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 F35A墜落事故でも日本は追加購入を変えない

 航空自衛隊の最新鋭ステルス戦闘機「F35A」が青森県沖で訓練中に墜落。防衛省は4月11日の衆院総務委員会で、事故機は過去2回、飛行中に不具合が発生して緊急着陸していたと明らかにした。墜落の状況と照らすと事故機はトラブルを抱えていた疑いが浮上している。その一方で、操縦士が平衡感覚を失って天地がわからなくなる空間識失調(バーティゴ)に陥り、海に突っ込んだ可能性も捨てきれない。夜間飛行で操縦士が海を空と勘違いして墜落した事例は各国の軍隊でも複数ある。
 墜落したのは三菱重工業小牧南工業で組み立てられた1号機。F35Aの場合、ライセンス料を支払って部品を作り、組み立てるライセンス生産と異なり、海外から集められた部品を組み立てる。最終検査は日本側を排除した建物内で米側だけで行っている。日本側に単独で事故を調査する能力はなく、米政府に協力を依頼した。これでは米側に不都合な事実が事故原因として浮上した場合、正確な調査結果を日本側に伝えないことも予想され、事故原因解明はおろか、F35Aの安全性の確保も自衛隊独自ではままならない。
 安倍内閣は昨年12月の閣議了解で、調達予定の42機を105機へと大幅に増やすことを決めた。さらに空母化される護衛艦「いずも」に搭載するため、垂直離着陸ができるF35Bも42機導入する。F35Bは昨年9月、米サウスカロライナ州で米海兵隊機がエンジン燃料管の不具合で墜落している。
 今回の事故後も政府は、追加購入の方針を変えない。F35Aは米国を含む九カ国が共同で開発したものの、機体は未完成。米国以外で飛行を続けているのは日本とイスラエル。共同開発国でもカナダは調達を見合わせ、共同開発国に入っていないドイツは発注したものの、途中で契約を解除した。この際、米国以外の信頼できる国々と情報を共有し、場合によっては追加調達を見合わせるのが筋だろう。


 自信満々の麻生財務相が岸田政調会長にかけた言葉

 財務官僚の不祥事や自らの問題発言にもかかわらず、麻生太郎副総理兼財務相(78)は安倍晋三首相の後ろ盾を得てしぶとく政界を泳ぐ。地元の福岡知事選では擁立候補が惨敗、山崎拓元自民党幹事長から「わがままが県民のしっぺ返しを受けた。麻生さんのオウンゴールだ」と批判されても動じない。
 麻生氏は最近、近しい人に、「首相の時より、今の俺のほうがパワーがある」と言っている。麻生氏の野望は、第二派閥を維持したまま、近い将来、岸田派(宏池会、49人)を吸収合併し、細田派(清和会、99人)に並ぶ大派閥にすることだ。その過程で、自派に所属する甘利明・選対本部長を可能な限り早めに幹事長に押し込みたいと願っている。
 麻生氏の周辺によると、麻生氏は最近、岸田文雄政調会長と飲食を共にしながらサシで話し合った。麻生氏が岸田氏に向かって、例のべらんめえ口調で「お前は安倍の後を狙っているんだよな。お前が総理になったとしてだ、お前はトランプ(米大統領)と丁々発止でやれるのか」と問いかけた。岸田氏は下を向いて何も言葉を発することができなかったという。そこで麻生氏は「それならこのまま安倍に任せるしかないだろう」と言い放ったそうだ。
「安倍四選」を唱えた二階俊博幹事長(80)も衆参同日選挙を志向する麻生氏と同じ考えといわれる。自民党は長老・妖怪が我が物顔で跋扈している。


 元大使が強制わいせつ罪? 外務省版“伏魔殿”復活か

 駒野欽一元駐イラン大使(72)が在任中の2012年、大使秘書だった20代の日本人女性外交官を公邸の執務室に招き、突然キスしたり、体に触り、強制わいせつ罪で刑事告訴されていた。女性は「急性ストレス反応」で一時休職し、外務省官房長はその3カ月後に、セクハラ行為で大使に口頭注意していたという。
「毎日新聞」の特ダネだったが、被害者の女性が事件を公表するよう求めたのに対し、外務省は秘匿し、今回発覚した。駒野氏はペルシャ語専門で、入省後、専門職から上級職に登用された。数少ないイラン専門家として重用され、3月にも日本記者クラブで講演したばかり。国際大学特任教授も務めている。
 大使のセクハラでは、3月末にも植沢利次駐ケニア大使(63)が停職12カ月相当の厳重訓戒を受け、依願退職した。外務省は詳細を公表していないが、停職十二カ月は懲戒免職に次ぐ重い処分。強制わいせつや傷害の疑いがある。関係者によれば、相手はやはり館員女性だった。
 安倍政権は中国のアフリカ進出に外交で対抗するとして、アフリカ各地に大使館を次々新設しているが、肝心の大使が「外交より性交」では情けない。
「外務省は2001年ごろ、大使や幹部のスキャンダルが次々暴露され、田中真紀子外相が『外務省は伏魔殿』と呼んだ。その後の外務省改革で大使らの醜聞は減っていたが、再びタガが外れた」(霞クラブ記者)
 メディアのチェック機能が必要だ。


 全銀協新会長が身構えるFTFAオンサイト審査

 全国銀行協会の新会長に高島誠氏(三井住友銀行頭取)が4月1日付で就任した。新元号「令和」の発表とともに新会長に就いた高島氏は銀行の新時代を予感させるが、同時に数々の課題が待ち受けている。
 2019年度は種々のイベントが目白押しだ。4月からの改元、10連休に始まり、6月には日本が初めて議長国となるG20大阪サミットが開催される。10月には消費税増税も控えており、金融界にとっては、同じ秋口にFTFA(金融活動作業部会)のオンサイト審査がある。
 高島新会長は就任会見で、この一年を「新時代の経済・社会課題の解決に貢献する一年」にしたいと語り、「経済・社会的課題解決への取り組み」「デジタル技術を活用した安心・安全な金融インフラの構築」「金融システムの信頼性・健全性の維持・向上」の三つの柱を打ち出した。
 中でも銀行界が神経質になっているのはFTFAのオンサイト審査で、高島新会長も「マネーロンダリング(資金洗浄)対策が今年度で最も大きなテーマだ」と語っている。
 FTFAは1989年にフランスで開催されたアルシュ・サミット経済宣言を機に設立された機関で、マネーロンダリングの監視・撲滅に向けた国際的な枠組みを主導している。秋口に行われるオンサイト審査では、法制度の整備状況だけでなく、法制度の「運用状況」や「有効性」が審査対象になっている。
 具体的には、金融機関は顧客の属性だけでなく取引の形態や関係する国・地域、金融機関自身の営業地域の地理的特性などを踏まえ、適切にリスクを把握し、顧客の資産・収入の状況や法人の「実質的な支配者」などの必要な情報を追加で取得しなければならない。
 だが、日本国内には約八億もの銀行口座があり、さらに海外送金などの取引一件一件についてリスクを把握し、適切に対応することが求められている。また、一部の民間金融機関について、FTFAの担当チームによるインタビューが行われる予定で、対象金融機関は伏せられているが「各業態の会長行や次期会長行が選ばれる可能性が高い」(金融筋)とみられている。
 全銀協加盟の大手行は六月から口座開設時の本人確認を厳格化する予定で、FTFAのオンサイト審査に万全の態勢で臨む。「G20の議長国が審査で不合格は許されない」(金融庁関係者)と身構えている。


 厚労省が再生医療記事で『ネイチャー』誌に抗議

 日本の再生医療を問題視する記事を掲載した英科学誌『ネイチャー』に対し、厚生労働省が抗議文を送った。ネイチャー誌の批判は2度目で、日本の再生医療製品の条件および期限付き承認制度(早期承認制度)に対して「拙速で不公正」と主張する。批判の槍玉に挙げられたのは昨年12月に承認され、3月に薬価収載された札幌医科大学とニプロが共同開発した脊髄損傷治療の「ステミラック」である。
 ネイチャー誌の批判は「ステミラックの対象患者数が13例と少ないうえに、プラセボ(偽薬)群を使う二重盲検比較試験を実施せずに製造販売された」こと、そのため自然治癒やリハビリによる改善かどうか明らかではなく、「脊髄損傷改善の有効性が検証されていない。結果、効果のない製品が販売される」と問題視した内容だ。
 このネイチャー誌の批判に対してまず日本再生医療学会が「ネイチャー誌の意見は一部で同感だが、再生医療法が制定される10年以上も前の議論だ。非常に違和感がある」と反論。続いて厚労省が3月下旬にネイチャー誌に抗議文を送り、「早期承認制度に対して事実誤認が散見される。例えば、二重盲検比較試験をしていないとの批判については(患者数が少なく)二重盲検試験ができない場合には試験をデザインし有効性を証明できる」と反論。加えて欧米でも早期承認制度を導入しているということも付け加えている。
 事実、再生医療では対象患者数はごく少なく、プラセボと比較したくともすることができないことが多い。
 ネイチャー誌が問題としたステミラックの場合でも17例がエントリーしたが、除外基準をクリアした対象患者は13例にすぎなかった。しかも、承認に当たってはネイチャー誌の指摘以上に有効性を心配してニプロの希望薬価を大幅に下回る薬価を設定している。
 バイオ医薬に出遅れた日本は再生医療に力を入れ、いまや日本の再生医療は世界のトップを走っている。それに対するやっかみではないか、という声もあるが、国内でも早期承認制度を危惧する人はいる。
 例えば、足から採取した筋芽細胞を培養した筋芽細胞シートを貼る心筋の再生医療を進めたものの効果が見られず、その後、iPS細胞から心筋をつくる再生医療に切り替えたという、批判されても仕方がないような例もある。
 その一方で、治療法がなく苦しんでいる患者はいる。こうした患者に改善の可能性のある再生医療を届けることの意義は大きい。誰もが納得する制度にするにはまだ時間がかかりそうだ。


 また絵に描いた餅になる? 厚労省の年金運用利回り

 「また絵に描いた餅に終わりかねないですね」──。
 金融機関の幹部がこう呆れるのは、厚生労働省が想定する公的年金の運用利回りだ。我々国民の老後を支える公的年金の運用状況は5年ごとに見直されることになっており、今年が見直しをする年にあたる。「財政検証」と呼ばれるもので、公的年金を所管する厚労省が経済成長性や労働参加率を基に予想される運用利回りについていくつかのシナリオを提示、専門家の議論を経てメインシナリオが決定される仕組みだ。
 今回の財政検証で、厚労省が提示した将来シナリオは六つ。まず経済成長と労働参加が進むとするシナリオが三つ、一定程度進むとするシナリオが二つ、そして進まないとするシナリオが1つ示されている。このうち経済成長と労働参加が最も進むことで、最も高い運用利回り(名目)が期待できる楽観シナリオは、生産性上昇率1.3%、実質成長率が0.9%、物価上昇率が2.0%で、運用利回りは5.0%と見積もられている。一方、最も悲観されるシナリオでは、生産性上昇率0.3%、実質成長率マイナス0.5%、物価上昇率0.5%で、運用利回りは1.3%となっている。6つのシナリオのうち、実質成長率がマイナスと見積もられたのは、この悲観シナリオだけである。
「お決まりの官僚の資料で、極端な楽観と悲観シナリオは参考程度の“ためにするシナリオ”で、外されることになるでしょう。メインシナリオは残る4つのうちから選ばれる」(与党関係者)という。だが、残る4つのシナリオでも運用利回りは2.8〜4.5%とかなり高い水準が想定されている。
 こんな楽観シナリオでは、これからの5年間でさらに積立金取り崩しが進み、年金財政が脆弱となっていくことは確実だろう。


 リテールも商銀に集約か、三菱UFJ信託の新戦略

 三菱UFJ銀行に法人部門の取引を移管された三菱UFJ信託銀行だが、さらに個人預金などのリテール取引も商業銀行に集約される可能性が高まっている。商業銀行にすべての顧客取引を集約することで取引の効率性は一層高まるとの判断で、持ち株会社の三菱UFJフィナンシャル・グループの三毛兼承社長と信託銀行の池谷幹男社長もその方向で意見が一致しているようだ。
 信託銀行の個人取引のほとんどは中堅・中小企業の経営者などの富裕層で占められている。このため法人取引が商業銀行に移る一方で経営者個人の取引が信託銀行に残るのは使い勝手が悪いとの声が顧客から挙がっていた。融資取引のみならず個人の預金取引も商銀に集約するのはこのねじれを解消する目的がある。
 一方、法人に続き個人取引も全面的に商業銀行に集約される三菱UFJ信託銀行に残るのは、資産運用に特化したアセット・マネジメント業務。経営陣は、買収戦略を急ぐことで三菱UFJ信託を世界のトップアセットマネジメント会社と伍す規模に引き上げる考えだ。今後、数年で海外運用会社のM&Aに1兆円を投じる計画とされ、運用資産残高を百兆円規模に引き上げる方針を打ち出している。昨年10月末に約3200億円を投じて豪最大手銀コモンウェルス銀系の資産運用会社を買収すると発表したのはその皮切りだ。
 ライバルは運用会社では米JPモルガン・チェース。グローバル・カストディアンでは、米ステート・ストリートや米バンク・オブ・ニューヨークが念頭にあるようだ。


 米LNG事業の売却白紙か、経営再建中の東芝に暗雲

 東芝にとって、子会社の東芝メモリの売却に並ぶ課題だった米液化天然ガス(LNG)事業の売却が白紙に戻る可能性が高まった。
 中国の民間ガス大手ENNグループへの売却を予定していたが、同グループから契約解除を求められたという。計画が白紙に戻れば、東芝の経営再建に影響が生じかねない。
 東芝は2013年に米国でLNG事業に参入、隣接地域で受注した原子力発電所事業を下支えする狙いで、LNGを引き取る代わりにLNG基地に原発から電力を供給する計画だった。しかし原発建設は17年に事実上頓挫し、LNGの販売事業だけが残った。
 このLNG事業は米テキサス州で米国産のシェールガスをLNGに加工し、20年間にわたり年220トンを販売するというものだが、同事業は販売価格の変動リスクが大きく、経営再建を進めるにはこれを売却する必要があると判断し、国内外の企業と売却交渉を進めていた。
 東芝はLNG事業のほかに、東芝メモリの売却に何とかこぎ着けたばかり。しかしこの東芝メモリに関しても6000億円の増資の直後に、大株主になった海外の投資家へ還元するために、7000億円もの自社株買いを迫られるなど、「収益基盤がまだ安定しない」(大手証券アナリスト)。さらにLNG売却計画が白紙になると、三井住友銀行から招いた車谷暢昭・会長兼CEO(最高経営責任者)が掲げる中期経営計画は早くも変更を迫られることになる。


 留学生問題を抱える東京福祉大の内紛劇

 「3年間で1400名が所在不明になった」というニュースで一躍、留学生の教育環境が問われるようになった東京福祉大学で、元総長と元理事兼教授の争いが続いている。
 2000年に開校し、群馬県伊勢崎市、東京都、愛知県名古屋市にキャンパスを持つ東京福祉大は、約8000人の在校生の内、六割超の約6500人が留学生で、早稲田大学に次ぐ全国2番目の受け入れ数を誇る。
 その留学生急増の背景に、「中島恒雄元総長のカネ儲け主義がある」と告発していたのが元理事兼心理学部教授の田嶋清一氏。両氏は名古屋市内の中学での同級生で、中島氏が福祉や介護などの専門学校で蓄えた資産やノウハウで大学を設立する際、心理学の専門家だった田嶋氏に声をかけたのが始まりだ。
 二人の仲が暗転するのは、中島氏が08年に引き起こした強制わいせつ事件で懲役2年の実刑判決を受けてからだ。学校教育基本法は、禁固刑を受けた人間の学校教育への参加を禁じている。が、創業者の中島氏は10年に出所後、実母を理事長にして裏支配を進め、そのサポートを田嶋氏に命じ、それを拒否した田嶋氏を解雇した。これに反発した田嶋氏が訴訟に持ち込んで勝訴して復学するものの、今度は中島氏が名誉毀損やプライバシー侵害で訴えるなど、争いは泥沼化した。
 10年以降、中島氏の「裏支配」が続き、どんなことをやっても留学生を増やして儲けたいというカネ儲け主義につながっているという田嶋氏の主張に対し、「裏支配などなく、キャンパスに来ることすらない」と学校側も中島氏本人も反発、何度も声明を発表している。肝心の留学生の所在不明問題そっちのけで、内紛劇は続いている。


 IHI不正検査問題で窮地に立つ満岡次郎社長

 航空機エンジンの整備事業に次いで製造過程でも不正検査があったIHI。整備事業に関しては国土交通省から業務改善命令を受け、5月に再発防止策を報告し、エンジン部品の一部を自主回収する。
 IHIは建設機械や業務用原動機事業を売却し、造船やプラントの愛知工場(愛知県知多市)を閉鎖するなど選択と集中を進めており、中でも航空機エンジン事業は中核となる大黒柱として位置づけられている。
しかも、その推進役である満岡次郎社長は航空の生産畑出身。航空エンジンメーカーの米ゼネラル・エレクトリック(GE)や同プラット・アンド・ホイットニー(P&W)などもIHIの経営体質に懸念を抱き始め、「相次ぐ不祥事を止め、経営を正常に戻すには社長のクビを差し出すことしかない」(IHI幹部)との声も出始めている。
 今回見つかった検査不正はエンジン整備と部品を合わせて約1万4000件。社内資格を持たない従業員が確認印を押すといった工程が常態化していた。IHIは2004年にもエンジン整備のデータ改ざんで国交省から業務改善勧告を受けており、「ガバナンスが軽視されている体質は改善されていなかった」(同)ことが改めて浮き彫りになった。
 プラント建設など大型プロジェクトが安定してきた矢先での不正検査問題。追い込まれた満岡社長はどう再起を果たすのか、航空業界は固唾を呑んで見守っている。


 オリンパス事件の横尾被告が間もなく収監

 光学機器メーカー「オリンパス」の巨額粉飾事件は、巨額損失を10年以上にわたって飛ばし、不可解なM&Aによって負債を計上、帳尻を合わせるという悪質なものだった。
 しかも、不正に気付いたウッドフォードCEO(肩書は当時、以下同)を、損失隠しの主の菊川剛会長らが解任、「蓋」をしようとして告発され、2012年2月に菊川会長、森久志副社長らが逮捕された。
 その際、「価値のない企業を高額でオリンパスに売りつけ、粉飾に加担した」として逮捕されたのがコンサルティング会社「グローバル・カンパニー」の横尾宣政代表だった。野村証券の「伝説の営業マン」として知られた横尾被告は、粉飾事件は「幇助の罪」だったものの、他にオリンパス事件に絡む上場企業に、株式を高値で売りつけたという詐欺罪、マネーロンダリングを禁じた組織犯罪処罰法違反で起訴され、懲役4年の実刑判決を受けた。しかも「無罪」を主張したため保釈を認められず、拘置所に966日も勾留された。カルロス・ゴーン被告の108日でも内外の批判を浴びた「人質司法」だが、横尾被告の場合は実質的な懲役刑。詐欺やマネロンは、口を割らせるための追加捜査の結果だった。
 上告していたものの、今年1月に最高裁が棄却、ゴールデンウイーク後の早い時期に収監される。保釈後、横尾被告は『野村證券第2事業法人部』(講談社)を著し、華々しい実績をあげた証券マン時代と、独立してベンチャー支援やM&Aに注力、オリンパス事件に巻き込まれる過程を詳述し、ベストセラーになった。横尾被告は服役して出所後、再審請求するなどして無罪を訴え続ける。横尾被告の中で、オリンパス事件はまだ終わっていない。


 最終赤字と働き方改革で野村も“普通の会社”に

 年間1兆円のコストはさすがに重い。野村ホールディングスは4月4日、構造改革策を発表した。3年間で国内の店舗を首都圏中心に2割、30店以上減らすほか、海外事業も縮小もしくは撤退する荒療治で、2018年3月期実績に比べ1400億円のコストを削減するという。
 メガバンク幹部は「証券会社は顧客の開拓・維持に銀行の数倍のコストを要するが、野村が年間1兆円を超えるコストを使っていたとは驚いた。毎期ゼロからスタートするフロー商売は浮き沈みが激しいね」と呆れる。このため改革に聖域はない。リーマン買収で築いた欧州のトレーディング事業を大幅に縮小し、コストを半減させるほか、米国では低格付債のトレーディング等から撤退。その余力を中国の富裕層ビジネスに振り向ける意向だが、金融の主戦場である欧米市場での野村のプレゼンス低下は避けられない。
 野村は直近の18年4〜12月決算が1012億円の最終赤字に転落。08年に買収したリーマン・ブラザーズの収益が思うように上がらず、「のれん代」の減損処理を余儀なくされたことなどが主因だ。永井浩二CEO(最高経営責任者)は、「(少子高齢化やデジタル化などの)メガトレンドが顕在化し始めており、伝統的な投資銀行ビジネスは崩壊しつつある」と危機感を露わにした。
 が、市場の評価は芳しくない。「野村が何度となく海外買収で失敗したり、不祥事にまみれても復活してこれたのは、国内での強固な営業基盤があってのこと。駅前一等地に構える国内店舗はそうした営業の出陣拠点だった。それを2割も削減することは国内基盤の弱体化を招かないか。デジタル活用で補完するというが成果は未知数だ」(エコノミスト)。
「働き方改革」も野村を変容させつつある。野村は働き方改革アクションプランを公表し、残業時間などの数値目標を「KPI(重要業績評価)」として見える化しているが、社内では不評で、若手からは「もっと働かせてくれとの声が出ている」(関係者)。新入社員の中には、「定時に帰れと上司にせかされる。(野村が)あまりに普通の会社なので拍子抜けした」との意見も聞かれるほどだ。
 不祥事(社員の増資インサイダー)を経て12年にCEOに抜擢された永井氏だが、かつて野村のドンと呼ばれ、「えげつないほど働く野村」の象徴であった「オオタブ」こと、田淵節也元社長の在任期間を間もなく超え、八年目に突入する。当初、目標とした「預かり資産営業への転換」はまだ道半ばだ。「野村の社長は時代が選ぶ」が口癖の永井氏だが、後任の顔はまだ見えない。


 “紹介業者”を炙り出した金融庁のアンケート調査

 金融庁が昨年末にかけて全国の金融機関を対象に実施した「投資用不動産向け融資」のアンケート結果が3月28日に発表された。融資実行額・件数、融資利回りに始まり、審査態勢、持込不動産業者の管理、顧客説明まで42項目にもわたる詳細なアンケートで、調査対象はスルガ銀行で問題となったシェアハウスやアパート・マンションのみならず民泊施設や区分所有のマンションにまで及んだ。「膨大な調査表を埋めるのは大変な苦労だった」(メガバンク担当者)という代物だ。そこから炙り出されたのは、「紹介業者」を介した甘い審査体制だった。
 紹介業者というのは不動産情報を金融機関に持ち込む、いわばブローカーだ。金融機関の投資不動産向け融資は、2016年3月末の28.1兆円から18年9月末には33.1兆円まで膨れ上がり、このうち銀行の97%、信金・信組の79%が紹介業者を介した融資だった。ほとんどの金融機関がブローカーの持ち込んだ情報で融資していたわけだが、その際の取り上げ要件や基準を定めていたのが銀行で14%、信金・信組で3%にすぎない。「営業の現場では紹介業者の情報を鵜呑みにしてそのまま融資していた」(某金融機関幹部)のが実態だった。
 しかも紹介業者の中には「不動産の中間省略登記に介在して手数料を抜いていた業者も少なくない」(大手信用情報機関)という。中間省略登記とは、複数人で売買を行う際、中間の移転登記を省略し、最初の所有者から最後の所有者に権利が移ったように登記する仕組みだ。当然、中間の売買で価格は吊り上がっている。
 今回のアンケートには、「第2、第3のスマートデイズが出て、金融機関が食い物にされているのではないかという金融庁幹部の問題意識がある」(関係者)。だが、全国で3万超といわれる投資用不動産業者を追跡調査するのは容易ではない。一方、金融庁の厳しい姿勢を忖度して、事前に債権を譲渡する動きも活発化しており、金融機関から投資用不動産向け債権を買い集めるファンド等のブローカーも跋扈し始めている。
 4月12日には、この調査の契機となったスルガ銀行の業務停止命令が解除された。同行は法令順守の研修や融資審査の見直しに加え、独立した内部監査体制を整えるなど悪質な不動産業者を排除するための情報管理を徹底。中止していた投資不動産向け融資を5月中旬以降に再開する。膿は出し切らねばならない。


 LIXILトップ人事の内紛劇は一段と泥沼化

 トップ交代で紛糾が続くLIXILグループは4月18日、潮田洋一郎会長兼最高経営責任者(CEO)が5月20日付で取締役を辞任すると発表した。投資ファンドなど海外機関投資家らから解任を突き付けられた結果で、潮田氏は6月の定時株主総会後にCEOを退くことも表明した。しかし、これで終止符ではない。事実上解任された前CEO兼社長の瀬戸欣也氏は自らの復帰含みで新取締役候補を株主提案しており、完全決着まで予断は許されない。
 国内住宅設備・建材最大手の経営を揺るがすトップ人事をめぐる問題の発端は、昨年10月に発表されたトップ人事に遡る。その結果、瀬戸氏がCEOを退任し、代わってLIXILの母体の1つで現在主流の旧トステム創業家出身の潮田氏がCEOに復帰し、LIXIL社外取締役の山梨広一氏が最高執行責任者(COO)に就いた。瀬戸氏が辞任の意思を表明したとするのが当時のLIXILの説明だった。
 しかし、工具通販のMonotaRO(モノタロウ)を株式上場に導いた瀬戸氏を潮田氏が招いた経緯から、瀬戸氏が事実上解任されたと専ら受け止められた。ただ、その決定プロセスが不透明と機関投資家らが指摘し、LIXILは今年2月に第3者の弁護士による検証結果を公表した。
 その結果は、指名委員会を招集した潮田氏が瀬戸氏に辞任の意思がなかったにもかかわらず、指名委で潮田氏が瀬戸氏に辞任の意思があったかのように説明し、トップ人事が決定した。ただ、検証結果は人事が適法、有効と結論付けた。
 これに対し、瀬戸氏はLIXIL母体の1社、INAX創業家出身で現在LIXIL取締役の伊奈啓一氏とともに6月の定時株主総会に新取締役候補を株主提案することに踏み切った。瀬戸氏は今回の潮田氏の辞任表明を、海外機関投資家らが潮田氏らの解任に向け5月中の開催を求めていた臨時株主総会を回避しただけと批判する。
 LIXILの発表では山梨社長兼COOも定時株主総会後に退任する。潮田氏は辞任理由に「大変な最大の失敗だった」と瀬戸氏を起用した任命責任を挙げた。ただ、後任のトップ人事も示せぬままの辞任表明は説得力に欠ける。
 LIXILの内紛劇の次の焦点は、「会社を正しい道に導く」と復帰も視野に入れる瀬戸氏らの株主提案を含め、新トップ人事に移る。それにしても、解任トップも“参戦”し、ステークホルダーを巻き込んだLIXILの内紛劇は、日本企業のガバナンスの特異さを一段と際立たせたのは皮肉というしかない。


 販売不振の投資信託にネット通販時代到来か

 投資信託の販売不振が深刻だ。投資信託協会の最新データでは1月の購入額(指数連動型ETFは除く)は1兆1132億円で2009年来の低水準。
 不振の背景は何なのか。
 まず「リスクを取りにいかない国民性」が指摘される。昨年3月末で個人金融資産に占める有価証券資産の割合は米国54%弱・欧州31%強に対し、日本は16%余にとどまる。が、これだけでは「約10年ぶりの低水準」は説明しきれない。
 投信営業の枠組みに答えは求められる。それは、投信を商う証券会社や銀行の「手数料重視姿勢」だ。数年間に設定された投信を俯瞰すると「テーマ性」を重視した商品が目立つ。テーマありきで限定的な業種・銘柄に運用対象を絞り込んだ投信は、手数料が割高に設定される。
 そんな中、興味深い流れが起こり始めている。売り手の身内である「運用会社」の反逆の狼煙だ。具体的には投信運用会社による自社商品の「ネット通販」である。先行したのは、三井住友FGが50%強の株式を有する三井住友DSアセットマネジメントだ。同社は「リッパー・ファンド・アワード・フロム・リフィニティブ2019ジャパン」の投信部門で7つのファンドが「最優秀ファンド賞」を受賞している。「我々の運用力を殺してくれるな」と反逆の姿勢を露わにしたといえる。
 例えば「アクティブ元年・日本株ファンド」は信託報酬1.0584%、換金時に0.15%がかかるが「購入時手数料はゼロ」という、投資運用会社(産地)直送のネット通販商品。ヒントは同じ投信商品の購入でも証券・銀行の窓口よりネット証券の方が「手数料等が最大4%安くなる」という点で、三菱UFJ国際投信も追従した。
 また超低金利で魅力が激減している「学資保険」に対し、内外の株・債券で運用する17ファンドのネット通販を始めた。野村HDのCFOを務め野村アセットマネジメント社長に転じた中川順子氏は「投資を身近に感じてもらい、若い年代層の顧客を開拓していく」と語っている。野村AMでは「投信の保有率は11年の17.0%から18年には13.1%に低下している。とりわけ20〜40歳代の保有率の低さが目立つ」とする調査結果を公にしている。「野村AMも参入」の声が強い。
 投信にも、ネット通販による「産直の時代」の足音が聞こえる。


 五輪後の再開発で確定? 東京の街並み喪失リスト

 東京都の都市計画審議会が「東京における土地利用に関する基本方針について」(都市づくりのグランドデザインを踏まえた土地利用のあり方)のパブリックコメント作業を終え、東京五輪後の「再開発の虎の巻」といわれるその内容が確定する。
 そこから、五輪後の再開発で街並みが失われそうなエリアがピンポイントで分かってきた。東京都の都市整備局と都計審が狙いを定めたのは「活力と賑わいの拠点」等だ。具体的には市谷、麹町、四谷、飯田橋、中野、三軒茶屋、立石、下北沢などとその周辺だ。
 前記の「虎の巻」には皮肉にも、五輪前に見て記憶に刻んでおくべき街並みが列記された。具体的には、新宿のような「中核的な拠点」のほかに、活力とにぎわいの拠点、地域の拠点、生活の中心地に都内の街を分け、再開発・整備するという。
 都は「都市開発諸制度における育成用途を全ての拠点に設定」して、再開発に駆り立てる。その言葉を借りれば「街区再編まちづくり制度等により……高経年マンションの連鎖的な建替え、駅と街が一体となった開発誘導で拠点の位置づけを再編し、……地域のポテンシャルを最大限に発揮し、地域が競い合いながら新たな価値を創造する」という。
 だが、簡単に言えば、駅前の地価を高めるため、利便性の邪魔になる街並みを「整理」し、どこもかしこも同じ顔の金ピカの新しい再開発ビルに置き換えるというだけの話だ。
 五輪前に新しい元号が始まり、身近にあった「昭和の匂いのする街」も平静を保てない。立石、阿佐谷、西荻窪では、写真に撮ってインスタグラムに上げる人が増えている。
 例えば、西荻窪の道路拡幅を理由にした再開発は統一地方選の争点にもされた。杉並区議選の候補者の中には「こぢんまりしていて個性的なお店が多いことで愛され親しまれている西荻を壊さないで」「住宅や営業を奪われ、多くの人の人生がかかっている問題」という候補もいた。
「基本方針」で「活力と賑わいの拠点」に選ばれた葛飾区立石では立石駅北口地区市街地再開発事業に対し「飲んべえの聖地を守れ」として反対運動が本格化。SNSでは「再開発準備組合、旭化成、不燃公社に提出した質問状への回答に納得がいかない。改めて質問状を出しに行く」という動きがリアルタイムでわかる。
 補助金や法律をテコに、地域住民の耐震、防火性能の「不安」を突いて地域や街並みを統一するのは、個性や文化を枯渇させるだけだ。


 期待のインフルエンザ新薬、耐性変異株が発生

 インフルエンザシーズンはようやく終息に向かったが、今シーズンは塩野義製薬の「ゾフルーザ(一般名はバロキサビル)」が爆発的に使われた。タミフルなど従来のインフルエンザ薬は感染した人のウイルスが増殖を繰り返すのを抑えるものだったが、ゾフルーザはウイルス細胞内に入り込み、細胞内で増殖を抑えるという革新的な作用機序を持つ。しかも1日2回、5日間飲み続けなければならないタミフルと違い、1日1回の服用で済む。厚生労働省が審査期間を短縮して優先する「先駆け審査」に指定し承認した期待の新薬だ。
 塩野義製薬は世界で10億ドル以上売り上げるブロックバスターになると見込んだ。実際、1日1回の服用で済むことが人気を呼び、患者が望めば医師もゾフルーザを使いたがった。おかげで、薬価算定時に塩野義製薬が提出した処方数予測は発売9年目のピーク時で「331万人、売り上げ141億円」と見込んだ予想を大幅に上回り、初年度だけで562万人にも上った。
 だが、変異してゾフルーザに耐性を持つ株が予想以上に現れていることが判明した。国立感染症研究所の中間報告では、今シーズン流行したA香港型ウイルスでゾフルーザ投与患者30人中22人に耐性変異ウイルスを検出。未投与患者83人の中にも、3人に耐性株が見つかったと公表し、耐性ウイルスが人から人に感染している可能性がある、と発表した。
 ゾフルーザは治験段階でも一部に耐性ウイルスが出たというデータが示されてはいるが、タミフルや注射剤のラピアクタでの耐性ウイルスの出現はせいぜい2%程度。ゾフルーザの耐性ウイルス出現率は、今までのインフルエンザ薬と比べても、少々多すぎるのだ。
 早速、日本感染症学会では「ゾフルーザはA型インフルエンザには使うべきではない」という意見や「タミフルでは効果がない場合や今後、日本に侵入すると予想されるH7N9鳥インフルエンザに限って使うべきだ」という声が上がっている。薬害オンブズパーソン会議からは「販売停止」を求める声まで上がった。
 国立感染症研究所は「まだ調査件数が限定的だが、人から人への感染例もあるので、さらにデータを集める」と慎重だが、感染症学会は「A型ウイルスには要注意だということが判明しつつある。これからデータを検証し、ゾフルーザの使用基準を策定する」という。革新的医薬品にはつきものだとはいえ、安易に頼るべきではない。


 アマゾンが公取に“白旗”「全商品ポイント還元」撤回

 アマゾンジャパンが、公正取引委員会の圧力を受け、目玉事業として5月に導入予定だった「全商品ポイント還元制度」の撤回に追い込まれた。市場支配力を強める巨大プラットフォーマーが、自ら打ち出した看板事業を取りやめるのは異例。公取委の小さな槍が、巨象の急所に突き刺さったともいえそうだ。
 アマゾンは2月、全商品に購入額の1%以上のポイントを付与する消費者還元策を5月から始めると発表。外部事業者の商品を扱う「マーケットプレイス」でも、外部事業者にポイント還元を義務付け、ポイント分の原資は外部事業者が負担する仕組みとする方針を打ち出していた。
 ところが4月10日、一転して「ポイントプログラムの展開について、予定していた計画を変更する」と通知。アマゾンが自ら仕入れて販売する直販方式の商品はアマゾンの負担で新たにポイントを付与する一方、「マーケットプレイス」の商品については、外部事業者にポイント還元を「強要」せず、ポイントを付けるかどうかや、どのくらいのポイントを付けるかの判断は、従来通り外部事業者に任せることにした。
 取引条件の一方的な変更に、「ポイント還元の販促効果よりコスト増のほうが大きい」と不満だった外部事業者は、ほっと胸をなで下ろした。
 膨大な購入者データを駆使して消費者の嗜好を読み解き商品を勧めるレコメンド機能を軸に、ネット通販の市場を席巻してきたアマゾンだが、今回の方針転換は強気一辺倒で推し進めてきたビジネスモデルの後退を意味する。公取委は、ポイント還元策の原資を出品者に負担させる方式は、独占禁止法が禁じる「優越的地位の乱用」にあたる可能性があるとして、ネット通販業界の一斉調査に乗り出していた。
 アマゾンの方針転換は、公取委の「強い意思」を感じ取ったからにほかならない。アマゾンの日本における売り上げは約1兆5000億円。約16兆円といわれる国内の電子商取引市場で、存在感は群を抜いている。アマゾンにとってみれば、ポイント還元策のつまずきなど取るに足らないことかもしれない。だが、巨大プラットフォーマーへの対抗策が限られる中、アマゾンに“白旗”を掲げさせた公取委の「渾身の一刺し」の波紋は小さくなさそうだ。


 ニトリ会長の為替予測は当分の間、慎重になる?

 ニトリホールディングスを語る際、キーワードになるのが「為替」と「景気」。同社の決算説明会の質疑応答では、必ず質問が出る。ニトリHDは、ビジネスモデルが海外に自社工場を持ち、現地からの開発輸入品が8割を占めるから円高は収益を押し上げ、円安だと圧迫する。昨年3月末も、創業者で同社会長の似鳥昭雄氏は「為替」と「景気」を語っていた。
 ところが、去る4月8日に行った決算説明会では、「オリンピックイヤーの年には完全に不景気となることが過去の経験法則でわかっており、日本はもうマイナスに差し掛かっている。今後、ドル安円高方向になっていくだろう」と、前年時に比べて発言内容が具体的ではなくなり、トーンダウンした。為替や景気予測では経営者の中で指折りの的中率といわれてきた似鳥氏の洞察力だが、同氏の想定よりも今は景気後退が鮮明化。米国景気の落ち込みに引きずられる日本ではこの先、似鳥氏の為替予測は慎重な発言に終始しそうだ。


 「脂質異常症」の診断基準見直しへ

 生活習慣病の中に、応急治療に秒を争う「心筋梗塞」や「脳梗塞」を誘発する「脂質異常症」(厚生労働省調査、2016年、患者数約206万人)がある。かつて「高脂血症」という病名で呼ばれた「脂質異常症」とは、血管に障害を招く病気だ。血管の内側にたまった血の塊(血栓)が原因で血管が狭くなり、硬くなると「動脈硬化」が起こる。
 動脈硬化の主な原因は、コレステロールの増減にある。健康診断を受けると、レントゲンや血圧等と一緒に血液検査の項目があり、「HDL-C」(善玉コレステロール=動脈硬化を予防)と、「LDL-C」(悪玉コレステロール=動脈硬化を促進)の表示がある。この数値の結果によって、コレステロールの正常性や、動脈硬化の進展状況が診断される。つまり「脂質異常症」の有無である。
「日本動脈硬化学会」が定義している「動脈硬化性患者予防ガイドライン」によると、「LDL-Cは140ミリグラム/1デシリットル以下。HDL-Cは40ミリグラム/1デシリットル、以上」を治療のガイドラインにしてきた。
 もともと脂身の多い肉などに含まれるコレステロールは、細胞膜の維持やホルモンの材料として、健康に欠かせない存在である。ところが大量摂取など誤った食生活や運動不足等が原因でLDLやHDLの値が変化してくる。数値が高くても、また低くてもいけない。
 動脈硬化を判断する標準値に異変が生じると、医師は患者に食生活や運動不足の改善指導を行い、標準値の高低があまりにもひどいと、スタチン系などの医薬品を処方し、医学治療が開始されていた。
 症状は痛くもかゆくもないし、目視確認もできず熱が出る症状などもない病気のために「脂質異常症」の疾患者は、つい治療を怠ってしまう。結果、いつの間にか動脈硬化が進み、前述したような恐ろしい「心筋梗塞」などの血管系の病気を招く引き金になるのだ。
 医師が治療の判断にしてきたこの「脂質異常症」のガイドラインが2017年、70以上〜170以下に大きく改正され、これに伴い医療現場での診断基準も見直されつつある。患者などの過去の臨床統計を吟味、参考にして数値を大幅に緩くしたのだ。
 糖尿病や脂質異常症の予備軍にとっては朗報だが、喜んでばかりはいられない。循環器学では国際的に知られている東邦大学医学部の東丸貴信名誉教授がこう忠告する。
「一昨年あたりから欧米の医学界で、この脂質異常症関係のガイドラインが大きく改正されています。日本の病院でも現在、欧米に倣ってその診断基準の見直しを行っていますが、数値が緩く改正されたことは、それだけ患者さんの個別的対応が求められることにもなります」


 デジタル教科書で懸念される目の障害

 今年度から小中高で「デジタル教科書」の使用が解禁となった。2020年までには小中学生ほぼ全員に電子タブレットを普及させるというのが文部科学省の方針だ。
 内閣府の調査(17年度)では、小学生の55.5%、中学生の66.7%が何らかの形でスマホを利用している時代、教科書が紙からデジタルに移行するのは避けられないご時世かもしれない。
 しかし、この流れに、医学の面から警告が発せられている。デジタル機器が小児や若者に与える目への影響を研究している、原直人・国際医療福祉大学教授と不二門尚・大阪大学大学院医学系研究科教授ら眼科医たちだ。
 彼らの報告によると、デジタル機器は紙の書籍に比べ、目のピントの調節機能が低下するピントフリーズ現象を引き起こしやすく、それがいわゆる「スマホ老眼」につながるという。ある調査では高校生の半数が調節不全で、若くして老眼になりやすい傾向にあるという。
 さらに、21〜23歳の若者を調査したところ、長時間デジタル機器を使用すると眼球の位置がずれる内斜視、いわゆる「スマホ内斜視」になりやすいこともわかった。
 深刻なのは、目の機能が発達中の児童への影響だ。最近、急増している原因がはっきりしない突然起こる内斜視に「急性共同性内斜視」という目の異常があるが、その一因にスマホや3D映像などの視聴の可能性が指摘されているのだ。
 近年、学童の近視は増加傾向にあり、1979年度には小学生の近視は17.9%だったものが、平成26年度は30.1%と大幅に増加している。その一因にデジタル機器があるといわれており、授業にデジタル機器が当たり前になると、この傾向は一段と強まることになる。
 とはいえ、IT時代にデジタル機器を避けて通ることは不可能だ。少しでも目の負担を減らし、子どもたちや若者の目の健康を守るにはどうしたらいいのか。専門家による予防法を簡単に紹介しよう。
1、学童がスマホなどを使う時には30センチメートル以上離す。
2、長時間続けて使わず30〜40分に1度目を休める。
3、外で遊んだり運動するなど戸外活動を増やす。


 安倍=トランプ両政権のカギとなるのは5月20日

 トランプ米大統領再選のカギは来年11月までの米国の経済状況にかかっている。米国の有権者はこの大統領で暮らし向きが向上したかどうかを判断基準にするからだ。トランプ大統領も景気悪化を招くようなことは事前にその芽を摘んでおきたい。すでに米連銀には利下げを要求し、自身の考えに近い理事を強引に入れようとしている。また、通商面でも対中国での貿易赤字問題の解決で米国製品の売り込みを図っている。
 そのトランプ氏の大きな懸念の1つが、蜜月関係にある日本の安倍政権が予定している10月の消費税増税問題だ。右寄りのウォールストリート・ジャーナル紙はトランプ政権の意を受けて増税凍結を主張する記事を書き続けている。増税で日本経済がかなり悪化するのは前回の教訓。結果として世界経済が悪化すれば、米国経済が冷え込む悪いシナリオに基づいている。
 米国の意向を受けるように、すでに萩生田光一幹事長代理が7月の日銀短観次第と観測気球を上げたが、その前に5月20日の1〜3月期のGDPがかなり悪化すれば凍結の決断をする可能性もある。そして、衆参同日選挙になる可能性が高い。もし凍結されない場合は、7月の参議院選挙でかなり議席を失い、安倍首相のレームダック化が進む。
 同時に橋下徹元大阪府知事の動向も要注目だ。もし、衆参同日選挙となれば衆院選に立候補し、総務大臣として内閣に迎えられる可能性が高い。そこで、大阪都構想を支援する立場と、次期首相候補としての経験を積むことを政権首脳から期待されているからだ。


 民主党に強力候補不在でトランプ再選が見える

 その次期米国大統領選挙ではトランプ氏の再選の可能性が高い。主な理由は民主党で党内の紛争が続き、結局、有力な大統領候補に収束できる見込みがないためだ。手を上げた20人を超える候補者のほとんどが、民主党の綱領に立ち戻るという中道派の色彩が強い。唯一、サンダース上院議員が社会民主主義に変えていくべきだと主張しているが、多くの党員はまだ同調できないでいる。
 バイデン元副大統領は中道派の重鎮として出馬を予定しているが、セクハラ疑惑などを受けてすでに失速気味だ。しかもその疑惑のネタ元は民主党左派グループで、結局、バイデン氏が出馬しても中道派と左派グループの泥仕合に終始。打倒トランプどころではない。
 むしろ注目は、支持率3位で37歳の新星、ピート・ブーティジェッジ・サウスベンド市長だ。マルタ系の移民でハーバードロースクールを出た後、ローズ奨学金を得て、オックスフォード大学に留学した。その後29歳で人口10万人のインディアナ州の市長になり、経済を再生させた手腕で注目されていた人物だ。
 この候補者がさらに注目されてきたのは、同性愛者を公表し、4年前に男性と結婚した点。また、市長在任中に7カ月間休暇を取り、アフガニスタンで海軍情報将校として軍務についたことである。この候補者のスピーチはクリントン氏やオバマ氏以上とされ、その説得力は群を抜いており、民主党支持層の若い世代から熱烈な支持を受け始めている。
 最近シカゴ市長選挙でレズビアンを公表した初の黒人女性が市長に当選したこともあり、米国が抱える問題は、若い指導者に任せて一緒に解決していこうという雰囲気が広がれば、トランプ氏の対立候補としてチャンスは高いとみられている。


 「国民を奴隷化している」中国批判のバノン砲が炸裂

 日本にも頻繁にやってくるスティーブ・バノン前米大統領戦略補佐官が挑戦的な発言を繰り出している。
「TIME」がまたバノン特集号を出した。「マッキンゼーもゴールドマンサックスもブーズ・アレン・ハミルトンも、(中国に進出して不正申告に気付きながらも告発しない)会計監査事務所や法律顧問たちは、国民を奴隷化している中国共産党に協力することでアメリカの国益を売っているのだ」(同誌4月22日号)と中国に協力的な企業はあたかも売国奴だというニュアンスである。
 米国に渦巻くのは中国への露骨な敵対姿勢だ。現にアマゾンやアップル等も国内の反中国ムードに勝てない。ファーウェイ排除という強い動きに伴って中国への進出を縮小もしくは部門撤退に入った。それでも米国のハゲタカファンドが中国の不良債権を買い集めて金融商品化しているのはかつて日本で見た姿だが、これは強欲資本主義の典型的側面だ。
 対中姿勢で特に強硬なのは議会の大物がずらりと揃うコーカス(幹部会)「今そこにある危機委員会」だ。バノン砲はこの席で炸裂した。
「今、中国の次世代技術開発に歯止めをかけなければ、米国はやがて中国の風下に位置することになる。多くの自由な国民国家の大事な価値観が、国民を奴隷としている中国共産党のルールに従うことになり国際秩序が破壊される」とバノン砲は鳴り響く。その要は次のフレーズである。
「ソ連を軍拡競争で打ち負かしたように、今、米国が中国に対して行うべきことを断行しなければならない」


 大麻合法化を主張するタイ連立工作で鍵握る政党

 5年にわたって軍事政権が続くタイで3月に行われた民政復帰のための総選挙は、親軍政派、反軍政派とも決定的な勝利を手にすることができず、両派による多数派工作が長期化する公算だ。
 双方とも政権樹立に自信を見せる中、鍵を握るのは大麻の合法化を主張する異色の政党「タイ誇り党」だ。東北部のブリラム県を地盤とするこの政党は、総選挙では軍政の仇敵であるタクシン元首相派のタイ貢献党、軍政を率いてきた軍出身のプラユット暫定首相の続投を目指す国民国家の力党、反軍政の新党・新未来党、反タクシン派の民主党に続く第5党にとどまる見通しながら、親軍政派とも反軍政派とも良好な関係にある立ち位置を最大限に活用し、両天秤に掛けながらどちらにつくかしたたかに戦略を練っている。
「タイ誇り党」の背後には、ブリラム県出身の大物政界フィクサー、ネウィン氏が控えている。ブリラム県はイサーンと呼ばれるタイで最も貧しい東北部にありながら、近代的な
モータースポーツのサーキットを備えるなどネウィン氏の影響力で発展してきた。
 選挙戦では、各党が「経済格差是正」など同じような公約を掲げる中、「タイ誇り党」は大麻の合法化を訴え、異彩を放った。タイでは医療・研究目的の大麻が解禁されたばかりで、貧困に苦しむ住民の生活を改善するには大麻の栽培を幅広く認めるべきだと主張して回った。薬物犯罪に対する取り締まりが厳しいタイで、全面解禁を提唱するのは挑戦的だ。
「タイ誇り党」を率いるのは大手建設会社の運営に携わってきたアヌティン党首。親軍政派は、同党が自陣営に加わればアヌティン氏を主要閣僚に迎える考えだ。一方、反軍政派はアヌティン氏を首相候補に担ぐ動きを見せている。


 香港の学生運動が鳴りを潜める理由

 今、香港の学生運動が大きく後退している。原因は、香港当局と北京の中国政府の圧力である。
 現在、香港の大学で「学生会」があるのは中文大学、理工大学など四校のみで、残りの六大学に学生会はない。その最大の理由は学生会役員に立候補する学生がいないことである。簡単にいうと、学生の政治活動は強く制限されているからにほかならない。
 ここ数年、香港の学生運動が政治色を強めたため、大学当局や中国政府筋の圧力が強まっている。
 これまで「釣魚島保衛運動」(尖閣諸島防衛運動)や、「中国語振興運動」などをやっていた学生運動、さらには「香港独立(北京政府の支配からの離脱)」などを主張してきた運動が、香港当局や中国政府の逆鱗に触れ、学生指導者が投獄され(現在も獄中にいる)、中国共産党の露骨な圧力が強まったため、学生運動に加わる学生が激減しているというのである。
 習近平政権は、今後も「反北京運動」には強い圧力を加えることは確実で、香港の学生運動はまるで火の消えた状態になっている。習政権はチベット・新疆ウイグル自治区の状況を内外の報道機関が伝えることにも強い圧力をかけているが、こうした状況に香港の学生たちに不満のマグマが溜まりつつある。


 中国の大学教授らが次々と解雇されている

 習近平主席を遠回しに批判しただけで大学、シンクタンク、メディアから解雇される事態が連続し、欧米在留の中国人留学生の中国語ネットサイトで「まるで暗黒政治だ」とする批判が広がっている。
 直近では清華大学法学院の許章潤教授が停職処分となった。2018年7月と二年前の論文を指弾されたのだが、実際は同大学経済研究所のサイトに「我々の今の恐怖と期待」というコラムを書いたことによる。
 その恐怖とは、「私有財産は守られるのか、政治優先で経済を放棄するのか、階級闘争が始まり対米鎖国をするのか、知識分子の思想改造とやらをまた始めるのか、軍拡競争に驀進し改革開放は終わるのか」。一方、期待とは、「バラマキ外交をやめ、外交的浪費をやめ、長老の特権は廃止し、公務員の資産公開を行い、個人崇拝キャンペーンをやめ、国家主席任期を回復させ(つまり習近平は2022年で辞任)、天安門事件を再評価せよ」と、まるで劉暁波の「〇八憲章」の最新バージョンだった。まさに習主席への当てつけである。
 この許教授に続いてマルクス主義学院の講師、柴暁明が「国家政府転覆容疑」で逮捕された。その前の2月には重慶師範大学副教授の唐雲が学生の密告で教師資格剥奪処分、同大学では2017年にも譚松講師が強制的に解雇されている。
 習近平政権の登場以来、「人権派弁護士」およそ200名が拘束され、人権擁護の弁護士はいなくなった。昨今は著名な大学教授が連続して失職に追いやられ、この波は金融財政担当のエリートにも広がっている。
 国際的なエコノミストとして知られる周小川(前人民銀行総裁)は引退、朱容基派の生き残りだった楼継偉・元財務相も自ら辞任した。彼らも習主席の経済路線を婉曲に批判したからだった。


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