ダミー
ダミー

ダミー
安倍首相は本当に実態を理解しているのか


ダミー



ダミー



購読のお申し込み

デジタル雑誌のお求めは
こちらよりどうぞ




こちらからも
お求めいただけます。



■誰のための年金制度か


所得代替率はまやかしの制度説明
格差拡大を踏まえた弱者救済にせよ

■100年安心どころか、所得代替率はすでに50%を割り込み、危険水域だという指摘がある。政府が国民に実態を見せない中でこの指摘をどう読み、対策を急ぐべきか――

 厚生労働省は8月27日、参議院選挙後に先送りしたとみられている年金財政の健康診断ともいうべき財政検証を公表した。この検証は5年ごとに行われている。高成長から低成長まで六通りの経済成長率を想定し、所得代替率の推移を検証した。最悪の場合2052年度に国民年金の代替率は50%を下回り、積立金も枯渇する。こうした事態を避けるために検証結果には加入者の拡大や保険料の拠出期間の延長、支給開始年齢の繰り下げといった対策案が盛り込まれた。政府は今後「全世代型社会保障検討会議」を設けて具体策を検討するが、国庫負担を引き上げない限り公的年金の健全性を確保するための改革案は、ほぼすべてがデフレ要因になる。
            ◇
公的年金の
前提がなくなった


 日本の公的年金制度は世界に冠たる規模と内容を誇る制度だが、人口増加と安定的な経済成長、さらには物価上昇が永遠に続くとの前提の上で成り立っている。現在のように少子高齢化が進展し、マイナス成長やディスインフレ、出生率の低下が一般的な世の中になると、制度自体が社会不安を招くことになりかねない。
 本来なら少子高齢化など社会環境の変化に合わせた改革が必要だった。だが、制度自体が巨大化しているため抜本改革には莫大な財源が伴う。例えば、制度の土台である賦課方式を積立方式に移行する場合には、財源として750兆円程度が必要になるとの試算もある。
 年金制度の持続可能性を危うくしているのは、少子高齢化・低成長・ディスインフレという環境変化。前提が崩れている以上、制度の将来性に疑問を感じるのは当たり前で、時間の経過とともに疑問は“不安”へと変化する。不安を払拭するために財政検証を行っているのだが、やればやるほど不安が拡大するという悪循環が繰り返されている。
 政府は04年の改革でこの制度に「100年安心」を注ぎ込もうとした。それが「マクロ経済スライド」である。この制度は成長率や物価の変動、年金加入者や寿命の増減など社会情勢の変化に合わせて支給額を自動調整する仕組み。自動調整といえば聞こえはいいが、実態は支給額を抑制するための計算式である。
 これによって年金財政制度は安定した。だが、いくら制度的に安定しても支給額が減少すれば、年金受給者の生活への影響はその分大きくなる。当然、不満は大きくなる。加えて、現役世代にも今の制度では自分たちの老後が賄えないとの疑念が広まった。
 そこで政府は所得代替率という考え方を持ち出し、「代替率50%以上」を維持すると国民に約束したのである。だが、代替率を維持するために制度改革をやれば、消費が手控えられ経済成長率が伸び悩む。今の年金制度にはこうした矛盾がつきまとっている。

所得代替率は
意図的に操作されている


 所得代替率というのは、分かったようで実は分かりにくい。厚労省の説明によると、年金の受給開始時点における標準的な年金受給世帯の、現役男子の平均手取り収入に対する比率である。そして平均的な世帯とは40年間平均的な賃金で働いたサラリーマンの夫と、40年間専業主婦であった妻からなる夫婦世帯と定義されている。
 数式に書くと分母が現役男子の平均収入で、分子が標準的世帯の年金額になる。分母が1人で分子が複数というのも数学的におかしいのだが、さらに分母が可処分所得で実質、分子が税や社会保険料込みの名目になっていることも、「平仄があっていない」(日本総研・西沢和彦氏)と指摘される要因である。
「分子と分母を同じ基準(課税前あるいは課税後)にそろえて計算すると、所得代替率は大幅に低下し、現時点で50%を下回ってしまう」と経済アナリストの中原圭介氏は指摘する。
 所得代替率は見かけをよくして「100年安心」をアピールするために作られた装置ではないか。国民の側からすればなんとなく隠された意図を邪推したくなる指標である。
 そんな所得代替率を使って検証した今回の結果は、高位成長(0.9〜0.4%)のケースで代替率は50.8〜51.9%と比較的余裕を持って50%台を維持している。しかし、中位成長(0.2〜0.0%)では50%とギリギリの水準に低下し、低成長(マイナス0.5%)になると2052年に46.1%と50%を割り込んでしまう。この時点で国民年金の積立金は枯渇すると試算されている。
 実態は「100年安心」どころかすでに50%を割り込み、危険水域に達しているのかもしれない。

想像以上に悪い年金財政
負担は増えて年金は減る


 だからというわけではないだろうが、検証結果には年金財政を改善するための試算結果が添付されている。所得代替率は中位成長のケースでもかろうじて50%を維持している。それでもオプションという名目で改善策を盛り込まざるを得ないところに、年金財政の本当の姿があると見ていい。
 盛り込まれている改善策は、1.公的年金加入者の拡大、2.保険料の拠出期間の延長と受給開始年齢の繰り下げの二つ。
 加入者の拡大策は、1.厚生年金の適用対象となる企業規模(現行従業員が501人以上)を廃止するケース、2.一定の収入のある所定労働時間週二十時間以上の短時間労働者へ適用拡大、3.学生、雇用期間1年未満の者、非適用事業所の雇用者もすべて適用対象とするケースの試算が行われている。
 このほかにも基礎年金の拠出期間の延長、在職老齢年金の廃止、厚生年金加入者の年齢上限の引き上げ、就労延長と受給開始年齢の選択的拡大といった制度改正に関する試算も盛り込まれている。
 いずれのケースも「入り」を図って「出る」を制する対策で、皮肉っぽくいえば“年金財政の安定”に資することは間違いないが、これで年金受給者や現役世代が安心感と満足感を得るかといえば、全く逆だろう。個人も企業も負担は増えるが、将来受け取る年金は下がるのが実態である。
 国民年金だけだった低所得者を厚生年金に移行させた場合、報酬比例となっている厚生年金と固定の国民年金の保険料に不公平感が生じるケースも想定される。さらに既存の厚生年金加入者から見れば、厚生年金財政の安定化という名目で将来的に掛け金の引き上げを招くのでは、といった不信感を増幅させる可能性もある。
 それ以上に、この10月からの消費税増税による負担増に年金改革に伴う負担が加われば、低所得者の生活が一段と苦しくなる。中小企業の中には負担増から人員整理や事業廃止に追い込まれるところが出るかもしれない。
 年金生活者も千差万別。厚生年金加入者の多くは企業年金に入っており、公的年金と企業年金を合わせれば所得代替率は大幅に向上する。国民年金の加入者に限っても、金融資産が何億円という規模の人も混在している。要は所得代替率という仮想のモデルで年金制度を考えても実態的にはあまり意味がないということだ。
 個人金融資産が1800兆円を超えている国の年金制度である。世帯モデルという仮想データをベースに考えるのではなく、本当に困っている高齢者に焦点を当てた年金改革が必要なのではないか。公的年金の支給額は年間で53三兆円から54兆円に達している。すべて消費に回ると仮定すると、GDPの10%程度を占める。
 拡大する一方の所得格差を考えれば、困窮している年金生活者にピンポイントで財政資金を投入することもありうるだろう。それ自体が景気対策にもなる。ことほどさように年金改革には、何よりも実態を見据えた改革が求められる。
ダミー
ダミー
ダミー

(C)2019 株式会社エルネオス出版社. All rights reserved.
〒105-0003 東京都港区西新橋1-22-7 丸万7号館4F 
TEL.03-3507-0323 FAX.03-3507-0393 eMAIL: info@elneos.co.jp