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麻生(左)、黒田(右)両氏も火消し役?


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■MMT(現代通貨理論)論争


財務省、日銀など“主流派”は批判
日本経済の「政策矛盾」露呈恐れる?

■米国発のMMT論争が日本にも波及してきたが、政府・日銀は「体系化された理論ではない」「極端な理論」などと批判。だが一方では、消費増税で日本経済にデフレの足音が忍び寄る――

20世紀初頭から
理論体系として成立


 米国に端を発した「MMT(Modern Monetary Theory=現代貨幣理論)論争」が国内にも波及している。今のところ論争というよりは財務省や日銀、経済学者など“主流派”による批判・反論が圧倒的で、MMT封じ込め作戦の様相を呈している。黒田日銀総裁は「体系化された理論ではない」と突き放すが、その一方、消費増税で2%の物価目標は遠ざかり、日本経済にデフレの足音が再び忍び寄る。国内主流派によるMMT批判は、日本経済につきまとう「政策矛盾」から目を逸らそうとする“猫だまし”のようだ。
 日本で数少ないMMTの推進論者である評論家の中野剛志氏は4月、自民党若手の国会議員が主催する「日本の未来を考える勉強会」(安藤裕代表)で講演した。この中で同氏はMMTについて、この理論が体系化されたのは1990年代であると指摘した。
「古くは20世紀初頭のクナップからケインズ、シュンペーター、ラーナー、ミンスキーらの業績を基礎にして、1990年代にミンスキーの弟子のレイやミッチェル、モズラー(投資家)、ケルトンの貢献によって整合性のある理論体系として成立した」と指摘、黒田総裁の見解を否定する。
 そのMMTの主張は極論すると?自国通貨を発行できる政府の国債はデフォルトしない?インフレが起こらない限り財政赤字は無制限に拡大できる──の2点。日本経済の低迷が長期化する中で積極財政論者を勇気づける一方、財政健全派にとっては「とんでも理論」で「異端の経済学」に映る。
 米国のMMT論争は、昨年、29歳の若さで下院議員に初当選した民主党のアレクサンドリア・オカシオ=コルテス議員が火付け役となった。というよりは国民皆保険や温暖化対策などグリーン・ニューディールの財源をMMTで賄うと主張。これにサマーズ(元財務長官)、パウエル(FRB議長)、クルーグマン(ノーベル賞経済学者)といった主流派の錚々たるメンバーが?みついた。大物による批判や反論が論争に火をつけた、と言った方がいいだろう。主流派が論争拡大に一役買ったのである。

物価目標の達成には
財政出動が必要


 米国に追随したわけではないだろうが、日本でも財務省がこの理論に?みついた。4月17日に開かれた財政制度審議会に提出した資料で間接的にMMTを批判したのである。この資料のタイトルは「わが国財政の現状等について」となっているが、資料の最後に「(参考)MMTについて」という文書を4ページにわたってさりげなく盛り込んだ。
 中身はMMTに対する批判一色。財務省の資料としては異例である。この中には麻生財務大臣の国会答弁も収録されている。「財務規律を緩めるということでこれは極めて危険なことになり得る」「日本をその実験場にするという考えはない」など、MMTを痛烈に批判した。
 これには前段がある。4月13日付で日経新聞が「インフレを過度に恐れるな」と題して、MMTの主導者の1人であるニューヨーク州立大学のケルトン教授のインタビューを掲載した。
 この中で同教授は日本政府と日銀は「MMTを実証してきた」と断定。その上で「完全雇用と物価の安定は、中央銀行の責務とされている。ただ、MMTの立場は(その責務を達成するのはFRBではなく)財政政策への依存度を高める必要がある(ということだ)」と指摘する。要するに物価目標の達成は金融政策ではなく財政政策だと強調したのである。
 10月の消費増税を前にした微妙な時期である。MMTが正しければ消費増税は間違いということになる。自民党内にも増税見送り論が根強く残っており、MMTが勢いづくのはなんとしても避けたい。そんな財務官僚の“思惑”がこの資料には込められているような気がする。
 日銀は4月の金融政策決定会合(24、25日)で「2020年春頃まで、現在のきわめて低い長短金利の水準を維持することを想定している」との見解をまとめた。見方を変えれば金融政策では2%の物価目標達成は当面実現しないと示唆したようなものである。果たして異次元の金融緩和に物価を押し上げる能力はあるのか。誰もが抱く疑問だろう。
 黒田日銀総裁は金融政策決定会合後の記者会見でMMTに関する質問に次のように答えている。「欧米の著名な経済学者は全て、これを極端な議論で全く採ることを得ないと言っておられます。私も極端な議論で適切なものとは思っていない」(日銀のホームページより)。だが「極端な議論」を否定する経済の実態が日本にはない。
 前出の中野氏は「(政府・日銀など)主流派も部分的にMMTの主張を認めている」と切り返す。2002年、欧米の主要格付け機関が日本国債の格付けを引き下げたことがある。この時、財務省は「日・米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない。デフォルトとしていかなる事態を想定しているのか」と格付け機関に見解を求めたことがある。
 この主張はMMTと一緒である。主流派もそのことは認めている。ではこの2つの何が違うのか。決定的な違いは物価を操作する手段である。主流派は金利とベースマネーの大量供給によって物価は誘導できると考える。これに対してMMT派は、財政と税で物価(インフレ)を操作すべきだと主張する。

レーガノミクスも当初は
ブードゥー経済と揶揄


 レーガノミクスを起点とする新自由主義経済をベースとするアベノミクスは、財政再建をしながら経済成長は実現できるとしてきた。だからデフレ脱却を最大の政策目標に掲げながら、デフレ政策の最たるものである増税路線を同時並行で追求する。アクセルをふかしながらブレーキを踏み込む。この政策矛盾が実はデフレ脱却を困難にし、財政赤字を拡大し続けている。
 1980年代にレーガン大統領のもとで始まったレーガノミクスは当初、「呪術経済政策(ブードゥー・エコノミー)」と揶揄された。「減税すれば税収が増えると」と説いたラッファー教授の説を採用したからである。当時、経済政策の主要な柱はスタグフレーションとの戦いだった。減税で需要を刺激し、高金利政策でインフレを退治した。こうした流れの中で、金融政策のウエートが徐々に大きくなってきた。これが現在の主流派が推進している新自由主義経済に基づく経済運営の核心である。
 その金融政策にトランプ大統領は最近強烈に異議を申し立てている。中央銀行の独立性を無視して、「FRBは政策金利を下げるべきだ」とあからさまに干渉しはじめた。
 主流派の多くがこうしたやり方を否定する。だが、世界最大のヘッジファンド創設者であるレイ・ダリオ氏は「現在の形での中央銀行はいずれ時代遅れになり、MMTのような別の仕組みにとって代わられるのは『不可避』だ」(ブルームバーグ)と。
 問題はMMTではない。主流派が主導する経済運営が世界的な壁にぶち当たっているという現実だ。
 格差が拡大し経済が低迷、移民や難民が大量に発生している。国家や民族間の対立も激化する一方だ。EUで極右と呼ばれる勢力が台頭する一因は緊縮財政にある。こんな時代にMMTを「極端な議論」と切り捨てるだけですむのだろうか。
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