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個人的思惑が世界経済を揺るがすトランプ大統領と習近平主席


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■米中貿易摩擦


対中貿易赤字減らしで自己矛盾
トランプ政権は米企業を敵にする?

■トランプ流ディールの一つなのか、米中貿易摩擦は戦争状態に入れり、だ。自国最優先の反グローバリズムを掲げて突き進むものの、そこには――
(経済ジャーナリスト・国分進太郎)

 米中両国間で、米国が対中貿易赤字を是正するために制裁関税を発動したら、中国がそれに対抗して報復関税という形で応酬し、貿易摩擦が次第に貿易戦争にエスカレートしている。
 その中で、中国で事業展開する米企業の存在が意外に米中貿易不均衡是正のカギを握るとの見方が出ている。反グローバリズムを標榜するトランプ大統領が虎の子の米グローバル企業を本気で敵に回すのかどうかも焦点だ。

              ◇

中国の対米輸出の6割が
何と現地生産の米企業分


 米国の対中貿易赤字は2017年が3750億ドルの巨額数字。これは中国の対米輸出額5050億ドルから、米国の対中輸出額1300億ドルを差し引いたものだが、米国ファーストにこだわるトランプ大統領が、貿易不均衡是正を強引に中国の対米輸出減らしで臨もうとしているのは間違いない。
 ところがメディアがあまり問題指摘していない重要ポイントがある。何と中国の対米輸出の60%が、割安な中国の労働コストなどを活用して現地生産する外資系企業、とくに米国企業の輸出に集中しているのだ。
 このため、トランプ大統領が対中貿易不均衡の是正にこだわると、中国で現地生産する米国企業に自国への輸出減らしを強いるという重大ジレンマに陥る。
 日銀OBの中国ウオッチャー、キャノングローバル戦略研究所研究主幹の瀬口清之氏は、中国で事業展開する米国企業が皮肉にも米国の対中貿易赤字を生み出す現実を認めるとともに「米国政府は、これら米国企業が制裁措置の影響を受けないように慎重に制裁対象品目を選んでいる。しかし製品のサプライチェーンは極めて複雑なため、米国企業だけを制裁対象から外すのは不可能」と述べている。
 グローバルに企業展開する自動車メーカーのGMや今後、中国で生産予定のテスラ、インターネット関連のアップル、小売りのウォルマート、靴のナイキなど名だたる米国企業が中国からの対米輸出組だ。
 iPhone(アイフォーン)を製造販売するアップルの事例を紹介しよう。主力機種アイフォーン7シリーズは17年に中国で生産され米国に160億ドルほど輸出された、と言われている。アップルの場合、開発ソフトウエア技術をブラックボックスにして米国で温存するが、中心部材の半導体などは日本や韓国メーカーのものを使い、それらを中国に持ち込んで割安な労賃を使って組み立て加工し、最終製品の形で自国に輸出している。しかし統計上は間違いなく中国の輸出数字だ。
 中国からの17年の主力対米輸出品目は携帯電話が14%、パソコンが9%、通信機器が7%で、あとはおもちゃ、衣服、家具と続くが、携帯電話などは、アップルなどの米国企業がグローバルなサプライチェーン(供給ネットワーク)を巧みに活用して企業としての利益を上げている。

アップルは加工生産の
1部を米国に移転表明


 問題は、トランプ大統領がこれらグローバル展開する米国企業が割安な労働者確保はじめ部品工場などのサプライチェーンを求めて米国での工場生産を撤収、白人労働者らの雇用を打ち切っていることを批判、反グローバル経済化を全面に押し出していることだ。ロイター通信報道によると、トランプ大統領がアップルに対して対中貿易赤字減らしで対応策を求めたところ、アップル側は今年1月、米国で550億ドルの設備投資を行い、中国での加工生産の一部を移転させると表明した。
 しかしトランプ大統領からの恫喝まがいの圧力でメキシコへの新工場移転計画の断念を余儀なくされた空調大手キャリアは見返りに補助金を得たが、米国内での人件費高などによる高コスト生産に苦しんでいると言われる。
 その点で、中国で現地生産する米国企業がアップルのようにトランプ大統領の圧力に右倣えするかどうかは微妙。現に、日本で企業展開している米国企業幹部は「トランプ大統領が2年後の自身の再選という保身のために動いているのは明白。グローバル企業が政治家の都合に振り回されて巨額設備投資負担を伴う生産拠点の米国への移転を行い、結果的に損失を出したら投資家の反発を招くので応じ難い。ましてや中国での将来需要を見越して中国で生産する企業にとってはNoだ」という。
 確かに、中国進出している米国企業の中には14億人の巨大人口が生み出す中国消費市場の需要増に期待する面が強い。同時に低コストの現地生産、日本、韓国、タイなどのアジアでのサプライチェーンネットワークが中国周辺に整備されており、それらのメリットを考え合わせれば、アップルのように現地生産の一部とはいえ簡単に米国に生産を移すとは考えにくい。
 米石油最大手のエクソンモービルは米中貿易戦争がエスカレートし始めた今年9月、中国広東省政府との間で、石油化学コンビナートと液化天然ガス(LNG)の受け入れ基地の建設をすることで合意したのもその表れだ。エクソンにしてみれば、中国のみならずアジアの成長センターで石油製品よりも付加価値をつけた石化製品生産をもとに市場開拓したい、というグローバル企業の経営意思は明白だ。
 しかし、トランプ大統領はグローバル経済化の影響を受けた自国内のラストベルト地域の製造業の再生のためだけで、米国経済を下支えする虎の子の米グローバル企業を敵に回せるのだろうか。問題はそこだ。

ご都合主義の大統領は
米国優位なら自由貿易OK


 米国経済に精通するあるシンクタンク専門家は「トランプ大統領は確固たる信念があっての政策スタンスではない。端的には米国、あるいは米国企業だけが利益を確保できるグローバル化ならば簡単に受け入れる」という。
 その専門家によると、トランプ大統領は多国間のFTA(自由貿易協定)には断固応じないが、2国間FTAで米国が優位に立てる自由貿易ならば問題なしで、仮にその協定交渉によって相手国の市場開放が進み、米国籍のグローバル企業が相手国で現地生産して利益を稼ぎ出すならば、それはOKの発想だという。
 この政治スタンスがその通りだとすれば、見識や信念など2の次のディール(ビジネス交渉)がすべての節操のない大統領だ、となりかねない。
 そうした中で興味深い話を聞いた。米国保守派の政治中枢にネットワークを持つ専門家によると、ナバロ大統領補佐官(通商担当)やライトハイザー米通商代表部(USTR)代表を軸にした保守派の間では、ご都合主義で貿易政策を決め、確固たる信念を持たないトランプ大統領に政策判断を委ねると米国の長期的利益にならない、という危機感がある。そこでグローバル経済化に歯止めをかけ自国経済中心で政策対応、中国の経済覇権にも歯止めをかける。その方向でトランプ大統領をうまく政治利用すればいいとの立場だという。
 彼らは米国の主流ではないが、民主党左派のサンダーズ氏らも似たような考え方だ。自由貿易によって世界経済運営を、という立ち位置が最も望ましい日本にとって、米国の出方からは目が離せない。
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