ダミー
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 辺野古の基地建設で防衛省がひた隠す計画

 沖縄の強い反対にもかかわらず、政府は米軍普天間基地の移設先、名護市辺野古の沿岸部への土砂投入を始めた。?字形の滑走路2本を持つ巨大な埋め立て基地を造る。この新基地建設に防衛省が絶対に口外しない計画がある。
 辺野古新基地の建設計画は2006年、米軍再編ロードマップで日米合意した。同時に沖縄から海兵隊の司令部要員がグアムに移転することも盛り込んだ。実戦部隊は残るのだから辺野古新基地の建設は欠かせないという理屈である。
 ところが、6年後の12年、日米合意した米軍再編見直しにより、移転するのは司令部要員ではなく、実戦部隊に変更された。辺野古にあるキャンプ・シュワブの第四海兵連隊も、キャンプ・ハンセンの第12海兵連隊も沖縄から消える。沖縄に残る実戦部隊は第31海兵遠征隊1個だけとなるにもかかわらず、政府は辺野古新基地の建設は当初の日米合意通りというのだ。
 防衛省が絶対に語ろうとしないのは、この新基地を無駄にしない案である。今年3月、長崎県佐世保市に自衛隊版海兵隊といわれる陸上自衛隊水陸機動団が2個連隊で発足したが、防衛省は3個目の連隊を沖縄に置くことを検討している。配備先は海兵隊の実戦部隊が移転して空き家が生まれるキャンプ・シュワブか、キャンプ・ハンセンのどちらかだ。沖縄に残る第31海兵遠征隊は年に6カ月から8カ月しか沖縄にいない。すると辺野古新基地を使って空輸される部隊は海兵隊よりも、陸上自衛隊水陸機動団となる可能性は高い。
 この見通しを正直に語った場合、沖縄の反発は米軍ばかりではなく、自衛隊にも向くことになる。陸海空の3自衛隊がそろう沖縄で自衛隊への反対運動は悪夢でしかない。将来の話であり、見通しにすぎないことをもって防衛省は沈黙を続けている。


 領土交渉の表に立つ外務省のツートップ

 日露平和条約締結を悲願とする安倍晋三首相は1956年の日ソ共同宣言を基礎に交渉を加速化することでプーチン大統領と一致し、新年からいよいよ交渉が本格化する。アルゼンチンでの首脳会談で一致した交渉の枠組みによれば、両国外相を責任者とし、日本側は森健良外務審議官、ロシア側はモルグロフ外務次官が特別代表として交渉に当たる。森氏はアメリカ専門家であり、モルグロフ次官も中国の専門家だ。
 しかし「交渉トップのラブロフ外相は1島たりとも返還反対と述べた対日強硬派。ロシア外務省も返還反対で結束しており、プーチン大統領が強力な指示を出さないと2島引き渡しは難航する」(モスクワ特派員)という見方に加え、「日本の外交官がうまく交渉できるのは、儀典と経済協力程度です。拉致問題や領土交渉など難度が高くなるとお手上げ」(外務省霞クラブ記者)との意見も。
 両国外務省に任せておけば失敗する可能性が強いが、一説には、谷内正太郎国家安全保障局長とパトルシェフ安保会議書記がバックチャンネルとして、外務省同士の表の交渉を補うとの見方もある。
 そうした中、安倍晋三首相は11月8日、日露交渉をライフワークにしている新党大地代表、鈴木宗男氏と首相官邸で会談した際「日露は大きく動く」と語った。そして11月14日のシンガポールでの安倍・プーチン会談が北方領土返還の大きな節目となった。
 この会談に安倍首相は秋葉剛男外務事務次官と谷内国家安全保障局長(元外務次官)を同行させているのだ。首相の外遊では通常、外務審議官(政務担当)が同行する。外務次官がお供するのは異例だ。
 1時間半に及んだ安倍・プーチン会談は記録係が同席せず、通訳だけが入った通称「テタテ会談」だった。会談終了後、安倍首相は秋葉氏と谷内氏を部屋に招き入れ、一方のプーチン大統領もラブロフ外相とウシャコフ外交担当大統領補佐官を呼び込み、それぞれ側近2人に対し、平和条約締結に向けた具体的な作業に入るよう指示した。この「セレモニー」の意味するところは、今後の我が国の対露交渉は秋葉氏と谷内氏が一体(言い換えれば外務省総体)で臨むことを国内外に示した点にある。
 2019年の政治カレンダーを見ると、6月28〜29日、大阪でG20(主要20カ国・地域)首脳会議が開かれる。この後、日露首脳は場所を東京に移して合意・調印に持ち込む可能性が高い。参院選前の宣伝効果として最も有効だからだ。
 裏方のキー・パーソンである秋葉次官はこの12月、親しい人との会食や飲み会を次々キャンセルした。その理由が「2回海外出張がある」ためだという。外務省の事務方トップが押し迫った年末に海外出張で緊急に行かざるを得ないところはアメリカとロシアしかない、というのが定説だ。関係者によると、秋葉次官の任務はワシントンで、日本主権下の北方2島に米軍基地を建設しないための交渉を行う。さらにモスクワに飛んで、ラブロフ外相らと会談し、その法的効力などを協議するのではないかとみられている。真の裏方の力量はいかほどか。


 ゴーン逮捕、特捜迷走で流れる「林検事総長」待望論

 ゴーン日産前会長が役員報酬を隠したとして金融商品取引法違反で逮捕・起訴された事件は、東京地検特捜部が有価証券報告書の虚偽記載の時期を切り分けて同じ容疑で再逮捕したことで、欧米のメディアのみならず、検察OBからも批判の声が上がっている。
 特捜部が特別背任などの実質犯でゴーン前会長を立件できなければ、検察への風当たりが強まるのは必至。同時に、林真琴名古屋高検検事長(35期)の「検事総長」待望論が広がることになりそうだ。
 今回のゴーン逮捕劇は日本版司法取引制度を適用している点で、これまでに特捜部が扱ってきた贈収賄や特別背任事件と決定的に異なる。同制度はそもそも、司法改革の一環として導入されたものであるはずが、捜査手法はこれまで通り。しかも同じ形式犯で再逮捕・拘留を続けることは、改革に逆行しているといえる。元特捜検事の高井康行弁護士は「司法取引を使っているのだから、20日間の捜査で全期間の虚偽記載を起訴することを目指すのが筋だ」(産経新聞)と古巣に苦言を呈している。
 また、西川広人社長らによるクーデター説が広がり、「特捜部は日産の社内抗争に利用された」との汚名も着せられかねない。そうなれば、特捜部の「迷走」を防げなかった最高検、東京高検、東京地検の首脳部の判断も問われることになる。
 そこで注目されるのが、林氏の存在だ。林氏は司法取引制度を導入(刑事訴訟法改正)した時の法務省刑事局長。四年間の局長在任中、いわゆる「テロ等準備罪」を創設した組織犯罪処罰法改正など他の重要な法改正にも携わった。特捜部の経験もあり、森本宏特捜部長は刑事局長時代の部下でもある。
 本来なら、検事総長への通過ポストである事務次官を務めてもおかしくないが、過去2回、黒川弘務事務次官(35期)を重用してのことか官邸からは「林次官」案は退けられたようだ。一八年一月の人事では、菅義偉官房長官は「林次官」案を了承したとされるが、今度は上川陽子法相(当時)が反対。やむなく名古屋に異動した経緯がある。
 この時点で、次期総長レースは黒川氏が1歩リードしたとみられたが、十月の内閣改造で林氏嫌いの上川氏から検察出身の山下貴司氏に法相が交代し、両氏は横一線に並んだ。
 そして今回のゴーン事件。現場を押さえるという点では、同じ赤レンガ派(本省勤務の長い法務官僚)でも、捜査経験の乏しい行政畑の黒川氏より刑事畑の林氏が適任であることは明らかだ。林総長待望論が広がる所以である。
 検察ナンバー2の八木宏幸東京高検検事長は19年6月に定年を迎える。後任に林、黒川両氏のいずれが就くのか。次期総長レースは半年後に決着する。


 都税の地方分配で完敗、小池都知事の恨み節

 「改正ではなく、改悪だ。もはや地方分権は死んだと言っても過言ではない。全く賢明な判断とは考えられない。将来に禍根を残す」。12月14日、東京都庁で記者会見した小池百合子都知事は、2019年度与党税制改正大綱で、「偏在是正措置」として地方に再分配される都税が現在の2倍超の9200億円に膨らむことについて厳しく批判した。しかし疲れ切った表情には、偏在是正が阻止できず「完敗」したことへの無念さがにじみ出ていた。
 確かに法人事業税の再配分措置は、16年度の税制改正で、消費税10%への引き上げ時の廃止が決まっていたが、今回の改正で「ちゃぶ台返し」となったわけだ。
 無論、小池知事も手をこまねいていたわけではない。10月には都に設置した有識者会議が最終報告をまとめ、「地方分権」の観点から、国・地方間の税財源の配分の見直しを求め、都税再分配に反対の立場を示した。
 小池氏はまた、安倍晋三首相と首相官邸で会い、都税再配分を20年東京五輪・パラリンピック以降に先送りするよう直談判。さらに11月には気脈が通じる二階俊博自民党幹事長にも再考を求めたが、いずれも取り合ってもらえなかった。
 一方で全国知事会は地方税収の再分配措置を求める意見が圧倒的多数派。それに反対する小池知事の訴えは、「多勢に無勢」(小池氏周辺)の状況でかき消された。
 そうした中、地方では11月に唯一、大阪府の松井一郎知事と会談し、偏在是正反対で一致。また、中央政界では、都議会で小池都政を支える公明党の山口那津男代表が記者会見で「東京に(税収が)偏在していることを悪いとみなすのはおかしい」と小池氏を擁護。これを小池氏は「大変ありがたい」と歓迎したが、逆に自身の苦境ぶりが際立つ形となった。
 都税の再分配問題で小池氏が完敗に終わった背景には、17年に小池氏が仕掛けた政局で、安倍政権が窮地に追い込まれたことに対する菅義偉官房長官の「意趣返しがあった」(東京都選出の自民党中堅議員)。
 小池氏は今回の「完敗」を受け、20年の次期都知事選での再選を目指すにしても、中央政界復帰を画策するにしても、戦略の立て直しを迫られることになった。


 ゴーン氏の私的流用疑惑は国税のCRSで丸裸に

 日産自動車のカルロス・ゴーン会長が報酬過少記載による金融商品取引法違反容疑で逮捕された事件の発端は、日産の通報とされ、日産経営陣が極秘の内部調査を行い検察に資料を提出したことが明らかになっているが、同時に「国税当局との連携があったのではないか」(野党幹部)との見方が強まっている。
 それを裏付けるのは、ゴーン容疑者の私的流用の鍵を握ると目されるオランダ・アムステルダムにあるペーパーカンパニー「Zi−A」社の内実が「国税庁が10月31日付で、約100カ国・地域が参加する外国居住者の口座情報を交換する新制度に基づき、日本居住者が海外に持つ口座情報約55万件を入手した情報によって丸裸になっているはず」(同)とされるためだ。国税庁によると、9月以降に入手した口座情報55万件は64カ国・地域にまたがり、租税回避地(タックスヘイブン)も含まれる。
 この新制度はCRS(共通通報基準)と呼ばれるもので、各国の税務当局が自国の金融機関に外国在住顧客(非居住者)の口座情報を報告させ、年1回、参加国間で情報を交換する仕組みである。交換で得られる情報は顧客の氏名、住所、外国の納税者番号、口座残高、利子・配当の年間受け取り総額などに及び、税務当局は口座情報に基づき口座保有者の居住地国の税務当局へ共通のフォーマットにより共有される。まさにグローバルな脱税行為が丸裸にされるわけだ。
 ゴーン容疑者が逮捕される直前、日産は東京国税局の税務調査を受け、タックスヘイブンの子会社を巡って17年3月期の税務申告で200億円強の申告漏れを指摘されている。「Zi−A」社の住所は日産のアムステルダムの子会社にあるが、従業員はおらず、その存在すら現地でも把握されていなかった。ゴーン容疑者の私的流用資金はこの「Zi-A」社を通じて流され、簿外に隠されていたとみられている。
「Zi−A」社を通じて日産から提供させたリオネジャネイロのマンションからは、3つの金庫が見つかっており、日産側は「不正に取得した資産の一部が保管されている可能性がある」として、現地の地方裁判所に対し、金庫の中身を確認する権利は日産にあることを求めている。一方、ゴーン容疑者の親族は、個人の資産だとの主張を崩していない。
 パンドラの箱から出てくるのは果たして何か、関係者は固唾をのんで見守っている。


 鶏卵最大手イセ食品がスーパー玉出の買収で窮地

 「森のたまご」で知られるイセ食品(埼玉県鴻巣市)は、未上場ながら鶏卵生産では日本最大手で、売上高471億円(18年1月期)を誇る。代表取締役会長は、北米で「エッグ・キング」の名で呼ばれる伊勢彦信氏。89歳の今も陣頭に立ち、挑戦を忘れず、北米に続いて中国、インドなどにも進出を果たした企業家である。
 その伊勢会長のワンマンの弊害が出た、といわれているのがスーパー玉出(大阪市)の買収だった。スーパー玉出は「1円セール」の安売りスーパーだが、同時に創業者の前田託次氏(74)と反社会的勢力との付き合いで知られる。過去には外国人不法就労が社会問題化、不動産関連事業では取引先や仲介業者に反社会的勢力の影があった。
 2018年に入って、高齢を理由に前田氏がスーパー45店舗分の営業権を売り出した。立地も約50億円という価格も問題はなかったが、やはり前田氏と反社とのグレーな関係が指摘され、売却交渉は難航。イセ食品は、そこに果敢に手を挙げた。社内には、「営業権だけで土地建物は前田氏のグループ企業のまま。コンプライアンス上の問題が残る」と買収を危惧する声が多かったが、伊勢氏が押し切った。
 事業譲渡されたのは18年7月1日である。その日、珍しく日経新聞の取材に応じた伊勢氏は、24時間営業体制の見直しや、外部からの人材起用による経営テコ入れを表明。ただ、買収母体はイセ食品と切り離し、伊勢氏の個人会社であるアイセ・リアリティーが傘下に収めると語った。
 風評は間違いなかった。前田氏は、18年12月3日、大阪市西成区の歓楽街・飛田新地にスーパー玉出などが所有する料亭で売春が行われていることを知りながら、料亭を山口組系極心連合会の幹部らに貸し、賃料を受け取っていたという組織犯罪処罰法違反の容疑で逮捕された。
 事件を受けてイセ食品は、スーパー玉出の営業権を買収したのはアイセ・リアリティーの子会社のフライフィッシュであり、資本関係はなく経営にもタッチしておらず、情報共有もされていないとして、「本件は当社に法律上の直接の影響を及ぼさない」と、ホームページ上で明らかにした。確かに伊勢氏は、資本を別にすることで分断を図ったが、イセ食品もスーパー玉出も伊勢氏の傘下であることに変わりはない。
 伊勢氏は19年5月に90歳を迎える。今回、ワンマンの弊害が明確化したことで、「引退の時期」を示唆する会社関係者も表れ始めたという。


 FATFの第4次審査に関係省庁は戦々恐々

 マネーロンダリング(資金洗浄)とテロ資金対策の強化に関連省庁が神経を尖らせている。
 背景には、テロ資金の撲滅を含むマネロン対策について国際的な協調を進めるFATF(金融活動作業部会)の勧告・指導がある。FATFは一九八九年のアルシュ・サミット経済宣言を機に設立された機関で、マネーロンダリングの監視・撲滅に向けた国際的な枠組みを主導している。そのFATFによる日本のマネロン対策に関する第四次審査が二〇一九年に控えているのだ。また、同年六月には、日本が初めて議長国を務めるG20大阪サミットが開催される。「このままではFATF審査で不合格となることもありうる。安倍首相、麻生金融相の顔を潰しかねない」(金融庁幹部)と肝を冷やす。
 だが、金融機関の危機意識は鈍い。金融庁は今、各金融機関によるギャップ分析(マネロンに関するガイドラインで示された対応が求められる項目についての現状との差異の分析)をもとに数カ月かけて詳細な分析を行うとともに、金融機関経営陣との意見交換を進めているのだが、残念ながら「基本がまだできていない」(金融庁幹部)という厳しい現実が見える。
 金融庁関係者によれば、「テロ事件に直面している欧米の金融機関からは、日本の金融機関のマネロン・テロ資金対策は危機意識が薄く、ぬるま湯に浸かっているようだとの厳しい意見も聞かれる」という。まさに待ったなしの状況にある。


 日銀・政井審議委員の“花替え”疑惑の行方

 日銀の政井貴子審議委員が新生銀行の部長時代に、金融商品取引法違反容疑で逮捕された日産自動車前会長のカルロス・ゴーン容疑者の損失転嫁に関与した疑いがあることが明らかになり、金融界に衝撃が走っている。
 政井氏が関与した事案は、「証券界では“花替え”と呼ばれる違法行為で、財テクで損失が膨らんだ企業経営者の裏手口として1990年代に横行した」(大手証券幹部)いわくつきの手法だ。
 報道によれば、ゴーン容疑者の資産管理会社が通貨のデリバティブ取引を契約したが、2008年のリーマンショックによる円高で約17億円の損失が発生。新生銀行は追加担保を求めたが、ゴーン容疑者はその代わりに、損失を含むすべての権利を日産側に移し、事実上肩代わりさせることを提案。銀行も了承したとされる。だが、証券取引等監視委員会が新生銀行への定期検査でこの事実を把握し、会社法の特別背任などにあたる可能性があると指摘したことから、当該のデリバティブ取引は日産側に移管されず、結局未遂に終わった。この時、政井氏は同行のキャピタルマーケット部部長で、当該取引に関与が疑われている。
 11月29日に政井氏は記者会見で、「守秘義務の観点から、新生銀行が取引に関与していたかを含め答えは差し控える」と述べ、周囲にも「私はあくまで部部長(ぶぶちょう)で直接の部長ではなく、具体的にディールに深く関与しているわけではない」と漏らしているようだ。
 自身の私的な資産管理会社の損失を、日産に肩代わりさせようとしたゴーン容疑者の強欲さには呆れるばかりだが、「デリバティブ取引はその後の円安で損失は消滅したはず」(大手証券幹部)とされる。ゴーン氏にはツキがあったようだ。


 ゆうちょ銀の限度額引き上げ要請が再び浮上

 ゆうちょ銀行の限度額引き上げが再び政治的な要請として浮上し始めた。統一地方選や参院選を控え、集票マシンとして期待される全国郵便局長会と族議員にとって、ゆうちょ銀の限度額引き上げは、日本郵政グループへの格好のアピール材料となるためだ。
 ゆうちょう銀行の預入限度額は2016年4月1日からそれまでの1000万円から1300万円に引き上げられたばかり。にもかかわらず郵政民営化委員会は、1.通常貯金の限度額の対象から外す、2.限度額全体を引き上げる、3.通常貯金と定期性貯金でそれぞれ別個の限度額を設ける、3案を軸に検討を進めている。
 このうちゆうちょ銀のイチオシは、1の通常貯金の限度額を対象から外す案である。「利子の付かない振替貯金にはすでに限度額がないわけで、通常貯金についても限度額を撤廃しても問題がない」(長門正貢社長)という論理だ。
 日本郵政グループの長門社長は「(限度額の問題は)政令マターであり、郵政民営化委員会の案に基づき、われわれの監督機関である金融庁と総務省とで合意して決定される。われわれはその決定に従うだけ」と、あくまで政治の判断に委ねる姿勢を示すが、本音では近い将来、限度額は撤廃されると踏んでいる。
 これに対して民間金融機関、とりわけマイナス金利で苦境に立つ地銀等は死活問題と強く反対しているが、ある日本郵政幹部は、「ゆうちょ銀はメガバンクのようなもので地銀とは競合しない。限度額が撤廃されても影響はないよ」とうそぶく。地銀関係者が聴いたら激怒しそうな発言だ。


 夢の「無毒フグ」も期待膨らむ水産ゲノム

 漁獲量も漁業者も減り続け、漁業改革で漁業者の生命線ともいえる漁業権すら独占できなくなった水産業界に、唯一希望の光が差しつつある。それはゲノム編集技術の実用化だ。すでに魚肉の増加を抑制する遺伝子(DNA)を切り取って育てた「ゲノム編集タイ」が出現。普通に育てた養殖タイに比べ、1年魚でゲノムタイは普通タイより体高、体幅が15%ほど大きいことが観察された。
 ゲノム編集と遺伝子組み換え技術(GM)との違いは、一般にはわかりづらい。ゲノムとは生物が持つDNAすべての総合情報をいう。野球を例にすると、野球というゲノムは、ボールなどの野球道具、球場、選手、ルールなど数えきれないほどのDNAから成る。これらのDNAが変われば、プロ、アマ、高校、社会人、軟式、硬式と野球内容が変わる。
 GMはそれらDNAを変えることなく外から異なるDNAを補強するだけなので、ゲノム自体の機能が強化される。ゲノム編集は数億個ある生物DNAのうち、人間にとってプラスになる生物を育成するのに障害となるDNAを切り取る技術である。
 生物のゲノムは長い年数をかけて変化し続けてきた。キャベツについていえば、原種からカリフラワー、ブロッコリー、ケール、芽キャベツと、自然淘汰と人為的淘汰(育種)を繰り返して変異を遂げている。この計り知れない年数のかかるゲノム変異を人間の手で短くするために、ゲノム編集という技術が生まれた。
 水産庁の水産技術・教育機構などで進められ、実験ではタイのほかにマグロ、ハマチ、ヒラメ、クエ、ハタといった高級魚を対象にゲノム編集技術が施されている。タイのほかに「無毒フグ」や水槽でスピードを出せない養殖マグロのゲノム編集が期待されている。
 ゲノム編集の進展に腕まくりして待っているのが、大手水産、商社だ。世界的な水産品への需要増で、日本は買い負けが続いており、魚類の輸入は減少の一途。ゲノム編集技術の応用で陸上養殖ブームを狙っている。
 ゲノム編集には追い風も吹いてきた。環境省は2018年8月に、ゲノム編集生物には環境上の規制は必要なしとの判断を下している。厚生労働省も同年11月5日、ゲノム編集で生産された食品については、GM食品と同様の安全性審査は必要とせず、届け出制にする方針を決めた。19年はゲノム編集技術元年になりそうな気配だ。


 まさに八方ふさがり、日本の原子力政策

 原子力政策の根幹を揺るがす事態が立て続けに起きている。フランス政府との高速炉の共同開発は仏側が高速炉建設計画の凍結を決め、日本の核燃料サイクルの先行きが一段と見通せなくなった。インフラ輸出の目玉の原発輸出も、安倍晋三首相肝いりで官民挙げたトルコでの原発建設を断念する方向が濃厚になった。相次ぐプロジェクトの頓挫は、まさに八方ふさがりの原子力政策を象徴する。
 日仏による高速炉の共同開発は、現在主流の軽水炉に替わる次世代原子炉の実証炉「ASTRID(アストリッド)」を仏国内に建設する計画で、日本は既に約200億円を投じている。日本は使用済み核燃料を再利用する核燃料サイクルを原子力政策の柱に据え、高速炉の実用化を目指してきた。
 しかし、高速増殖炉原型炉「もんじゅ」はトラブル続きで2016年に廃炉が決まり、日仏協同開発が頼みの綱だった。ところが、仏政府は20年以降、アストリッドの計画凍結を日本に伝えてきたことが11月末に表面化し、日本の原子力政策にとって決定的なダメージとなる。
 一方、政府と三菱重工業など官民連合でトルコ政府から取り付けた原発建設計画は、建設コスト高騰で採算が見込めず、計画を断念する方向だ。黒海沿岸のシノブに23年稼働を目指し、4基の原発を建設する計画だったものの、総事業費の見積もりが当初の2倍の5兆円規模に膨らみ、事業見積もりがトルコ政府にはねつけられた。
 また、原発輸出はベトナムやリトアニアでの計画が白紙撤回や中断に追い込まれている。トルコの計画を断念すれば、日英の両政府が後押しし、日立製作所が運営する英国のプロジェクトが唯一残るだけだが、これも凍結の公算が大きい。
 福島第一原発事故を機に、国内原発事業は新設はもとより既存原発のリプレイスすら見通せない。そのうえ、原子力政策は実質的に“思考停止”が続く。経済産業省が12月3日開いた高速炉に関する会議は、実用化に向けた工程案で21世紀半ばの実用化を打ち出した。これだけでも核燃料サイクル維持が前提であることは明白だ。
 ドイツは福島の事故を機に原発新設をやめ、マクロン仏政権も11月末、原発依存度を7割から5割に縮小する方針を表明し、先進国は脱原発に動く。これに対し、日本は国民に対し、明確に原子力政策の展望を示せないでいる。そればかりか、中小から大企業まで幅広い裾野を抱える原子力産業の先行き、先細りする原子力技術者という課題にも目をつぶったままなのだ。


 出光が社運を懸けてベトナムに製油所新設

 出光興産はこのほど、ベトナムに新設した製油所で商用生産を始めた。日本企業の製油所新設は43年ぶりとなる。
 国内はガソリン販売が落ち続けているため成長余力のある新興国を開拓するのが狙いだが、出光がこのプロジェクトへの参画を検討し始めたのは20年近く前の話。当時に比べ、ベトナムは需要の伸びが鈍化し、製油所の新設計画を撤回する動きもある。総事業費で1兆円を超えるプロジェクトが傾けば、ようやく実現した昭和シェル石油との統合にも暗い影を落とす可能性もある。
 出光が社運を懸けるのはニソン製油所。出光はこの製油所に約1500億円を投じている。ベトナム国営石油会社、ペトロベトナムや三井化学なども出資し、原油処理能力は日量約20万バレル。ペトロベトナムが運営するズンクアット製油所(同約15万バレル)と合わせると、国内のガソリン需要の大半をまかなえる規模になる。出光にとっては海外での製油所建設は初めてだ。
 しかし、ベトナムでのガソリン需要が当初見通しほど伸びていないことに加え、今後は電気自動車(EV)などの非ガソリン車やバイクの普及も見込まれる。11月下旬に同国の不動産最大手、ビングループが電動バイクを発売、2019年には電動自動車の販売も計画している。
 昭和シェルとの統合を決めた出光だが、「ニソンプロジェクトが頓挫すれば、昭シェルとの関係にひびが入る恐れがある」(大手証券アナリスト)との声も上がる。米中摩擦などで世界経済の減速懸念が台頭する中、新経営陣の力量が問われている。


 医薬品購入の減税措置は利用者少なく廃止の公算

 17年に導入された「セルフメディケーション税制」は、街中の薬局で販売する一般医薬品の購入額のうち、1万2000円を超えた分に所得控除を受けられるという税制である。日本一般用医薬品協会(OTC薬協)会長を務めた上原明大正製薬会長が音頭を取って政府に陳情し、財務省も医療費抑制に役立つと導入されたもので、OTC薬協やドラッグストア協会など一般医薬品を扱う業界は喝采を叫んだものだ。
 中身は医療用医薬品から一般医薬品にスイッチされた医薬品が対象で、薬局やドラッグストアで対象医薬品を2万円購入すると、1万2000円を超えた8000円の所得税率分が控除される。財務省は「30億円程度の減税額」と見込んでいたが、導入初年度の18年3月の確定申告で活用したのはわずか2万6000人、減税額は推定で1億円にすぎなかった。
 同税制導入の陳情を繰り広げてきたOTC薬協の廣川暢幸顧問は「セルフメディケーション税制が知られていないわけではない」という。
「15万人を対象にアンケート調査を行ったら、65%の人が知っていた。利用者が少なかったのは対象が痛み止めのロキソニンSのようなスイッチ医薬品に限られるため、使い勝手が悪いということに尽きる」
 OTC薬協では「利用者数百万人」を目標に対象医薬品の拡大を目指すというが、スイッチ医薬品の承認は医師会の反対で途絶えている。それどころか、セルフメディケーション税制は2021年までの時限措置のため、このままの状況が続けば、3年後には廃止になる公算が強い。どうやら頭の良い財務省が、大して使われないだろうと製薬業界にサービスしただけの税制に終わりそうだ。


 「人手不足」の日本で製薬業界はリストラの嵐

 「人手不足」が叫ばれる中、製薬業界では「リストラの嵐」が吹き荒れている。2018年4月以降だけでも5月にアステラス製薬が600人の希望退職を募集したのを皮切りに大正製薬ホールディングスでは希望退職募集に全社員の15%に当たる943人が応募、エーザイも人員削減に着手した。外資系では大手製薬メーカーの日本ベーリンガーインゲルハイムが300人のリストラ、インスリン製剤で有名なデンマークのノボノルディスクも一割の社員削減、サノフィも250人の削減に着手。12月に入ると、世界最大手の製薬会社ノバルティスファーマが数百人規模の早期退職募集を進めた。
 特に目立つのが外資系製薬メーカーだ。09年に「未承認・適応外薬促進・新薬創出加算」が制定され、それまで患者数が少ないことから日本で販売されなかった希少疾患薬、適応外だった医薬品を開発・販売する代わりに新薬の薬価が維持される新薬創出加算が導入された。この加算制度で日本はアメリカに次ぐ魅力的な市場となり、外国製薬メーカーは競って日本で新薬を発売した。だが、増加する医療費を抑えるために政府はジェネリック医薬品の使用拡大とともに新薬の価格を引き下げる方向に政策転換。薬価引き下げの典型例が本庶佑・京都大学特別教授の提唱で開発された抗がん剤「オプジーボ」だ。
 実際、ノボノルディスクは全世界で人員削減を実行した時でも日本は例外だったが、18年4月の薬価改定が響いたそうで、「主力品の薬価が引き下げられたことで、もはや人件費を削減するしかない」と言う。


 ライザップが方向転換で手放す子会社の名前

 積極的なM&Aで急成長してきた新興トレーニングジムのRIZAPグループが一転して、傘下に組み入れてきた企業の売却に転じようとしている。きっかけは、創業社長の瀬戸健氏(写真)が、“カルビー中興の祖”松本晃会長をライザップの代表取締役COOに招聘したことにある。
 松本氏は、瀬戸氏の愛嬌を買ってライザップに転身したのだが、ライザップが買収して傘下に入れた85社のうち、少なくない数の企業について経営再建が困難と判断、一転して買収凍結を進言し、有無を言わせず瀬戸氏に同調させた。無謀なM&A路線に突き進んでいた瀬戸氏にブレーキ役がついた点では、松本氏の起用は成功だったといえる。
 ライザップは現在、急膨張した企業集団の整理の検討に入っている。真っ先に浮かぶ売却候補の1つがサンケイリビング新聞社と「ぱど」。サンケイリビングはフジサンケイグループの一角だったが、インターネットに押され、フジテレビ主導の再建も不首尾に終わって3期連続の赤字。すでにフリーぺーパーの「ぱど」を先行して買収しているライザップが2018年春、80%の株式を取得して傘下に入れた。立て直し役に招聘した元USEN社長の中村史朗氏がサンケイリビング、ぱど、日本文芸社などメディア企業五社の統括も兼ねたのだが、急速に衰亡する紙メディアの再建には力量不足。松本氏も現状のライザップの陣容では再生は困難と推測。売却対象候補の1つに挙がっている。
 加えて和装品の堀田丸正や女性用ランジェリーのマルコ、中高年婦人服の馬里邑あたりも売却検討候補に浮上。ライザップ幹部は「相手方の交渉次第だが、今期中に2、3社の売却を検討している」と打ち明ける。赤字転落したライザップだが、松本氏によって早めに無駄な資産を切り離して“ダイエット”する考えだ。


 通信キャリアが奪い合う“ガラケー難民”とは

 KDDI(以下au)でガラケー契約しているシニア世代のA氏は2018年12月、auから封書とCメール(SMS)両方で通知を受けた。内容はいずれもスマホへの機種変更の勧め。auが22年3月末で3Gサービスを終了、4月以降はガラケーが使えなくなることがその理由だ。3Gサービスとは、平たく言えばガラケーサービスのこと。Cメールでは「いまなら月額料金980円で機種変更!」、封書の中には19年2月末が期限の5000円キャッシュバッククーポン券が入っていた。
 サービス終了までまだあと3年余もあるのに、なぜauは焦るのか。
 ソフトバンクはすでに1.5GHz、1.7GHzの周波数帯の3Gサービスを終了したが、NTTドコモはトップが「2020年代半ばで(3Gは)できれば終了したい」と語っている。auが躍起になるのは、自社のガラケーユーザーが、まだ使用期間に余裕があるドコモに流出するリスクを早めに抑え込んでおきたいという思惑があるのだろう。
 前述のA氏は、22年3月末直前までガラケーを使う見込みだという。途中で5Gサービスも本格化するし、あと3年あれば、19年にも登場するとみられる折り畳みスマホの存在もある。キャリアの料金値下げの趨勢を様子見するのが賢明と判断しているからだ。その間、ガラケー難民という“浮動票”の取り合いが、通信キャリア間で熾烈化しそうだ。


 三菱地所でさえ先行き苦戦、不動産の「五輪後不況」

 「東京の1等地でも、オフィス賃料が坪5万円を超えない」という見方が広がっている。不動産の含み益を背景に決算こそ好調でも、株価が過去最高値更新どころか、低迷する不動産会社が目立ってきた。
「今がピークでこれからは下がる一方でしょう」という弱気の見方が投資家ばかりでなく、不動産各社の中でも強まっている。三菱地所が丸の内で建設中の常盤橋プロジェクト(高さ390メートル、2021年から順次竣工)の床の賃貸営業が始まったが、構想当時は10万円超ともいわれた大口客の賃料が、坪5万円突破も厳しいという。
 今は、最優良のSクラスのオフィス物件の空室率が2%以下の限界値まで下がっても、供給量そのものが多いため、販売用の在庫床は増えている。東京23区内の大規模なオフィスビルの床供給量(延床面積1万平方メートル以上)は18年から3年間で420万ヘクタールにも及び、平年の1.5倍と過剰供給が深刻だ。
 大規模の高規格の開発が相次いだことも追い打ちをかけた。Sクラスの大型ビルの規格が高規格・高品質になった半面、没個性化してしまったのだ。より高くなった天井をはじめ、入り口や配置に配慮したLGBT対応の男女トイレや男女トイレの比率を可変できる仕組みまで、各社の「売り」が横並びになってしまった。
 ビル仲介会社の社員は「お客様にいくつか新しいビルの内覧会にお連れしても、どれも同じに見える、とため息をつかれる」とこぼす。
 高規格商品の供給過剰で墓穴を掘る様は「液晶テレビ」とそっくり。横並びで工夫に欠ける不動産業界ならではの話であろう。


 やせ我慢もここまで、読売新聞が値上げへ

 読売新聞が、ついに1月から値上げに踏み切った。新聞産業が凋落の一途をたどる中で25年間、売り上げ減を人員や経費の削減でしのいできたが、「やせ我慢」も限界に達したようだ。
 新聞の発行部数は、1990年代半ばの約5400万部をピークに、ネット普及期の2000年代に漸減、ソーシャルメディアが席巻する10年代に入ると減少傾向が顕著になり、最近数年間は減少スピードが加速している。この1年間では5%も急減、4000万部を割り込む見込みだ。業界トップの発行部数を誇る読売新聞も、一時は1000万部を超えたが、800万部がやっと。
 当然のことながら、新聞社の生命線である販売収入は激減。もはや小手先の支出抑制策では追いつかず、1割近い大幅値上げを決断したといえる。「やせ我慢のギブアップ宣言」でもある。今回の値上げの理由として、販売店の経営難が挙げられ、増収分は「戸別配達制度」を維持するための費用に充てるという。
 だが、新聞社のパワーの源泉であった宅配網こそが、今やメディア企業として最大の弱点になっている。ライフスタイルが様変わりし、ニュースや情報がネットを介してきわめて安価に配信されるようになった今、膨大な人手とコストをかけて印刷メディアを家庭に届けるビジネスモデルが将来にわたって続くことは想定しにくい。
 だから、今回の値上げは、一時しのぎの後ろ向きな打開策でしかない。成功体験に縛られている経営陣がコペルニクス的発想の転換をしない限り、「値上げ→部数減→収入減→値上げ」という負のサイクルから逃れられそうにない。


 中国王毅外相の妻がカナダから入国拒否に?

 台湾紙「自由時報」(12月17日)が中国国務委員(副首相級)兼外相の王毅氏(党中央委員・65)の銭韋夫人がカナダに豪邸2軒を保有し、カナダ政府に入国ビザ(査証)を拒否されていたと報道した。豪邸の購入資金への疑念や、中国外交の最高責任者一族も裏では資産の分散に血眼という構図を露呈したのか。
 豪邸の所在都市や価格などは不明だが、情報のソースは内情に通じた在カナダ華人のツイッターのようだ。それによれば、カナダ政府に査証を申請したのは「今年(2018年)」であり、孟晩舟事件発生以前と見られる。入国拒否理由は不明だ。
 バンクーバーに豪邸二軒を購入していた華為の孟晩舟副会長の場合、1軒目が560万カナダドル(約4億7000万円)、2軒目が1630万カナダドル(約13億7000万円、16年購入)だったことからしても、銭韋氏保有の豪邸2軒の価格も10億円は超えるとみられる。
 銭韋夫人の父親、銭嘉東氏は周恩来首相の「外交秘書」を務めた人物で、1960年代の米中ジュネーブ会議や中印国境紛争交渉などに関わった。在ジュネーブ国連大使で引退したが、中国では絶対的権威を保つ周恩来の秘書だったことは、中国外務省内では特別の政治的意味を持つ。その銭氏の女婿である王毅氏は「太子党(2世)」と見られ、外相から国務委員と大出世した。
 王毅氏は駐日大使も歴任した日本通だが、外相に出世後は、得意の日本語を封印。日本とのつながりも必死に消そうとしている態度には、日本外務省関係者らの不満も募る。


 韓国全土に蔓延する文在寅大統領弾劾デモ

 ソウル都心で連日、文在寅大統領退陣を叫ぶ過激なデモが続いている。特に土曜は、光化門、ソウル市庁前、ソウル駅前など目抜き通りで集会が開かれ、集会後に大統領官邸を目指したデモ隊は官邸30メートル前まで示威行進する。
 文政権の失政と対北追従を糾弾するデモの主体は保守団体ばかりではない。文政権の最大の支持勢力・左派の全国民主労働組合総連盟(民主労総)も保守とは別行動で反政府デモに気炎を上げている。ロウソクデモを主導して現政権誕生の主役と自負する民主労総は、政府にその見返りに法外な要求を突きつける。愛国党、太極戦士など保守団体は朴槿恵大統領弾劾の無効、大統領復権、それに親北の文政権退陣と断罪を叫ぶ。親米反共の教会団体のデモもこれに加勢している。一方、金正恩ソウル訪問熱烈歓迎のプラカードを振りかざす親北グループ(白頭山称賛委員会)の集会もある。今、ソウルは左右を問わず百家争鳴、デモ満開だ。
 大学生も動き始めた。ソウル大学、高麗大学、延世大学など百カ所を超す大学で文在寅退陣を要求するなど不穏な動きを見せている。韓国で大学生が反政府デモをはじめると政権が転覆するジンクスがある。
 軍も現政権への不満が臨界値に達している。12月初旬、現役時代に陸軍機務(情報)司令官だった、予備役の李載寿陸軍中将が政治関与容疑で検察の過酷な取り調べを受け自殺した。現政権の軍部粛清がもたらした事件で、将校団は激高している。
 文大統領はトランプ・金正恩トップ会談を成就させ、平和統一の道筋をつけたと自負したが、北の非核化は実現せず米朝和解ムードは冷却した。南の経済支援をあてにした北は約束が違うと怒りを隠さない。南北和解で支持率アップを狙った目論見は崩れ国内経済も破綻、しかし政府は失敗を認めずファンダメンタルズは良好とうそぶく。
 文政権の言論統制でマスコミやテレビは反政権の動きを極力小さく扱う。世論調査で大統領支持率が下落したがそれでも49%と報道、世間は40%台を割ったと見る。逆に不支持率も40%を超えてきた。特に、男性と20歳代の若者の不支持率が急増し、今後も支持率は低下するとみられている。
 現在の状況は1960年、李承晩政権が学生デモで倒壊、野党・民主党政権が出現した時と酷似する。アマチュアの民主党政権は左右の激突と不況などの混乱を収拾できず1年後に軍部クーデターを招き、朴正熙の軍事政権が登場した。
 今の韓国も揮発性爆薬の空気に満ちている。きっかけがあれば引火爆発する。だがこの混乱と無秩序を解決する救世主になる集団は見当たらない。腐敗した保守勢力は支離滅裂で、軍部も骨抜きされクーデターなど思いもよらない。左派も既得権争奪分配に血眼だ。政治集団は国民からとっくに見放され、エリートたちは海外移住に夢を託している。
 19世紀末、朝鮮半島をめぐり日・清・露・米など列強が対立する中、朝鮮宮廷は党争にかまけ、列強の角逐場になり亡国の路をたどった歴史を今、繰り返そうとしている。


 サウジの威信低下とロシア台頭のOPEC

 石油輸出国機構(OPEC)は2018年12月初め、ロシアをはじめとする非加盟の産油国と協調し、低迷する原油価格てこ入れのため減産することで合意した。ただ、OPEC単独では具体的な減産量は決められず、ロシアの協力を仰いでなんとか結束を示した形だ。原油の生産調整では、これまでOPECのリーダー役だったサウジアラビアの威信低下が鮮明となっている一方で、ロシアが影響力を強めつつある。
 原油価格は18年10月以降、世界経済の減速などを背景に急落。OPECの盟主であるサウジは、価格立て直しのためには年明けからの協調減産が必要と主張、加盟国に根回しをしていた。しかし、カタールが総会直前、19年1月からOPECを脱退すると表明。中東産油国のOPEC脱退は同国が初めてだ。カタールはサウジから「テロを支援している」として断交を突き付けられており、これに対する政治的な反発が背景にあった。
 サウジ人記者がトルコで殺害された事件をめぐっては、サウジのムハンマド皇太子の影がちらつき、同国は国際的な非難を浴びている。サウジにとって、カタール離反で威信をさらに傷つけられる結果となった。
 サウジの指導力低下が濃厚となった中で開かれた12月6日のOPEC総会では、減産方針のみ合意。具体的な減産量までは踏み込めなかった。翌7日に開かれた非加盟国を含む「OPECプラス」会合で、ロシアの減産の意向が確認できてはじめて全体の減産量を日量120万バレルとすることや、国別の減産量など詳細を決定することができた。
 かつて世界全体の五割強を占めていたOPECの産油量は今や3割強に低下しているが、非加盟国を加えると、シェアは約55%となる。中でも、米国に次ぐ世界第2位の産油国ロシアの存在が大きい。今後は、ロシアがOPECの陰の盟主になりそうな気配だ。


 米通商政策の狙いは中国改革派に働きかけ

 貿易赤字解消のため、トランプ大統領の最初の対中貿易戦争の戦略はまず、関税の追加措置の発動だった。しかし、その後も米国の対中貿易赤字は減ることはなかった。そこで局面は第2段階に移り、中国政府による国有企業への優遇措置やハイテク通信分野での補助金行政など、中国の産業政策自体に焦点を当てる対応を取ってきた。
 そして、これからは第3段階ともいうべき極めて政治的な工作を対中国政府内部に仕掛ける方策を取ることが政権内で合意された。その中国へのアプローチは中国政府内部で力を得てきている経済構造改革派に直接働きかけていくというものだ。その交渉実務者はライトハイザーUSTR代表とムニューシン財務長官で、後見役はペンス副大統領だ。
 中国は一見すると習近平主席による強権政治が続き、その任期も取り払ったため、今後も独裁的手法が続くと思われがちだが、実際は国務院を中心に改革派が数を増している。習主席の一帯一路政策による覇権主義と米国との衝突は確実に中国経済にダメージを与えてきている。
 改革派の考え方は国家主席が2期10年ごとに変わり、経済を強化しながら所得格差を減らすことで、共産党の1党支配が正当化されると考える「科学的発展観」に基づく共産党青年団出身の経済官僚たちだ。WTOルールも理解し、グローバルスタンダードにも精通している。
 米国はこうした経済官僚たちと合意を得るべく交渉を重ねていきたいとしており、それは政治的には中国における習体制の分断化を狙うことにもなっていく可能性が高い。


 マレーシアと領海紛争、シンガポールの言い分

 シンガポールとマレーシアの間に領海紛争が勃発した。互いに支え合ってきた両国だが、シンガポールが海軍や沿岸警備隊の出動をほのめかすなど一触即発の状態で、緊張が高まっている。
 マレーシア政府がシンガポールと接する南部ジョホール州ジョホールバルの港湾境界線を一方的に拡張したのがきっかけだ。シンガポールは同国南西部トゥアス沖の領海が侵犯されたと主張。シンガポール運輸省は「主権の深刻な侵害であり、国際法違反だ」と?みついた。また、マレーシア政府の船舶がたびたび領海に侵入していると非難し、港湾境界線の拡張を盛り込んだ官報の撤回を要求した。
 シンガポール運輸省は「海軍と沿岸警備隊は常時、領海の主権を守っている。侵略行為に断固とした姿勢で臨むことをためらわない」と警告。これに対してマレーシアのルーク運輸相は、シンガポールは近年進めてきた周辺海域の埋め立てで造成された土地を領海の基点にしていると指摘。領海の基点は元の土地であるべきで、それならマレーシアはシンガポールの領海を侵していないとの立場を示した。
 領海を巡る紛争には布石がある。シンガポールはマレーシアとの国境近くのセレター空港の新ターミナル供用開始に伴い、マレーシアに事前に連絡することなく、航空機を精密誘導する計器着陸装置の運用手順を改める方針を決定。これにより、航空機は着陸時にジョホール州パシルグダンの上空を通過することになる。パシルグダンの建物には安全のため、国際基準に合わせた高さ制限が課される。工業地帯を抱えるパシルグダンの開発に影響が出かねず、マレーシアは反発。海と空を舞台に両国の対立は深刻化している。


 フジモリ元大統領も安心、娘と息子が手打ち

 ペルーのフジモリ元大統領の長女で最大野党党首のケイコ氏と実弟ケンジ氏(国会議員)の政治的対立がエスカレートして“骨肉の争い”に発展していたが、両者が最近仲直りしたとの情報が流れている。
 ケイコ氏の夫で米国人のマーク・ビラネラ氏(元IBMコンサルタント)はこのほど、ペルーの一部メディアに「ケイコとケンジが過去の非を認め合い、仲直りすることを誓い合った」と語った。ビラネラ氏によれば、同氏が11月末、リマ郊外の女性刑務所に身柄を拘束されているケイコ氏を訪問した際、本人の口からこの話を聞かされたという。
 ケイコ氏は10月末、過去の大統領選における不正政治献金疑惑に絡み、裁判が始まるまで3年間の“予防勾留”処分を受け、事実上の投獄生活を送っている。ビラネラ氏は「ケンジは何回もケイコがいる刑務所を訪れ、姉の好物を差し入れ、励ましている」と語っている。
 父親のフジモリ元大統領は2017年暮れ、大統領恩赦で12年ぶりに自由の身になったものの、その後、司法当局から恩赦を取り消された。フジモリ氏は心臓病の悪化などからリマ市内の病院に収容されているが、いつ再収監されるか、分らない状態となっている。
 ビラネラ氏は「ケイコとケンジの仲直りはフジモリ家にとって一筋の光明だ」と話している。この仲直りで、21年の次期ペルー大統領選に姉に代わってケンジ氏が大統領候補として出馬するとのうわさも出始めている。


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