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会社は司法取引に応じた(写真は米司法省)


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■ホワイトカラー犯罪


米司法省に摘発された元会社員が
今も続く身柄引き渡しの恐怖を語る

■さる企業で続けていた職務で犯罪に問われた。会社は司法取引をして巨額の罰金で済ませたが、罪を認めない社員は、個人での対応を迫られた。その結果が……

 国際カルテル事件などホワイトカラー犯罪で米司法省に摘発される日本人が相次いでいる。その場合、司法取引に応じて禁錮刑を受けるか、召喚に応じず日本国内にとどまるか、現実的には選択肢は2つしかない。たとえば2011年以来、65人が摘発された自動車部品カルテル事件では、ほぼ半分ずつに分かれた。いずれの場合も、当事者がメディアの取材に応じた例はこれまでにない。あえて汚点をさらけ出したくないからだと思われるが、摘発された個人は厳しい現実に直面することになる。
 米司法省は、ホワイトカラー犯罪の捜査を行う際、企業に召喚状を出して、協力を求めることから捜査を始める。電子メールや文書などを提出させ、不正に関与したと思われる社員の事情聴取を行う。その結果に基づき、企業と個人を起訴するか判断する。場合によっては、企業に対する罰金を安くする見返りに、特定の個人を起訴するという司法取引を行うこともある。これはカーブアウトと言われ、個人が企業の司法取引の対象として差し出されるということだ。
 米国で起訴され、日本に引きこもれば「逃亡犯罪人」扱いとなる。1歩でも国外に出れば、逮捕されて米国に移送される恐れがある。日本にいても、米国からの引き渡し要請に日本政府が応じる可能性もある。
 元会社員A氏、46歳もまさにそんな過酷な状況に陥った当事者の1人だ。A氏の場合、勤務先企業が不正を認めて米司法省と司法取引した。関与が疑われた社員数人は会社の司法取引から切り離され、個人として米司法省と別個に司法取引し、米国で服役するかどうかの判断を迫られることになった。A氏は嫌疑は当たらないとし、日本国内にとどまっている。今回、ホワイトカラー犯罪で米当局に摘発された日本人として初めてメディアに登場し、自身が置かれた境遇を詳細に語ってくれた。

            ◇

司法取引に応じた会社は
弁護士費用も停止


〔A氏の勤務先の会社は2013年10月、不正行為を働いていたことを認め、米司法省との間で法人として司法取引を締結、巨額の罰金を支払った。その後、会社はA氏の個人弁護士費用の支払いを一方的に停止した。通常、社員の個人弁護士費用は会社が負担することが多いが、A氏はいきなり難題を突き付けられた〕
A氏 まずは、弁護士費用のことで驚きました。私の場合、当時勤めていた会社が司法取引した後、突然、弁護士費用を支払ってくれなくなりました。ホワイトカラー犯罪を担当する弁護士は、通常、1時間当たり1000ドルを超えるような費用がかかる。メール1通、電話1本ですぐに10万円を超えてしまう。一緒に米司法省に行って交渉をすることになると、資料の作成、インタビューの準備をする関係で、1000万円を超えることだってある。上限はないので、事案が続けば、どのくらいの弁護士費用を支払うことになるのか。
 私は、事件に関与していないので裁判で争いたいのですが、実際問題、100%無罪になる保証はなく、仮に有罪となったら、アメリカの刑務所で収監されることになります。小さな子どものいる私が、1%でも負ける確率のあるギャンブルをするわけにはいきません。
〔A氏は捜査対象となった会社が司法取引をする前年の2012年1月に会社から退職勧告を受けた。諸々勘案の上これを受け入れて3月末に退職。同年10月、シンガポールに新天地を求めた。しかしそこで迎えたのは……〕
A氏 2014年の年明け早々、米司法省から(自分が)訴追請求されたという記事が出た。全く寝耳に水だった。すぐに(日本の)弁護士に電話をすると、「1日も早く戻ってきてください」ということなので、シンガポールの借家の解約や車の売却、子どもの学校をやめさせたりとかいろいろして、報道の2日後、日本に帰った。夜逃げ状態です。
 とりあえず、日本で住民登録もせずに、実家に子どもと籠っているような状態でした。学校にも行かせられず、冬の田舎で籠っていて、どうなるか分からないという状態だった。
〔子どもを抱えたA氏一家には、新居が必要だった。〕
A氏 子どもをずっと学校に行かせないというわけにはいかないので、4月からは、都内に戻って、いろいろ賃貸物件を探した。無職だし、貸し主はいなかった。「3年契約でも、5年契約でも、一括でお金払います」って言っても、ダメだって言われるくらいだった。その時はまだ(実名が報じられていなかったこともあり)、銀行からお金を借りられた。買うしかなかった。そこでやっと住む場所が決まったので、少し落ち着きました。
 4月に引っ越しをして、そこから子どもたちも学校に通い始めた。ただ、その後どうなるか正直分からないので、外に出て人と話をするのも怖いし、どんなうわさが出るかも分からないし、変な話、パトカーを見るだけでも怖いっていう状態がずっと続いていた。

元同僚2人は無罪
それでも続く恐怖心


〔追い打ちをかけるように、シンガポールで働き始めた別の会社の共同経営者から訴えられる。一方的な主張だった〕
A氏 2014年10月頃、夜帰宅したら、シンガポールから英語の訴状が郵便で届いていた。最初は何のことか分からない。弁護士に相談すると、要はシンガポールの会社が訴えてきている、しかも3億円を請求してきていると。頭が真っ白になった。
 最初は何で訴えられているか分からないし、今となってはすごく言いがかり的なことだが、100%勝てるか分からない状況なので、どうしても最悪のケースを考えていくと、やはりすごく怖い状態が続いている。
 何よりも、日本国外に出るとアメリカに引き渡されてしまう恐れがあるので、それはできない。だから、シンガポールの裁判所に行くこともできない。シンガポールでも弁護士を雇うことになった。
 2015年3月にこの件で一部のメディアが私の実名を報じた。シンガポールの共同経営者がリークした可能性があった。それで一気に米国の件もインターネット上で分かるようになってしまった。同じ業界で就職することはできなくなったので、自分で事業を立ち上げるしかない状況であったのに、もう全部いっぺんに……。銀行からもお金を借りられなくなって、全部できなくなってしまった。
〔昨年、都内で車を運転していて間違って一方通行の道路に入り込み、警察に呼び止められた〕
A氏 しばらくして「本部が海外の件で確認したいことがあるから」っていう話になって、あ、アメリカの件だなと思った。
 元同僚のうち2人が無罪になってすごく喜んでいた直後だったので、「2人は無罪になったのに、自分は捕まってこのままアメリカに送られちゃうんじゃないか」と思って、もうなんか、すごく……(怖くなった)。
〔実際、元同僚のうち別の1人(オーストラリア人)は本国で逮捕され、米国に引き渡されている〕
A氏 アメリカから相当強い圧力がかかっていることは間違いないので、その時がいちばん怖かった。もう本当に居ても立ってもいられない、全く眠れない状態だった。
 起訴されてからは夜もあまり眠れない、朝方は夢を見て起きてしまうというのはずっとある。連れて行かれる夢ですよね。子どもと一緒に過ごせなくなるとか。そういう恐怖が常にあった。今も見ないわけじゃないんで、たまにやっぱり見ますね。
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