巻頭言
池 東旭の


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池 東旭
((ソウル在住/
 国際ジャーナリスト))





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トランプ&文在寅
疾風怒濤の年明け

 今年は世界いたるところ、大荒れの気配で始まった。米トランプ大統領の弾劾は可視圏に入った。それを免れようとトランプはなりふり構わず動く。難民問題はヨーロッパからアメリカに飛び火した。英国のEU離脱は実現、撤回どっちも後遺症が深刻だ。仏マクロン大統領も「黄色いベスト」デモになす術がない。北朝鮮の非核化は空手形に終わる。米朝和平に命運を託す韓国の文在寅大統領は窮地にある。ろうそくデモで大統領になったが、そのデモに退陣を迫られている。日本も参院選挙、消費税増税の如何により、安倍政権の進退が問われる。人びとは6年の長期執権に飽きた。
「平成」は日本が戦争に巻き込まれなかった稀有の時代だが、改元後の時代は不透明だ。歴史上、画期的事件はすべて予測外だった。ベルリンの壁崩壊、東西ドイツ統一、ソ連解体、9.11同時テロなど、だれも予想だにしなかった。アメリカの異端児、一匹狼・トランプの当選、韓国の朴槿恵大統領弾劾、断罪も予測外だった。ある事件が発生すると評論家は起こるべきことが起きたと、その必然性を講釈する。だが、後知恵だ。人びとは未来を予見する時、現在の延長線上で推し量る。安定したノーマル(正常)な状況ではそれが可能だ。だが不安定なアブノーマルな局面では通用しない。

──移り気トランプの豹変

 世界は今、アブノーマルな状況だ。冷戦の時は、米ソが対立したが軍事力は均衡して安定したノーマルな時代だった。ソ連が没落したポスト冷戦時期は米国の一極覇権により安定したノーマルな時代だった。しかし9.11同時テロ後、米国の中東出兵は失敗続きで国力を消耗し、世界の警察官の役割返上を公言して以来、不安定な局面が続いている。
 トランプは「アメリカ・グレート・アゲイン」を掲げて当選したが、本人がアメリカの威信を失墜させている。韜光養晦(才能を隠し、内に力を蓄える)の仮面を脱いだ中国は、アメリカに挑戦する超大国にのし上がった。米・中覇権争いの落塵は、世界中に及んでいる。覇者交代の不安定な状況の中で、意表をつくどんでん返しの逆転劇がくり返される。
 トランプと金正恩はロケット小僧とか耄碌爺と口汚く罵った舌の根も乾かないうちに和解を演出して、センセーションを巻き起した。その茶番劇を今年もくり返そうとするが、もう賞味期限切れだ。移り気と豹変が本性のトランプのことだ。北を奇襲攻撃するとか、終戦協定を結び韓国から撤兵するシナリオも排除できない。
 悪化一路の日韓関係も予断できない。東京オリンピックも天災地変で中止もあり得る。1940年東京五輪も戦争のせいで返上した。

──杞憂のすすめ

 1939年、ヒトラーとスターリンの独ソ不可侵条約は世界を震撼させた。そのショックで日本の平沼騏一郎内閣が吹っ飛んだ。日本の真珠湾攻撃も予測外だ。1950年1月、アチソン米国務長官は韓国を除外した日本列島と台湾を結ぶ防衛ラインを闡明(せんめい)した。米国は介入しないと思った金日成はその6カ月後南侵した。一方、マッカーサ元帥も中国の参戦はないと豪語して38度線を突破、北進して韓国戦争は泥沼にはまった。誤算と過信のせいだ。
 無用な心配を「杞憂」と言う。昔、杞の国の人は天が落ちるとか、大地が崩れるとか、あり得ないことを心配して、夜も眠れず食事も食べられなかったという。でもあらゆる可能性を吟味して準備を怠らない心構えは杞憂ではない。同盟は利害得失で結ばれ、破棄される。日英同盟は帝政ロシアの南下阻止のため1902年に結ばれ、日露戦争で日本の勝利を後押しした。だが21年後、条約は解消され、その18年後(1941年)両国は戦争を始めた。いま日米同盟は旧・新安保条約を合算すれば68年続いている。しかし永遠な同盟、条約はない。変化と流転は世の常なのだ。
(ソウル在住/国際ジャーナリスト)


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