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ラブロフ外相の発言を読み解くことが重要だ


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■佐藤優の情報照射「一片一条」 連載130回


歯舞群島と色丹島の引き渡しで
国内説得を始めたロシア

■今、北方領土問題のキーワードは「引き渡し」だ。
日ソ共同宣言は歯舞群島および色丹島の「平和条約締結後の引き渡し」を明記。
ロシア側の論理に沿って対応すれば早期返還につながる――

 北方領土問題が、歯舞群島と色丹島を日本に返還し、国後島、択捉島での日本の優遇的措置を設けることによる、2島返還プラスαの実現に向けて急速に動き始めている。
 12月1日(現地時間、日本時間2日)、アルゼンチンのブエノスアイレスで、安倍晋三首相とプーチン大統領が会談した。北方領土交渉を行う新たな枠組みをつくることで両首脳は合意した。交渉責任者は、日本側が河野太郎外相、ロシア側がラブロフ・ロシア外相だ。従来も北方領土交渉は、外務省が行ってきた。新たな枠組みという名称をつけても、これだけで交渉が前進することは考えられない。プーチン大統領はリアリストだ。両国外務省に任せておいては、交渉が袋小路に陥ることをよく理解している。12月2日にブエノスアイレスでプーチン大統領が行った記者会見の記録を読むと、日本の報道からは窺うことができない真相が見えてくる。
「われわれは日本と1956年の日ソ共同宣言に戻ることを合意した。それについては(11月14日の)シンガポールにおける会談の後、公にした。今、われわれは交渉の追加的メカニズムを創設する必要性と、人的交流と経済関係を拡大しながら、両国の信頼関係を向上させる必要性について話した」(12月2日「ロシア大統領府公式HP」)。
 重要なのは、「交渉の追加的メカニズム」というプーチン発言だ。新たな枠組みとは別に、これまでには存在しなかった交渉の追加的メカニズム、すなわち、「裏チャネル」を創設するという意味だ。

ロシアが日本に送った
重要なシグナル


「表チャネル」の責任者であるラブロフ外相が興味深い発言を繰り返している。
〈ロシアのラブロフ外相は(12月)17日、同国のラジオ番組に出演し、日ロの平和条約交渉について、「1956年の日ソ共同宣言を基礎にした平和条約の締結は、日本が第2次世界大戦の結果を完全に認めることを意味する」と話した。ラブロフ氏は7日にも同様の発言をしており、近く予定される日ロ外相会談や首脳会談を前に、日本に揺さぶりをかけている。/タス通信によると、ラブロフ氏は番組で「日本のパートナーは、いまだに(第2次大戦の結果だと)認める用意ができていないだけでなく、様々な形で認めることができないとほのめかしてくる」と日本を非難。日本側が態度を改めなければ交渉は進展しないと主張し、「第2次大戦の結果を認めることは、あらゆる交渉に不可欠な最初の一歩だ」と述べた。/ラブロフ氏は7日にも同様の発言をし、「日本には、絶対に譲れない最初の1歩だと伝えてある」などとロシア側の立場を強調したばかり。ラブロフ氏がこうした対日強硬発言を繰り返す背景には、ロシアの立場を優位にし、北方領土の引き渡しに大半が反対するロシア世論に配慮している事情があるとみられる〉(12月18日「朝日新聞デジタル」)。
 この記事を書いた「朝日新聞」の記者は北方領土交渉のニュアンスをわかっていない。だから、〈日本に揺さぶりをかけている〉という頓珍漢な評価をするのだ。
 ラブロフ外相は、ロシアが歯舞群島と色丹島を日本に引き渡すことを念頭に置いて、国内対策を始めているのだ。ロシア政府が事実上運営する、ニュースサイト「スプートニク」は、このラジオ放送について、〈ラブロフ外相は、1956年の共同宣言には「平和条約締結後、ソ連は返還ではなく親善の印、日本国民の利益、善隣関係を考慮してハボマイ群島とシコタン島を譲渡する用意がある」と記されていると強調した〉(12月17日「スプートニク」日本語版)と報じた。これが、ロシアが日本に送った重要なシグナルである。
 日ソ共同宣言9項には、〈ソヴィエト社会主義共和国連邦は、日本国の要望にこたえかつ日本国の利益を考慮して、歯舞群島及び色丹島を日本国に引き渡すことに同意する。ただし、これらの諸島は、日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との間の平和条約が締結された後に現実に引き渡されるものとする〉と記されている。ここで歯舞群島、色丹島の「返還」ではなく、「引き渡し」(ロシア語で「ペレダーチャ」)という言葉が用いられていることが重要だ。

ロシア側の環境整備に
日本は理解して対応を


 日本からすれば、北方領土はソ連によって不法に占拠された日本固有の領土ということになる。だから、本来の持ち主である日本への返還を要求している。しかし、ロシアの論理は異なる。ロシアは第二次世界大戦中の連合国の合意によって合法的にソ連に移転したとする。ロシアが根拠とするのは1944年2月11日、ソ連のヤルタで署名された「ヤルタ協定」だ。これは秘密協定で、戦後、1946年2月11日に米国国務省が発表するまで、日本はその存在を知らなかった。当然のことながらヤルタ協定に拘束されないというのが日本の立場だ。
 ヤルタ協定の3項では、〈クリル諸島(北方4島と千島列島に対するロシア側の呼称)がソヴィエト連邦に引き渡されること〉と定められている。ロシアはこの千島列島に歯舞群島と色丹島も含まれていると主張する。ここでの「引き渡されること」というロシア語も「ペレダーチャ」だ。この「引き渡し」に主権が含まれていると解釈しないと、千島列島は日本の主権下にとどまっていることになり、ロシアにとって都合が悪いことになる。従って共同宣言を基礎に交渉を進めれば、「引き渡し」される歯舞群島と色丹島が、日本の主権下にあることをロシアに認めさせることができる。
 ロシアとしては、国際約束で合法的に移転した領土のうち、歯舞群島と色丹島を日本に贈与するという論理で国内を説得しようとしているのだ。ラブロフ外相は領土問題の解決に向けた環境整備を行っている。日本としては、「ロシアの主張はよくわかった。本件に関する日本の立場は周知なので、繰り返さない。1956年の日ソ共同宣言の実現を加速化しよう」と対応することが歯舞群島と色丹島の早期返還につながる。
(2018年12月18日脱稿)
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