ダミー
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 老後資金問題で麻生氏の求心力が急低下

 「衆参同日選見送りで菅義偉官房長官の存在感は増し、麻生太郎副総理の影響力は一層低下した」との見方が自民党内でささやかれている。というのは、同日選の是非をめぐり、賛成の麻生氏と反対の菅氏とで綱引きを展開していたからだ。麻生氏にとっては、現職への対抗馬を強引に擁立して惨敗した4月の福岡県知事選に続いての政治的な「判断ミス」で、面子はさらに傷ついた。
 参院選に合わせて衆院を解散する「解散風」を最初に吹かせたのは、安倍晋三首相側近の萩生田光一自民党幹事長代行。4月18日のインターネット番組で、消費税率の引き上げを延期しての解散の可能性に言及した。これに続き、麻生氏は同三十日夜に安倍首相の私邸を訪問し、憲法改正を掲げての解散を勧めたという。自民党幹部によると、麻生派の甘利明選対委員長も安倍首相に「勝てるなら同日選に踏み切るべきだ」と進言。一方、公明党・創価学会に太いパイプを持つ菅氏は一貫して反対した。
 麻生氏が同日選を勧めたのは、今回見送ると、2021年9月までの安倍首相の党総裁任期の間で、適当な解散時期が見当たらないとの判断がある。菅氏が反対したのは、同日選を避けたい公明党への配慮からだ。
 結局、安倍首相は菅氏に軍配を上げた形だが、老後の資金として年金以外に「30年で2000万円」必要と試算した金融庁金融審議会の報告書が決定打となった。国民の怒りに火がつき、解散どころではなくなったが、金融庁は金融相を兼務する麻生氏の所管で、これにも責任がある。
 そもそも、麻生氏は報告書が報じられた直後、「きちんとしたものを、今のうちから考えておかないといけない」などと評価したとも受け取れる発言をし、国民の反発が広がるや、報告書を問題視。こうした言動について、野党は厳しく批判している。
 対照的なのが菅氏。新元号「令和」の発表役を務めたことで知名度を高め、「ポスト安倍」候補に急浮上したが、同日選見送りで、実力者ぶりを改めて印象付けた。焦点の参院選は「7月4日公示─同21日投開票」の日程で行われる見通し。仮に自民党が議席を大幅に減らせば、最大の敗因は報告書問題にほかならず、麻生氏は責任を問われ、安倍首相の求心力低下は避けられない。そうなれば、菅氏の影響力がさらに高まるのは必至だ。菅氏は当面、「追い風」を受けることとなろう。


 数字の1人歩きに困惑、金融審議会のメンバー

 金融庁が6月3日に公表した金融審議会「市場ワーキンググループ(WG)」の報告書を巡り国会が大荒れだ。
 老後の安心を担保するためには、早いうちから資産運用に努める必要があるという真っ当な示唆に富む内容なのだが、定年退職後に必要とされる金融資産について「夫が65歳以上、妻が60歳以上の無職世帯が公的年金に頼って暮らす場合、毎月約5万円の赤字が出る。この後、三十年間生きるには約二千万円が不足する」という試算ばかりがクローズアップされた結果、「公的年金だけでは老後は危うい」という意味に曲解された。結局、報告書を諮問した麻生太郎金融担当相は「世間に著しく不安や誤解を与えている」として、「正式な報告書として受け取らない」と、事実上の撤回を要請した。
 そもそも市場WGは、昨年9月から議論されてきた。WGのメンバーは学者やエコノミスト、運用会社幹部など専門家ばかり。当然、人選も金融庁が行っている。諮問されたのは金融庁が目指す「貯蓄から資産形成へ」をどう実現するか、高齢化社会のあるべき金融サービスについて、個人および金融サービス提供者の双方から令和時代の始まりに相応しい行動を論理立てて示すことにあった。
 だが、「金融庁はその資産運用の受け皿として税的メリットが高いNISAや積立NISAをより浸透させたいあまり、一般の方に分かりやすいようにモデル世帯の不足額を盛り込んだことが逆にアダとなった」(メガバンク幹部)と受け止められている。WGメンバーの有識者からも「1回の議論に2時間半、12回も議論した報告書が無に帰すのは忍びない」と嘆く声が聞かれる。
 この時期になぜ金融庁がこの報告書を出したのかについて、金融庁関係者は、「行政の事務年度が終了する6月末までに報告書をまとめ、金融審議会の総会に諮問するのが慣例で、当初からのスケジュールだった」という。WGの議論も金融庁の事務局が集約して、報告書へとまとめ上げていく。それでも金融庁は政治と世の中の反応を読み間違えた。幹部は「関係者への配慮が足りなかった」と嘆く。
 過去WGの一報告書を公表するために事前に与野党に説明することはないが、年金関連に言及する以上、選挙を控え神経質になっている政界への根回しが必要だった内容といえる。配慮を欠いた結果、与野党の政争の具に堕してしまった感は否めない。「これで7月に予定されている金融庁の幹部人事にも影響が及ぶことは避けられないだろう。とりわけWGを所管する企画市場局幹部の処遇が気にかかる」(金融庁幹部)と心配する声が絶えない。


 中国を刺激する護衛艦の海外派遣

 海上自衛隊の護衛艦による南シナ海での活動が急速に活発化している。その報復か、中国公船の尖閣諸島の接続水域への侵入が614日、過去最高の連続64を記録した。
 海自は安倍首相が打ち出した「インド太平洋戦略」を受けて、20177月、インド洋で米軍、インド軍との共同訓練「マラバール」に初めて参加。翌18年、マラバールがグアム島周辺で行われ、中国への圧力にならないと判断した海自は「平成30年度インド太平洋派遣訓練部隊」を編成、空母型の護衛艦「かが」など三隻を南シナ海に派遣した。そして今年は「平成31年度インド太平洋派遣訓練部隊」を編成、空母型の護衛艦「いずも」など2隻を南シナ海へ派遣した。5月には米海軍、インド海軍、フィリピン海軍との四カ国で共同訓練を実施した。
 こうした訓練が中国政府を大いに刺激したことは容易に想像できる。中国政府は海自の南シナ海への派遣への発表に合わせるように、東シナ海にある尖閣諸島の接続水域へ海警局の公船四隻を差し向け、日本の海上保安庁の巡視船とのにらみ合いを続けている。
 海自艦艇は「専守防衛」の原則から、これまで日本周辺で訓練をしてきたが、他国軍との活動を地球規模に広げて安全保障関連法が施行され、また首相が「インド太平洋戦略」を打ち出したことから、インド洋、南シナ海での訓練が可能になった。問題は中国が、日米の連携によって腰砕けになるような国ではないということ。東アジアの緊張は南シナ海と東シナ海で高まりつつある。


 日銀総裁は追加緩和で首相を側面支援する

 日銀の黒田東彦総裁は、6月9日まで福岡で開催されたG20財務相・中央銀行総裁会議後に取材に応じ、「2%の物価目標に向けたモメンタムが失われれば追加緩和を行う」と述べた。この黒田発言について永田町関係者は、「このタイミングで追加緩和に言及するのは、参院選を控えた安倍首相への黒田氏一流の忖度だ」と指摘する。
 安倍首相に対する黒田氏の「忖度」は他にもある。日銀は4月25日の金融政策決定会合で指針(フォワードガイダンス)を修正したが、それまで記載されていた消費増税に関するくだりから「19年10月に予定されている」との文面を削除した。日銀は「増税は当然の前提なので削除した」と説明するが、「日銀文学とも言われるほど、一言一句に神経質な日銀がこれほど大事な文面を削除するにはそれなりの意味がある」(市場関係者)とみられている。
 市場ではいまだ消費増税延期を望む声が聞かれるが、安倍政権は今年10月消費増税の姿勢を崩していない。与党からも「消費税はリーマンショック級の出来事が起こらないかぎり引き上げていく」と繰り返し語られている。だが、消費増税は政権にとってまさに鬼門、参議院選挙での大敗を回避するためには財政出動だけでは心もとない。秘策が必要となる。
 特にここにきて「公的年金だけでは老後は賄えず、2000万円が不足する」との金融庁の報告書が国会で大問題となり、安倍政権は危機感を強めている。それだけにこの時期での日銀の追加緩和は、危機脱出の秘策になる。日銀総裁を異例の2期目に導いた安倍首相に対して、黒田氏は大きな恩義がある。安倍首相が参院選を無事切り抜け、歴代最長の在任期間を迎えられるよう黒田氏は追加緩和を打つ用意があるようだ。


 翻訳が待たれる話題のMMTの教科書

 MMT(Modern Monetary Theory=現代貨幣理論)の教科書が、発売2カ月で売り切れになった。大学生を対象にしたもので、この理論を主導しているニューカッスル大学(オーストラリア)のビル・ミッチェル、マーティン・ワッツ両氏と、バード・カレッジ(米ニューヨーク州)のランダル・レイ氏の共著。全体で600ページに及ぶ大著だが、出版元のマクミランは早速増刷に踏み切った。
 この教科書のタイトルは『マクロエコノミクス』。MMTを巡っては米国の主流派経済学者をはじめFRB議長、著名経済人などがこぞって批判。元財務長官のサマーズ氏はMMTが国債の無制限増発を容認していることから、「フリーランチ」と激しく攻撃している。
 日本でも麻生財務大臣が「財政規律がなくなる」と警戒感を強め、黒田日銀総裁は「極端な理論」と一蹴。MMTを取り巻く情勢はよろしくないにもかかわらず、教科書は発刊早々から品切れ状態。このギャップは何を意味するのか。
 バブル崩壊後の日本は国債を増発し、金利を抑えるために異次元緩和を実施。提唱者のステファニー・ケルトン教授の指摘を待つまでもなくMMT理論を実践しているようにも見える。日本では理論書がないことを理由に「体系化された理論ではない」(黒田日銀総裁)と異端視する向きもある。
 いずれ日本語にも翻訳されるだろう。一部の関係者は「米国でもこの本は教科書としては採用されないだろう」と予想するが、MMT論争の拡大のきっかけにはなりそうだ。


 テスラに続きトヨタもパナ電池事業に暗雲

 「テスラに続き、トヨタもか」。トヨタ自動車が電気自動車(EV)などの電動車向けの車載用電池で世界最大手の中国・寧徳時代新能源科技(CATL)や比亜迪(BYD)、東芝、GSユアサなどと協業するとの発表を受け、パナソニックの幹部は思わず漏らした。パナソニックはトヨタと2020年末までに車載用電池の共同会社を設立したと発表したばかり。両社はこれまでに共同出資するプライムアースEVエナジー(PEVE、静岡県湖西市)でハイブリッド車などの電池を共同開発するなど長い関係がある。
 電池事業を強化するパナソニックは社運を懸けて米国でテスラと共同運営する電池工場に積極的に投資してきた。その額は両社累計で5000億円にものぼる。パナソニックはテスラの年産百万台体制の確立に向け、20年をメドに生産能力を今の五割増にする計画を掲げていたが、テスラの量産が遅れ、両社は投資を凍結した。その穴を埋めるために、パナソニックは虎の子の電池事業でもトヨタと組んだ。しかも新会社の出資比率はトヨタが51%とマジョリティーを握る「屈辱的な提携」(パナソニック幹部)だった。そこまでして頼ったトヨタが「よりによってパナのライバルであるCATLと組んだ」(同)ことに、パナソニックの社内はショックを受けているのだ。
 トヨタの狙いは単純だ。EVの世界最大の市場である中国を攻めるために、CATLやBYDとの関係を構築することで、先行するドイツのフォルクスワーゲン(VW)に対抗するためだ。大気汚染など環境問題に悩む中国政府との関係改善もある。
 一方で、今後、中国でEVのシェアを上げるには安価な電池の調達が必要になる。そのため、パナソニックを抜いて世界トップになったCATLや東芝、ユアサなど複数の電池メーカーと競わせることで価格を引き下げ、最終的に競争力のあるEVを中国で展開していくのが狙いだ。この大きな流れの中で「パナソニックは数ある電池メーカーのワン・オブ・ゼムとして袖にされた」(大手証券アナリスト)わけだ。
 パナソニックは三洋電機の買収を通じて7000億円にものぼる電池事業を手に入れた。しかし、三洋電機から買い取った角形電池事業はまだ赤字の状態だ。トヨタとの電池新会社設立で狙っていた中国市場戦略をまた練り直さざるをえなくなったパナソニックに、重い課題が残された。


 アマゾン・ライフ提携で生鮮市場争奪戦が激化

 日本の小売業は成長株のコンビニエンスストアが深刻な人手不足を背景に事業モデルの基本型である24時間営業の見直しや実質値引きを迫られるなど踊り場を迎え、新たな局面に突入しつつある。この流れを加速するように、成長を続けるインターネット通販大手が実店舗との融合に乗り出した。
 ネット通販で圧倒的存在のアマゾンジャパン(東京都目黒区)が食品スーパー大手のライフコーポレーションと組み、年内に都内でライフの一部店から生鮮品や総菜を消費者に届けるサービスを開始する。
「ネット」と「リアル」の融合としては、楽天と総合スーパー大手の西友が昨年10月、ネットスーパー事業をスタートさせた。さらに、今年4月には楽天が運営するアマゾン最大のライバル通販サイト「楽天市場」に西友が出店し、アマゾン・ライフ連合に先行する。
 日常生活に欠かせない生鮮品の分野にまで実店舗を介してネット通販が浸食するようなら、消費者の行動に大きな変化をもたらしかねない。
 アマゾンジャパンとライフの提携は、アマゾンの有料会員向けサービス「プライムナウ」でライフの商品を取り扱う。注文から最短二時間で消費者の自宅に届ける。ライフは国内に約270店舗を抱え、順次、対象地域を広げる。アマゾンジャパンのジャスパー・チャン社長は「生鮮品をオンラインで購入できる機会を広く提供したい」とライフとの提携の狙いを語る。
 本体の米アマゾン・ドット・コムは2017年8月に米高級食品スーパー、ホールフーズ・マーケットを買収し、昨年9月には無人コンビニ「アマゾン・ゴー」を立ち上げ、実店舗を取り込んだ戦略を鮮明にしている。今回の日本法人とライフとの提携はこの手法を持ち込み、日本の小売業界を切り崩す「アマゾン・エフェクト」を狙っているとも映る。
 実店舗主体できた日本の小売業も手をこまねいていては生き残れない。実際、米国では小売り最大手のウォルマートは最優先課題としてリアルからネットへという逆方向のアプローチでアマゾン対抗策に打って出ている。6月12日には16年に買収したネット通販「ジェット・ドット・コム」を本体のネット事業に組み込む戦略を明らかにし、米国であらゆる小売業を駆逐してきたアマゾンをブロックしようと躍起だ。
 日本経済は戦後最長の景気拡大局面が終わりを告げそうな状況にあり、10月の消費増税を控え、消費の腰折れも懸念される。その意味でも、「空中戦」から「地上戦」を巻き込む生鮮市場争奪戦は一段と激化しそうな気配だ。


 「お手盛り」批判が高まる九電系メガソーラー

 経済産業省は、再生可能エネルギーを普及させるための固定価格買取制度(FIT)を見直し、大規模な太陽光発電(メガソーラー)を買い取り対象から外す方針を固めた。FIT改正は来年行われるが、このニュースが一斉に流れた6月13日、九州電力グループの日本最大480メガソーラーの全容が明らかになった。
 五島列島の宇久島に480メガワット分約165万枚の太陽光パネルを敷設、一般家庭約17万3000世帯の年間発電量を賄う。宇久島は面積約2500万平方メートル、人口約2000人の半農半漁の島だが、島の約1/4が太陽光パネルで覆われる。
 事業主体は九電系工事会社の九電工が主体となった宇久島みらいエネルギー合同だが、最大の問題点は1キロワット時40円と、九電の買い取り価格が最高値であること。FITは東日本大震災直後の12年に旧民主党政権下でスタート。そのため買い取り価格は高値設定され、「経産省の売電権(ID)を取って設置すれば誰でも儲かる」と、太陽光発電ブームが起きた。
 地権者の同意も取らぬブローカー、仕事師、事件屋らに経産省はIDを乱発。宇久島もそんな「外資系ID屋」が政治家を使って取得、九電工などが最高値の40円に惹かれ、17年末に譲渡を受けた。ID価格は30億円だったという。
 メガソーラー除外の理由は、FITが太陽光を偏重し制度上の赤字が膨大となったこと。高値分は国民が再生エネルギー賦課金を支払って担保。それが18年度で実に2兆4000億円。買取価格は年々切り下がり、18年度は1キロワット時18円だ。
 40円で引き受けるのは九電だが、国民負担なので懐は痛まない。逆にグループ企業の九電工が主体の合同会社は買い取ったIDで丸儲け。駆け込みの制度利用に「お手盛り」批判が高まるのは当然だろう。


 みずほが兼業・副業認可の本当の狙いとは?

 みずほフィナンシャルグループ(FG)の坂井辰史社長が打ち出した社員の兼業・副業を認める新たな人事制度が、早ければ今年度後半にもメガバンクで初めて解禁される見通しだ。
 新制度は、届出を出した社員に対して、通常業務に加えて、希望する企業で一定の時間働くことを認めるもので、起業も認めるという。「従来の出向は、給与は籍を置く銀行から支払われていたが、新制度では銀行と企業の両方に籍を持ち、例えば週のうち1〜2日程度、企業に行って仕事をする。給与は両方から支払われるイメージでは」(みずほ関係者)。その対象は、「親密・提携関係にあるソフトバンクやLINEなどフィンテックを意識したIT企業との間で行われる」(同)と予想されている。
 高学歴の優秀な人材を囲い込んできた銀行も、いまや就職人気は暴落ぎみ。かつ、「40代後半から退職後を見据えた“黄昏研修”が始まり、50代前半で出向・転出させられる。役員で残れない者は、関連会社などに出される」(メガバンク中堅社員)。今後5年間、バブル期に大量採用された社員が転出期を迎えるが、「関連会社の数が足りないのは目に見えている」(同)。副業・兼業認可は、“自助努力で早くから転出先を探しておくように”というシグナルなのか?


 「麒麟児」西武信金の再建を担うみずほOB

 独自の積極経営で増収増益を続け「信金界の麒麟児」ともてはやされた西武信金(本部・東京都中野区)に5月24日、金融庁の業務改善命令が出された。反社勢力と疑われる相手への融資や不動産投資向け融資で業者の書類改竄を見抜けず貸出を行っていた事例が多数見つかったためだ。このためカリスマ経営者と名高かった落合寛司理事長を含む理事3人が引責辞任した。
「反社勢力と疑われる相手への融資は、落合前理事長が支店長を務めた立川方面の支店取引先とみられている。落合氏は監事会から複数回にわたり調査要請を受けたが、拒否している」(金融庁関係者)
 落合氏の後任理事長は、落合氏の右腕とされる高橋一朗常務理事だが、関係者によると高橋氏とともに再建の手綱を握るのは、相談役的立場にある倉重喜芳氏とみられている。倉重氏はみずほ銀行常務、オリエントコーポレーション専務、みずほ総合研究所専務から東京建物不動産販売副社長、同社長に就いたつわもの。「東京建物不動産販売副社長時代に西武信金の落合氏と懇意になり、同信金の相談役に招聘された」(関係者)という。
 不祥事を受け、西武信金は3月に業務全般を洗い出し抜本的な管理体制の改善を図るべく外部有識者をスーパーバイザーとした「業務改善委員会」を設置。同時に、役員人事・報酬の牽制機能を強化すべく、役員等の指名や報酬等を理事長、理事会へ答申する独立委員会組織として外部有識者を評議会議長とした「人事報酬評議会」を設置したが、これら一連の改革を高橋理事長とともに担うのが倉重氏。「金融庁の意向を受けて西武信金のガバナンス立て直しに尽力する」(同)とみられている。


 公共の電波を私物化、FM東京名誉相談役

 今年の株主総会で放送界を賑わしたのが、6月25日に開催されたエフエム東京で、冨木田道臣会長、千代勝美社長などを含む取締役11人中7人がいっせいに退任した。
 事業の失敗と不正会計問題が背後にあるとされ、エフエム東京はすでに第3者委員会を発足させ、調査を開始しているが、エフエム東京の内部関係者は、「今回の人事を仕掛けたのは名誉相談役の後藤(亘)さん。冨木田さんとの主導権争いの中、社外取締役を味方につけ、関連会社の失敗を冨木田さんに押しつけて、後藤派で経営陣を固めた」という。
 後藤名誉相談役は、東海大学創立者の松前重義元総長の元秘書。1970年開局のエフエム東京を立ち上げたのは東海大学で今も筆頭株主。その縁で、エフエム東京に入社した後藤氏は、2011年に役員定年制で会長職を離れても、名誉相談役として隠然たる力を保持した。
 もともと冨木田氏は後藤氏の側近だったが、身分のない後藤氏が、経営介入するのがイヤで、最近は距離を置いていた。筆頭株主の経営陣が反後藤派では民放界最長老の自分の地位が危ない──。それが今回の仰天人事の裏側というのだが、事実なら公共の電波を私物化しているというしかない。


 静岡県知事の「補償」発言でリニア開業に黄信号

 「我々が遅らせているとみるのはフェアじゃない。自分の立てた計画を金科玉条のごとく相手に押しつけるのは無礼千万」──。
 JR東海のリニア中央新幹線工事。静岡工区(11キロメートル)が未着工のため、2027年度の開業予定時期に遅れが出るとの懸念が他県の知事やJR東海の金子慎社長から相次いだことについて、川勝平太静岡県知事はJR東海をこう批判した。
 JR東海の金子社長は先に「未着工の状態が続けば開業の時期に影響を及ぼしかねない」と静岡工区について発言。沿線九都府県によるリニア中央新幹線建設促進期成同盟会でも、他県の知事らから「未着工区間をなんとかしてほしい」との声が相次いだ。
「もともと東海道新幹線で『のぞみ』の停車駅を要望したのに無視された。リニア中央新幹線でも静岡県内にまたもや新駅が認められなかった。県内に恩恵がないのに、大井川の水量が減り、お茶の栽培などに被害が出るなど静岡県にとってマイナスばかりのリニアは不要だ」(静岡県幹部)との積もる怨念がある。
 さらに川勝知事は「水の量、質、土砂の管理、(自然環境破壊への)代償措置が必要だ。生態系がやられるんだから数百万円ではすまない。他県で地元の要求に応じて駅をつくった費用の平均ぐらいが額としては目安になる」とJR東海に具体的な補償を求めていく考えを示した。
 この川勝知事の「補償」発言についてJR東海の金子社長は「(従来の協議内容と)違う意味なので、(JRに)ボールが投げられたという認識はない」と話す。「新線建設で自治体の長が金銭的な見返りを求めるような事例は過去にない」(JR東海幹部)と困惑している。
 また川勝知事は期成同盟会への加盟を求めているが、「もし同盟会に静岡県を入れないということであればルートから外してほしい。急がば回れだ」とも主張する。JR東海にとって工期が延びることはそのまま建設費の増加につながるだけに「政治の力で問題を解決してほしい」(同)との声も漏れる。


 初の起業に踏み切ったプロ経営者・松本晃氏

 米ジョンソン・エンド・ジョンソンの日本法人とカルビーでそれぞれ経営トップを務め、直近はRAIZAPグループに請われ最高執行責任者(COO)として事業改組に切り込むなど、「プロ経営者」として高い評価を得てきた松本晃氏が、エネルギーをまったく使わずに物質を冷却する世界初の技術を使った省エネルギー素材の日本での販売権を取得し、環境スタートアップ企業を立ち上げた。
 立ち上げた企業はラディクールジャパン(東京都中央区)で、代表取締役会長兼最高経営責任者(CEO)として画期的な省エネ効果が期待できる塗料、シート材を日本企業に売り込む陣頭指揮を執る。6月11日に都内で開いた同社の設立記者発表会で松本氏は、2017年2月に英科学誌「ネイチャー」に発表し、世界から注目を浴びたこの「Radi─Cool」という技術の可能性に惚れ込み、個人的に投資し、起業した点をアピールした。
 起業の理由として、これまでのビジネス経験で携わったことがなかった資源、環境の分野で、地球温暖化対策に投下できることを挙げた。ただ、放射冷却技術による製品は比較できる既存の技術・製品がない未知の分野なだけに「しばらく試行錯誤は続く」と控えめな姿勢を見せる。
 一方、6月末に就任わずか一年で取締役を退任し、RAIZAPの経営から身を引くことには「いろいろとお騒がせした」と言葉を濁しただけで、心は既に起業家としての新境地に向けられ、飽くなきチャレンジ精神の健在ぶりを印象づけた。


 龍角散社長にセクハラ騒動、元法務担当部長が訴訟提起

 「社長のセクハラを調査したらクビになった」と、元法務担当部長が会社に対し、地位保全と賃金支払いを求める訴訟を起こした。訴えられたのは“ゴホンと言えば龍角散”の龍角散。訴えたのは同社で法務担当部長を務めていた50歳代の女性だ。
 訴状によれば、藤井隆太社長のセクハラ騒動が起こったのは昨年12月に開かれた開発本部の忘年会。ちなみに、同社の開発本部は飲みやすいスティックやゼリーの龍角散を開発し、売り上げを大きく伸ばしたことで有名。そんな部門だけに社長が出席したらしいのだが、忘年会で「藤井社長は40歳代の女性に『君が好きだ』『首筋がゾクゾクする』などと言いながら手を握ったり背中をさすったり、抱きついたりした」というのだ。
 法務担当部長は、もともとIT企業の法務部門に勤務していたそうで、経験と能力を買われて龍角散に法務部門の管理職として入社し、1年後に担当部長に昇格した人物。
 セクハラ行為の話を聞いたのは忘年会に出席していた開発本部長からだった。実は、この開発本部長、法務担当部長の実の姉である。話の内容は問題だ。そこで、職務上、総務経理部長や人事課長に相談し、被害女性にヒアリングを行ったら事実だということがわかり、被害女性から「セクハラを訴えにくいので第3者の相談窓口をつくってほしい」と要望されたという。
 早速、法務担当部長は社長に相談、窓口の設置を願い出たが、社長は関心を示さず、突然、「社長室に呼び出され、藤井社長から『セクハラなどなかったのにセクハラを捏造した。ケシカラン』と叱られ、会社貸与のパソコン、携帯電話、社員証を取り上げられ、自宅待機を命じられた。その2カ月後には自宅に解雇通知が届いた」と訴える。加えて、姉の開発本部長も降格された上、地方に飛ばされたのだという。
 龍角散では「まだ訴状が届いていないが、適切に対処したい」という一方、ホームページで「会社とは利害関係がない法律事務所に調査を依頼したが、セクハラの事実は認められなかった」と表明している。藤井社長は創業家出身の8代目というオーナー社長で、厚生労働省の社会保障審議会医療保険部会の委員を務めている人物。相談窓口など設置したら、自身のセクハラが明らかになるという心配からなのだろうか。地位保全訴訟から真相が見えそうだ。


 マツキヨとスギ薬局がココカラ統合で争奪戦

 ドラッグストア業界大手のマツモトキヨシと業界六位のスギ薬局の双方が業界7位のココカラファインに経営統合を提案した争奪戦が業界で注目の的になっている。
 発端は今年4月にマツキヨがココカラと資本業務提携の話し合いを始めたと発表したところ、6月にスギ薬局がココカラとの間で経営統合の協議を始めると発表。慌てたマツキヨが提携の提案を経営統合に格上げして対抗、新聞各紙が報道する騒ぎに発展しているのだ。
 マツキヨは二代目社長の松本南海雄会長が“マツキヨブーム”をつくりだし、ドラッグストアを世間に認知させたドラッグストの雄。一時はコンビニのローソンとの共同店舗を模索したが、コンビニのフランチャイズ制がネックになり頓挫。加えて南海雄氏の長男の清雄氏が社長に就任し、ディスカウントより利益重視の高級路線に転換。利益率こそよくなったが、売り上げは停滞中だった。その間隙を縫ってイオングループのウエルシアやツルハ、コスモス薬品などに追い抜かれ、売上高5位に後退してしまった。起死回生策として浮上したのがココカラとの経営統合で、統合すれば売上高は9700億円に達し、業界トップに返り咲く。
 一方、愛知県に本拠を置くスギ薬局はかつてイオングループに加わっていたが、「もう学ぶことがなくなった」と離反。以来、積極的に店舗を増やして業界6位に成長。最近は東京・神田から銀座まで中央通りに1キロごとに出店して話題になるなど、都心へ拡大中だ。同社もココカラと経営統合すれば、売り上げは9000億円弱になり、業界トップに躍り出る。
 目下、ドラッグストアは店舗内に調剤薬局を併設し、利益の大きい調剤に進出、病院やクリニック前の門前薬局から処方箋を奪う一方、食料品や弁当販売にも進出し、コンビニと競争するほど成長を続けている。
 業界通によれば「ココカラは関東中心のセイジョーと関西に強いセガミメディクスが統合して大手の仲間入りしたドラッグストア。この業界には個性の強いオーナー社長が多いが、ココカラはオーナー色が薄い。マツキヨもスギ薬局も、ココカラと合併すれば夢の『1兆円企業』に近づく。是が非でも合併したい相手」だという。
 双方からモテモテのココカラは「マツキヨともスギ薬局とも利害関係がない特別委員会でどちらが企業価値を高められるか検討してもらう」と強調するが、自主性を尊重してくれそうなのはマツキヨだし、勢いのあるのはスギ薬局で選ぶのは難しそう。それにしても、両社を天秤にかけているココカラのしたたかさがやけに目立つ。


 林業の安全講習で起きた受講者の「死亡災害」

 今年4月16日、青森県内で開催された林業の安全教育の講習中に、講師が伐り倒した木が62歳の男性受講者に激突して死亡させるという災害が発生した。講習の主催者は、林業・木材製造業労働災害防止協会(林災防、本部=東京都港区)の青森県支部。講習は労働安全衛生法に基づく特別教育として実施されたもので、労働安全を司る団体の講習で受講者が死亡するというショッキングな事故が発生したことに、林業界では今も動揺が広がっている。
 講習は前日の15日から行われていたもので、25人が参加していた。講師は3人。15日は座学での教育を行い、16日は午前9時から青森県産業技術センター畜産研究所敷地内の山林で実技教育を開始。事故は午前10時20分頃に発生した。
 当日はまず講師のうちの2人が立木を1本ずつ伐倒。受講者は2班に分かれ、伐倒された木の枝払いの講習を受けることになっていた。しかし、伐倒された木のうちの1本がぬかるみにかかっていたため、講師の1人が別の木を伐倒しようとしたところ、意図した方向とは逆の方向に倒れ、別の講師の実演を見学していた被害者を直撃してしまった。伐倒の合図がなされなかったこと、立ち入り禁止区域内の確認が不十分であったこと、作業手順が適切ではなかったことなどが原因とみられる。
 事態を重く見た厚生労働省では、所管官庁の林野庁に対し、特別教育における安全衛生の点検を要請。さらに両省庁では、各都道府県に対し、管内での安全衛生を徹底して確保するよう通知した。
 一方、林災防では厚労省の指導を受け、再発防止策の検討に着手。これまでに、?特別教育の実技教育のうち「伐木の方法」では、疑似立木を用い、災害を未然に防ぐ、?特別教育を担当する講師について、林業現場での実務経験を5年以上有する者に限定、?特別教育の講師に対する緊急教育を実施──などを打ち出している。
 林業は労働災害の発生頻度を示す度数率が全産業平均の9倍(2016年データ。以下同じ)、強度率が同24倍、死傷年1000人率が同14倍と、いずれの指標も突出して高く、労災をいかに防ぐかが最重要課題だ。国産木材の生産量が増加基調にある中、生産機会の増加が災害増につながらないよう、抜本的な対策を講じることが求められる。


 一緒になって何をする? 「再編」地銀の存在意義

 「統合は解決策ではなく時間稼ぎだ。持続可能なビジネスを追求しなければならない」──金融庁の遠藤俊英長官は5月29日に都内で開かれた「日経緊急解説Live!」で登壇し、厳しい状況に立たされている地銀についてこう述べた。
 遠藤氏は、どうにか確保した利益を配当に回す地銀について「本末転倒ではないか。次のビジネスや地域、顧客に還元する方が優先順位が高いのではないか」「地銀の頭取と議論していて上場しているメリットは感じられない」とも指摘した。
 まさに正論だが、厳しい環境下にある地銀経営者にとっては「分かっているが、そう簡単ではないよ」というのが素直な感想だ。
 地銀にとって最大の難題は、地盤とする地域経済の縮小に歯止めがかからないことである。主因は「人口減少」にほかならない。経済の根底は「人間の活動」である。その根底が縮小するのだからたまらない。
 人口の減少は、人のあらゆる活動に影を落とす。経済成長は大きく抑制され、金利は低空飛行が続く。そもそも、デフレ的な基調からなかなか脱しきれない大本でもある。国会で論戦を呼んだ年金問題もしかりだろう。これまでの年金制度が持続性を維持するのは無理な話だ。年金の構造自体を変えなければ、立ちゆかなくなるのは目に見えている。
 地銀の経営もしかり、収益構造自体を大きく変えなければならない時であろう。遠藤長官が指摘するように、統合は解決策ではなく時間稼ぎであり、持続可能なビジネスを追求しなければならない。だが、その構造改革の時間を稼ぐためにも、まず統合することで、改革の原資と時間を確保することが必要だろう。
 政府の成長戦略を議論する未来投資会議(議長・安倍晋三首相)は6月5日、2019年の実行計画案をまとめた。地方活性化や雇用改革が柱で、経営が厳しい地銀は十年間で集中的に再編を促す方針が盛り込まれた。「地域銀行については早期の業務改善のためにマーケットシェアが高くなっても特例的に経営統合が認められるようにする」という内容だ。10年間と期限を切って、独占禁止法の特例措置を講じて再編を促す。
 ふくおかフィナンシャルグループ(親和銀行)と十八銀行の経営統合が試金石となって、全国の地銀再編に道が拓かれたと言っていい。これまで独禁法の観点(融資シェア等が高くなりすぎる)から難しいとみられていた地銀同士の統合が実現するかもしれない。だが、問題はその先の展望だ。「統合のための統合」では意味がない。一緒になって何をするのか、何を目指すのか。地銀の存在意義が問われている。


 大和ハウス・樋口氏はCEO退任でも意気軒高

 「81歳になり、体が疲れやすくなってきた」。株主総会が開かれる6月25日付で代表権返上と、最高経営責任者(CEO)を退任する大和ハウス工業の樋口武男会長は5月16日、アナリスト向け経営説明会で、理由をこう述べた。
 だが、熱血経営で鳴らした中興の祖は、早くも退任後を見据え、再び体力増強に邁進しているようだ。樋口氏と親しい大手銀行幹部は次のようなエピソードを披露する。
「3月の指名報酬委員会で自らCEO退任を申し出たと言っていました。18年間務めたトップを降りることに発表直後は少し落ち込んでいる風だったが、すぐさま気力を盛り返し、いまではバリバリ肉は食べるし、筋肉をつける運動をしていると意気軒高になっています。まだまだ現役でしょう」
 アナリスト会見でも、今後について樋口氏は「引退するつもりはないが、後進の指導や社員教育をやっていく。創業者精神を継承する役割を全うするつもりだ」と強調した。
 1963年に大和ハウス工業に入社した樋口氏は、グループ会社の大和団地を再建し、同社と大和ハウス工業本体が合併した2001年4月に社長に就任。04年からは会長兼CEOとしてグループを牽引してきた。この間、事業の柱を住宅のみならずネット通販向け物流施設やショッピングモールなどの商業施設の開発・運営などに拡大し、社長就任当時1兆円あまりだった連結売上高を四兆円超にまで押し上げた。まさに中興の祖だ。
 若かりし頃は「(営業の)鬼」と呼ばれ、「現場に知恵あり」を実践してきた樋口氏の経験を社内の若手・中堅にどう継承させていくのか。再び気力・体力を盛り返して教育に心血を注ぐのだろう。


 アパートへの融資失速で急増するホテル小口投資

 「かぼちゃの馬車」(スルガ銀行不正融資)やレオパレス問題などを受けたアパート経営への融資失速で、不動産投資離れを起こす個人投資家にホテルの小口投資に誘導する業者が急増中だ。不動産投資信託(Jリート)ではなく、「100万円から投資できる」といったセールストークで小口投資を持ちかけるのだ。法改正でホテルの商品開発がやりやすくなったことが背景にある。
 しかし専門家は、インバウンドが支えるホテルブームも五輪後はホテル過剰となり、「儲からない」と指摘する。不動産サービス大手CBREによると2021年までのホテル供給量は主要9都市合計で8万室、これは18年末時点の既存ストックの24%に相当する。宿泊需要から21年に必要となる客室数を推計した結果、9都市で、それぞれ必要とされる客室数よりもストック数が上回る無残な予測結果となった。
 ストックのギャップ(客室過剰)は大阪で2.1万室、東京および京都で1.2万室、名古屋で8000室、仙台で4000室、札幌で3000室。それを意識すれば、「ホテル投資はアパートよりずっと儲かって有望」という説明には注意しないといけない。
「高利回りで、数10万円でホテル・別荘オーナーになれる」、「1等地の不動産に1口から投資できる」などと業者は夢物語で営業をかけ、「投資家がホテルに泊まらない日に観光客に部屋を貸せば投資回収が可能」と、アパート投資とは違う切り口で攻めてくるという。よ〜く考えよう。


 シェアビジネス、農業…NTT東日本の“殿様商売”

 通信会社がこぞって「非通信分野」の事業に乗り出す中、NTT東日本がカーシェアリングなどシェアビジネスに乗り出すことになった。農産物を生産する農業法人も7月に立ち上げる。
 まさに次々と新規事業参入だ。本業の「通信分野」の伸びが見込めないだけに、事業のウイングを広げようとする挑戦は必須だが、未知の領域で身に染み着いたお家芸の“殿様商売”が通用するかどうか。
 カーシェアリングサービスは、平日に使用している営業車を、休日に近隣住民が利用できるようにしようというもの。駐車場は局舎をそのまま使う。ネットを駆使して、車両の管理、サービス運用、課金、サポートなどを行う基盤システムを構築する。すでに駐車場システムを手がけている子会社のNTTル・パルクが運営に当たる。
 併せて、局舎の空きスペースをシェアオフィスとして活用する方針だ。局舎にはデータの高速処理が可能な高性能サーバーなどを設置してあり、共同で利用できるようにする。スタートアップ企業などを呼び込みたいとしている。
 いずれも資産の有効活用といえば聞こえはいいが、「使わないともったいない」という安易な発想から始まったともいわれる。特にカーシェアリングサービスはライバルがひしめく中、事故対応や苦情受け付けなど課題が多いビジネスだ。それだけに、通信会社の「片手間仕事」がうまくいくかどうか。
 一方、農産物の生産は、農業法人NTTアグリテクノロジーを設立し、ビニールハウスを使う施設園芸を始める。ハウス内に多数のセンサーを取り付け、温度、湿度、日射量などを測定、人工知能(AI)を使って分析し、生育環境をコントロールして生産性を高める。
 農業分野進出は、まず、山梨県内に太陽光で栽培する施設を設けて、レタスなどの栽培を始めるという。
 ネット社会で情報通信技術(ICT)やあらゆるものがネットにつながるモノのインターネット(IoT)はあらゆる領域に活用できるため、通信最大手のNTTがさまざまな分野に取り組むのは当然のこと。
 だが、通信分野での新規事業開発ならまだしも、異業種に進出して自ら手がけるとなると、話は別。その道のノウハウもなければ、人材も社内にいるはずもない。しかも、NTT東日本の場合は、よりによって「えっ!」と驚くような事業への参入が続く。電話や光回線など通信事業への依存から脱却し、非通信分野の強化に取り組もうとする意欲は買えるが、机上のプランだけでは成功はおぼつかない。心して取り組まないと。


 緊急避妊薬オンライン処方解禁の一方で遅れる性教育

 緊急避妊薬(いわゆるアフターピル)のオンライン処方が、ようやく認められることとなった。望まない妊娠、その結果としての中絶や生まれた子どもへの虐待を減らすための選択肢が増えることは大いに歓迎すべきだろう。しかし、処方する側の産婦人科医の中では、こんな疑問が持ち上がっている。
「緊急避妊薬を飲んでも2〜3割は妊娠してしまう。薬の前に、望まない妊娠をしないための知識や教育が先決ではないのか」(日本産婦人科医会の木下勝之会長)
 性教育が不十分で具体的な避妊法や妊娠、中絶などの基本的知識さえ教えないため、医療現場では時として驚くほど無知な患者に出くわすという。
 日本産婦人科医会の報告によると、子どもたちの多くが、ネット情報やコンビニなどの雑誌による、不正確で偏った知識を得ているという。
 日本は医療先進国であるにもかかわらず、実際にはエイズや性感染症が増加し、小中学生の妊娠が増えている現状がある。これも、正しい性知識の欠如が一因といえる。
 学校での性教育は「学習指導要領」に基づいて行われている。だが、その中身はというと時代遅れも甚だしく、用語の縛りも厳しい。医療先進国のみならず近隣の中国や韓国、台湾よりも遅れた内容で、今や性教育後進国と揶揄されてもいる。
 20年前からこの状態に危機感を抱き、専門医の立場で性教育資料などを提案・提供してきた産婦人科医たちは、もう、文部科学省には任せていられないとばかりに、各地で「教育指導要領」に縛られない性教育を実施している。
 例えば、10代の中絶率が高かった佐賀県では、産婦人科医が危機感を抱き「指導要領」より踏み込んだ性教育を実施している。その結果、中絶率が低下するという実績をあげている。また、昨年2月、東京都足立区での保守系都議による性教育バッシングに危機感を抱いた東京都産婦人科医会は、都に意見書を提出、東京都や学校と連携し、「指導要領」以上の内容を含むモデル授業を実施している。
 本来なら、性教育は人間教育であり、教育現場で教師により行われ、産婦人科医は資料提供や医学面でのサポートをするのが望ましい。しかし、現在の危機的状況に、業を煮やした医療界がついに動き出したということだ。


 対米貿易戦争に耐えつつ来年前半の妥協探る中国

 中国との貿易戦争ではトランプ政権内に二つの勢力が存在している、一つはペンス副大統領(写真)を中心に台頭する中国の覇権をこの時点で封じ込めたい一派で、貿易戦争プラス覇権の争奪戦と捉えている。この勢力は対中強硬派としてトランプ政権内の国務省や国防総省、財務省やホワイトハウスの高官たちを網羅し、オールUSAで結束している。
 一方、自身の再選が最大の目標であるトランプ大統領は、戦略ではなく戦術を駆使することで来年十一月の再選につなげたい考えだ。貿易赤字の削減のみにこだわり、長期的な中国の覇権拡大阻止はあまり視野に入れてはいない。トランプ氏の戦術は今の時点では年内いっぱいは対中強硬姿勢で行き、ニューヨークダウが二万三千?から二万六千?台のレンジであれば、年末時点で妥結し、来年初めから株価を上昇させ再選につなげたい考えだ。
 中国サイドは交渉の初期の過程で、戦術的なミスを重ねてきた。当初の狙いは強硬派のライトハイザー米通商代表を抑え込み、対米貿易黒字を消せる米国製品の購入を行い、この貿易戦争を終結させたいとしていたが、今やその対応策を変えようとしてきている。つまり、人民元安とファーウェイ社の対応に見られるように、自前の技術と米国以外からの調達策を揃えることで、米国との貿易戦争にしばらく耐えられる状況をつくることに全力をあげている。その上でトランプ大統領の再選が来年前半に見えてきたならば、その時点で合意のための妥協をせざるを得ないと腹をくくり始めているようだ。


 中国大使館が露紙“脅迫”、良好とはいえない中露関係

 中国の習近平国家主席は6月にロシアを訪れてプーチン大統領と会談。互いを「親友」と呼び合い、「中露関係は前例のない高い水準にある」と誓い合った。
 米国から貿易戦争を仕掛けられた中国と、経済制裁を受けるロシアが「反米」で結束した形だが、両国関係の内実はそれほど良好ともいえないようだ。ロシア有力紙に対する中国大使館の“脅迫事件”にも両国の摩擦がうかがえた。
 ロシアの「独立新聞」は3月、中国の経済統計を引用しながら、中国経済は停滞するという分析記事を掲載したが、モスクワの中国大使館幹部が同紙編集部を訪れ、記事のネットからの削除と謝罪を要求した。
 中国大使館はさらに、執筆した記者にメールを送り、「昨年の中国の成長率は6%を超えており、ロシアよりはるかに高い。広東省の国内総生産(GDP)だけでロシア一国よりも上」などと述べ、削除に応じなければ、入国禁止処分にすると警告した。「独立新聞」はこの経緯を紙面で報道し、中国の情報統制を批判した。
「経済不振のロシアのGDPはいまや中国の十分の一程度。モスクワにいる中国のビジネスマンはロシアを資源しか売り物のない『北のサウジアラビア』と皮肉っており、そのロシアに批判されたので頭にきたのでしょう」(モスクワ特派員)
 今年は一人当たり国内総生産(GDP)でも中国がロシアを追い越す見通しだ。冷戦時代は社会主義先進国・ソ連が圧倒的な兄貴分だったが、時代はすっかり変わった。ロシアの専門家は中国大使館の抗議について「いまや中国が兄貴分で、ロシアは中国の妹になってしまった」と自嘲している。


 米中破談の原因は中国の「ちゃぶ台返し」

 出口の見えない米中貿易交渉だが、4月頃は合意に向け楽観ムードが漂っていた。そのシナリオは、中国の劉鶴副首相が5月9〜10日に訪米し、ライトハイザー米通商代表部代表との最終協議で大筋合意する。それを受けて、習近平国家主席が6月上旬にワシントンを公式訪問してトランプ米大統領と署名にこぎつけるというものだった。ところが、5月に入ると突然破談になった。最終局面でどちらかが「ちゃぶ台返し」をした形だ。
 劉鶴氏訪米にさかのぼる1週間前に、ライトハイザー氏とムニューシン財務長官が北京を訪れている。それまでの米中交渉で、中国側は米側が強く求める構造改革をほぼ全面的に受け入れて150ページの覚書まで取り交わしていた。ところが中国側はこの合意内容案を大幅に修正・縮小して米側に通告した。削除された部分に、中国の構造改革の実行を担保する法的措置が含まれていた。
 交渉を担当した劉鶴氏はハーバード大を出ている経済学者で、17年に政治局委員に選ばれたが、党内序列は高くない。実は、交渉が決裂した5月10日、劉鶴氏は記者会見で「どの国にも尊厳があり、協議文書のバランスを改善しなければならない」と述べた。中国ウオッチャーは「5カ月間にわたって協議文書を作ってきた当事者が突然国家の尊厳と言い出すのは不自然」と指摘する。要するに、取締役会に呼び出され、叱りつけられた営業部長が取締役に言われた通りのことを対外的に言わされている、といった光景なのだ。
 土壇場でちゃぶ台をひっくり返した中国に、トランプ氏が激怒したというのがどうやら実相のようだ。


 米中摩擦で商機拡大へ東南アジア各国が新戦略

 米中貿易摩擦のあおりを受け、東南アジア主要国の輸出が伸び悩む中、域内国の間では米中摩擦を恨めしく思うどころか、むしろビジネスチャンスにつながるとの期待も高まっている。米中の関税引き上げ合戦で、東南アジア産商品の需要が高まるとみられているのに加え、負担増を懸念する中国企業や中国進出企業が地理的に近い東南アジアに拠点を移すという見方が広がっているためだ。
 アジア開発銀行(ADB)は今年のアジア太平洋地域の経済成長率は、米中摩擦により昨年の5.9%から5.7%に落ち込むと予測。中でも東南アジアは輸出の鈍化で5.1%から4.9%に減速すると分析しており、負の影響が懸念されている。
 しかし、タイ商業省の貿易政策戦略局長は、米国による追加制裁の対象になった中国製品は、食品や衣服、靴、装飾品などタイの得意分野だと指摘。米中摩擦が深刻化すればするほど、タイ製品の対米輸出のチャンスが拡大すると皮算用してみせた。
 インドネシアのジョコ大統領も商工会議所幹部を前に「対米輸出を拡大する好機」とハッパをかけた。大統領は輸出拡大をにらみ、繊維や家電、家具などの生産能力を引き上げるべきだと強調。「米国の輸入家具の半分以上は中国産が占めていた」と語り、特に家具に力を入れる考えを示した。
 こうした中、脱中国を画策する企業も出てきた。ナイキやアディダスなど世界的なブランドのスポーツ靴を受託製造している台湾の靴製造大手、宝成国際集団は、米国向け高価格帯商品の製造を中国工場からインドネシアやベトナムに移す計画を打ち出している。
 一方、中国企業も東南アジア進出の動きを加速させている。タイ投資委員会が中国に設置した事務所には、タイへの投資を検討している企業が相次いで相談に訪れている。今年1〜4月の相談件数は前年同期比40%増。中国では環境や労働関連の法律の厳格化に伴い、国外進出企業が増える傾向にあるが、米中摩擦をきっかけに一気に拡大する可能性もある。


 イタリア連立政権存続も不安定さがつきまとう2党

 イタリアの左右ポピュリズム(大衆迎合主義)政党によるイタリアの連立政権は、5月の欧州議会選後も当面、存続する見通しとなったが、不安定な状況が依然として続きそうだ。財政規律をめぐり欧州連合(EU)との対決姿勢が強まる中、数々の火種を抱える両党間のバランスが崩れれば政局の流動化も懸念される。
左派の「五つ星運動」は、昨年3月の総選挙では32.7%の得票率で第1党だったが、今回は17.1%まで低下。一方、前回17.4%だった極右「同盟」は34.3%に躍進、両党の立場は完全に逆転した。
「五つ星」が減らした票は、総選挙前の与党で中道・左派「民主党」に流れたとみられている。「民主党」は総選挙では18.7%と惨敗したが、今回は22.7%と第2党の地位を確保した。一方、ベルルスコーニ元首相が率いる中道・右派「フォルツァ・イタリア」は14.0%から8.8%にまで落ち込み、「同盟」の陰で衰退傾向が顕著になった。
 欧州議会選挙前は「同盟」が35%以上得票した場合、「連立を解消して総選挙に打って出る」との観測もあった。しかし、今回の各党の得票率がそのまま総選挙に反映されると、「同盟」単独での政権樹立も、「五つ星」以外の連立相手を見つけるのも難しい状況だ。
 ただ、共に副首相を務める「五つ星」のディマイオ党首と「同盟」のサルビーニ党首はことあるごとに衝突を繰り返しており、選挙直後には「五つ星」寄りとされるコンテ首相が辞任をちらつかせ、両党首に自重を求める場面もあった。
 昨年のイタリアの債務は、国内総生産(GDP)比で132%超と、EUの上限60%を大きく上回る。これに対してEUは制裁措置の発動も視野に入れ是正を求めているが、両党とも「EUルールの見直しが必要」などと反対。年金受給年齢の引き下げ、最低所得補償など、ばらまき型の積極財政の推進で共同歩調をとっている。
 しかし、主導権争いの中で両党の関係が悪化する危険性は常にある。特に移民問題などで譲歩を迫られ、欧州議会選で惨敗した「五つ星」の焦りは強い。ディマイオ党首は選挙期間中、「同盟」のサルビーニ党首について「ユンケル欧州委員長と手を組んでいるようだが、私は違う」などと強く批判。また、「同盟」所属の議員の汚職事件についても厳しい姿勢を示し、「五つ星」の支持率回復にやっきになっていた。
 両党はこのほか、フランス中部のリヨンとイタリア北西部のトリノを結ぶ高速鉄道の建設推進、地方の自治権拡大、企業への優遇税制などで深い対立を抱える。いずれも、「同盟」の前身の「北部同盟」が基盤としてきた豊かな北部地域の自営業者が求める政策で、左派系で南部の低所得層からの支持を得ている「五つ星」とは相いれない。元来、ポピュリストという以外では共通点がない両党による政権だけに、安定した政策運営を期待するのは難しいようだ。


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