ダミー
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 ポスト安倍が遠のく岸田政調会長の胸中

 7月24日、自民党岸田派会長の岸田文雄政調会長が総裁選への対応について、自身の不出馬と安倍晋三首相に対する支持を表明したが、その胸中はさぞかし忸怩たる思いだったに違いない。
 最大の誤算は自身の不人気だ。「政調会長として地方回りを続ければ、知名度は上がると期待していた」(岸田氏周辺)ものの、世論調査における「次の首相にふさわしい人は」との質問で岸田氏は、安倍首相、石破茂・元幹事長、小泉進次郎副幹事長に大きく水をあけられた。党内からは「岸田氏は泡沫候補同然」(党執行部)と揶揄する声も聞かれた。
 そうした中、岸田派内では入閣待望組のベテラン議員らが禅譲路線を主張する一方で、若手・中堅らは主戦論を展開し、岸田氏は完全に板挟み状態に陥った。岸田派に近い筋によると「実は岸田氏は六月の時点ですでに出馬断念に大きく傾いていたが、想定以上に主戦論が拡大して最終決断できないでいた」という。
 安倍氏が岸田氏のそんな「優柔不断」ぶりに業を煮やして「不出馬表明」を迫ったことも計算外だった。そうした結果、安倍氏には出身派閥の細田派をはじめ、麻生派、二階派が支持を表明しており、岸田派は4番目となった。このため派内では「安倍支持ならもっと早く表明すべきだった。結局、総裁選後の内閣改造・党人事でも冷遇されるのではないか」(中堅)との懸念も広がっている。
 秋の人事次第では、岸田氏が求心力を失い、ポスト安倍の資格を失う可能性がある。今後も岸田氏にとっては気が気でない状況が続きそうだ。


 巨費を米国に貢ぐイージス・アショア

 防衛省は来年度防衛費に弾道ミサイル迎撃システム「イージス・アショア」の導入費を盛り込むことを決めた。配備候補地は、秋田市の新屋演習場と山口県萩市阿武町のむつみ演習場の2カ所。費用は、その2基の購入費と維持・運用費などを含めると4664億円にもなることも判明。これには施設の整備費やミサイル購入費は含まれておらず、総額がさらに膨らむのは必至だ。それでも導入を強行するのはなぜか。
 防衛省は「北朝鮮の弾道ミサイルに対処するため」と言明しているが、北朝鮮は朝鮮半島の緊張緩和を受けて「弾道ミサイルの試射中止」を発表。イージス・アショアの配備は2023年度のため、朝鮮半島情勢がさらに変化している可能性もある。
 それなのに導入を急ぐ理由について、防衛省幹部は「昨年11月にトランプ米大統領が来日した際、安倍首相との間で『米国製武器の追加購入』で合意した。防衛省としてはイージス・アショアの導入を検討していたので、これを表に出せばよいと考えた」と改めて内幕を話す。
 奇妙なのは、イージス護衛艦を現在の4隻から8隻に倍増させることを決め、弾道ミサイル防衛は格段に強化されることになっていたのに、昨年になってイージス・アショアの導入が急浮上したこと。その理由は「首相官邸からの圧力」「防衛省トップによる安倍政権への忖度」など省内では様々に語られている。いずれにしても確実なのは、巨額の防衛費が米政府に支払われるという事実だ。
 米国特有の有償対外軍事援助(FMS)方式を通じて、米政府に支払われる日本の防衛費は18年度を含めた最近5カ年間の合計で1兆9628億円に上る。「トランプ・安倍」の良好な関係の背景には、巨額のジャパン・マネーが潜んでいる。


 外務官僚が考案したパジャマ・パーティー

 下半身の不祥事が絶えない外務官僚の間で最近、「パジャマ・パーティー」が人気だ。国際会議を頻繁に開く外務省は、高級ホテルのスイートルームも特別価格で安く借りられる。そこに高級酒を持ち込み、アルバイトの女性らを呼んで全員パジャマ姿で飲み会を開くという。
 しばしば外部の女性も招かれ、女性記者も参加したことから「パジャマ・パーティー」の存在が知れ渡った。ジャーナリストの長谷川幸洋氏もテレビで、「霞が関のHのツートップは外務省。次が財務省。外務省には、男女の外務省職員がパジャマ姿で飲むパジャマ・パーティーというのがある」などと紹介した。
 松尾克俊・元要人外国訪問支援室長による機密費約9億円の流用事件後、外交機密費はひと頃の半分以下に減っており、外務官僚も以前のように料亭での豪遊はできなくなった。そこでパジャマ・パーティーを考案し、安く済ませているらしい。
「外務省では夕方になると、厚化粧したアルバイトの若い女性がトイレから出てくるのが目立ち、さてはパジャマ・パーティー出動かと勘ぐってしまいます。アルバイトの女性も外務官僚をつかまえて結婚し、将来大使夫人になる夢があるのでしょう」(外務省霞クラブ記者)
 本省が国内で始めたパジャマ・パーティーだが、最近では海外で開くこともあるようだ。相変わらず外務官僚の下半身は絶好調ながら、肝心の外交は朝鮮半島問題では出遅れ、日ロ交渉も後退する一方だ。トランプ米政権のように、外交予算を一気に激減させたらどうだろう。


 前次官が布石を打った農商務省構想の現実味

 農水行政の破壊的改革者と呼ばれた奥原正明農水事務次官が退任。その後任には交流人事で経産省に出向していた末松広行産業技術環境局長が就いた。「農水省次官は水産庁や林野庁の長官など省内幹部から昇格するのが通例。交流人事とはいえ他省庁に出向していた官僚が古巣に戻って次官に就くのは異例の人事」(農水省関係者)である。
 二2年間、次官を務めた奥原氏は、「農業が産業化し、農水省が要らなくなることが理想だ」と公言して憚らない改革派官僚で、「菅義偉官房長官の覚えがめでたく、正面切って反対する勇気のある官僚はいない」(農水関係者)という剛腕官僚だった。その奥原次官が仕切った昨年夏の幹部人事は霞が関の話題をさらった。
 次の次官候補とみられていた今井敏・林野庁長官(昭和55年入省)と佐藤一雄・水産庁長官(同56年)が同時に退任し、それぞれ沖修司・林野庁次長、長谷成人・水産庁次長が長官に昇格した。沖氏は54年名大農卒、長谷氏は56年北大水産卒でともに技官。技官職の長官昇格は前例がない。
 奥原前次官に近い農水省の中堅官僚は、「林野庁と水産庁の長官にそれぞれ技官を昇格させたのは、林業と水産業の民間開放を進めるための奥原氏の布石だった」と指摘する。さらに「経産省寄りの改革が目につく農水省が、経産省の軍門に下る可能性もある。いっそのこと統合して農商務省になったらどうか」(永田町関係者)という声もある。現農水大臣は経産省出身の斎藤健衆議院議員、はたして噂は本当になるか。


 最悪の場合は厚労省3分割、子ども省案も浮上

 厚生労働省の中堅職員は、自民党行政改革推進本部(甘利明本部長)で検討が進む省庁再々編構想に戦々恐々だ。特に、分割案が浮上している厚生労働省は、「厚生省と労働省の2つに分けるやり方がある」(尾辻秀久元厚生労働大臣)との意見があるほか、「厚生、労働、年金に3分割されかねない」(先の中堅職員)と身構えいる。
 厚生労働省の分割構想の背景には、2007年の年金記録漏れ問題に始まり、直近では裁量労働制に関するデータの不備など、相次ぐ不祥事に厚生労働省の対応が追いついていないとの問題意識がある。「17年前の行革で旧厚生省と旧労働省が統合された厚生労働省は、3万1000人の職人を抱える巨大官庁で、一般会計予算の半分以上を握る。その一方で、職員の残業時間の長さは霞が関一で、『強制労働省』と揶揄されているほどだ」(中央官庁幹部)という。
 あまりに組織が巨大化してしまった結果、1人の大臣では十分に全体を管理できないジレンマを抱えている厚生労働省。その分割案は、09年に発足した民主党政権時代にもあった。旧民主党関係者によると、「組織が肥大化しすぎているため、少子化対策を所管する『こども省』を厚生労働省から分離して創設してはどうかという案があった」というのだ。
 厚生労働省にとって、少子高齢化にともなう人口減少は最大のテーマであり、年金財政の悪化に直結する問題だけに、賛成する意見も多かった。しかし、ひとたび統合した官庁が再び分割されることに官僚の抵抗は強く、お蔵入りになった。
 今回の省庁再々編を仕切るのは、安倍首相の盟友で自民党の行革推進本部長を務める甘利明氏。「省庁再々編は厚生労働省のみならず、防災省の創設や内閣府の改革、財務省から歳入庁を分離する案などが俎上に上っている」(中央官庁幹部)だけに、官僚の抵抗は必至だ。


 IR推進法ゴリ押しの裏に米大統領の盟友の影

 IR(統合型リゾート)推進法。平たく言えばカジノ法で、野党の批判をよそに強引に法案を通した自民党。しかし、安倍政権が野党の反対を押し切ってまでも法案を通す理由がある。米トランプ政権との関係だ。
 米カジノ大手のラスベガス・サンズ。カジノを中心とするIRをアジアに展開して成功を収めたカジノ業界の雄だ。シンガポールのビルの上に船が浮かぶ奇抜なデザインの「マリーナベイ・サンズ」などが有名だが、アジア展開で次に狙うのが日本だ。
 シェルドン・アデルソン会長兼最高経営責任者(CEO)は、いわゆるイスラエル・ロビーの大物。思想的にはイスラエルへの回帰を支援するシオニストであることは広く知られている。共和党の有力スポンサーとなり、ドナルド・トランプ氏の大統領就任委員会にも名を連ね、蜜月関係がうかがえる。
「2月の日米首脳会談でトランプ氏は安倍さんに対し、サンズの名を挙げてカジノ解禁を迫った」(日本政府高官)という。森友問題や加計問題などを抱え、内閣支持率が伸び悩む中、安倍政権が力を入れるのが外交だ。なかでも「親米」路線を堅持するためにはトランプ大統領との良好な関係が絶対に必要。そこでトランプ氏の後援者であるカジノ王・アデルソン氏の意向に合うir法案を成立させ、日本でカジノを解禁することで「トランプ氏に恩を売りたい」(同)というのが真相のようだ。


 文科省汚職捜査で浮上、霞が関ブローカーの黒幕

 接待に溺れやすい「霞が関」の高級官僚の生態を、久々に教えてくれたのが、東京地検特捜部が摘発した文部科学省汚職事件だ。起訴された佐野太前局長と川端和明前統括官は、医療コンサルタントの谷口浩司被告に高級クラブなどで籠絡され、数々の便宜を図ってやったとされる。
 実はこの捜査の過程で、あるブログが特捜部を悩ませた。「谷口浩司を信じる妻の疑問」と題されたもので、文科省だけでなく厚労省、経産省、総務省などの高級官僚、あるいは政治家との交遊を、写真と資料(領収書)付きでアップ、「霞が関ブローカー」としての実力を誇示しているのだ。「妻」とはいうものの、特捜部はその作者が谷口被告の背後にいて接待工作を指示したコンサルタント仲間のXではないかと見ている。
「政界と官界の事情に通じていなければ書ける内容じゃないし、情報は小出しに、絶妙なタイミングに行われて捜査とそれを追うマスメディアを混乱させた。Xはブローカー業務では谷口被告の先輩格にあたり、妻は元代議士でこの世界を知り抜いている。特捜部はXも官界工作に加わったとみて、逮捕する方針を固めている」(司法記者)
 それにしても谷口被告とXが、各界に張り巡らせた人脈は凄まじい。医療や通信業者などをスポンサーに、飲食、高級クラブ、ゴルフ接待などで落とした数は、大臣経験者を含む政治家と高級官僚など20名以上に及び、中にはクラブホステスのスカートに手を突っ込んだ政治家のハレンチ写真もあった。
 そうしたT証拠Uは、罪が自分たちに及ばないようにするT備えUのつもりだろうが、特捜部は意に介さず、現在、海外在住のXが帰国次第、逮捕する方針だという。


 ヤマト水増し請求問題は刑事事件に発展の可能性

 ヤマトホールディングス(ヤマトHD)子会社のヤマトホームコンビニエンス(YHC)が長年にわたり行ってきた引っ越しの水増し請求問題が、鎮静化どころか日を追うごとに大きくなっている。
 ヤマトHDは当初、「最初の見積もりより安く済んだ場合があってもそれを修正しなかった。故意でも組織的でもなく、注意が行き届かなかった単純ミス。でも、許されることではなく謝罪と弁済を行っている」と記者会見で説明した。だが、YHC元支店長が「2年では済まない。8年前にも同じ問題があったし、資料は保存してあるはず」と、反論記者会見を行い、逃れられないと思ったのか、「5年で31億円」と修正した。
「組織的ではない」という説明にも綻びが生じた。今年5月に行われた半導体大手「ルネサスエレクトロニクス」の四国における150人分の引っ越しでは、会議で四国トップの統括支店長が水増し請求を容認する発言をしていたとの情報が、出席者から複数のメディアにもたらされた。
 YHCには、客に渡す「売上表」とは別に「作業連絡票」がある。売上表には、総重量、走行距離、引越状況(エレベーターの有無など)、作業管理、高速の通行料などが示され、金額が書き込まれているが、それと実際の作業にかかる状況を示した作業連絡票には大きな違いがあり、流出した証拠資料で双方を比べると一目瞭然なのだ。こうした動かぬ証拠が数々ある以上、「組織的犯罪ではない」は通らず、場合によっては刑事事件に発展する可能性もある。


 東芝「最大の負の遺産」LNG事業売却の行方

 虎の子の半導体事業を売却し、何とか破綻を免れた東芝。そして、残る「最大の負の遺産」である米国の液化天然ガス(LNG)事業の売却に動き出した。最大1兆円の損失が懸念されていた案件だけに、「いち早く切り出して経営上の不安を一掃したい」(東芝幹部)ところだが、売却交渉はすんなり進みそうもない。
 売却を目指しているのは米テキサス州で手がけるLNG基地事業「フリーポート」案件だ。米国産のシェールガスをLNGに加工し、2019年から20年間にわたり年220トンを販売する権利を持つ。売却先には東京電力ホールディングスと中部電力の共同出資会社JERA(東京都中央区)のほか、米ガス大手テルリアンや中国政府系のエネルギー会社、中国石油天然気(ペトロチャイナ)などが浮上している。
 だが、売却交渉は早くも前途多難の様相だ。というのも「東芝の売値があまりにも高い」(関係者)ためだ。東芝は半導体事業売却のほか7000億円もの自社株買いを実施、株価の維持に懸命で、LNG事業の売却に関しても「1円でも高くLNG事業を売りつけて、株主還元をしていかないと経営が立ちゆかなくなる」(東芝幹部)からだ。
 そもそも東芝という電機メーカーがLNG事業に参入したのは隣接地域で受注した原子力発電所事業を下支えする狙いで、LNGを引き取る代わりにLNG基地に原発から電力を供給するためだった。しかし原発建設は17年に事実上頓挫し、LNGの販売事業だけが残ったいわくつきの案件だ。
 原発事業に絡む負の遺産と決別できるか。車谷体制での苦難は続く。


 公認会計士を確保できず「IPO難民」が続出

 IT業界を中心にベンチャー企業のIPO(新規株式公開)が相次いでいるが、ここにきて、IPOしたくとも公認会計士が確保できない「IPO難民」が続出している。
 背景にあるのは、公認会計士の人材不足と責任の重さにある。「不正会計が社会問題化した2011年のオリンパス、15年の東芝問題以降、公認会計士への風当たりが強く、若者の成り手が少なくなっている。難しい公認会計士の資格を取るよりも、実入りのいい税理士を目指す若者が増えている」(業界会計者)というのだ。また、金融庁による企業統治に係る指針が数多く出されることで、カバーする領域が増え会計士の負担は格段に高まっていることも大きい。「一言で言えば、責任や業務量に比して会計士は割に合わない仕事になっている」(同)というわけだ。
 また、IPO企業は、不正会計の潜在的なリスクが大きいことも公認会計士をしり込みさせている。公認会計士を監督する金融庁の締め付けも強まっており、「IPO銘柄は監査リスクが高く、不測の不正が明るみになった場合は、なぜ不正を見逃したのかと金融庁から大目玉をくらいかねない」(公認会計士)と懸念する。東芝問題では、47年間も監査を担当した新日本監査法人について、金融庁は不正を見逃したのは「癒着」に原因があったと捉えた。これから上場しようとするIPO企業についても、「(不正が露呈すれば)あらぬ疑惑をもたれかねない」(同)と慎重にならざるを得ない。
 本来、公認会計士は企業の健全な成長を担保する、いわばアドバイザー的な役割を担っている。新規株式公開は、その重要な一里塚。だが、IPOしたくても会計士が見つからない「IPO難民」が増えている寂しい現実がある。


 三菱UFJ信託銀行は銀行免許返上か?

 「三菱UFJ信託銀行は銀行免許を返上するんじゃないか」──。
 ある大手信託銀行幹部は、融資業務から事実上撤退することを決めた同行の将来についてこう指摘する。三菱UFJ信託は「信託銀行」から「信託会社」に移行するのではないかというわけだ。
 三菱UFJ信託は、今年4月に法人融資を三菱UFJ銀行に移管したのに続き、10月から住宅ローンやアパートローンなどの個人向け新規融資を停止し、来年10月を目処に約1600億円ある個人向け融資を三菱UFJ銀行に移す。個人・法人とも融資業務は商業銀行に移し、その代理店として融資案件は取り次ぐ形になる。ただし、今春に新規の取り扱いを停止した1兆2000億円の残高を持つ住宅ローンについては、当面、信託銀行に残すという。
 銀行免許の返上が囁かれる三菱UFJ信託が目指す将来像は、グローバルな資産運用会社であり、有価証券の管理会社(グローバル・カストディアン)だ。ライバルは運用会社では米JPモルガン・チェース。グローバル・カストディアンでは、米ステート・ストリートや米バンク・オブ・ニューヨークが念頭にある。
 このため、資産運用では、数年で海外運用会社のM&A(合併・買収)に1兆円を投じる計画で、現在の60兆円程度の運用資産残高を100兆円規模に引き上げる方針だ。
 信託事業にほぼ特化する三菱UFJ信託の将来像は、信託銀行の将来を占う試金石ともなろう。


 築地市場移転反対派が勢いづく都の「失政」

 駐車場不足の豊洲市場開場が10月に迫る中、東京都は7月、「千客万来施設」の用地に五輪まで仮設の立体駐車場を造るべく江東区と掛け合ったが、交渉は座礁。築地に駐車場を確保してシャトルバスで業者を運ぶ提案を東京魚市場卸協同組合に提案していたが、バス需要は高まらず、水産仲卸業者の不満は募る一方。都の失政は移転反対派を勢いづかせる。
 築地市場移転に反対する水産仲卸業者らが結成した築地市場営業権組合にも都の「無視できる」との予想に反し、加入者が7月末時点で150業者に達した。移転の引っ越し代や豊洲での設備投資、売上減少などのコストを都側にも負担させる戦略だ。豊洲市場の使い勝手の悪さや欠陥も理由に、改修工事の実施や移転先延ばしを求めて都と交渉し、揺さぶりをかけていく。組合のブレーンの熊本一規・明治学院大学名誉教授(環境法)は全国のダムや福島原発事故関連の中間貯蔵施設の建設で、国を相手に攻める「戦う学者」だ。
 同氏は、「仲卸業の豊洲移転を決めることができるのは、営業権の権利者である業者だ」として、都に対し、豊洲市場に移転することで受ける経済的な損失補償を求めている。これに対し、都は水面下での強制執行の手続き準備の検討入りをためらうほどビビった。
 さらに小池百合子知事が唱えた築地市場跡地における「食のワンダーランド構想」に、千客万来用地を使う万葉倶楽部が大反発したのも想定外だ。千客とすることになる万葉側が訴訟をちらつかせたため、知事がトップ面談で収拾に動いたが期限切れ。江東区長に「一時的な駐車場利用」に理解を求めたが、後の祭りのようだ。


 ヒューリック3K戦略で朝日新聞の物件を侵食?

 東京における朝日新聞社の創業地、銀座6丁目の高級ホテル「ハイアット・セントリック」が入る朝日のビルの両端の古ビル3棟を、不動産のヒューリックが手に入れた。同社はこれを解体し「ヒューリック・アンニュー・ギンザ」という商業ビルとして開業させ、朝日を“挟撃”する。朝日などが持つ有楽町・マリオンの中にもヒューリックホールができ、サンケイビルと朝日の小さな新築複合ビルの表通りにも、大型ホテルの入るヒューリックスクエア東京」(旧ニュートーキヨービル)が建つ。
 買うのは古ビルばかりではない。真新しい東急プラザ銀座(旧東芝ビル)もヒューリックに売却話が持ち込まれた。向かいにあるのはヒューリックの数寄屋橋ビルだ。同社の西浦三郎会長は、このビルに入る旧富士銀行数寄屋橋支店長を務め、銀座通になった。新聞記者志望だった西浦氏は現地調査熱心で知られる。
 現在は不動産相場が高いので、ヒューリックの利益は売却益が1/3まで膨らむ。本来は物件賃料で利益の8割を手堅く稼ぎたいところ。銀座の物件を爆買いしてきたが、さすがに物件の利回り(リターン)は悪くなった。頼みの綱であるオフィス賃料と地価は、景気後退で真っ先に下がりそう。同社の3K(観光、高齢者施設、環境)の投資戦略も、ホテルや商業ビルを支えるインバウンドの増勢が止まれば危ういのだが。


 “ちょい生”白紙も好調、キリン反転攻勢は本物?

 昨年、キリンビールはビール類の総合、ビール、第3のビールすべてでシェアがダウン、1人負けの辛酸を舐めた。唯一、発泡酒はシェアアップしたが、この市場はすでにサントリービールは撤退しており、キリンの独壇場だけに参考でしかない。
 しかし今年はそのリベンジのごとくここまでキリン一人勝ちの様相だ。昨年フルリニューアルした「一番搾り」の缶が好調を持続し、第3のビールでは新商品の「本麒麟」がヒット。さらにセブン-イレブン向け限定で「一番搾り匠の冴」のほか、ファミリーマートやローソン向けにも新商品を投入。極め付きが、イオンが展開している第3のビールの受託製造も5月から開始したこと。ビール業界は装置産業だけに、売り上げが落ちると即、工場の稼働率に響く。全国に九工場を擁するキリンとしては、なりふり構わず拡販策に打って出ないと、最悪で工場閉鎖も考えなくてはならなくなるのだ。
 こうした攻勢のおかげで、今年1〜6月の上半期、キリンは全カテゴリーでシェアアップし、例年夏場に強いアサヒビールを急追、7月は僅差までシェアが接近したもようだ。
 そんな中、セブン-イレブンにビールサーバーを置いて「一番搾り」を提供する“ちょい生”が、スタート直前で白紙となった。セブンカフェのコーヒーと同様、100円で売られていたら大ヒットはほぼ確実。セブン-イレブンの店舗は2万をゆうに超えているだけに、実施していればシェアの一段のアップに貢献したはずなのだ。
 ただし、飲酒運転や店舗の治安悪化の影響も懸念されたほか、キリンが量的には拡大できたとしても、収益面の“ちょい生”の寄与度には疑問符が付いた。ともあれ、キリンの反転攻勢が本物かどうかは、来年以降も好調さが持続するか否かを見極める必要がありそうだ。


 武田薬品期待の「痩せ薬」販売できないまま撤退

 武田薬品がシャイアー買収で脚光を浴びていた陰で、同社の痩せ薬がひっそりと消える。抗肥満症薬の「オブリーン(一般名はセチリスタット)」だ。2003年に武田薬品が英アリザイム社から導入した薬で、13年に厚生労働省から承認を受けた。通常、承認を受けると、2、3カ月以内に薬価が決められ、即日販売される。武田薬品もそのつもりで販促ポスターを作ったりして販売に備えた。類似の痩せ薬はごく少ないことから同社では発売10年後には「年間140億円の売り上げになる」と皮算用を弾いていた。
 ところが、厚労省が薬価を決めようと中医協(中央社会医療協議会)に諮ったところ、医療側委員からオブリーンの体重減少率の低さを問題にされたのだ。「体重50キログラムの人が1キログラム体重を減らせるだけでは価値がない」と効果を問題視する声が上がったり、「1キログラム体重を減らすのなら、1日ジョギングすれば足りる」と必要性を問う発言まで飛び出す異例の事態になってしまった。
 オブリーンの有効性はすでに厚労省の薬食審(薬事・食品衛生審議会)で専門委員が審議し承認されているのだが、的を射た意見だったせいか、中医協で薬価を決めることができなかった。
 オブリーンは膵臓から分泌される消化酵素を阻害して脂質吸収を抑制することで体重を減少させる作用を持つ薬。適応は肥満症だが、対象患者はただの肥満ではなく、「2型糖尿病及び脂質異常症を共に有し、かつ食事療法・運動療法を行ってもBMIが25キログラム/平方メートル以上の場合」と厳しく制限している。というのも、この種の痩せ薬はダイエット目的に医師におねだりして手に入れ、乱用されるリスクがあるため、承認審査したPMDA(医薬品医療機器総合機構)と薬食審が使用条件を“病的な肥満症”のみと厳しくした。結果、「体重50キログラムの患者の体重を1キログラム減らす効果がある」という表記になった。ところが、この厳しさが逆効果になり、普段は医療上の必要性を主張する医療側委員から効果に疑問を呈する発言が噴出してしまったのである。
 オブリーンはノバルティス・ファーマの「サノレックス(一般名はマジンドール)」以来、20年ぶりに登場した抗肥満症薬のはずだったが、中医協で薬価が審議されないまま五年が経過。承認はされたが、販売ができず宙に浮いたままだった。武田にとっては予想外の事態だったが、09年にアリザイム社から権利譲渡されたノルジーン社との導入契約が切れることから、武田薬品は販売を断念。「年間売り上げ140億円」の夢は泡と消えてしまった。


 中国市場に再挑戦するグーグル、FBの思惑

 トランプ米大統領が一向に強硬姿勢を緩めようとしない対中通商政策をよそに、米シリコンバレーを代表するハイテク大手が中国へのアプローチを強めている。インターネット人口でも世界最大に膨れ上がった中国はビッグデータを得る上で無視できず、検索最大手のグーグル、世界最大のSNS (交流サイト)を運営するフェイスブックがそれぞれ中国市場に触手を伸ばし出した。
 中国当局もこれを容認する姿勢をみせる。しかし、そこにはトランプ政権とシリコンバレーのハイテク企業との分断を図ろうとする中国側の思惑も見え隠れする。
 米国の通信社やニュースサイトは8月に入り、グーグルが中国の“国家統制”に沿った形で中国での検索サービスを検討しているほか、クラウドサービス事業で複数の中国企業と協議中と報じた。一方、フェイスブックは7月に香港法人などの出資で中国本土に子会社を設立し、人工知能(AI)などの技術開発に動き出した。両社はともにネット上の情報を統制する中国から閉め出された経緯がある。グーグルは2010年に中国での検索サービスからの撤退を余儀なくされ、フェイスブックは現在も中国で同社の交流サイトは利用できない。ただ、両社とも約8億人とされる巨大なネット人口を抱える中国をビジネス上外すわけにはいかない。とりわけAI技術で一段と優位性を高めるには生命線のビッグデータ収集は不可欠で、中国事業への再挑戦を判断したもようだ。
 15年に「中国製造2025」を掲げ、AIやIoT(モノのインターネット)の活用で製造業強化に取り組む中国にとっても、ハイテク分野で先端を走るシリコンバレー企業を取り込めるメリットは大きい。グーグル、フェイスブックには、厳しい個人情報保護規制から事業の制約を受ける欧州連合(EU)と異なり、中国はAI技術強化に格好な市場だ。
 こうした米企業のアプローチに、中国共産党機関誌、人民日報も法律の要件を満たすのを前提に「グーグルが中国市場に戻ってくることを歓迎する」と容認。米中貿易戦争が激化する中で、トランプ政権とソリの合わないシリコンバレー企業を取り込もうとする意図も見える。
 ただ、米国では与党・共和党に安全保障上、グーグルの中国進出に批判が強まっており、中国進出を狙う米ハイテク企業は米中両政府の狭間で難しい判断を迫られそうだ。


 仰天! あの創価学会が靖国神社に「献灯」を奉納

 「創価学会が靖国神社に、献灯(みあかし)の奉納? ちょっと信じられませんね」──こう驚くのは、一連の「靖国問題」に詳しい宗教ジャーナリストの柿田睦夫氏だ。毎年夏、靖国神社(東京都千代田区)が開催している戦没者の御霊を慰める「みたままつり」は、1949年にスタート。今年(7月13〜16日)で72回を迎えた伝統行事である。
 開催中、正面入り口の第1鳥居から奥の「神門」に向かう参道の両脇や外苑に、各企業や個人から奉納された献灯が高さ数段に重ねられ、提灯の壁になってずらっと横に並ぶ。
 夕刻から点灯される大小3万個を数える1つの献灯に、「創価学会」の文字が浮かび上がったのだ。
 毎年、宗教団体も献灯することは珍しいことでない。だが、こと創価学会は、同会以外の宗教はすべて“邪教”という教義を持つ。これまで他教をどれほど攻撃してきたか。ほんの一例を紹介すると、
「念仏や身延派日蓮宗の邪宗教がはびこる北九州の水害、こういうところに天災が起こり、台風などが通過するのである……」(機関紙・聖教新聞1953年8月1日付「社説」)
 台風の通過場所も邪教が原因という、独善的な教義を持つ創価学会が、よりによって神社の総帥ともいわれる靖国神社に、なぜ献灯したのか。ネット上でも賛否の意見が交わされ、創価学会の献灯ニュースはあっという間に拡散した。
「戦前の国家神道に抗議し、初代牧口常三郎、2代戸田城聖とも逮捕され、牧口は獄中死した。そうした歴史を持つ創価学会が靖国に献灯した理由は、公明党の存亡と無関係ではありません」(柿田氏)
 1999年に自公政権が誕生して以降、創価学会の幹部が、他教団を表敬訪問するなど少しずつ門戸を広げてきた。社会から批判を浴びるような他宗攻撃を和らげる柔軟路線に舵を切ったのである。
 他方、同会の組織に婦人部、壮年部、青年部などがあるがその1つに、団地部、農村部、地域部等を下部に置く「社会本部」があった。この中の地域部を「地域本部」に昇格させ、地域で活動する町内会、自治会、民生委員など務める学会員に、例えば「祭りに参加しよう」といった地域有効活動を奨励するようになった。
 公明党の支持を幅広く取り付けるための教団戦略である。靖国神社への献灯もその一貫なのか。創価学会関係者は、この奉納については「『総体』としてやっていない」という見解だと言うが、そもそも創価学会組織は、地方の幹部や個人が「創価学会」を名乗れるようなシステムではないはずだが……。


 窮地の生協健保組合が中小企業向け健保に移行

 全国の生協(コープ)の従業員とその家族16万人が加入する「日生協健康保険組合」が来年3月末で解散、4月から中小企業向けの「協会けんぽ」に移行することを決めた。後期高齢者支援金の負担が重く、保険料率が10.7%(労使折半)に達し、最早、健保組合を維持できないという判断からだ。
 日生協健保組合の神田弘二常務理事は「苦渋の選択です」という。
「昨年七月、保険料率を10.7%に引き上げた時に設けた小委員会の答申を受け、全国の生協組合が集まる組合会で討議。『協会けんぽへの移行やむなし』ということになった。民間の健保組合の平均給与は月36万円ですが、生協職員の平均給与は29万円。中小企業の従業員が加入する協会けんぽ加入者の平均給与28万円と大差がない。しかも、協会けんぽ加入者の平均給与は伸びていて、今後五年間は保険料率10%を維持できるというのに、日生協健保加入者の給与は伸びそうもない。これ以上の保険料率引き上げは難しい……」
 協会けんぽは自前の健保組合を持てない中小企業のためにつくられた健保組合。大企業より給与が低いため、国が医療費の16.4%に当たる1兆1000億円を補助している。日生協健保組合が移行すると、国の補助金は20億円ほど増えることになる。この協会けんぽの保険料率は地域の医療費に基づくため、今年度の保険料率は最低の新潟県の9.63%から最高の佐賀県の10.61%まであるが、平均は10.0%。
 一方、日生協健保の保険料率は5年前に10.3%に引き上げられ、協会けんぽを上回っていた。そのうえ、昨年7月にさらに10.7%に再引き上げせざるを得なくなったという経緯から、このままでは加入者の負担が増すばかりだと説明する。
 実は、派遣社員48万人が加入する人材派遣健康保険組合も協会けんぽへ移行するとみられている。民間の健保組合1389組合が集まる健康保険組合連合会は「赤字の組合は6割を超える866組合に達し、保険料率が協会けんぽの10%を超える組合は313組合に上る」と発表。300組合が協会けんぽに移行する予備軍だという。
 実際、今後、高齢者支援金の増加は団塊の世代全員が後期高齢者になる2025年以降も増え続け、健保組合の財政はますます深刻になる。健保組合が協会けんぽへ雪崩れ込む事態は、今後頻発しそうだ。


 悩ましい問題を抱えるメディアの働き方改革

 3年ぶりに改定された国の過労死防止大綱で、特別に調査する業種に「メディア」が追加され、報道各社が困惑を隠せない。きっかけは、2014年にNHKの31歳の女性記者が過労死と労災認定されたこと。ピーク時の時間外労働は月150時間を超えていたという。
 追加指定を受けて、報道各社は働き方改革を始めた。NHKは首都圏の放送局で記者の泊まり勤務を廃止、週休2日も徹底されるようになった。千葉県で7月の土曜日深夜に起きた震度5弱の地震発生を伝える臨時ニュースに、記者やアナウンサーではなく、居合わせた男性ディレクターがTシャツ姿で登場し、NHKの勤務体制の変化を印象づけた。
 朝日新聞社は、20年度までに公休取得率100%という目標を立てた。「ノー残業デー」を実施したり、出退勤時間を自己申告で記録し一定の基準を超えたら医師の診察を義務づけるという仕組みも設けたという。一方、共同通信社は、宿直明けの記者に午前10時の帰宅を徹底させている。さらに日本経済新聞社は、20年をメドに「完全週休2日制」にすると公表した。
 しかし、掛け声通りにいかないのが実情だ。就業時間が減っても、それぞれの記者に求められる仕事が減るわけではない。ひとたび大事件や大災害が起きたら、悠長なことはいっていられなくなる。特に新聞社は、収益が右肩下がりで人員削減を進めているだけに、現場からは悲鳴が聞こえてくる。仕事と健康の両立は、報道機関ならではの古くて新しい問題と言えそうだ。


 保険適用拡大でロボット手術の普及に弾み

 この10年、画期的新薬や再生医療、AI診断など医療分野で技術革新が進んでいる。その先頭を走っているのがロボット手術だ。2018年度の保険診療改正では、ロボット支援手術(以下ロボット手術)が、新たに12項目も保険に適用される。
 ロボット手術が日本で初めて導入されたのは09年のこと。最初は前立腺手術に使用され、3年後には前立腺がん手術に保険適用された。それ以降、ロボット手術件数はうなぎのぼり。わずか7年で1万6000件以上となった。16年には腎がんも対象となりその数は年々増加中だ。
 そして、今年度新たに保険がきくようになった手術は、膀胱がんや肺がん、心臓手術、胃がん、直腸がん、子宮がんなどの摘出手術だ。これまで、ロボット手術といえば泌尿器系手術がほとんどだったが、今後はそれ以外の臓器でも増加しそうだ。
 日本泌尿器内視鏡学会の武中篤・鳥取大学医学部教授によると、ロボット手術のメリットは安全性と体への負担が少ない低侵襲性だ。「特に、手術のリスクが高い高齢者にはメリットが大きい」という。
 一方、課題はロボットの値段が1台3億円と高額なこと。現在、日本には300台ほど導入されていて、世界第2位の保有台数を誇るが、1日に行える手術は限られている。そのため実施できる患者の数が限られ、稼働率の低さが課題となる。
 実は、そうした経済的問題の解決はそう簡単ではない。ロボット手術に取り組んでいる外科系学会の医師によると、「コストよりもまずはより多くの症例データを得て、普及を目指すことが先決だろう。保険適用がその一助となることを期待している」という。


 米中間選挙予想は下院は民主、上院は共和

 「米国第一」を掲げ、保護主義や排外主義で従来の国際秩序を揺るがす米トランプ政権の今後を占う中間選挙が11月に迫った。大統領選と違い、有権者の関心は低いが、今年は共和・民主両党が例年以上の選挙資金を投入して過半数を目指している。
 米国議会選では下院(任期2年)全議席と上院(任期6年)33議席(総議席は100)が改選され、トランプ政権の政策の是非が国民に審判される。現在は下院:共和党239議席/民主党194議席、上院:共和党51議席/民主党47議席+独立系2議席。米国では中間選挙で大統領の所属政党と議会の多数党が逆になることも多い。ニューヨーク専門調査機関の極秘分析によると、民主党が下院の過半数を占めると予想される。注目は実質2議席差の上院選。共和党が過半数を維持できるかが焦点だ。
 トランプ大統領の支持率は減税法案の成立後は4割前後と持ち直し、共和党支持者の約8割が現政権を肯定的に受け止めている。トランプ支持基盤層は堅固で、米国第一主義、移民排除、人種政策、避妊、最高裁任命などに同調している。
 これに対し、トランプ政権の「独自政策」への反対勢力は根強く、無党派層の関心も高いため投票率の上昇につながりそうだ。ロシアのプーチン大統領とのヘルシンキでの米ロ首脳会談やムラー特別調査官の調査もマイナス材料。保護的な貿易政策が引き金となった、中国などとの貿易摩擦についても、多くのビジネス関係者や農業関係者が、販売面やサプライチェーンへの長短期的な影響を懸念している。「痛み」はすぐに表れるが、「恩恵」は結果がすぐに出てこないと分析されている。
 米国の国内総生産(GDP)や雇用など経済指標は好調だが、それほど得点になっていない。減税に伴う財政赤字拡大、実質賃金の伸び悩み、ヘルスケア、児童手当などの削減、ガソリン高騰など家計を圧迫し、有権者の不満が高まっている。
 米国内の政治史では下院では与党(今年は共和党)が敗退する確率が高い。2010年までの60年間で、与党が中間選挙で議席を伸ばしたのは2回だけ。こうした状況を踏まえ、この専門調査機関は下院で民主党が多数を奪取する可能性は65%、上院は共和党が多数を維持する可能性は75%と予想している。中間選挙結果次第で、トランプ政権の残り2年の運命が大きく変わる。


 トランプ的手法で米国混乱、中国は内部対立激化か

 新任のハリス米駐韓大使は文大統領に表敬訪問を行った際、北朝鮮が年内に求めている「朝鮮戦争の終結宣言」を急ぐべきではないと釘を刺した。背景には、彼を任命したトランプ大統領は朝鮮戦争時に北で亡くなった米兵の遺骨を金正恩委員長が約束通り返還したことに謝意を表し、その勢いで終結宣言を行うかの姿勢を示して、北の思惑に乗せられかかった経緯がある。
 ハリス大使は前米太平洋軍司令官であり、父が海軍軍人(母は日本人)で朝鮮戦争に従軍しその後2年間韓国の米軍基地に勤務したこともあり、朝鮮戦争の本質を見抜いている人物だ。米兵の遺骨が星条旗ではなく国連旗に包まれて米側に引き渡されたように、朝鮮戦争は当時の金日成率いる北朝鮮とそれを後押しした中国軍が38度線を越境してきた侵略戦争と見る。この事態に国連安保理は米軍を中心とした国連軍の派遣を決議し、この侵略戦争を何とか休戦に持ち込み、現在に至っているのが朝鮮戦争の本質だと見る。これは米国のこれまでの上層部と国連軍として参加した英、加、豪などの国々にとって常識であり譲れない一線だ。
 しかし、当のトランプ大統領はこうした歴史的経緯のレクチャーを受けることを嫌い、現状を打開するためのビジネス感覚で対北の交渉を進めがちだ。これでは国連旗に包まれて帰国した米兵の遺骨に言い訳できないと考えている米国民がトランプ大統領の支持者たちの間でも多くなっており、11月の中間選挙に微妙に影響しそうだ。
 一方、トランプ米大統領が仕掛けた米中貿易戦争が、中国サイドの対応策のまずさもあり、トランプ政権には大きな成果となる可能性が出てきた。もともとは関税の引き上げを中心に中国側を揺さぶろうとした戦略だが、目下のところ中国政府が強硬策で応じているため、結果的に中国の政治経済の不安定化につながり始めたという副作用を生んでいる。
 中国は米国から関税引き上げ競争を強いられた場合は、その貿易額の違いから守勢にまわらざるを得ない状況で、何よりも中国のこれまでの成長モデルは極端なドル依存であり、現時点では米国に対して中国は勝ち目がない。
 中国共産党内部もこれまで習主席から冷や飯を食わされ続けてきた李首相を中心とする共産党青年団一派が結束を強め、反撃に出ようとしている。「富国強兵」「中華民族の夢」をスローガンに米国と対等に渡り合いたいと強硬外交を繰り返してきた習主席が相当な方針転換をしない限り、この米中貿易戦争の結果は、中国の内部対立の激化という政治的な副作用をもたらす可能性が強い。


 日本企業が新興国で相次ぎカルテル摘発の背景

 カルテル事件をめぐり、日本企業が新興国で罰金を科される事態が相次いでいる。
 南アフリカ競争委員会はこのほど、豊田合成がエアバッグの価格カルテルに関与したことを認め、620万ランド(約4660万円)の罰金支払いで合意したと発表した。競争委によると、豊田合成はタカタやスウェーデンのオートリブと価格操作や入札で共謀したことを認めた。
 競争委は2014年10月、自動車部品メーカー82社がカルテルに関与した疑いがあるとして、調査を開始していた。対象製品は電動パワーステアリングやインバーターなど約120種類に及んだ。調査対象の企業や品目数を考えれば、今後も処罰される企業は増えるとみられる。
 このほか、中国、カナダ、オーストラリアなどの競争当局が相次いで罰金を科したほか、インドネシアやブラジルでも依然調査が続けられており、新興国にも調査が広がっている。ブラジル競争当局は8月、東芝、三菱電機の両社が、変電所や発電所に設置されるガス絶縁開閉装置をめぐってカルテルを働いたとして、計490万レアル(約1億3100万円)の罰金を科したと発表した。
 これはスイスの重電大手ABBによる自主申告を受け、06年から調査が行われていたものだ。南アでの自動車部品カルテル調査も自主申告がきっかけに調査が始められた。日米欧などが中心だったカルテル取り締まりが新興国にまで広がっている背景には、カルテルの存在を当局に申告する見返りに処罰が減免される制度の活用がある。


 タイの軍事政権が続けるタクシン派の骨抜き策

 タイ軍事政権が来年の実施を約束している民政移管に向けた総選挙を前に、仇敵であるタクシン元首相派である貢献党への圧力を強めている。
 軍は2006年にクーデターでタクシン氏を政権の座から引きずり下ろした。しかし、タクシン派は民政復帰後に再び政権を奪取。軍は14年、今度はタクシン氏の妹のインラック氏を首相の座から追いやるクーデターを強行した。その後、4年以上も民政移管を先送りしているのは、同じ轍を踏まないようタクシン派の力を削ぐチャンスを慎重に探っているからにほかならない。
 貢献党弱体化の第1弾として、今年初めから進めているのが有力党員の引き抜きだ。総選挙をにらんで結成された親軍政の新党は、貢献党の切り崩しに着手。タクシン政権で閣僚を務めた大物ら貢献党の有力政治家ら50人以上が大挙して親軍政党に入党した。この親軍政党を中心に軍政寄りの勢力を結集し、民政移管後も政治に影響力を保つのが軍の描くシナリオだ。
 一方、捜査当局は貢献党の過去の不正の解明に動き出した。インラック政権下の13年、タクシン氏にかけられた汚職容疑の取り消しに道を開く恩赦法案の制定に動いたとして、貢献党の政治家40人の捜査を開始。また、インラック政権時代の予算編成に不正があったとして、当時の閣僚33人を捜査対象にした。
 国外逃亡中のタクシン氏は「総選挙を行えば貢献党が第1党になる」と豪語している。しかし、引き抜きが相次いだ上、嫌疑をかけられた党員が立候補を阻まれれば、さすがのタクシン派も次期選挙での勝利は厳しいとの見方が広がっている。


 混迷の度合いを深める米国とトルコの関係

 トルコの鉄鋼、アルミ製品に米国が高関税をかけた。その結果、株安、通貨安についでトルコ国債に債務不履行危機が募り、保証料が上がった。これらは低迷するトルコ経済にとって大打撃だ。さらに、エルドアン大統領の専制政治ともいえる強硬姿勢にトルコ実業界は不安を抱いている。
 もともとは2016年夏のクーデター未遂が発端。クーデターの背後に米国に亡命中のギュラン師の陰謀があるとして、トルコ政府は送還を要請したところ米国は即座に拒否し、両国関係は急速に冷え込んだ。
 八月にエルドアン政権は対米報復のためトルコで布教活動をしていたアメリカ人牧師ブロンソンを軟禁して交渉の「人質」とした。これに対してトランプ大統領はさらに態度を硬化し、非難合戦を演じてきた。EUはトルコがNATOの枢要なメンバーである上、特にドイツは大量の労働者を受け入れている関係から米国とは共同歩調をとれない。
 そうした中、エルドアン大統領は危険な賭けに出た。まずサウジやUAEと敵対するカタールにテコ入れした。トルコ軍を派遣して共同軍事訓練を敢行。また、タミム首長が突如、アンカラを訪問し、「トルコ経済の発展に150億ドルを直接投資する」とぶち挙げた。
 次に中国シフトを鮮明にしてシルクロード建設に積極的な姿勢を強調、米中険悪の状況を攪乱する。さらにはロシアとの異様な蜜月関係を演出し始めた。すでにロシアは原油とガスのパイプラインを南欧向けにトルコ領を横断するプロジェクトを推進している。「米・トルコ関係は『引き返せない』ポイントを超えた」(アジアタイムズ、8月17日)。意地の張り合いはどこまで続くのか。


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