巻頭言
池 東旭の


photo
池 東旭
(ソウル在住/
国際ジャーナリスト)





購読のお申し込み

デジタル雑誌のお求めは
こちらよりどうぞ




こちらからも
お求めいただけます。

photo


戦争なき平成の後
令和も平和だろうか

 令和の幕が開けた。だが世界はきな臭い匂いが立ち込めている。太平洋戦争後74年間、日本は平和に浸かっていた。平成は日本が戦争に巻き込まれなかった稀有な時代だ。しかし戦争と平和は周期的に巡る。現在の国際状況は1世紀前に酷似する。100年前、第1次大戦で覇権国イギリスは没落、社会主義・ソ連が出現した。パクス・ブリタニカ(英国による平和)は崩壊して、デモクラシーと民族自決主義がはやり、新生国家が続出、植民地で独立運動が蔓延した。第2次大戦まで戦間期、大不況が起きた。
 危機は独裁者を生む。スターリン、ムソリーニ、ヒトラー、蒋介石、フランコなど独裁者が出現した。米国でもルーズベルトが大統領に当選した。彼は3選不可の不文律を破り4選され、在職14年間強大な権力を振るい、革新的なニューディールを実行して、第2次大戦で勝利を収めた。国際秩序消滅と経済的危機が第2次大戦の原因だ。日本が日中・日米と15年戦争にのめり込んだ背景だ。
 第2次大戦後、アメリカはソ連と対峙する中で新しい国際秩序(パクス・アメリカーナ)を打ち立て、地球の2/3を取り仕切った。ソ連が1991年に崩壊した後、米国は唯一の超覇権国として君臨した。

──トランプ・ファースト
 米国不敗神話は2001年9月11日の米国同時多発テロで崩れた。米国はテロ退治の中東出兵で国力を消尽した。財政と貿易の双子の赤字は米国経済を蝕み、移民急増で白人は萎縮した。オバマ氏の大統領就任は白人優位の幻想を打ち砕いだ。15年、オバマ大統領は世界の保安官の役目から降りると表明した。米国の衰退は地球規模の混乱と無秩序を招いた。ヨーロッパは英国のEU離脱、難民流入、極右勢力台頭など混迷している。「アラブの春」はアラブの災厄になり、中東、アフリカは内戦の真っ只中だ。南米でも独裁政権乱立など腐敗、暴力が拡散した。韜光養晦(とうこうようかい)の仮面を脱いだ中国は米国に挑戦する。中華帝国の復活を夢みる習近平主席は一帯一路構想を掲げ、米・中両国は太平洋を分割支配すべきと公言する。
 米国でアメリカ・グレート・アゲインを叫ぶ扇動家トランプが大統領に当選するハプニングが起きた。公職経験がない政界の異端児は公式チャンネルを無視して、ツイッターで政府人事や政策を発信するなどやりたい放題だ。彼の傍若無人な言動は大統領の権威を貶め、米国の国際的威信を毀損した。反エリートの白人有権者はアメリカ・ファーストを振りかざすトランプに熱烈歓呼する。だが、彼の本音はトランプ・ファーストなのだ。

──ホルムズと対馬海峡
 トランプ氏は難民追放、関税戦争、イラン制裁、金正恩委員長と核取引など国際懸案に次々と挑む。だが移民追放は世論の逆風をあび、関税引き上げは米国にもマイナスだ。イラン制裁は同盟国も同調しない。米中貿易摩擦も一時休戦だが、再燃は時間の問題だ。板門店会談でトランプ氏は劇的効果を狙って金正恩委員長と連れ立ったショーを演出した。だが、世論の反応は、「はったりと背信のアベック」だと冷ややかだ。
 トランプ氏の恫喝外交は腰砕けで迷走する。北への核廃棄要求は核凍結の現状追認に後退する。再選の見通しも微妙で弾劾の恐れすらあるため焦っている。局面打開のために戦争に賭ける恐れが大きい。ニューヨーカー誌は歴代大統領が戦争を挑発した事例を挙げ「トランプもその先例に倣うかも……」と懸念する。ホルムズ海峡は一触即発の局面だ。大言壮語するトランプ氏だが、前言を翻すのが常套手段なので、破局に至らないとの楽観論もある。だが戦争は常に誤算から始まった。
 北東アジアでも雲行きが怪しい。韓国のナショナリズムは左派政権のもと反共から反日に矛先を転じた。日韓関係の悪化で対馬海峡の波浪も荒立っている。漁夫の利を狙う周辺国はほくそ笑む。令和の門出、風濤は険しい。
(ソウル在住/国際ジャーナリスト)


ダミー
ダミー
ダミー

(C)2019 株式会社エルネオス出版社. All rights reserved.
〒105-0003 東京都港区西新橋1-22-7 丸万7号館4F 
TEL.03-3507-0323 FAX.03-3507-0393 eMAIL: info@elneos.co.jp