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元木昌彦(もときまさひこ)
編集者。1945年生まれ。「週刊現代」や「フライデー」の編集長として権力批判の誌面づくりを貫いた。メディア規制の動きに反対の論陣を張る。2006年11月、講談社を退社。オーマイニュース元社長。上智大学、明治学院大学、大正大学などで講師。インターネット報道協会代表理事。


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川合伸幸(かわいのぶゆき)
1966年京都市生まれ。1990年関西学院大学卒業。95年関西学院大学大学院文学研究科満期退学。心理学博士。94〜99年日本学術振興会特別研究員(DC,PD)。99年京都大学霊長類研究所COE研究員。2001年名古屋大学人間情報学研究科助手。04年同大学情報科学研究科助教授を経て17年から名古屋大学大学院情報学研究科准教授、18年から中部大学創発学術院客員准教授。専攻は比較認知科学・認知科学・実験心理学。国立精神・神経医療研究センター神経研究所客員研究員、文部科学省科学技術・学術政策研究所科学技術動向研究センター・専門調査委員。05年度文部科学大臣表彰・若手科学者賞、09年度日本学士院・学術奨励賞、同年度日本学術振興会・科学研究助成事業審査員表彰ほか多数受賞。主な著書は『心理の輪郭』『ヒトの本性』『科学の知恵 怒りを鎮めるうまく謝る』等


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■元木昌彦のメディアを考える旅 253 今月の同行者/川合伸幸氏
(名古屋大学大学院情報学研究科准教授・中部大学客員准教授)


「高齢者はキレやすい、凶暴」は誤解
作られる印象に惑わされるな!

■加齢によってヒトは少しずつ変わるが――
 最近、読むもの、見るもの、聞くもの、すべて腹が立つ。若い頃から短気ではあったが、年々ひどくなる。『凶暴老人 認知科学が解明する「老い」の正体』(小学館新書)の著者で認知科学が専門の川合伸幸名古屋大学大学院准教授によると、平成28年の高齢者の検挙率は平成八年の約3.7倍になっているそうである。高齢者が増えたことが背景にはあるが、逮捕者は約4万7000人で20代より9000人も多いというのだ。
 それも強盗や殺人などの重大事犯が増えている。このままいくと自分もその1人になるかもしれない。昨年末、慌てて川合氏に会いに行ってきた。
 川合准教授によると、思考や判断、計画、抑制という人間らしい合理的な判断をする脳の司令塔である前頭葉が、加齢とともに機能低下していくそうだ。中でも年寄りは「しようとしたことを抑えるのが苦手」で、周囲の白い目などを気にせず駅員や店員を怒鳴り上げたり、クルマのペダルを踏み間違えてしまう。
 前頭葉が衰え認知機能が弱くなるのを食い止めることはできるのか? よく、脳トレがいいと聞くが、川合准教授によれば、漢字の読み書きで鍛えられるのは漢字の読み書きだけ、計算は計算だけで、トレーニングした機能以外には波及しないそうである。
 だが、1つだけ食い止める方法があるというのだ。詳しくはインタビューを読んでいただくとして、年をとるというのも楽ではないと、最近つくづく思う。『凶暴老人』という自著のタイトルは、実は、?マークを付けるところで、老人が凶暴だという理解は正しくないという主張を詳しく聞こう。

            ◇

元木 私は1945年(昭和20年)生まれですから73歳です。もともとあまり気の長いほうじゃないんですけど、65を過ぎたあたりからよけい気が短くなってきて、カミさんにも嫌がられてます(笑)。川合さんの本を読ませていただくと、脳の前頭葉というのは40歳ぐらいから衰えていって、怒りをコントロールする抑制力が弱くなっていくために、高齢者は怒りっぽくなるそうですね。
川合 そうです。多分、ほとんど自覚はないと思うのですが、加齢によって緩やかに少しずつ変わってきます。私も50歳を越えていますが、確かに最近イライラすることが多いな、と思います。
元木 機械だって60年以上も使っていればガタがきますからね。
川合 脳という器官は全体として1つの仕事をしているのですが、場所によってそれぞれ独立した仕事もしています。心臓が弱くなると心臓が全体的に弱くなっていくので、右心房だけ弱くなることはないのですが、脳は場所によって働きが違います。前頭葉は発達するのが1番遅く、思春期にかけて成長してくるのですが、それだけ精密にできています。精密なものは壊れやすくて、40代半ばから少しずつ歯車が狂って弱くなってきます。
元木 私の場合、60を越えたあたりから、記憶力が落ちてきたり、感情をコントロールできにくくなってきたというのが自覚です。
川合 高齢者といわれる65歳以上の人は、多かれ少なかれ何となく我慢ができません。必ずしも怒るわけではないのですが、すぐ電話してしまったり、約束の時間に随分早く着いてしまうなど、待っていることができないという感じがします。
元木 それは抑制する機能の衰えということですか。
川合 それが大きいと思います。例えば怒るということで言うと、脳の奥のほうに扁桃体というのがあって、恐怖や怒りを感じる場所なのですが、そこがカーッとなると、前頭葉がそれを抑えるブレーキ役になるのです。1番暴力的なのは20歳ぐらいで、扁桃体が暴発してしまうのですが、老人がよくキレるといわれるのは、それとは違って、前頭葉が衰えてきてブレーキが甘くなってしまっているからです。
元木 若い人が暴力的なのは前頭葉とは関係ないのですか。
川合 基本的にはホルモンの問題ですね。世界中のデータを見ても、暴力や殺人の件数は10代から上がっていって、20歳ぐらいがピークです。そこからなだらかに減ってきます。これは、脳というよりもホルモンの関係で、男性なら女性をものにしたいと思う時期なので、いわゆる性ホルモンが1番出てくるのです。それがたくさん出てくるので、活動的になって暴力も振るうのです。サルや鹿でもそうですが、性が成熟した頃が雄同士で喧嘩をして死ぬのが多いですね。

イライラした時の
耐性を作り出す


元木 自分の前頭葉がどれぐらい衰えてきているかというのは、調べられるのですか。
川合 ある種のテストをやると分かりますね。本にも載せましたが、1から13での数字と、「あ」から「す」までのひらがなが交ざったものをひらがなと数字を交互に、エンピツを紙から離さずに順番に結んでいくといった検査をすると分かります。
元木 あれやってみましたけど、けっこう難しいですね。
川合 そうなんです。大学生にさせるとスラスラとやりますが、自分でやってみると、たまに間違えそうになる。
元木 1─あ、あ─2、2─い、い─3、3─う、ぐらいまではいいんですが、それ以上になるとあ、い、う……え、と分からなくなる(笑)。相当、私の前頭葉は衰えています。
川合 あれそのものは別に認知症の検査とかではなくて、前頭葉の働きを調べるためのものですが、相当、個人差がありますね。このテストはワーキングメモリと分割注意が必要になります。7ぐらいになると、今、数字はどこまで来ていたのかを覚えておかなくてはいけないので、ワーキングメモリをフル稼働させなくてはいけません。1つの項目が進む度に、それまでの情報を捨てて新しい項目に置き換えなくてはいけません。難しく感じるのは前頭葉の実行機能が低下していることを示しています。
(以下、本誌をご覧ください)
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