巻頭言
枝廣淳子の


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枝廣淳子
(幸せ経済社会研究所所長)





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気候変動非常事態宣言

 「世界では気候変動非常事態宣言を出す自治体が増えている!」とのメールが、東京大学名誉教授の山本良一先生から届きました。世界各地で異常気象が頻発しています。昨年も、日本は7月に豪雨に見舞われ、アルジェリアのワルグラは、7月5日に51℃という過去最高気温を記録しました。オマーンのマスカット南部では、6月28日に夜間も気温が下がらず、1日の最低気温としては記録的な42.6℃を観測し、米国カリフォルニア州デスバレーでは、7月8日に52℃を記録しています。
 多くの人々が「気象が極端になってきている」と感じています。もっと正面から地球温暖化との関連を問い、異常気象の深刻度と頻度を抑えるためにはどうすべきかを真剣に議論し、行動すべき時ではないでしょうか。
 しかし、そう言うと、「こういった極端な気象の原因は、自然変動ではないか? 人間活動が引き起こしている地球温暖化のせいだと言えるのか?」という疑問の声が上がります。確かに温暖化は気候の変化であり、個々の極端な気象にこの気候変化がどのように関与しているかは直ちには明らかではありません。
 科学者たちは「極端気象の要因分析」を進めてきました。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)など多くの研究は、地球の気候システムが温暖化していること、最近数十年の世界の平均気温の上昇のほとんどすべてが人間活動、主として化石燃料の燃焼によるCO2排出に起因していると結論しています。
「この間の、あの異常気象は地球温暖化によって引き起こされた」と科学的に言うことはできません。しかし、地球温暖化によってそのような極端気象の発生確率や強度が増加しているかどうかは、要因分析によって説明することができます。
 いくつかの研究を示してみましょう。2003年に7万人の死者を出したヨーロッパの熱波の発生確率は、人間起源の地球温暖化によって2倍に増加していたことが示されています。また、2017年8月に記録的な雨量をもたらしたハリケーンのハービーは、温暖化によって強度は15%増大し、発生確率も3倍に増加しています。
 また、気候変動がなければ起こり得なかった極端な気象として、2016年の世界的な記録的熱波などが挙がっています。日本の昨年7月の猛暑についても、「温暖化の影響がなければ、発生する可能性はほぼなかった」との想定実験の結果もあります。
 異常気象が増え、深刻化し、それらに対する温暖化の影響が明らかになってきています。温暖化の影響を直接的に受けるのは、地域です。そこで、日本でも、昨年12月に気候変動適応法が施行され、温暖化の影響の深刻化への「適応」をきちんと考え、計画し、実施していくための温暖化適応計画を各自治体で作成することになりました。都道府県や市町村が適応計画を作成することは「努力義務」とされていますが、手遅れになる前に、すべての自治体が早急に真剣に取り組むことが求められます。
 海外では、「備え」だけでなく、非常事態宣言を出して「これ以上、悪化させない!」計画の策定・実施が広がっているというのが、冒頭の山本先生です。温暖化の分野で早くから警鐘を鳴らし、政府や企業、自治体、市民の取り組みを後押ししてきた先生です。
 この運動は、2016年12月にオーストラリアのビクトリア州ダーバン市で始まり、ロサンゼルス、ロンドン、バンクーバーなど、アメリカ、イギリス、カナダなどの300を超える地方自治体が気候変動非常事態宣言を発表して、取り組みを進めています。これからもますます広がっていくでしょう。しかし、非常に重要な動きであるのにもかかわらず、日本ではほとんど取り上げられていません。日本の自治体にも非常事態宣言を出し、危機感を持って取り組みを進めるところが出てくること、広がっていくことを心から望んでいます。
(幸せ経済社会研究所所長)


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