巻頭言
池 東旭の


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池 東旭
(ソウル在住/
国際ジャーナリスト)





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弾劾のツナミに
直面する権力者

──共通する支持率の暴落
 米国と韓国の大統領、英国首相の3人が弾劾に直面した。共通点は独善的権力を行使して世論の抵抗を招いたことだ。トランプ氏は来年の大統領選でライバル(バイデン氏)を陥れるためウクライナ大統領に圧力をかけたのが内部告発でバレた。トランプ氏は前回大統領選挙でもロシアと通謀の疑いがあった。米下院は彼の違憲的行為に対し弾劾手続きに乗り出した。逆上した大統領は罵詈雑言で反撃する。トランプ氏はデモクラシーの本場とされたアメリカの恥部を晒した。米国は民主主義の手本どころか、マッチョの大統領が独裁的権力を恣意に振りまわす後進国並みの国であることを証明した。弾劾の成否はともかく、アメリカの信頼は地に落ちた。
 議会制度の元祖・英国も同じだ。ジョンソン首相は10月末にBREXIT(英国の欧州連合=EU=離脱)を強行しようとして、反対する議会を1カ月間停会した。最高裁はジョンソン氏の措置を不法と判決、議会は再開されたが、ジョンソン氏の毒舌は議会の品位を貶めた。野党はジョンソン氏の退陣を要求するが、本人は居直っている。英国議会の昔日の名声は面影もない。BREXITは宙に浮いたままだ。EUは右往左往する英国に呆れている。9月に就任したジョンソン氏だが、史上最短命の首相になりそうだ。

──常態化した韓国のデモ
 韓国も混迷の極みだ。朴槿恵大統領を弾劾に追いつめたデモの伝統が復活した。ソウルの毎週土曜のデモは慢性化した。建国記念日の10月3日、保守系団体が総決起したデモで都心の交通はマヒした。国民抵抗権の発動と自負するデモ群衆は文在寅政権の無能、対北追従を糾弾して大統領の弾劾と法務長官逮捕を怒号する。発端は曹国氏(大統領首席秘書官)の法相任命だ。大統領は検察改革を理由に世論の批判を無視してスキャンダルまみれの曹国氏を法相に起用した。だが検察総長は大統領の意向に逆らい曹一家の不正と蓄財を追及する。飼い犬に手を咬まれたと大統領は激怒したが、検察は手を緩めない。
 法相問題は大統領対検察の対立にエスカレートした。デモは法相罷免ばかりでなく、大統領下野まで要求するほど過激化した。二年前、朴槿恵大統領もデモがきっかけで弾劾、罷免された。今や韓国で大統領弾劾はタブーではない。曹法相は辞任したが、デモは続く。曹国逮捕と大統領退陣を要求する。デモの終点は見えない。国会の与野党議席は拮抗している。国会で弾劾を決議しても、最終判断する憲法裁判所の裁判官は全員が左派だ。

──日本の核武装論浮上も
 文大統領の任期は2022年5月だが、来年4月15日の総選挙次第でレームダックになる。大統領の支持率は年初の50%台から30%台に急落、不支持率は50%を超す。与党は次期選挙で過半数達成のため選挙法改定に血眼だ。保守野党も纏まらない。朴槿恵弾劾に加担した面々と弾劾に反対したグループの怨念のせいだ。てんでんばらばらの保守は一本化しなければ与党に勝てない。政府与党は保守分断を図って服役中の朴前大統領(懲役25年)を特赦する奇策を温めている。来年4月の総選挙は離米か従北か、韓国の命運を左右する分水嶺だ。
 弾劾の瀬戸際に立つ3人の死活は、国際的ツナミを誘発する。退勢の回復に焦るトランプ氏は対北朝鮮交渉の妥結に執着する。金正恩委員長はその足元を見透かして弾劾や再選の確率をはじく。トランプ氏が失脚すれば盟友(サウジのムハンマド・ビン・サルマーン皇太子、イスラエルのネタニヤフ首相等々)も火の粉を被る。EUは米国頼みの安保体制を見直している。北のSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)発射は北東アジアの軍事力のバランスを一変させた。韓国で左派政権が続けば米韓同盟は遠からずして解消する。米国の防衛ラインは韓半島から日本列島と台湾に後退する。日本の核保有論も台頭する。
(ソウル在住/国際ジャーナリスト)


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