巻頭言
枝廣淳子の


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枝廣淳子
(幸せ経済社会研究所所長)





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気候非常事態宣言
日本初自治体は?

 お盆休みの日本を台風が直撃しました。事前の警告や交通網の事前予告による運休などで、大きな被害や混乱がなく済んでほっとしました。それにしても、最近の台風は強大化しているように思いませんか?
 私のスマホにはほぼ毎日気象庁から「高温注意情報」が届きます。「原則運動は禁止」とのこと、今どきの子供たちは夏休みの部活もできないのだなあと思います。今年7月29日からの1週間で、日本で57
人が熱中症で命を落としました。続く8月5日からの1週間では1万2751人が救急搬送され、23人が亡くなっています。
 東京都および主な政令指定都市等の2000年から15年までの救急搬送された熱中症患者数をみると、10年以降、大きく増加していることがわかります。厚生労働省人口動態統計では、熱中症による死亡数は、1993年以前は年平均67人ですが、94年以降は年平均492人に増加しており、記録的な猛暑だった10年は1745人が亡くなっています。
 前代未聞の豪雨や水、山崩れや地滑りなど、各地に被害が出ています。1つ1つの災害が「温暖化のせい」とは断言できませんが、温暖化が進行すればこういった被害が増大すると予測されており、まさしくその通りになってきています。「温暖化はもっと先の問題だと思っていたが、そうではなかった」と実感する人が増えてきているのではないでしょうか。このままではますます異常気象やそれのもたらす被害が大きくなっていくのではないでしょうか。国民や住民の暮らしはもちろん、まずは命を守る必要がある国や自治体は、どう対処したらよいのでしょうか。
 温暖化の被害の悪化による危機感を背景に、世界では「気候非常事態宣言」を出す自治体が増えています。世界ではじめて宣言を行ったのは、16年12月の市議会で決議したオーストラリアのデアビン市でした。その後、17年にはオーストラリアと米国の3自治体が、18年には約380の自治体が宣言しています。19年5月時点の宣言自治体数は、8カ国約520でしたが、その後も急速に増えています。英国では7月だけでも95自治体が宣言しているのです。8月2日現在、世界18カ国903自治体が宣言しています。宣言している自治体の住民数を合計すると約2億600万人にも及びますから、決して小さな動きではありません。また、今年5月から7月には、英国、アイルランド、ポルトガル、カナダ、フランス、アルゼンチンが、国家として気候非常事態宣言を行いました。「このままではいけない!」という危機感が国全体で共有されているのです。
 このように、気候非常事態宣言の動きは世界的に急速に拡大しているのですが、日本ではどうでしょうか? 残念ながら8月20日現在、気候非常事態宣言を行っている自治体は日本ではゼロです。5月には京都市と東京都が、6月には横浜市が「2050年までにCO2実質ゼロ(排出量を吸収量の範囲に抑える)」というパリ協定の1.5℃目標と整合する削減目標を公表しています。しかし、より踏み込んで、議会も巻き込んでの気候非常事態宣言には至っていません。
 気候非常事態宣言の目的は、政府や自治体が気候非常事態を宣言することで、社会の人的・財政的資源を十分な規模と速度で動員し、私たちの文明や経済、人々、生物種や生態系を守ることです。日本でも温暖化の被害が明らかになってきているのに、なぜ日本の自治体は気候非常事態宣言を出さないのでしょうか?「どこも出していないから」? 前例重視の風潮が強い国なので、1つ出てくれば、続くところが出てくるでしょう。最初の1つよ、早く!
 温暖化の現状と見通しにしっかり向き合い、住民の命と暮らしを守り、将来世代への責任を果たそうと、日本で最初に宣言を出すのはどの自治体でしょうか?
(幸せ経済社会研究所所長)


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