ダミー
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 イージス・アショアにいまだに燻る選定問題

 最終的には一兆円を投じるといわれるイージス・アショアのレーダー選定問題が燻っている。昨年7月、防衛省はロッキード・マーチン社の「SSR」を選定。対抗のレイセオン社「SPY−6」は敗れた。当時から「なぜ実績のあるSPY−6ではなかったのか」という疑問の声が上がっていたのだが、予算化して契約が結ばれる直前となった今も、「見直したほうがいい」との意見が絶えず、国会で防衛族議員が改めてこの問題を質し、週刊新潮は「神の盾に穴という亡国のイージス・アショア」という短期集中連載を行った。
 米海軍や海上自衛隊が誇るのがイージス艦の防空システム。巡航ミサイルなどをレーダーで捉えて迎撃する。その戦闘システムを陸上に移したのがイージス・アショアだ。陸上自衛隊新屋演習場(秋田市)と、同むつみ演習場(萩市)の2カ所に設置して日本全域をカバーする構想だ。
 設置されれば基地が攻撃対象となるうえ、強力なレーダー波による健康被害も指摘され、地元の理解は不可欠。だが、グーグルアースと分度器で山の仰角計算を行うなど、重要な国防施設を設置するにあたって、現地にも赴かない杜撰なやり方で候補地を選定していたことが明らかになった。しかも説明会で幹部が居眠りをする緊張感のなさ。陸自の本気度が問われるが、今、再燃しているのはイージス・アショアの最も大切なレーダーの再考論である。
 海自元幹部が言う。「実績のないSSRでしたが、基本性能、後方支援、経費などあらゆる観点からSPY−6より優れているという評価でした。またSSRでは日本企業が参画する余地があるとされていた。だからSSRに決まったんですが、決定後、次々に覆されています」。
 まず、開発中のSSRは基本性能を調べる環境がなく、納期などの点ではSPY−6より劣る。また、経費については実験施設建設費やミサイル迎撃実験費用などを算入しておらず、それを含めるとSPY−6に分がある。さらに、当初はT撒き餌Uのように、「レーダー素子に富士通のガリウム半導体を採用」などとアナウンスしていたが、その後の調査で価格と納期に支障が出るとして国産品は採用しないことになった。
 SSRの欠点が露わになり、「見直し」の声が高まっても「一度決まったものは覆さない」という霞が関の慣例に則って、ロッキード・マーチンとの契約は目前。そこでミサイル防衛に詳しい専門家が、メディアや国会などあらゆる場で、逆転を狙って活動中というわけだ。


 永田町スズメが早くも内閣改造人事に興味津々

 参院選後に行われる内閣改造・自民党役員人事を巡って選挙前から永田町スズメの間で「内示」が飛び交っている。当たるも八卦当たらぬも八卦だが、それなりに理屈がついているから皆気にかかるようだ。
 まず人事の時期は、慣例を踏まえて8月初旬が有力視されているが、首相周辺では9月上旬説が取りざたされている。臨時国会の召集時期や安倍晋三首相の外遊日程を考慮したものらしい。
 安倍首相を支える「トライアングル」といわれる菅義偉官房長官、麻生太郎副総理兼財務相、二階俊博幹事長の処遇が最大のポイントとなるが、ここにきて菅氏の株が急上昇している。新元号発表を機に国民の間で「令和おじさん」として知名度がアップした菅氏は参院選中、全国十八カ所で選挙応援に駆り出され、自民党議員の中でもトップクラスだった。菅氏に近い無派閥議員による政策勉強会「令和の会」も発足した。自民党無派閥議員の半数以上を束ねており、麻生、二階両氏と肩を並べる実力者になっている。一部には「ポスト安倍は菅氏だ」という声があり、本人も首相ポストに意欲を隠さない。高齢の二階氏に代わって幹事長に就任する可能性もある。その際、二階氏は副総裁に就く。
 ただ、参院選で自民党が勝利した場合、幹事長を交代させる理由はなくなる。二階氏本人も続投を望んでおり、その時に菅氏は官房長官続投が見込まれる。
「ポスト安倍」を争う候補者とされる岸田文雄政調会長、加藤勝信総務会長、茂木敏充・経済財政担当相のポストも注目度が高い。安倍首相と衆院当選回数同期組の岸田氏にはキャリア・アップのため財務相就任説がある。その際、「首相に最も近い麻生氏だけを外すわけにいかない」(首相周辺)ので、麻生氏は副総理兼五輪担当相に回ることが予想されている。
 首相の信任が厚い加藤総務会長はポスト安倍候補として急速にのし上がってきた。口が固いうえ、経済に明るいことから財務相候補にもなっている。財務官僚出身でオール財務省が加藤氏を推している。
 茂木経済財政担当相は、日米貿易交渉を通訳なしでタフな交渉に臨んでいることから、一気に首相周辺で株が急上昇した。東大卒後、ハーバード大学、マッキンゼー入社という英語力には外務官僚も舌を巻く。本人は外相を希望しているそうだ。
 さて、ふたを開けてみたら、どうなるか。


 有志連合結成の動きに日本も護衛艦派遣検討

 トランプ米政権がホルムズ海峡を航行する民間船舶を護衛するため同盟国と有志連合の結成を目指すと表明したことを受けて、政府は護衛艦派遣の検討を始めた。
 問題は、民間船舶を護衛するのに適当な国内法がないことだ。「集団的自衛権の行使」や「他国軍の後方支援」を名目とするには、日本と密接な関係にある国が交戦状態にあることが不可欠だが、現状で戦闘は起きていない。
 ソマリア沖の海賊に対処するために制定された海賊対処法は、海賊にしか対処できず、相手がイラン軍やイラン革命防衛隊といった軍隊には対処できないことになる。
 最後に残るのが、自衛隊法の海上警備行動だ。海警行動は、国内で警察権を行使する海上保安庁の対応能力を超えていると判断された場合に限定して発動される。だが、海上警備行動は、あくまで警備なので武器使用のハードルは高い。必要な場合は威嚇射撃までは認められるが、相手に危害を与える射撃ができるのは、正当防衛・緊急避難に限定される。相手が軍艦や公船だった場合は、さらにハードルが上がる。
 護衛艦を派遣しても、外国軍艦や公船が発砲せずに日本の民間船舶をだ捕したり、針路妨害するなどの行動をとっても武器で対抗するのは困難とみられる。
 防衛省幹部は「護衛艦を派遣するなら特別措置法などの新法制定が筋」と言うが、米政府は有志連合の結成を急いでいるため、結局、海上警備行動による派遣に踏み切り、何事もなく終わるのを祈るほかなさそうだ。


 東京地検特捜部が捜査、久々に中央政界にメス?

 東京地検特捜部が中央政界絡みの捜査に着手した。福岡市の会社役員、川崎大資容疑者らが、企業主導型保育事業に絡み、横浜幸徳信用組合(横浜市)から約1億1000万円を騙し取ったという事件が発端となった。
 この事業は、2016年4月、待機児童を減らし、女性の育児と仕事の両立を促すために保育所の数を増やす目的でスタート、これまでに約三千八百億円が投じられた。だが急いだ分、制度設計が甘く、そこに目をつけたのが川崎容疑者だった。
 実は川崎容疑者には、旧名の塩田大介時代、経営する不動産会社「ABCホーム」で行った脱税や競売妨害容疑で逮捕されたという前科があり、「特捜部のお客さん」だった。
「人脈は中川秀直元官房長官を結婚式の仲人にしたほどで、政界、実業界、芸能界、スポーツ界にまで及んで幅広い。今回も、事件の背後に政
治家の影が見えることから特捜部の出番となった」(検察関係者)
 その政界ルートと目されているのが秋元司内閣府副大臣。川崎容疑者とともに逮捕された不動産会社「J-Alive」社長の板倉真容疑者が、逮捕前にメディア取材に応じ、川崎容疑者の紹介で企業主導型保育事業を管掌する秋元内閣府副大臣に会い、「銀行融資のお願い」などをしたうえで、「パーティー券を購入した」と、明かしている。
 職務権限のある政治家に陳情して献金もしたとなれば、構図としては贈収賄である。検察は久々に中央政界にメスを入れるのか。だが、特捜部経験の長いヤメ検弁護士は、「ハードルは高い」という。
「何かと利権絡みの話が多かったK元代議士のもとで秘書を務めた秋元氏は、違法献金は熟知している。パーティー券は川崎容疑者に取りまとめを依頼して処理。しかも政治資金収支報告書に記載して表で処理している」(同弁護士)
 政界ルートに至る壁は高そうだ。


 韓国は国際社会で致命的打撃を受ける

 G20後に日本政府が韓国向けに発動した特定化学物質3品目の輸出優遇解除で、日韓の軋轢は新たな段階を迎えた。しかし、この問題のことの重大さをいまだ正確に認識できない韓国の文在寅大統領にとっては、今後の米国や欧州諸国の出方次第では国際社会で韓国は致命的な傷を負うことにもなる。
 最も重要な点は、文政権になり韓国企業が日本から輸入したフッ化水素が北朝鮮や、またその後に北朝鮮を経由してイランに流れ、それらの国の核開発に利用されてきたとみられることだ。特に、韓国海軍を通じて北朝鮮の漁船を装った工作船に瀬取りをさせ、これが北の核開発に流用されているという。レーダー照射事件もまさにそれらの瀬取りを発見した自衛隊機を韓国軍が追い払うためであったとされる。
 北との民族融和を第一義と考える文大統領は、北の核もいわば朝鮮民族の核とみなし、それを背景に日本には強硬姿勢を続けられると誤解している節がある。
 しかも米国は、その特定物質が北経由でイランの手に渡り、濃縮ウランの製造を高めるとのイラン政府声明につながるものとみている。そして、北朝鮮からの輸出の元となっている韓国を締め上げ、究極的には韓国も対テロ支援国家に指定する考えもトランプ政権内で検討されるようになったという。そうなれば韓国は国際社会で致命的な打撃を受けることになりかねない事態となる。


 世界的包囲網に晒されるフェイスブック「リブラ」

 米フェイスブックが2020年のサービス開始を計画しているデジタル通貨「リブラ」に対し、主要国の政府、中央銀行が警戒感を強めている。何しろ国境を越えて広がる交流サイトの潜在的利用者が27億人にも達する巨大プラットフォーマーが運営するとなれば、通貨に対する国家権限、さらに金融政策といったこれまで堅持してきた秩序が脅かされかねないと判断したからだ。
 実際、六月にフェイスブックが計画を発表すると、通貨の危機と捉えた主要国の間に瞬く間に“リブラ包囲網”が形成された。国際基軸通貨ドルを抱える米国は、中央銀行に当たる連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が7月10日、プライバシーやマネーロンダリング(資金洗浄)、消費者保護、金融安定化などで「多くの深刻な懸念を引き起こす」と素早く反応し、ムニューシン財務長官に至っては「国家安全保障上の問題」と断じた。
 米議会はさらに強硬で、7月16、17両日の上下院それぞれの公聴会でフェイスブック批判を繰り広げた。さらに、国際通貨基金(IMF)は15日、デジタル通貨に関する報告書で中銀による金融政策が機能しなくなるリスクを指摘した。
 こうしたリブラ包囲網は、十七、十八日にパリ北部のシャンティイで開かれた先進7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議で決定的になった。議長国のフランスはリブラなどのデジタル通貨に対し、「最高水準の規制を満たし、信頼されるものでなければならない」との総括を公表した。
 ただ、リブラはフェイスブックが単独で提供するわけでなく、マスターカードやVISAといったクレジットカード大手やIT企業が加盟するスイスに本拠を置く「リブラ協会」が運営に当たり、加盟企業は拡大する予定だ。フェイスブックは米議会で規制ができるまでサービス開始は見合わせると当局の意向に沿う低姿勢に徹する。
 またリブラは口座を持たない人も利用でき、あらゆる人が金融サービスを受けられる金融包摂にもかなうことから、G7の議長総括はデジタル通貨、コストがほとんどかからない海外送金や決済の利便性など消費者のメリットも明記した。
 ビットコインに代表される投機的な仮想通貨と異なり、ドルなどとの交換を可能にするリブラは既存の通貨を補完する機能も備える。その意味で、主要国には排除一辺倒だけでなく、既存通貨と共存可能な規制の枠組みと監督体制の確立が急がれる。


 ソニーの半導体部門を巡り米株主と取引銀行が対立

 世界的に著名なアクティビスト(物言う株主)であるダニエル・ローブ氏が率いるサードポイントが株式を保有するソニーに対して、半導体部門をスピンオフ(事業の分離・独立)し、エンターテインメント事業に集中するよう求めている。しかし、ソニーの取引金融機関からは、「ソニーは半導体事業を売却してはいけない」(取引銀行幹部)と反対する声が数多く聞かれる。はたしてどちらの言い分が正しいのか。
 ローブ氏が半導体事業の分離・独立を主張するのは、ソニーの株価が同業に比べ過小評価されているためだ。「ローブ氏は、ソニーは多様な事業を抱えるために企業全体の資本効率が落ち、株価が割り引かれて評価されるコングロマリットディスカウントされているとみている」(市場関係者)とされる。サードポイントがソニーに送った書簡にも「半導体部門を分離すれば5年以内に350億ドル相当の価値の企業になる可能性がある」と記されている。市況の動向に大きく左右され、業績の浮き沈みが激しい半導体事業を切り離せば、株価も上昇するという主張だ。
 これに対して取引銀行の幹部は、「ソニーにとって半導体事業は連結利益の20%弱を占めるにすぎないが、スマホのカメラに使う半導体が主力で画像センサー技術は世界トップクラス。むしろソニーの収益の半分以上を占めるゲーム、娯楽の収益の下支えをしている」と反論する。
 実は、サードポイントは2013年にもソニー株を取得し、映画などエンターテインメント事業の分離・独立を要求した経緯がある。この要求に屈せずにその後、ソニーの復活を主導したのが平井一夫社長(当時)と側近の吉田憲一郎氏だった。その平井社長が昨年6月に退任し、その後を受け社長となったのが現・吉田憲一郎氏だ。
 ソニーの経営環境は楽観視できるものではない。ソニーの屋台骨を支えるのはプレイステーションに代表されるゲーム事業と金融事業だが、「米中貿易戦争の影響もあり画像センサーが減速、金融部門も下方修正を余儀なくされている。かつ、最大の懸念材料は、グーグルによるゲーム市場への参入だ」(電機アナリスト)。グーグルのゲーム・プラットフォーム「STADIA」は、グーグルのデータセンターでゲームを動かし、動画として配信することで、スマホやパソコン等で質の高いゲームを提供するもの。ソニーのプレステが脅かされかねない画期的な商品だ。
 はたして財務に精通した吉田社長は、サードポイントの提案に対してどんな決断を下すのか。


 かんぽ生命問題で高まる横山社長への社員の不満

 保険料の二重払いや新契約を締結後に契約前の病気を理由に保険金が出ないなど不適切な保険販売が相次いで発覚したかんぽ生命。新契約をとった販売員に対する評価体系や目標設定を見直すなどの対応策を打ち出したが、顧客に不利益が生じた契約は約10万件に上る。日本郵便主導の「ノルマ販売」への郵便局員の不信感も高まって前途は多難だ。
 持ち株会社日本郵政の100%子会社の日本郵便は、かんぽ生命の保険商品の約九割を、全国津々浦々の郵便局員に販売させている。郵便局員への厳しいノルマ設定が原因であることへの内部からの批判を、日本郵便が「SNS厳禁」の通達で封じ込めようとして強い反発を招くなど混乱が続いている。
 日本郵便の社長は三井住友銀行出身の横山邦男氏。郵政民営化直後にグループを統括する日本郵政のトップについた西川善文氏が引き連れてきた人材だ。西川氏は三井住友銀行のドンで旧さくら銀行との統合や不良債権処理などに辣腕を振るい「ラストバンカー」と称された存在だ。しかし、その西川氏は日本郵政社長時代に起きた「かんぽの宿」問題などの一連の不祥事を受けてあえなく退任。日本郵政の専務執行役員を務めていた横山氏も西川氏を追って同じ時期に同社を去った。
 横山氏は「チーム西川」の側近として日本通運の「ペリカン便」と郵便事業会社の「ゆうパック」との統合を仕掛けた。しかし、統合に手間取り、結局、統合新会社は清算を迫られ日本郵便に900億円超の損害を生じさせた「JPEX問題」で中心的な役割を果たした人物だ。
 この頃から日本郵便内には横山氏への批判が渦巻いていたが、「まさか日本郵便の社長になって戻ってくるとは思わなかった」(日本郵便の局員)。かんぽ生命の一連の問題で横山氏も謝罪会見に臨んだが、「反省」という言葉もなく、今回の事態を招いたことへの「社長としての責任」についての言及もなかった。
 旧三井住友銀行張りのかんぽ生命の「ノルマ営業」については総務省が今年六月に日本郵政に対し、傘下のかんぽ生命等の不適切営業について、グループ全体のコンプライアンスの徹底と、活動の適正化を指導している。しかし、その後も局員による不適切販売は改善されなかった。謝罪会見で郵便局員への過剰なノルマが不適切販売につながったとして、新契約をとった販売員に対する評価体系や目標設定を見直すこと、二重に徴収していた保険料の返還を進め、乗り換えの推奨もやめるなどの改善策を明らかにした。さらに今後の調査で販売局員の法令違反などが判明した場合「厳正に処罰する」としたが、「そもそも横山氏が日本郵便の社長にいること自体が問題だ」(同)として、労使間での亀裂は深まる。


 米中の狭間で悩ましいファナックや東京エレ

 米中の貿易摩擦が激化する中、中国にも大きな顧客を抱えるファナックなど工作機械メーカーや東京エレクトロンなど半導体製造装置メーカーが苦戦している。
 米国は経済・技術覇権を狙う中国政府が掲げる「中国製造2025」を警戒し、その中で掲げるロボットや半導体産業に対し、要素技術が中国に流れるのを厳しく禁じている。
 次世代通信網・5Gの分野で台頭する華為技術(ファーウェイ)を米国市場から締め出そうとする動きに対し、中国は華為製のスマートフォンや5G基地局などに使う通信用半導体を内製化する戦略を打ち出しているが、「中国の半導体製造技術は未熟で日欧米に追いつくにはまだ時間がかかる」(大手証券アナリスト)とみられている。
 先に日立製作所のグループ会社であるKOKUSAI・ELECTRIC(旧日立国際電気)を半導体製造装置で世界最大の米アプライド マテリアルズが買収したが、「中国勢もKOKUSAIの買収に動いていたこともあり、アプライドが中国勢に技術が流出するのを防ぐため買い取った」(同)とされる。ロボット技術も中国は「ドイツのファナック」と呼ばれる独クーカを家電大手の美的集団に買い取らせたが、米国と同様、技術流出を懸念する欧州(EU)の介入もあり、美的とクーカの関係も怪しくなってきた。
 その米中貿易戦争の狭間で揺れるのがファナックや東京エレクトロンだ。「ファナックは中国銘柄」と株式市場で言われるほど、中国は大きな輸出先だ。ライバルの安川電機は美的と提携し、ロボットの主力部品であるサーボモーターの販売を強化している。「クーカが中国での活動を実質停止していることは幸いだが、この状態が続くと先行きは厳しい」(ファナック幹部)と明かす。
 東京エレクトロンも状況は同じだ。同社は過去にアプライド マテリアルズと経営統合を目指したが、独禁当局との調整にてこずり、破断した経緯がある。今回、KOKUSAIをアプライドが掌中にしたことで中国以外の新たな売り上げ先を見つけるのがさらに困難になってきている。
「下手に中国との取引を増やそうとすると官邸からもにらまれかねない」との声も漏れる。米中の狭間で両社がこの“危機”をどう乗り越えるか。


 医療サービスに乗り出すパチンコ会社の不安材料

 高齢化時代を迎え、多くの企業がヘルスケア事業に参入する中、パチンコ関連の「Nuts(ナッツ)」が医療事業に進出した。ジャスダック上場の同社はパチンコやスロットマシンの画像や音楽などのコンテンツを企画、管理する。「オンラインゲームの普及でパチンコ人口が減少し、パチンコ事業は赤字。新規事業として医療サービスを始めた」という。
 同社はニューヨークのコロンビア大学病院メディカルセンターと提携。東京・新橋に同メディカルセンターのコンサルタントを受ける富裕層向け会員制の「ヴィデビムス虎ノ門クリニック」を開業した。もっとも、直前に「保健所を騙る不法侵入が起こり、内部写真がネットに掲示される」という珍事が発生。不法侵入者は同社の株主らしいが、おかげで開業が2カ月も遅れた。
 クリニックの看板は、コロンビア大病院メディカルセンターというブランドと、同大医学部外科部長で、臓器体外摘出・再移植のパイオニアとして世界的に有名な加藤友朗教授のコンサルティングだ。同大病院が蓄積した医療ノウハウをクリニックに導入し、「世界最先端の医療技術を駆使した今までにない医療コンシェルジュサービス」を提供すると謳う。
 ナッツは医療サービスの詳細を公表していないが、通常の人間ドックの検査に加え、遺伝子検査によるがん罹患リスクや医療相談などを行うものとみられている。驚くのは入会金の高額さだ。ダイヤモンド会員は800万円、プラチナ会員でも600万円、年会費も120万円。「セコム健康くらぶ」や「グランドハイメディック倶楽部」など、国内にいくつかある富裕層向け会員制医療サービスの3倍以上するが、すでに20人が入会したとか。同社では「世界にはこのくらいの入会金でも入る人は多い。特に日本での医療を望む中国人富裕層を狙う」(関係者)という。
 だが、赤字続きのナッツは医療事業進出のために次々に第3者割当による新株予約権付社債を発行。その割当先がタックスヘイブン(租税回避地)のケイマン諸島に登記するファンドが引き受けている。兜町では「赤字のベンチャー企業の増資を引き受けては株価を動かして儲ける札付きのファンド。医療サービスより会社が食い物にされないか心配」という声もある。
 斜陽のパチンコ事業からの転換という超高額な会員制医療サービスが果たしてフィーバーするか。


 レオパレス21を狙う村上世彰氏とインド資本

 不正建築で揺れるレオパレス21。調査が進むにつれ不備物件は増え続けている。7月9日には、過去に施行したアパートについて新たに2923棟で不備が見つかり、6月末時点で不備物件数は1万9689件に拡大した。
 また、不正施工物件のうち267棟が消防法もしくは火災予防条例の基準に適合していない恐れがあることが明らかになっている。しかし、調査が終わったのは全体の5割にすぎず、いまだに底が見えない状態にある。
 一方、国土交通省が求める早期の改修工事は大きく遅れており、7月16日には石井啓一国土交通相が記者会見で「現時点において取り組みが遅れていることは誠に遺憾だ」と非難した。国交省はレオパレス21に対し、夏前までの全棟改修を指示した物件のうち、6月時点で小屋裏界壁の不備物件で改修済みはわずか1割程度。また、10月までに全棟改修完了を指示した物件では、まだ2棟しか改修が終わっていない体たらくだ。国交省は今月末までに、改修が遅れている理由や今後の改修実施方針についてレオパレス21に報告するよう指示しているが、実現の目途は立っていない。
 こうした塗炭の苦しみに喘ぐレオパレス21株を急速に買い増しているのがアクティビスト(物言う株主)として名高い村上世彰氏だ。
 5月下旬には村上氏の娘らが運営する投資会社「レノ」が、レオパレス21株を12%まで買い増したと話題になったが、関係者によると、「レノをはじめ村上氏が関与するファンドのレオパレス21株の保有割合は足下では四割近くまで上昇している」という。すでに定款変更やM&Aなどの重要な特別決議について拒否権を発動できる水準で、実質的に支配権を掌握しつつあると見ていいだろう。
 はたして村上氏の狙いは何か。その鍵として注目されているのが、レオパレス21を狙うインド資本の動きだ。「まだ表面化していないことですが、インドの資本がレオパレス21の買収に色気を見せているようで、デューデリ(資産査定)を開始したとの情報があります」(関係者)という。村上氏はインド資本の動きを察知して、先回りするようにレオパレス21の株式を買い増し、買収で株価が急騰したところで売り抜けるのだろうか。
 いずれにしても自己資本比率は0.9%と債務超過目前で、Xデーは近いといわれるレオパレス21。インド資本としては法的整理された後に買収するほうが得策なはずだが……。村上氏とインド資本という新たなプレーヤーから目が離せない。


 新幹線の運転免許を持つルネサス新社長は46歳

 半導体大手ルネサスエレクトロニクスの呉文精社長兼最高経営責任者(CEO)が6月末で辞任し、後任に46歳の柴田英利最高財務責任者(CFO)が昇格した。だが、呉氏は3月の定時株主総会後の取締役会で再任されたばかり。再任3カ月で辞任する異例の交代劇だ。
 直接的には、ルネサスの指名委員会が「(呉氏は)今後の経営トップとしては期待を満たしていない」と交代を推奨したためだが、「背景には経営の路線を巡る呉氏と柴田氏の対立があり、大株主の産業革新投資機構や経済産業省の意向が働いている」(関係者)とみられている。
 世界で戦える日の丸半導体を目指して2010年に発足したルネサスだが、11年の東日本大震災やその後の円高で経営危機に陥った。官民ファンドの産業革新機構(現・産業革新投資機構)や国内大手メーカーの支援を受け、大規模な人員削減や工場閉鎖を断行、15年3月期には黒字化を達成するまで回復した。
 その後の成長路線を託されて16年6月に社長に就いたのが、日本興業銀行出身で、日産自動車の中核子会社であるカルソニックカンセイ社長や日本電産副社長を歴任した呉氏だった。しかし有利子負債は膨張する一方、主力の自動車向け半導体などでシェアが低下。そこに米中経済摩擦に伴う中国経済の減速が重なり、19年1〜3月期の連結営業損益は12億円の赤字に転落した。呉氏は結果責任を取ったものと見ていい。
 一方、社長に就く柴田氏は、JR東海から産業革新機構に転じ、13年にルネサス入り。産業革新機構時代にルネサスの再建スキームを手掛けた「陰の立役者」で、ルネサスでもCFOとして呉氏を支えた。「若く、経産省とも気脈を通じたやり手」(関係者)というのが柴田評だ。新幹線の運転免許も持つ柴田新社長は、ルネサスを疾走させることができるか。


 大口融資先の窮地入りで西京銀行が“スルガ銀化”

 「スルガ銀行のようにならなければいいのだが」。メガバンクの幹部がこう懸念するのは山口県に本店を構える西京銀行だ。いち早くインターネット銀行構想をぶち上げたり、女性副頭取を起用するなど斬新な経営で知られる地方銀行だが、積極的な首都圏進出と不動産事業者向け融資の拡大に思わぬ落とし穴が待っていた。
 建設資金の借入希望者の預金データ改ざんが発覚した不動産大手のTATERUは、6月に国土交通省から7日間の業務停止命令を受けたが、そのメインバンクがほかならぬ西京銀行。地元だけでは食えぬゆえに東京の不動産マーケットに傾注。最有力の融資先がTATERUだった。
 しかし、業容拡大を急ぐあまり、TATERUが不正に手を染めた。国土交通省(関東地方整備局)によると、同社は2018年7月頃までの約3年間にわたり、336件の売買契約を締結する際、買い主が提出した融資書類を改ざんし金融機関に提出していた。改ざんは画像ソフトを使用し、数字を切り貼りして預金残高を書き換えていた悪質なもので、スルガ銀行が陥ったスマートデイズの改ざんと酷似している。
 TATERUが経営危機に瀕すれば、そのツケは西京銀行に及ぶ。それに加えて、アパートを経営するオーナーも借入金を返せなくなれば、その負債も西京銀行にのしかかろう。第2のスルガ銀行にならなければいいのだが……。


 日産自の監査委員会を担うのは永井荷風の孫

 日産自動車(以下・日産)は六月の定時株主総会で新任取締役11人を決定した。日産から西川広人社長兼最高経営責任者(CEO)と5年ぶりに復活したCOO(最高執行責任者)に就いた山内康裕氏が、提携関係にあるルノーからジャンドミニク・スナール会長とティエリー・ボロレCEOが入った。同時に日産は監査役会設置会社から指名委員会等設置会社に移行。それに伴い、「指名委員会」「報酬委員会」「監査委員会」の3つの委員会が設置された。
 そんな中、金融界で密かな話題となっている人物がいる。監査役を退任し、取締役に就いた永井素夫氏だ。
 永井氏は、旧日本興業銀行(現みずほ銀行)出身で、みずほコーポレート銀行常務、みずほ信託銀行副社長を歴任した後、日産の監査役に就いた。「銀行員時代は国際畑で海外勤務も長い。国内では営業部で東京電力などの大企業を担当した」(みずほ銀行関係者)という。
「実は永井氏は、『?東奇譚』で有名な作家・永井荷風の孫なのです。永井荷風も若い頃に、横浜正金銀行に務め、海外勤務もある。また、浅草の踊り子や劇場関係者との交友はつとに有名だが、孫の素夫氏も日本人離れした洒落モノです」(同)
 ゴーン問題を機に、ガバナンス改革が待ったなしとなっている日産にとって、「リスク管理などの分野において豊富な経験と知見を持つ永井氏は、監査委員会の委員長に適任ではないか」(日産関係者)といえる。
 永井荷風は横浜正金銀行リヨン支店に8カ月勤め、退職後はパリで外遊している。ルノーとの経営統合問題が燻る日産だが、永井家も祖父、孫ともフランスと縁があるようだ。


 ドコモvs.ソフトバンク、位置情報サービスで火花

 高精度の位置情報サービスを巡り、NTTドコモとソフトバンクが今秋の商用化を目指して火花を散らしている。これまでの位置情報サービスでは「数メートル」の誤差が生じていたが、両社とも誤差を「数センチメートル」まで縮めるという。
 位置情報サービスは、「衛星測位システム(GNSS=Global Navigation Satellite System)」の観測データを地上に設けた「基準点」で補正して提供し、受信機が現在地を計算する仕組み。両社とも、「GNSS」と自社で構築した独自の「基準局」を組み合わせて、高精度の位置情報を提供しようとする点は同じ。先行したドコモが「誤差2センチメートル以内」をアピールしたのに対し、わずかに遅れたソフトバンクは「誤差1.4センチメートル以内」と胸を張る。
 ドコモは、新サービスを「GNSS位置補正情報配信基盤」と名づけ、「GNSS」の観測データを国土地理院が全国に設置している約1300局の「電子基準点」と独自に設置した「ドコモ独自基準局」で補正し、携帯電話のネットワークを通じて配信。当面は、建設機械大手のコマツと組み、コマツがICT建機を運用する工事現場の周辺に「ドコモ独自基準局」を設置する。
 一方、ソフトバンクは、サービス開始当初から全国3300カ所に「独自基準局」を設置し、いきなり全国一斉サービスを展開する構えだ。サービス対象地域を順次拡大していくドコモの方針とは対照的。既存の通信基地局を活用するためで、大幅なコストダウンも見込めるという。
 実証実験では、ヤンマーアグリと組んで農業機械の自動運転、建築分野では鹿島建設と共同でドローンによる建設現場の状況把握、交通分野でSBドライブとともにバスの自動運転システムの展開を進める。


 睡眠不足に警告! 動脈硬化を引き起す

 脳血管系の病気の最大リスク要因が動脈硬化であることは、よく知られている。動脈硬化は年齢を重ねるにつれ進行するが、個人差も大きく、食事や運動に気を付けていても、健康診断で血管年齢が高いと指摘された人もいるはず。その原因が睡眠不足にあることが、最近の調査でわかってきた。
 米国のシカゴ大学での調査によると、睡眠時間が短い人ほど、動脈硬化になりやすいことが示唆された。この調査は中年男女495人を5年間にわたって調査したもの。
 それによると、1日の睡眠時間5時間未満の人は睡眠時間7時間以上の人に比べ、動脈硬化の進行リスクが4.5倍にもなるという。
 また、睡眠時間7〜5時間の人でも、7時間以上の人よりリスクが約2倍になるというデータも出され、睡眠と動脈硬化との関係は、これまで考えられていた以上に密接だということがわかってきた。
 最近よくいわれる「睡眠負債」は、睡眠不足が健康に大きなダメージを与えることを警告する言葉だが、事実、睡眠が不十分だと、糖尿病や心臓疾患、脳血管障害、肥満、がんなどのリスクを高めることがわかってきた。
 日本のある調査によると、血管年齢が実年齢より10歳以上高い人(例えば、60歳で血管年齢70歳)には共通の特徴があるそうだ。それは、飲酒、喫煙、塩分の摂りすぎ、睡眠障害の4つ。つまり、動脈硬化を予防するには、この4つをできるだけ避ければいいということになる。


 毎日が200人早期退職募集、背景に不動産の「枯渇」

 毎日新聞が社員1割に当たる200人の早期退職を募集するが、背景のひとつに頼みの綱の不動産の「枯渇」がある。
 すでに主要資産はかなり金融機関の担保に入っており、増え続ける新聞の赤字を消す不動産開発は、すでに手持ち資産の切り売りなしにやりにくい。つまり、大手デベロッパーと共同で不動産開発するには資産をかなり売って、開発資金を出す相手側に渡す戦略しかない。
 竹橋の毎日東京本社もかなりの数の担保権がついており、築後半世紀を超え、建て替えが課題だが、これでは自社開発の身動きはとりにくい。高層化にも皇居前では限度がある。
 毎日新聞が持つ土地で再開発を一緒にする(お金を出す代わり再開発ビルの不動産を獲得する)企業を募れば、毎日本社の界隈に土地を持つ三菱地所、住友商事、NTTグループなどが手を挙げそうだ。そして、伏兵として注目されるのが西鉄だ。毎日は2016年、東京・日本橋の西鉄日本橋ビルを、西鉄から取得。同時に福岡・天神の毎日福岡会館(西鉄系ホテルが入居)を、西鉄に譲渡した。毎日は独自で老朽化した毎日会館の建て替えをあきらめ、税務対策も狙い、2つのビルを両社が等価で交換したのだ。
 毎日が資産を切り売りするとなれば、不動産にまで「希望退職」を募る形となる。売却しない限り含み益はリストラ資金にならないからだ。
 毎日も一時は不動産の賃貸業の営業利益が朝日新聞を上回っていたが、今回のリストラは世田谷工場売却で人員削減を練る朝日のリストラ策が刺激になったようだ。


 仏の「GAFA課税」にトランプ政権が報復も

 7月17、18両日にフランス北部シャンティイで開かれた先進7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議では、米IT大手フェイスブックが計画する暗号資産(仮想通貨)「リブラ」への「最高水準の規制」が必要、とする議長総括が発表されたが、巨大IT企業の課税逃れも主要議題に上った。この問題をめぐっては、議長国のフランスが独自に導入する構えであるのに対し、巨大IT企業を擁する米国は反発しており、米仏通商摩擦に発展する可能性がある。
 フランス上院は7月11日、世界売上高が年7億5000万ユーロ(約915億円)以上で、かつフランス国内での売上高が2500万ユーロ(約30億円)以上のIT企業に対し、フランス国内でのデジタル関連サービスを対象に3%を課税する「デジタルサービス税」法案を可決した。マクロン大統領が署名すれば、実際に施行される。
 グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンから成る「GAFA」と呼ばれる巨大IT企業を抱える米国のトランプ政権は、「米企業を狙い撃ちにしたものだ」(ライトハイザー通商代表部代表)とけん制していたが、ルメール経済・財務相は「フランスは主権国家であり、税制は自分たちで決定する」と宣言した。
 巨大IT企業の課税逃れをめぐっては、20カ国・地域(G20)や経済協力開発機構(OECD)が2020年中の国際ルール取りまとめを目指して議論を進めている。欧州連合(EU)も導入を検討していたが、税制優遇措置を通じてIT企業の誘致に成功してきたアイルランドなどが反対し、EU挙げての導入は見送られた結果、フランスが単独での導入に踏み切った。あくまで課税を実施するなら、米政権は制裁措置を辞さぬ考えだ。


 中国「北極圏航路」に各国が警戒強める

 国産と称する砕氷船「雪龍2号」を投入、「『氷上のシルクロード』北極圏航路の開拓」と言い張る野心的な中国の北極圏ルート参入に、各国が神経を尖らせている。
 地球温暖化で北極圏の氷が溶けると、砕氷船の航行は比較的有利となる。中国は資源探査、海底調査などを目的に科学者、地質学者、天候専門家など五十人を乗り込ませた雪龍2号を年内に就航させるという。
 7月初旬、上海の造船所で「雪龍」2号のお披露目があった。1号は冷戦終結後に資金不足に喘ぐウクライナから購入した。中国が国産品と自賛する2号船は、エンジンなどは外国製だ。全長122メートル。1万3999トン、乗組員99人。2カ月間の無寄港航海が可能という。
「あくまでも商業用の距離短縮に繋がる」とする中国に対して、各国は一貫して軍事利用を懸念する。
 直接利害がぶつかるデンマーク、ノルウェーは漁場や海底資源を気にする。アイスランドは凍土を開発してレジャーランドを造成するとした中国企業の提案を拒否した。米空軍基地があるグリーンランドを領有するデンマークは中国の開発提案を拒否した。米国・カナダは北極圏にミサイルの観測、監査基地を置いている。自分の庭先を荒らされることになるロシアの警戒心は米国以上で、潜水艦が北極圏を通過するときは浮上航行を義務づけ45日前の届け出を必要とすると新規則を公にした。「氷上のシルクロード」開拓はスムーズに進むのか。


 妥結のめどが立たない自由貿易圏RCEP

 世界最大の自由貿易圏となる東アジア地域包括的経済連携(RCEP)交渉に暗雲が垂れ込めている。年内妥結を目指すが、交渉対象の18分野のうち合意済みは7分野。「あと数カ月で妥結できるだろうか」とある交渉官はため息をつく。
 RCEPは東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国のほか、日本と中国、韓国、インド、オーストラリア、ニュージーランドの計16カ国が目指している自由貿易の枠組み。2013年に始まった交渉がまとまれば、世界人口の半分、世界の国内総生産(GDP)と貿易総額のそれぞれ3割を占める巨大広域経済圏が誕生する。
 16カ国は昨年末の首脳会合で、19年中の妥結を目指す方針で一致、期限としていた昨年末までの妥結が困難になり1年間延ばした形だ。しかし、もともとは17年末に予定していた妥結期限を18年末に延期した経緯がある。毎年のように翌年に先送りしているのだ。
 最大の障害となっているのは、中国からの輸入拡大を警戒し、大幅な関税の撤廃に慎重なインドだ。インドとは逆に、徹底した自由化を求める豪州とニュージーランドも足かせとなっている。一方、ASEANからは、この3カ国にも増して「日本がやっかいだ」という声も漏れる。
 こうした中、インド太平洋地域でインドと覇権を争う中国は、インドと豪州、ニュージーランドを除く13カ国による枠組みを提案している。そもそも、RCEPにインドを入れているのは中国の独走をけん制する狙いがあり、日本などが受け入れられるはずもなく、迷走に拍車を掛けている。


 個人情報流出でFBに巨額の制裁金

 米連邦取引委員会(FTC)はこのほど、交流サイト(SNS)最大手の米フェイスブック(FB)が大量の個人情報を流出させたとして、同社が約50億ドル(約5400億円)の制裁金を支払う和解案を承認した。プライバシー保護に関するFTCの制裁金としては、過去最高額となる。
 FBの個人情報流出問題を巡っては、英国の選挙コンサルティング会社ケンブリッジ・アナリティカが8700万人分のFB利用者の情報を不正に入手し、2016年の米大統領選でトランプ陣営の選挙運動に利用した疑いが浮上。昨年4月には、FBのザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)が米議会の公聴会に呼び出され、謝罪した経緯がある。
 今年3月末時点のFBの1カ月当たり利用者は23億7500万人と増加が続いており、1〜3月期の売上高も150億7700万ドルと、前年同期比26%増となった。
 一方、ニューヨーク・タイムズ紙は、FBはIT大手など150社超の企業に対し、FB利用者の情報を共有することを認めていたと報じている。例えばマイクロソフトは、検索エンジンを通じて事実上すべての利用者の友人の名前を閲覧できたという。この問題では、米連邦検察が捜査に乗り出したとされる。
「プラットフォーマー」と呼ばれるFBやグーグルなど巨大IT企業をめぐっては、日本の公正取引委員会もルール整備のため取引実態調査に着手している。個人情報の流出・流用や競争を阻害する行為に対し、世界的な監視の目が強まりつつある。


 来年の米大統領選までトランプの紆余曲折は?

 来年の大統領選挙での再選はトランプ氏にとって至上命題だが、それまでの道のりにはかなりの紆余曲折が予想される。
 6月の世論調査では就任以来最高の44%の支持率を得たが、その直後にワシントン駐在のラロック前英国大使から「トランプ氏は無能で、ホワイトハウス内ではスタッフ同士の対立が続き、この政権の結末は悲劇的なものになる」との英国外務省宛ての公電がリークされ、大使が辞任するに至った。
 米英関係は特別な同盟関係で、不動のものとされてきた。特に英国側は最も有能な職業外交官をワシントンに送り込んできた。ラロック氏もG20後トランプ氏と協力して夫妻の英国訪問をつつがなく成功させ、優秀な大使との評を得ていた。しかし、裏ではトランプ氏が大統領として不適格であることを見抜き、西側リーダーとして問題視していたことが表に出てしまった。
 ホワイトハウス内では娘婿のクシュナー氏と娘のイバンカ氏が重用され、外交面では全くの素人でその能力不足が指摘されているし、要の安全保障担当のボルトン補佐官も強硬一辺倒で、担当してきたベネズエラ問題でも、事態がこじれるだけでその問題解決能力に疑問符が付けられている。
 トランプ氏は再選の切り札として、八月以降、日本に対し通商問題でのゴリ押しや朝鮮半島問題では、日本を出し抜く形で北朝鮮と何らかの合意を進める可能性があるだろう。
 米国の対日外交の責任者であるハガティー大使も来年テネシー州からの上院議員選挙に出馬することを表明しており、今後は新大使の下、トランプ氏がかなりの難題を日本に押し付けてくることになりそうだ。


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