価格は9月末に1グラム5700円台と40年ぶりの高値まで上昇。現在も高値圏で推移しています」(都内の貴金属販売店)という。つれて貴金属店に金の買い取りを求める個人も急増しており、金地金の1〜9月期の買い取り量は前年同期比2倍超の2万7212キログラムに達した。まさに“金フィーバー”だ。
 また、金に連動する上場投資信託(ETF)が保有する金現物の残高も9月末時点で2808トンと過去最高を記録した。「国際通貨基金(IMF)が保有する金の残高とETFが保有する残高がほぼ同額になっており、金投資の需要の大きさを物語っている」(大手商社)という。
 なぜ、ここにきて金価格が高騰しているのか。「背景には米中の貿易戦争に起因する世界経済の不透明感の高まりがあります。10月にIMFは世界経済の成長率を3.0%に引き下げました。08年の金融危機以来の最低水準にまで低下した格好です。経済の先行きが不安視される中、安全資産として金に需要が高まっているわけです」(先の大手商社)。
 さらに、この流れを後押ししているのが、世界の中央銀行による金の購入だ。
「今年上期の中央銀行による金の買い増しは374トン(約170億ドル)に達しました。金・ドル兌換制度が廃止された1971年以降最高だった昨年を上回る水準です。特に目立つのはロシアや新興国の中央銀行の買いです」(メガバンク市場担当者)という。
 しかし、日銀はこうした世界の潮流の蚊帳の外にあるようで、金買い増しの動きは見られない。異次元緩和を実行した当時は、世界の金融政策のフロントランナーといわれた日銀だが、いつの間にか世界の孤児的な存在になりつつあるようだ。


 ヤマト一強時代の終焉、長尾裕新社長は正念場

 ドライバー不足などから配送料金の値上げを実施したにもかかわらず、ヤマトホールディングス(HD)の業績が低迷している。2019年4〜9月期の連結営業利益は50億円程度と、前年同期比で約8割減となったもようだ。主因は前期に戦略的に絞った宅配便取扱量の戻りが鈍いことだ。配送料の値上げを嫌った荷主が戻ってこないほか、採用増に伴う人件費や外注費などの負担ものしかかっている。4月に新社長に就任した長尾裕氏の経営手腕への不信感も高まってきている。新規の宅配業者などの台頭などもあり、「ヤマト一強」の時代は確実に幕を下ろそうとしている。
 20年3月期の営業利益は前期比約1割増の600億円台前半と、従来予想の720億円からの下方修正が避けられない。人手不足が問題となる前の16年3月期の営業利益(685億円)を回復する時期は大きく遅れそうだ。
 このため傘下のヤマト運輸社長からHD社長に昇格した長尾氏への風当たりも強まっている。長尾氏はヤマト引っ越し子会社の代金過大請求問題など不祥事を受けての就任だったが、「結局、ドライバーや数量増を見込んで増やした外部への業務委託先も余ってしまった。長尾氏は事業子会社のヤマト運輸時代から長く会社の幹部を担っている。経営能力は確かなのか」との声も社内では出始め、早くも正念場を迎えている。


 台風19号による水害で明暗分かれた西武と東急

 各地に甚大な被害をもたらした台風19号。この影響で、改めて東急電鉄と西武鉄道という往年のライバルが注目されている。かつて両社の対決が注目されたのは、西武でいえばプリンスホテルを中心にしたリゾート事業と、東急の“牙城”渋谷に、同じ西武といっても旧セゾングループの西武百貨店やパルコが進出していたからだが、本業の鉄道では、お洒落な街の渋谷と横浜を結ぶ東急と、池袋と所沢を結ぶ西武とでは明らかに差があった。
 ところが今回の台風で、東急田園都市線では二子玉川駅が、東急東横線では武蔵小杉駅が、それぞれ大きな水害を被った。前者は近隣に富裕層御用達の高島屋ショッピングセンターが控え、楽天も本社ビルを構えるなど、職住遊にわたって賑わってきた。後者もタワーマンションが林立し、近年は住みたい街の上位が定位置になっている。つまり、この両駅は東急沿線の中でもイメージリーダー的な存在なのだが、今回の被災でイメージダウンは避けられない状況となった。
 一方の西武はどうか。地盤の調査・解析などを手掛ける「地盤ネット」が東京のJRや私鉄を調べたところ、地盤の強さで1位、2位を西武池袋線、西武新宿線が占めた。それを受け、西武鉄道では「災害に強い沿線」を猛アピールしている。武蔵野台地の固い地盤の上を走る西武鉄道にとって、地震災害も含めた防災上の強みは、東急の思わぬ弱点露呈もあり、これからジワジワと効果を上げていくかもしれない。
 私鉄はどこも、少子高齢化や人口減少の余波で沿線人口の流出防止に知恵を絞っているだけに、西武にとってはチャンス到来か。


 花粉症薬の保険外しを提言した健保連の思惑

 健康保険組合連合会が「花粉症薬を保険適用から外すべきだ」と提言したことが騒ぎになっている。提言が伝わるや、テレビがバラエティー番組で「保険外し」と取り上げ、街頭インタビューを試みて花粉症を持つ人たちから「薬代がかさむ」「絶対に困る」などの声を伝えたのだ。
 クリニックで処方される花粉症薬はグラクソ・スミスクラインの「ザイザル(一般名はレボセチリジン)」のほかに、「アレグラ」「アレジオン」「クラリチン」「タリオン」などの第2世代の抗ヒスタミン薬がある。この第2世代の抗ヒスタミン薬は、例えば、アレグラと同じ成分の「アレグラFX」など、ドラッグストアや薬局で買える一般医薬品(OTC薬)として販売されている。
 医療費の支払い側である健保連の提言は、この数年、OTC薬として市販されている花粉症薬があり、医療機関に行かずにOTC薬を購入して花粉症に対処している患者も多い。医療機関で処方される場合とOTC薬で対処する場合の整合性を図るために第2世代の抗ヒスタミン剤で済む場合は保険適応外にすべきではないか、という意見だ。
 問題は価格だが、医療機関を受診して処方される第二世代の抗ヒスタミン薬のアレグラの場合、初診料を含めて14日分が3割負担で2003円。一方、OTC薬は定価が2036円で少々高いが、アマゾンでは1500円程度で販売しているから「1日当たり32円安くなる」と強調する。
 しかも、第2世代の抗ヒスタミン剤を保険対象から外すと、ざっと600億円の医療費節約になるという。42兆円の医療費総額から見れば、大した金額ではないが、健保連は「最も高額な遺伝子改変治療薬『キムリア』の年間売り上げが72億円でしかないことと比べれば10倍に相当し、キムリアのような超高額薬10個分の医療費を賄える価値がある」と主張する。
 むろん、OTC薬へのスイッチに反対してきた医師会は「言語道断だ」と猛反発しているため、中医協(中央社会保険医療協議会)や社会保障審議会で議題にしても実現は難しそうだ。だが、健保連は過去いくつもの保険外しを提案し、ビタミン剤やうがい薬、湿布薬、保湿剤の保険外しに成功している。もっとも、湿布薬は医師会との妥協策として「一処方につき70枚まで」の制限付き。それでも年間230億円の薬剤料の節約になり、かなりの効果があったという。たとえ花粉症薬の保険外しに失敗しても、「花粉症薬の保険外しをやめる代わりに」と、湿布薬の完全保険外しを狙っているのではないか、といううがった見方も出ている。


 MA再開に動き出すRIZAP瀬戸健社長

 RIZAPグループの瀬戸健社長が「M&A再開に動き出す」という観測がしきりだ。
 メディアからの批判もあって瀬戸社長はこれまで手控えてきたが、そろそろ限界に近づいている。松本晃構造改革担当が取締役を辞任したいま誰も止められない。
 RIZAPグループが、M&A(買収合併)の全面凍結を発表したのは1年前の2018年11月のことだ。直前までは1カ月に1〜2社ペースでM&Aを行ってグループは85社(うち9社が上場企業)に膨張したが、一転しての「M&A凍結」は大きな話題となった。
「M&Aによるいまの経営はやめるべきだ」。松本構造改革担当は強く進言して瀬戸社長もそれに従った。M&Aによる負ののれん代で営業利益を増益にするマジックは永遠に継続できるものではなく、「赤字が大きい会社とは向き合って、売却撤収を含む構造改革を行う」というのが松本構造改革担当の決意だった。しかし、松本構造改革担当と瀬戸社長の“合意”は束の間のもので終わった。
 松本氏に代わって役員になったのが中井戸信英氏で取締役会議長に就任。住友商事副社長、SCSK会長、社長の経歴があるが、松本氏に比べると大人のタイプで芯はあるが基本的に調整型の経営者だ。「この会社はオーナー会社であり、瀬戸社長のサポーターになる」のを自己の役割としており、松本氏とは異なる経営へのコミットを表明している。
 瀬戸社長は、20年3月期第1四半期が営業利益で何とか黒字化したことで、「危機的な状況は脱した」と8月に「投融資委員会」という新組織をつくった。これは新規のM&A案件を審査する委員会で、瀬戸社長は委員会メンバーにはならず、「独立性」を持たせるとしている。ただし、委員長を含めてメンバーは瀬戸社長が任命するのだから独立性の内実はないに等しく、M&A再開への布石にほかならない。
 瀬戸社長の経営は、会社を持てるだけ持つという巨大化路線だ。1年前には松本構造改革担当は、赤字会社は赤字が大きい順にすべて売却という方針を打ち出したが、瀬戸社長は1社も売りたくないのが本心で、いまさらながら「フィロソフィーが違っていた」と表明した。そしてすでにフィロソフィーの違いは一掃され、M&A再開で会社を増やしていくという彼の経営方針を阻むものは何もなくなったということだ。


 百貨店に翻弄されるアパレルの事業戦略

 ネット通販の猛威が襲いかかる百貨店大手が、打開策として集客力の落ちた大都市圏の郊外や地方都市の店舗閉鎖を加速するなか、アパレル大手は大幅なリストラと「脱・百貨店」という戦略転換に迫られている。
 10月に入り、セブン&アイ・ホールディングスと高島屋が相次いで店舗閉鎖を発表。セブンは川口店(埼玉県川口市)をはじめ傘下百貨店、そごう・西武の五店舗を閉鎖、高島屋は米子高島屋(鳥取県米子市)の全株式を地元企業に譲渡すると同時に、神奈川県内の不採算店2店の閉店を決めた。両社に限らず、百貨店大手各社は地方、郊外型で採算が取れず、閉店の動きは収まりそうもない。その煽りを受けるのは百貨店と共存共栄してきたアパレル大手であり、その代表格のオンワードホールディングスが苦境に立たされている。
 2020年2月期に11年ぶりの最終赤字に転落する見通しという事態に、国内外の2割に当たる約600店の閉鎖と一部ブランドを廃止するなど、百貨店頼みからの脱却に取り組む。しかし、百貨店との取引という長い歴史的なしがらみもあり、百貨店離れは容易でない。実際、同業のレナウンは既に発表していた全社員の約2割に当たる150人の希望退職募集を中止した。相次ぐ百貨店大手の店舗閉店で今後の人員配置などが見通せず、再検討を余儀なくされた。百貨店に翻弄された構図だ。
 米国では8月に老舗百貨店のバーニーズが経営破綻に追い込まれるなど、百貨店の事業環境は日本以上に深刻だ。背景にはアマゾン・ドット・コムに代表されるネット通販の台頭があり、あらゆる小売業を駆逐してきた「アマゾン・エフェクト」が、百貨店、アパレルの共倒れという形で日本の小売業を襲う事態が現実味を増している。


 エフエム東京の撤退で「i-dio」空中分解

 デジタルラジオ放送「i-dio」が事実上“空中分解”することになった。推進役を自任してきたエフエム東京が、「i-dio」がらみの粉飾決算の発覚により責任を取る形で撤退を決めたからだ。
「i-dio」は、高音質で映像も楽しめるラジオ放送、車載器向け交通情報などのデータ提供、自治体による住民向け災害情報発信などが特徴。サービスは、2016年の九州・沖縄を皮切りに、関東・甲信越、近畿、東海・北陸、東北、中国・四国の広域圏と続き、一九年春の北海道を最後に全国7ブロックで始まった。
 しかし、専用受信機の製造にメーカーが二の足を踏んで市販されず、利用者が低迷。総額150億円にも上る事業費は回収不能に陥っていた。
そうした中、4月に、エフエム東京が、「i-dio」事業の赤字を隠すため損失を抱えていた子会社を連結決算から外す粉飾決算をしていたことが露見、6月には11人の役員のうち冨貴田道臣会長や千代勝美社長はじめ常務以上の六人が退任する事態になった。
 そして10月8日、エフエム東京は「i-dio」からの撤退を発表したことで、事業継続はもはや困難とみられる。アナログからデジタルに完全移行したテレビ放送と違って、デジタルラジオはアナログラジオと併存していたため、メディア関係者は当初から事業性に懐疑的だった。どうやらひっそりと、舞台から消えていくことになりそうだ。


 被災地で見過ごしがちな目のトラブルに要注意

 今年も大規模な河川の氾濫で多くの人が被災した。その被災者の健康管理で見逃されがちなのが目のトラブルだ。昨年の西日本豪雨では避難所にいる被災者の半数に目の違和感、充血があり、岡山県の眼科医会が行った診察では、ほとんどの人に結膜炎が見られた。
 日本眼科医会が公表した、被災地での作業や避難所生活で目を守るための注意点を紹介しよう。
 水が引いても被災地には多量の土砂や汚れた泥が残っている。それが乾燥して、大量の土ぼこりが発生するため、しばらくは注意が必要だ。目にほこりが入り、汚れた手で目をこすることで細菌感染が起こりやすくなる。被災地でのボランティア活動の際には、コンタクトレンズは避け、メガネ、ゴーグルを使用することが大切だ。くれぐれも汚れた手で目をこすらないこと。避難所で生活している場合にも、コンタクトレンズの使用は避けたほうがいい。
 角膜炎も要注意だ。場合によっては、視力が大きく低下してしまう。症状が結膜炎と似ていて、目の異物感(目がごろごろする)、目の痛み、充血などが起こる。同時に目やに、涙がポロポロ落ちるのが代表的な症状だ。こういった症状が、1晩寝ても治まらない場合には、眼科医を受診したほうがいい。放置して悪化すると、角膜潰瘍となり、重い視力障害を引き起こす。
 被災地では点眼薬の使用も注意が必要だ。市販の目薬や医師から処方された点眼薬を、つい家族や身近な人が使ってしまうことがあるが、これもNGだ。使い回しはしないで、本人だけで使い、使う時に手をよく洗うこと。被災地では細菌感染が起こりやすくなるからだ。


 高山清司若頭の出所で山口組内の抗争激化?

 1人の暴力団幹部の出所がこれだけ話題になるのも珍しい。6代目山口組の高山清司若頭(72)が10月18日、府中刑務所を出所、マスメディアがその模様をいっせいに報じた。ここまで注目を集めるのは高山若頭という存在が、「暴力団の今後」に大きな影響を及ぼすからだ。
 6代目山口組関係者の話を総合すれば、「カシラ(若頭)は筋を通す人」(2次団体幹部)で、今の3つに割れた山口組という構図を「我慢できずに、なんとかまとめようとする人」(同)だという。3つとは、懲役6年の実刑判決を受けた高山若頭が、中にいる間に割って出た神戸山口組と、さらにそこを割った任侠山口組のこと。いずれも「菱の代紋」を掲げる。
 しかし、盃事によって成立した「親子」の縁を大事にする暴力団社会において、「親」の承諾を得ずに組織を離れ、新たに組を立ち上げる行為は「逆盃」として許されることではなく、暴力団社会からの追放を意味する「絶縁処分」となる。したがって筋を通す高山若頭からすれば、神戸山口組の井上邦雄組長、任侠山口組の織田絆誠組長は、「許されざる者」である。
 だが、一方で暴力団社会を巡る環境は厳しく、シノギは枯渇、暴力団は「食えない職業」になって、構成員数は激減、3派合わせて1万人を割った。「抗争どころではない」というのが現実で、これまで何度か水面下で「復帰」が模索された。いずれも神戸山口組、あるいは任侠山口組が6代目山口組に戻る話であり、井上組長、織田組長といった幹部の復帰後の処遇が話し合われたこともある。が、実ることはなかった。受刑者の高山若頭が、中から側近の竹内照明若頭補佐(弘道会会長)に指示、話を潰した。
 現在の6代目山口組を率いるのは、司忍6代目である。名古屋に弘道会を立ち上げて順調に出世、渡辺芳則5代目を引退に追い込んで跡目を継いだ。その弘道会の2代目が高山若頭で、渡辺5代目の出身母体である山健組を継いだのが井上組長であり、その右腕が織田組長だった。従って、現在の山口組の紛争は、神戸を拠点とする本流の山健組と、当代を取って組を制覇した弘道会の戦いである。締め付けを緩めれば神戸に取って代わられるという思いが高山若頭にはあり、「力による吸収」しか頭にない。
 それを承知の井上、織田の両組長は、自分の居場所のない合流など呑めず、「抗戦するしかない」と、覚悟を固めている。「抗争激化」の火種となる男の出所。だから注目を集めたのだ。


 ご当地アイドル自殺訴訟、Hプロ逆提訴に見えるもの

 愛媛県で活躍していたご当地アイドル「愛の葉Girls」の大本萌景さんが、昨年3月に自殺。10月に遺族らが所属プロダクションのHプロなどに対し、1億円訴訟を起こした件は、全国ご当地アイドルのブラックな労働環境を象徴するものとして話題を集め、ワイドショーなどが大きく取り上げた。
 16歳の女の子が死を選ぶという衝撃に加え、Hプロ社長が「(アイドル活動を)辞めるなら1億円払え」と言ったというパワハラ、午前4時半から翌日の午前2時まで働かせていたという過重労働、高校の転学費用12万円を約束通りに支払わなかったというイジメなどが報道され、Hプロと経営者は「真っ黒な存在」として批判された。
 それから約1年が経過した10月11日、Hプロと佐々木貴浩社長が原告となって、大本萌景さんの遺族と弁護士らを被告とする損害賠償請求訴訟を起こした。最初の訴訟と同じ東京地裁で、請求額は3663万円だ。
 Hプロサイドは、提訴会見にあまりにウソが多く、そのために会社経営に重大な支障が生じ、刃物が会社に送られ佐々木社長の家族の写真などがSNS上にさらされるなど恐怖におびえる日々だったという。そうした損害をトータルして逆提訴に踏み切った。
 自殺を原因とする損害賠償請求訴訟と、それを会見の場で明らかにする行為が名誉毀損にあたるという提訴は、受任して会見を仕切った弁護士サイドも、それを報じたマスメディアにとっても、悩ましいところである。遺族の証言が中心にならざるを得ず、「会社のせいだ」と、遺族は思い込んで主張するのだから一方に流れるのも仕方がない。それが名誉毀損だというのなら、弁護士サイドも、今回、訴えられてはいないものの、メディア側も甘んじて受けるしかあるまい。
 ただもう1つ問題がある。逆提訴の底流には、「リーガルファンディングの道具にされたのではないか」という思いが、Hプロサイドにあることだ。一般から訴訟費用を募り、訴えたくても訴えられない事案をすくい上げるのがリーガルファンディングである。一般社団法人として立ち上がり、大本萌景さんが第1号となった。それが過剰な広報活動、Hプロをことさら悪者にする報道に繋がったのではないかという点だ。
 そういう意味で、今回、新たな訴訟の形態を示す事案になっていることも見逃せない。


 米国で大売れの金融商品、CLOは地雷原になる?

 第二のサブプライムショックの地雷原となりかねないと警戒されている金融商品が、米国で大売れしているCLO(ローン担保証券)だ。CLOは、投資適格未満の信用力の低い企業に対する貸出、いわゆるレバレッジド・ローンを束ねて証券化した金融商品で、2008年のリーマンショックで問題となったCDO(債務担保証券)の一種。利回りが高く日本の大手銀行も購入している。
 全国銀行協会の高島誠会長も9月19日の記者会見で、「昨今の低金利環境が長引く中において、比較的利回りの高い外債、あるいはCLOなどの海外クレジット投資が増加基調にあることは事実であろう」とし、「邦銀のCLO保有シェアが世界の残高の1割を占めるという(民間)調査もある」と指摘した。
 米国のレバレッジド・ローンの残高はここ10年でおよそ2倍に増加、CLOの年間発行額も18年に過去最高を更新したが、最近では、レバレッジド・ローンの貸付先企業で、自己資本に対する借入金の割合を示す「レバレッジ比率」が上昇するなど、質の劣化が懸念され始めている。CLOの元になっている貸出の焦げ付きリスクが高まっているわけで、不良債権化すればCLOもデフォルトする可能性が高い。
 日本の金融機関はCLO投資にはさまざまな手立てを講じて十分に気を付けているというが、それでも市場が混乱した場合、まず最初にデフォルトしかねない危うい商品であることには変わりはない。
 CLOが第2のサブプライムショックの地雷原にならなければよいのだが……。


 若者世代を旅に誘う星野リゾートの新戦略

 星野リゾートの星野佳路代表は、宿泊施設の高い料金が、「旅離れ」が進む若年層から敬遠されることにかなりの危機感を持っていた。また2025年以降はシニア以上の旅行市場先細りは避けられない。そこで星野氏が打った手が「BEB」と名付けた若者向けブランドのホテルで、今年2月、軽井沢(長野県)に第1弾の「BEB5軽井沢」(長野県)をオープンさせた。「エコひいきプラン」と称し、盆暮れ正月や大型連休の時期でも手軽な価格設定の宿泊料金を上げず、若い世代を呼び込もうという狙いだ。チェックアウト時間も厳密に設定せず、堅苦しさを嫌う若者に歩み寄った。
 結果、ここまで大成功とは言えないまでも、一定の成果は収めたようだ。そこで来春、第2弾としてJR東日本の駅ビル運営会社、アトレと組んで「BEB5土浦」(茨城県)を開業させる。こちらのコンセプトは「輪泊」で、文字通りサイクリング愛好者に照準を合わせた。若い世代は「クルマ離れ」も顕著なだけに、手軽な自転車をツールに旅を売り込もうというわけだ。ただし、コアなサイクリング愛好者だけでは集客に限界がある。軽井沢と違って有名な避暑観光地でもない。
 星野リゾートによると、若い世代は500円程度の、いわばワンコインで行ける30分の移動でも“疑似旅行”と捉える傾向が強いのだという。「酒離れ」も加わり、会社の同僚や学生時代の仲間ともあまり飲みにケーションせず、何でもスマホで完結する若い世代に対して、星野リゾートが継続的に旅へと誘うのは、容易ではないだけにその成果が気になるところだ。


 専門家の1本釣りで開発、北朝鮮の「キムカンデル」

 北朝鮮が5月以降、4回発射した新型短距離ミサイルは、変則的に飛行するため対処が難しく、防衛省に衝撃が広がっている。4発とも低い軌道で発射され、高度50キロメートル以下の大気圏内を飛び、最後に急上昇して突然、急角度で日本海に落下した。日本が保有するイージス艦に搭載される迎撃ミサイル「SM3」は大気圏外でしか使えない。「低空で迎撃するパトリオット・ミサイルはやや旧式。全国に配備されているが、迎撃できるか心もとない。北朝鮮の新型ミサイルの名称はないが、防衛省の一部では、『キムカンデル』と呼ばれている」と防衛省関係者は言う。
 当然、北朝鮮が単独で開発したとは思えない。しかし、ロシアは北朝鮮への兵器輸出を禁じた国連安保理決議を順守しており、公式に輸出することはありえない。「ただし、ロシアはイスカンデルMをアルジェリアなどに売却しており、北朝鮮は第三国から技術を入手した可能性があります。あとはウクライナ・ルートでしょう」とモスクワ特派員は見る。
 ウクライナ・ルートとは、2014年のウクライナ危機で、旧ソ連最大の重工業地域だったドネツク州など東部の軍需産業が麻痺し、大量の失業者が出た。北朝鮮はこれらの工場で働くミサイル専門家を一本釣りして北朝鮮に招いたとされる。実際、15年頃から北朝鮮のミサイル開発技術が急進展しており、「キムカンデル」開発に成功した可能性がある。ソ連時代のミサイル開発を担った技術者が北朝鮮に雇われているとすれば、技術力はさらに向上しそうだ。


 韓国保守派が恐れる文左翼政権での南北統一

 韓国社会の分断が進んでいる。文在寅大統領が率いる左翼革新勢力と対抗する保守勢力の対立が激化している。しかし、文陣営は組織を押さえて韓国社会を着々と左傾化しているのに比べ、保守陣営はデモや集会で人を集めるだけのイベント的なもので、対抗できずにいる。
 文政権が侮れないのは、この3年弱の間で警察・軍部・裁判所・マスコミを手中にしてしまっていること。残るは強大な捜査能力を持つ検察機関を弱体化させることと、各官庁に革新勢力を入れて監視を強めていくことだ。今、中央官庁に働く国家公務員の中で密かに噂されているのが、文大統領とそれを支える主要スタッフの数人が北朝鮮の朝鮮労働党の秘密党員ではないかという点だ。これまで韓国内に所在して北の指令を受けてさまざまな工作を実行してきた秘密党員のことは語られてきたが、そういう話が出るほど文政権は南北統一再優先で、ことを進めている。
 その線上で保守勢力が最も恐れているのが、北朝鮮との統一に合わせた憲法改正と在韓米軍の撤退だ。折しもトランプ大統領は在米軍にかかわる駐留費用を五倍にすることを要求し、その回答期限を12月末としている。しかし、韓国の経済力の低下は著しく、文政権としても簡単にその要求はのめない。トランプ大統領はすでに昨年6月の米朝首脳会談で撤退の可能性を示唆している。
 最近起きた事件で文政権の真意が垣間見えた事件が2つある。1つは、北によるSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)の発射実験に非難をしていないこと。もう1つは、NLL(西海北方限界線)にある島を北に乗っ取られ、周辺五島を軍事要塞化されても全く問題ないとコメントしている点だ。このように韓国が今後進める急進的な政策はさらなる大きな混乱を引き起こす可能性が高い。


 土地強制収容の懸念高まる中国のミャンマー高速鉄道

 中国が広域経済圏構想「一帯一路」の主要事業の一つとして計画しているミャンマーの高速鉄道建設で、住民が私有地を強制収容されるのではないかと懸念を強めている。
 中国は一帯一路の枠組みの中で、ミャンマーと「中国・ミャンマー経済回廊」構想を推進している。鉄道は中国南西部の雲南省昆明から国境の町であるミャンマー北東部ムセを経て同国中部マンダレーまでを結び、最終的にはインド洋に面するミャンマー西部チャオピューまで延伸する計画。チャオピューは経済特区に指定され、中国企業が港湾と工業団地の開発を進めている。高速鉄道建設で、中国の内陸部とインド洋の玄関口が結ばれ、中国にとって長年の念願が叶うことになる。
 ところが、住民の間では「土地を奪われ、移住を余儀なくされるのではないか」との疑念が深まっている。政府がマンダレー周辺の沿線住民を対象に実施した説明会では「貴重な農地を奪われるのではないか」という疑問の声が相次いだ。「自分の家が計画区域に入るのか早く知らせてほしい」という要求もあった。
 住民が不安を募らせるのは、政府が「夢の高速鉄道」の理想像ばかり追求し、現場での具体的な計画の立案を後回しにしたのが原因。土地収容に当たり、住民の理解を得られないまま実力行使に踏み切れば、新たな人権問題に発展する恐れもある。現に一帯一路に伴う鉄道建設がすでに始まっているラオスでは、土地収容で多くの住民が立ち退きを強いられている。さらに、環境への影響も懸念されるのだが……。


 香港騒動を読み解く3つの視点

 ついに5カ月目に入った香港大乱、解決のめどは全く立っていない。デモ隊と警官の暴力的衝突はエスカレートするばかりで、抗議側の武闘集団は小型爆弾(警察のヤラセ説もある)、警官隊はペッパーガン使用が解禁された。
 逃亡犯条例撤回(9月4日)は逆効果となり、覆面禁止法(10月4日)はかえって抗議側を勢いづかせ、地下鉄94駅のうち85の駅で改札機、券売機、防犯カメラが破壊され、放火された。騒擾レベルというより、こうなると暴動である。親中派のスターバックス、優品360、北京同仁堂(漢方薬)から中国銀行のATMなど3300台も破壊された。経済的ロスは台風19号並みだ。
 プラカードは「正義必勝」「廃止悪法」「林鄭下台」「時代革命」「光復香港」等々。そんな現象面は多くの報道がなされるが、語られないことが3つほどある。
 第1は抗議側の参加者には付和雷同組も目立つが組織の中枢並びに指導者にプロテスタントが多いという事実が等閑視されている。西側が抗議側を積極支援するのもキリスト教のネットワークが機能しているからだ。香港は仏教・道教の信者が半分だが、若い世代はキリスト教が多く、大抵がクリスチャンネームを持っている(黄之鋒がジョシュア、周庭がアグネスなど)。カソリックはローマ法王が中国との国交回復を狙っているためおとなしい分だけプロテスタントに勢いがある。もともと英国植民地ゆえに英国国教会派のメソジスト、米国系のエバンジュリカルなど教会ルートが支援組だ。
 第2は武闘派の黒幕、その資金源である。穏健派、過激派という色分けはほとんど無意味で、クラウドファンディングによって世界中の民主団体と華僑から逃走資金が流れ込んでいる。米国議会は「香港人権民主法」を早々と可決した。武闘派の黒幕は不明だが、国境を越えてくる車両から火炎瓶が発見されたり、ガスマスクなどはベトナムからの迂回ルートで流入している。
 NYに亡命中の郭文貴(江沢民元国家主席の資金源でインサイダー取引の大物。ユーチューブで盛んに王岐山の汚職を暴露し続けている)の黒幕説が浮上した。真偽のほどは不明だが、江沢民派の利権だった香港に習近平国家主席が横取りを狙ったため雨傘革命に火がつけられたように、潤沢な資金源は中国共産党内の権力闘争が濃密に絡んでいる。
 またデモ隊に混入し、意図的に過激な暴力行為を煽っている警官の工作という事実は元朗駅や屯門、特に14歳の少年が?湾で私服警官にピストルで撃たれたことで明らかな証拠が挙がっている。
 第3が抗議行動に参加する若者たちがグローバリズムの申し子であることだ。フランスの黄色ベスト運動もスペインのカタロニア独立運動も同じ現象に見えるが、香港の若者にはナショナリズムが希薄であり、欧州の運動とは異なる。むしろ米国のリズ・ウォーレン現象のように「無制限の財政支出」などの主張はリバタリアン的であり、いかにも国際金融都市で育った若者らしい。国境をなくせという考え方が香港の完全自治要求に如実に表れている。


 米国が対EU報復関税、加熱する泥仕合

 米政府はこのほど、EUによる欧州航空機大手エアバスに対する補助金が不当だとして、世界貿易機関(WTO)のお墨付きを得た上で、EUからの輸入品総額約75億ドル(約8100億円)を対象に報復関税を発動した。11月には欧州車にも追加関税を課すことを検討しており、矛を収める気配はない泥仕合状態だ。
 この問題は、米国とEUの双方が、エアバス、米ボーイングに対するそれぞれの補助金が不当だとして、2004年からWTOを舞台に争っていた。WTOは10月初め、米国による報復関税を認める判断を示した。
 米国はこれを受け、エアバスを支援しているフランス、ドイツ、英国、スペイン4各国から輸入する大型民間航空機に10%、それ以外のEUからの工業製品や農産品に25%の関税を課す。11月には、EUからの自動車輸入にも、最大25%の関税を課すことを検討している。
 一方、WTOは来年、航空機補助金をめぐるEUの対米報復関税についても認めるとみられている。EU欧州委員会のマルムストローム委員(通商担当)は、WTO裁定を待って対米関税の導入に踏み切る方針だ。米国が欧州車に対しても追加関税を導入すればEUもさらなる報復措置を模索するのは確実だ。
 航空機補助金を巡る米国の対EU報復関税の対象は、EUからの輸入総額の2%にとどまる。だが、ワインやチーズ、オリーブなどEUの特産品に25%の高率関税が課せられると、EUの生産者にとって深刻な打撃となる。輸入品の値上がりで米国の消費者にも負担増となる。実際、米国では、高級食品や酒類などを扱う80超の関連団体や企業が「クリスマスシーズンの食卓から人気食材を遠ざけることになる」と、米政府に訴えた。



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