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日本の国益とは何か。その原点に立って現下の対立関係をほぐしていかなくてはならない


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東郷和彦
1945年1月10日生まれ。68年東京大学卒業、同年外務省入省。98年条約局長、99年欧亜局長、2001年在オランダ大使等歴任。現職は京都産業大学教授、世界問題研究所長、静岡県対外関係補佐官。


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■特別寄稿
 東郷和彦(京都産業大学教授・世界問題研究所長)


日韓関係はなぜここまでこじれたのか
終戦70周年安倍談話が関係改善のカギ

■現下の日韓関係悪化を文在寅大統領の政治信条に原因を求めるのは間違っている。ここまでこ
じれた原因は両国の過去や国民感情が複雑に絡み合う。だからこそ、最善の知恵を絞る時だ――

 この原稿を書いている時点で、日韓関係の外交の底が抜けたような事態が続いている。戦後の日韓関係は、35年余の併合時代に関する韓国の「恨」と、それを少しずつ理解して学んできた日本側の「反省」の蓄積によって成り立ち、何回もの上下動を繰り返しながら、相互理解と相互信頼は少しずつ強化されてきたかに見えた。それが、お互いに「堪忍袋の緒が切れた」といった感じの「外交戦争」になぜ至ったのか。これまでの経緯、その原因、次いで今後の対応についての見解を述べることとしたい。
            ◇
慰安婦合意時点であった
徴用工問題の暗雲


 私は、2012年に政権復帰して以来の安倍政権の外交と安保政策について高く評価してきた1人である。その大切な成果の1つに、韓国との和解があったと思う。
 2015年8月14日、終戦70周年を迎えるにあたっての内閣総理大臣談話(安倍談話)で「(これから)先の世代の子どもたちに、謝罪を続ける宿命を背負わせてはなりません」との決意を述べられた上で、この年12月28日の慰安婦合意において、1993年の河野談話とほぼ同じ表現を用いて「心からおわびと反省の気持ちを表明する」として、政府予算からの10億円の拠出を韓国の財団に行い、「この問題が最終的かつ不可逆的に解決される」ことを韓国政府との間で確認したのである。
 この時点ですでに、徴用工問題という暗雲が重苦しく立ち込めていた。私はこの問題が将来の日韓関係の基礎を破壊しかねないと憂慮し、拙著『危機の外交:首相談話・歴史問題・領土問題』(角川新書2015年7月10日刊)で、概ね以下の通り、所見を述べた(147〜154ページ、164〜169ページ)。
1) 戦後の日韓外交関係を設定した1965年の諸協定では、日本の韓国併合が、「不法・不当」とする韓国側と「当時の国際法上合法」とする日本側とはどうしても意見が合わず、結局基本条約では、「(併合条約は)もはや無効」という同床異夢の表現でおさまった。
2) 両国はそのことを承知で、「請求権・経済協力協定」を結び、そこで日本政府は無償3億ドル、有償2億ドルを支払う(1条)こととした。同時に、いわゆる請求権問題が「完全かつ最終的に解決された」(2条)ことが確認された。
3)協定交渉の際、徴用工に対して支払われるべき金額は、上記1条の積算の根拠の1つとなった。したがって、以後、韓国政府も、「徴用工に対する被害補償問題は包括的に解決済み」(2005年官民合同委員会)との態度をとってきた。
4)しかるに、2012年5月24日韓国大法院(最高裁判所)小法廷は、徴用工からの補償請求訴訟を退けてきた下級審の判決を却下、その根拠として、「植民地の不法・不当性を認めない65年協定を基礎として原告の個人請求権を退けることはできない」という論拠に立ったのである。この論拠は、多くの日本人を驚かせた。65年以来日韓の協力と相互努力で築き上げてきた戦後の日韓関係の基礎となってきた「65年体制」を、韓国の一方的司法判断によって崩壊させることになるからである。
5
) 希望があるとすれば、この問題について、いずれ最高裁大法廷に持ち込まれ、そこで出される確定判決において、大法廷が小法廷の判決を覆し、これまでの韓国政府の法的立場に戻ることにあった。漏れ伝わるところでは、朴槿恵政権は、問題を政治化させることなくその方向に動いていたようだった。
            ◇
 ところが、2016年10月、崔順実ゲートが発覚し、17年3月10日朴槿恵大統領は罷免、5月10日文在寅大統領就任とともに事態は一変した。
 朴大統領全否定の世論のムードの中で選出された文在寅は、慰安婦問題では「被害者中心主義」を標榜。18年11月21日、慰安婦「和解・癒し財団」の一方的解散を行った。
 さらに致命的となったのは、徴用工問題で最高裁大法廷によって18年10月30日に新日鉄住金(現日本製鉄)が、同年11月29日には三菱重工が確定有罪判決をうける事態となったことである。文政権がこういう判決が出るように、さまざまなアレンジをしたとの報道も伝えられた。
 このままこの判決が執行されれば、判決に従わない企業に対する強制執行は時間の問題となる。日本製鉄、三菱重工と同じ立場にいずれ立たされる可能性のある会社は、299社に上るとも報道された(「朝日新聞」13年7月11日)。日本政府は、韓国政府に対し、請求権・経済協力協定第3条に基づく外交経路を通ずる話し合いおよび不調の場合は同条に基く仲裁裁判への付託を提案したが、韓国側からの反応はなかった。
 G20を目前に控える今年6月19日、韓国から「日韓の企業が自発的に基金を作って勝訴が確定した原告に賠償相当額を払う」との提案がなされたが、国際約束を守らない判決を基礎とするこの提案に安倍政権が即了解することはなかった。安倍政権は、文政権のやり方は受け入れがたいということを明示するために、日本外交においては、異例中でも異例な「対話の拒否」戦術を、大阪G20で繰り広げた。
 ここまでは大方の予想通りだったと思う。

安倍政権が与えた
絶好の「口実」


 しかしながら、G20終了後ただちに日本政府は、韓国半導体製造に必須の化学製品3品目の輸出管理の規制強化を発表し、7月4日より開始、8月2日には、輸出管理の優遇国「ホワイト国」27カ国のリストから韓国を削除する閣議決定を行った。
 徴用工問題で企業への実害が生じていない段階で、「輸出管理」という新しい問題を理由に韓国企業に実害をもたらしうる措置をとったことは、「日本から最初に叩かれた」というイメージを瞬時に作り上げ、「日本からの攻撃に挙国一致で対抗する」という絶好の「口実」を文大統領に与えてしまった。韓国人のもつ「恨」の深さからすれば、予想すべき事態であったと言わねばならない。
(以下、本誌をご覧ください)
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