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 広告費の規制案が国民投票法改正の焦点に

 憲法改正の是非を問う国民投票法の改正案が次の国会への継続審議になった。だが、野党には審議に応じる気配が見られない。そこで、広告費の制限がない現行の規定の是正を誘い水にする考えが与党内で浮上している。
 焦点は影響力が大きいテレビCMの扱いだ。しかし、莫大な広告収入を期待する民放テレビ各局にとって、規制は受け入れ難い。改憲の準備を加速したい安倍晋三首相と与党、抵抗する野党、そして民放の三者三様の思惑が激突しそうだ。
 憲法改正が発議されると、60日から150日以内に国民投票が実施される。その際、投票日の15日前までは自陣への投票を呼び掛けるCMを流すことができる。また、直前の14日間でも直接的に賛否を誘導する内容でなければ認められる。広告費の規制はなく、放送の分数や時間帯の制限もない。このため、資金力に優る改憲勢力が有力な広告代理店と組んでゴールデンタイムのCM枠を押さえ、人気タレントを囲い込むことが可能になる。
 改憲を進めたい与党には圧倒的に有利なため、捨ててしまうには惜しい。しかし、国民投票法改正案を審議する憲法審査会は、各党・会派の合意を前提に運営するのが慣例だ。
 与党が審議を強行すれば、野党も参加したうえでの改憲論議を望めなくなる。
 このため、野党を誘い入れる策を練らなくてはならない。先の改正案で駅や商業施設などに投票所を設置できるようにして、投票しやすい環境を整えることを提起したのは、このためだ。だが、森友学園や加計学園の疑惑に加え、与党が「働き方」法案や「カジノ」法案を強引に進めたことで、むしろ野党を追いやってしまった。そこで、軟化を促す策として浮かんだのが、広告に規制を設けることだ。
 しかし、民放各局の同意を得られるかは見通せない。民放各局がつくる日本民間放送連盟(民放連)は、法による規制について「表現の自由を制約しかねない」と強く反発しているからだ。
 国民投票法が成立した2007年、民放連は会長声明を発表し、「自主規制」の方針を打ち出していた。しかし、10年以上たったというのに、具体案を示していない。広告収入の低迷が続く中、莫大な収入の機会を逃したくないのが本音とみられている。
 与党が押し切ろうとすれば、民放各局との激突を避けられない。今春、安倍首相が放送法四条の「政治的公平」を廃止して放送事業への新規参入を促そうと狙ったのに対し、民放連は一丸となって抵抗した。
 また暗闘が再燃しそうな気配だ。


 厚木の空母艦載機移転で岩国基地の騒音が問題化

 神奈川県の厚木基地に配備されている空母艦載機の山口県岩国基地への移転が3月に終わり、厚木周辺の騒音被害は減少した。一方、岩国周辺の騒音被害が増加し、空母艦載機移転は結局、「不幸のたらい回し」となった。岩国基地は海兵隊基地で約65機が配備されていたが、空母艦載機61機の移転が終わり、米軍機だけで120機を超え、沖縄の嘉手納基地を上回る東洋最大の基地に躍り出た。
 厚木周辺では空母艦載機移転の効果は早くも表れ、今年4、5月の騒音合計は、滑走路北側の大和市の測定で前年比約4割減の3188回、南側の綾瀬市でも約3割強減って2130回となった。両市へ寄せられた苦情件数は前年の1/6程度の計102件にとどまった。
 一方の岩国市によると、4月と5月の2カ月で滑走路北側で2281回と前年同期比で2.5倍の騒音が発生。南側は計2713回で同じく3.0倍に達した。最高は電車通過時のガード下に相当する100デシベル前後だった。
 市に寄せられた苦情件数も4月は前年同期比の2.1倍にあたる670件、5月は実に4.0倍の817件にもなった。「子どもが泣きやまない」「テレビの音が聞こえない」など生活に深刻な影響を与えている。
 空母艦載機は6月、空母ロナルド・レーガンの出港に伴って岩国を離れた。しかし、海兵隊の航空機はそっくり残っているため静寂が戻ったわけではない。この点が、空母艦載機が中心だった厚木基地との大きな違いだ。
 ただでさえ、騒音被害が恒常的に発生していたところへ追加で騒音の発生源である空母艦載機を受け入れたのだから、被害が拡大するのは分かり切っていた話だ。それでも岩国市民は受け入れ反対を訴えた岩国市長を落選させ、容認派の現市長を当選させた。
 政府は現市長の公約に合わせて、岩国市の全小中学校にクーラーを設置したり、民間旅客機の増便を認めたりと市民にアメを巧みに振る舞い、当選を重ねるよう誘導。その結果、昨年から始まった空母艦載機の移転はトラブルなく進み、今日の結果を招いた。
 市民の間から「政府にだまされた」との恨み節も漏れるが、後の祭り。騒音被害は隣の広島県や島根県にも広がり、中国地方全体の大問題に発展しつつある。


 大企業の経営計画もいまや外部コンサル頼み

 大手企業の将来設計や経営計画を企画立案する司令塔ともいえる経営企画などのセクションで意外にも、大手コンサルティング会社に経営計画の立案を密かに依頼していることが判明した。
 ある大手コンサルティング企業幹部は「大企業の経営計画立案の経営企画などの部署から最近、われわれコンサルティング企業に経営計画の立案依頼の話が舞い込む。信じられないと思うかもしれないが、大企業といえども今や企画立案能力が落ちていて、われわれに依頼し、それをベースに自分たちなりの案に仕上げて、経営トップや役員会に提案しているようだ」という。
 信じがたい話なので、念押しのためにどんな企業なのか聞いてみたところ「守秘義務契約を結んでいるし顧客企業の個別のことはいえない」と語る。そこで、コンサルティング業務も行うある大手シンクタンク関係者に打診したら「相手先企業の問題があり名前は極秘で明かせないが、そういう現実があるのは事実だ」と実情を認めた。
 彼らコンサルティング関係者の話を総合すると、一部大企業の経営企画部のコンサルティング企業頼みの背景には、トランプ米大統領の出現が象徴的なように何が起きるか読めず先行き不透明な状況下で、個別企業経営に大きな影響を与えかねない事態に関する判断材料を得たい事情がある。自動車産業が情報通信やインターネットとリンクした新たなビジネスモデルづくりや、想定外の企業の自動車産業への新規参入が起きる時代となっているように、あらゆる分野に情報のネットワークを張っているコンサルティング企業に経営へのアドバイスを得たいためだという。
 しかし、依頼先の企業によっては経営計画立案能力が落ちていて、丸投げとはいわないまでも、かなりの依存度で期待してくる企業があるほか、企業内部で派閥抗争があって現政権を支える立場の経営企画部としては反対派を抑えるために「外部の有力コンサルティング企業も、われわれと同じ情勢判断、企画判断だった」という反撃材料に活用することも感じ取れるという。
 大企業の経営司令塔で、企業の先行きを方向づける経営計画について外部のコンサルティング企業に依頼するというのは、まさに驚くべき話。それと同時に、日本の大企業の力の低下を感じさせる話でもある。


 活況なESG投資にバブルを危ぶむ声

 運用の世界で今、最も頻繁に登場するキーワードに「ESG」がある。環境「E」、社会「S」、ガバナンス(企業統治)「G」の頭文字をとった「非財務的要素」の総称だ。この三要素の評価が高い企業やプロジェクトに運用する「ESG」投資の総額は、世界全体で2500兆円に達しているとみられている。「ESGの評価が高い企業等には年金資金など安定した長期の低利資金が潤沢に集まり、結果としてROE(株主資本利益率)などの投資パフォーマンスも向上する。それが好循環を生んでいる」(メガバンク幹部)という。
 ESG投資が市場の注目を集め始めたのは、2006年の国連責任投資原則(PRI)から。これは金融市場の資金を温暖化対策や人権、貧困などの環境・社会リスクを軽減させることに向かわせる原則である。日本でこの流れを加速させたのは、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)。GPIFは17年7月から国内株式運用の3%程度、約1兆円をESG投資に振り向けた。
 世界最大級の年金ファンドで、時価約160兆円に及ぶ資産を持つGPIFによるESG投資は、市場に大きなインパクトを与えた。また、GPIFが17年10月に世界銀行グループとESG投資に関し、投資基準を含むストラテジーを推進するイニシアチブについてパートナーシップ協定を結んだことは市場に弾みをもたらした。
 さらにESG投資に市場の関心を向かわせたのは、日本銀行によるESG指数に連動するETF(上場投資信託)の購入だった。日本銀行は、異次元緩和の一環として上場する指数連動型のETFを年6兆円のペースで買い入れている。この中に今年4月からMSCI日本株女性活躍指数(セレクト)に連動するETFを加えた。日銀は16年4月から設備・人材投資に積極的に取り組む企業のETF購入を開始しているが、さらにESG投資にも乗り出すことで日本経済の底上げに寄与する狙いがある。
 一方、こうしたESG投資の急速な拡大について、金融関係者の中には「バブル」を懸念する声が挙がっている。「ESGと名が付けば、投資家が集まるという一種のバブル」(金融筋)というわけだ。2000年代初頭の「ITバブル」と似た状況があることは確かだ。
 ESG投資はその投資基準を含め、まだ発展途上。GPIFが採用したESG指数に、昨年来、相次いで不祥事が発覚した大手メーカーが複数「優良企業」として組み入れられていたのは端的な表れと言っていい。ESG投資が洗練化されるのは、まさにこれからだ。


 サービサー法改正で熾烈な回収再発か

 これまで債権回収会社(サービサー)が対象にしてきた銀行の貸付債権に加え、滞納した公共料金や保険料、さらに奨学金まで回収できるように、対象を「金銭債権」全般に広げる「債権管理回収業に関する特別措置法」(サービサー法)の改正案が波紋を広げている。
 サービサー法はバブル崩壊に伴い金融危機が極まった1998年10月に施行された。銀行が過大な不良債権を抱え、貸し渋りに動く中、資金繰りに窮した個人や中小企業は、サラ金や商工ローンなどノンバンクからの借入に頼った。しかし、その回収は熾烈を極めた。サービサー法はそうした行き過ぎた債権回収を規制し、弁護士法の特例として債権回収会社に特定金銭債権の管理および回収ができるようにしたものだ。
 だが、時間の経過とともに金融危機が去り、銀行の不良債権が激減する中、サービサーの存在意義は低下していった。「不良債権処理のために設立したサービサー会社だったが、飯の種がなくなる中、新たな収益源が必要になっている。生き残るためには回収対象を金銭債権全般に広げる必要はある」(メガバンク幹部)という苦しい台所事情がある。
「借りた金は返さなければならない」のは、商慣行の基本。しかし、返せない事情のある人が数多いのも事実。消費者保護の立場からみれば電気料・ガス料金の滞納もサービサーの回収対象になることに一抹の不安がよぎる。6月に「金融サービサー被害者の会」が発足したのも法改正が本来の趣旨を離れて、厳しい取り立てに走りかねないと危惧されている証しといえそうだ。改正法案の行方が注目される。


 所有会社破産で馬毛島が日米の軍事訓練拠点に

 鹿児島県種子島の西方12キロメートルの南シナ海に浮かぶ面積8.2平方キロメートルの馬毛島が、日米両軍の訓練拠点として決着しそうだ。
 これまで、石油備蓄基地、レジャーランド、防衛庁(当時)レーダー基地など、幾つもの構想が生まれては消えた馬毛島が防衛省向け飛行場として甦るのは、島を1995五年に買収した採石製造販売を営む立石建設グループが、憑かれたように飛行場建設を進めたからだ。
 同グループの立石勲代表は、「これまでに150億円は投じた」と語っている。確かに島には南北4200メートル、東西2400メートルの滑走路が設置されている。馬毛島は無人島。タッチ&ゴーと呼ばれる米空母艦載機の陸上離着陸訓練地に適しているとして何度も候補地に挙がった。
 だが、高額売却を要求する立石代表と防衛省側の折り合いがつかなかった。「滑走路といっても素人が形を整えただけ。軍用滑走路となれば、さらに堅牢にしなければならず、立石さんがいくら注ぎ込んでいようと、それに見合う価格は出せない」と幹部が話す防衛省の想定価格は、50億〜100億円だといわれている。
 その馬毛島が動き出すのは、6月15日、馬毛島を所有する立石建設グループのタストン・エアポートが第3者破産の申し立てを受け、裁判所が保全命令を出してからだ。破産手続きに入れば、立石氏と交渉することなく買収に入れるわけで、日米訓練拠点構想が現実味を帯びてきた。
「米軍の離着陸訓練は年間で1カ月未満。その他の期間は、海上自衛隊や航空自衛隊の訓練基地として使用する方針です」と前出の幹部は言う。


 土地トラブルで躓く京都・大原の再開発

 外人観光客で賑わう京都の中で、交通の便の悪さから取り残された感があるのが、京都駅から北東へ約16キロメートルの大原地区だった。「三千院」「宝泉院」「寂光院」といった名所旧跡はあるものの、観光客は最盛期の1/3に減少している。
 そこで地域団体などが結集、「京都・大原創生の会」が立ち上がり、2016年10月、一般社団法人となった。また、具体的に大原再開発を進める企業として、京都大原保存・開発会社が設立された。代表は、サンクチュアリグループ(SG)の竹中靖典社長で、最高顧問に堀澤祖門三千院門主、相談役に森井源三郎三千院門徒代表などが就いている。この事業は門川大作京都市長もプッシュ、まさに寺院と企業と地元が開発を進め、それを行政が後押しする京都らしい計画である。
 だが、思いがけないトラブルが発生した。今年5月、千葉県の不動産開発会社が、三千院の土地買収資金の手付金として1億円を拠出したのに、中間業者Yが詐欺的手法によってこれを奪い取ったとして、返還を求めて民事訴訟を起こしたのだ。
 原告の不動産会社が買おうとしたのは、三千院の持つ広大な土地で価格は10億円。第1契約は三千院とSGで結ばれ、第2契約がSGとYで結ばれ、第3契約がYと原告の間で結ばれていたという。だが、原告からYに支払われたカネは、そのままSGに渡ることはなく、支払われたのは3000万円で残りはYが勝手に費消した。原告はSGに対し不当利得請求権を代位行使。しかも、売買契約書におけるSGの印影が偽造されたものであるとして、SGが絡む契約全体に疑義を呈している。


 誰も見ぬ経団連会長会見、ユーチューブ投稿中止

 経団連はこれまで、会長の定例記者会見の映像を、動画投稿サイト「ユーチューブ」の公式チャンネルで公開してきたが、中西宏明新会長が就任した5月末以降、ひっそりと取りやめていた。「閲覧者が少ないため」がその理由とか。
 経団連会長の定例会見は、原則として毎月第2・第4月曜日に行われ、経団連の公式サイトでその要旨を毎回紹介してきた。2015年9月からは、情報発信力強化の旗印の下、「ユーチューブ」に経団連チャンネルを開設、榊原定征前会長の会見の全容を動画で配信するようになった。
 ところが、動画の視聴回数は、初回こそ400回を記録したものの、その後は2ケタが続き、100回を超えるのがやっと。3年近くたっても一向に視聴回数は伸びず、2月13日の榊原前会長と中西新会長の共同会見も、5月21日の榊原会長の最後の会見も、200回余にとどまった。
「ユーチューブ」で視聴回数が100回程度というのは、ほとんど誰も見ていないに等しい。情報発信力の強化どころか、財界への関心の低さが露呈された格好で、「あまりにみっともない」との嘆きが広がったという。
 もっとも、「動画の公開をやめるより、閲覧者を増やす努力をするのが本筋」との声も聞こえるが……。


 大抜擢と「改革」文書が金融庁前長官の置き土産

 金融庁の新体制が7月17日に発足した。在任3年の森信親長官が退任し、後任に遠藤俊英監督局長が昇格した。遠藤氏の昇格までには紆余曲折があっただけに、監督を受ける銀行、保険等の金融機関は、遠藤氏の昇格でひとまず胸をなで下ろしている。MOF担を経験したメガバンク幹部によると「遠藤氏は子息の喘息を治癒させるため、自宅を軽井沢に移して、そこから登庁するなど、優しい性格の持ち主」という。
 一方、遠藤氏の昇格以上に注目を集めたのは、監督局長に栗田照久・監督局参事官が昇格したこと。庁内でも驚きの人事で、「発令を受け本人もびっくりしていた」(金融庁関係者)。栗田氏は1987年入省で、京大法卒。82年入省の遠藤前監督局長から5年も若返る。しかも、金融庁は旧大蔵省から分離して20年にあたる今年、7月に抜本的な組織改正を実施し、検査局を監督局に統合したばかり。その初代監督局長に最若手を抜擢したことは注目に値する。金融庁関係者は「抜擢は森前長官の置き土産」と解説する。
 その森前長官のもう1つの置き土産とされるのが、7月4日に金融庁が発表した「金融庁の改革について」と題する一連の文書だ。「森前長官特有の文面が並ぶ」(金融庁関係者)とされる文書、特にその将来像については、「金融庁は、終身雇用、年功序列といった旧来の慣行に囚われずに、組織の内外の往来により柔軟な開かれた組織となる」と謳われている。
 また、同時に示された「当面の人事基本方針」では、「能力主義に基づく任用の徹底」として、管理職以上の職階については、採用区分や年次にとらわれることなく、当該職階に求められる能力(コンピテンシー)の充足度合いに基づき任用を行うことを明記。栗田氏の監督局長への昇格はその手始めという位置付けか。
 栗田氏は監督局銀行1課長時代に、森長官の意向を受けて、反社勢力への融資を放置したみずほ銀行への厳しい行政処分を主導した。その栗田氏抜擢に銀行界は身構えている。


 メルカリが次に仕掛けたい金融・決済ビジネス

 東証マザーズに上場したばかりのメルカリが次に狙うのが、金融・決済ビジネス。フリーマーケットをスマートフォン上に落とし込み、創業五年弱で日本国内に1000万人ものユニークユーザー、324億円もの月間流通総額を実現したメルカリには今、膨大な「ビッグデータ」がある。この取引履歴を新たなビジネスにつなげられないかという考えだ。
 メルカリの小泉文明社長兼COOは6月19日の上場記者会見で、まだ発表前だからと言葉を濁して深く言及しなかったものの、再三、「お金のやり取りや決済などいろいろなデータが溜まっている。それを外部の人に提供したい」と発言した。詳細を明らかにしない思わせぶりな発言は、メルカリの新サービスへの期待感をいやが応にも高める効果があるといえよう。
 小泉氏がほのめかす新サービスとは、昨年暮れに設立されたばかりのメルカリの子会社メルペイで検討されている事柄である。中国のアリババグループが決済子会社アリペイを傘下に持ったり、楽天がクレジットカードサービスを備えたりしているのと同じように、メルカリも金融・決済に乗り出そうとしている。このメルペイのトップに招いたのがグリーのCFOを務めてきた青柳直樹氏だ。青柳氏はドイツ証券から当時、飛ぶ鳥を落とす勢いのグリーに転じたものの、2012年以降、「コンプガチャ」などコンプライアンス上の問題にグリーが対処しきれなくなると、グリーから脱藩。新天地を求めてメルカリグループにやってきた。
 小泉氏は「メルカリ内に溜まったお金を(ヴァーチャルなオンラインではなくて)リアルなオフラインで使えるようにしたい」と言う。例えばQRコードをリーダーに読み込みさせることで、メルカリのアプリ内に溜まっているお金を、コンビニエンスストアや量販店などリアルな店舗でも使えるようにするという試みが検討されている。類似のサービスは、すでにLINEが「LINEペイ」として先行して実施しているが、メッセージのやり取りが中心で物販機能が乏しいLINEでは、期待したほど普及していない。
 これを普及させられるかどうかは、メルカリ内の金融情報を「外部」に広げられるかどうかにかかっている。すでに物販など流通業や金融界と水面下で交渉しているもよう。「早ければ年内にもローンチしたい」と小泉社長は言っている。


 社長の給与は社員の何倍か、新指標で日米大手を比較

 「マクドナルド3101倍」「ウォルマート1188倍」「アマゾン59倍」「フェイスブック37倍」……。これはCEO(最高経営責任者)が社員給与の中央値の何倍の報酬を貰っているかを示す新指標「ペイ・レシオ」である。
 アメリカではリーマンショックの際、金融機関のトップが高額報酬を受けていたことから金融危機の再発を防止する狙いでドット・フランク法が制定された。その規制法では各企業にペイ・レシオを公表することが義務化され、今年から公表が始まった。すでに1960社が発表し、トップはアメリカらしく肥満対策プログラムを作成するウェイト・ウォッチャーズ・インターナショナルの5908倍だった。3000倍を超えるマクドナルドのペイ・レシオが高いのは社員年収の中央値がポーランドの社員の79万円と低いためで、フェイスブックが意外に低かったのは技術系社員が圧倒的に多く、社員給与が2620万円と高いため、という事情だ。
 では、報酬1億円超の役員が過去最多の500人超と伝えられた日本企業のペイ・レシオはどうなるのか。トップはソニーの298倍。ソニー復活の救世主と呼ばれ、3月まで社長兼CEOを務め、会長に退いた平井一夫氏に退職慰労金が上乗せされ、昨年の報酬の3倍の27億1000万円になったことで同社のペイ・レシオも昨年の約3倍の298倍に急上昇した。
 ソフトバンクは12倍。孫正義社長の報酬が1億2000万円だからだが、ロナルド・フィッシャー副社長の報酬は孫氏の16倍の20億1000万円。副社長に対するペイ・レシオを計算すれば、167倍に跳ね上がる。トヨタでは豊田章男社長の報酬は3億8000万円とペイ・レシオは38倍だが、ディディエ・ルロワ副社長の報酬は豊田社長の3倍の10億2600万円だったから副社長に対するペイ・レシオなら100倍を超える。
 アイルランドの製薬会社、シャイアーを7兆円で買収した武田薬品工業はクリストフ・ウェーバー社長の報酬が12億1000万円で117倍。ウェーバー社長は「ファイザーのペイ・レシオは313倍だ。武田のほうが安い」と言うかもしれない。
 ある私大の名誉教授によれば「アメリカの役員報酬は超高額だが、半分以上がストックオプション。現金報酬がほとんどの日本企業と大差はない。トランプ大統領はオバマ大統領時代に導入されたペイ・レシオに批判的で廃止されそうだが、現金報酬の日本企業向きかもしれない」
 ただ、政府が要請した賃金3%アップに届かなかった庶民の目には、どのトップも貰いすぎに映るかも。


 スルガ銀行の行く末はコンコルディアFG入りか

 シェアハウスのオーナー向け融資で不正が発覚したスルガ銀行の行く末が金融界で話題になっている。
 女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」を運営するスマートデイズの破産で露呈したスルガ銀行の不正融資は、オーナーが自殺したり、自己破産に追い込まれるなど、底なしの様相を呈している。6月28日に同行本店の沼津市で開かれた株主総会は3時間20分に及び、被害を受けたオーナーなど約400人の株主が出席、怒号が飛び交う中、退場者が出るなど大荒れとなった。
 事態を重く見た金融庁は急遽4月から立ち入り検査に入っているが、いまだ収束する気配はない。「大幅な幹部人事が予定されている金融庁が、6月末の事務年度をまたいで検査を継続するのは異例」(地銀幹部)。検査の結果いかんでは、業務停止を含む厳しい処分が下される可能性がある。
 そのXデーはいつか。金融庁関係者によると、「弁護士などからなる第3者委員会が調査に入っており、8月中には結果がまとまる見通しとなっている。それを受けて金融庁の行政処分も出されるのではないか」とみられている。第3者委員会は日弁連方式で甘い結果は出せない。委員長を務める中村直人弁護士も「経営陣がどこまで問題を知っていたのか、不正を防げなかった経営陣の問題を明らかにするのが焦点となる」と明言している。
 一方、この問題で金融界が注目するのは、スルガ銀行の貸倒引当金の水準だ。同行は投資不動産向け融資を精査した結果、貸倒引当金の積み増しが必要となったとして6月に与信費用を203億円増額したが、「この水準で十分とは思えない」(地銀幹部)とされる。さらに19年3月期の実質与信費用はわずか109億円と過小評価している。「スルガ銀行の総貸出額は約3兆円、うちシェアハウス向けが約2000億円。さらに融資残7000億〜8000億円の戸建てアパート向け融資でも同様の不正が報道されており、貸倒引当金のさらなる積み増しは避けられないだろう」(大手信用情報機関)という。不正融資の傷口が広がれば、赤字決算から自己資本が棄損する可能性も囁かれ始めた。再編は避けられない。
 その再編相手は、横浜銀行と東日本銀行が傘下に入るコンコルディア・フィナンシャルグループとの見方も浮上している。「横浜銀行内では、スルガ銀行がグループ入りするのではないかとの噂で持ち切り」(関係者)という。スルガ銀行の顧客の九割は首都圏を中心とする個人で、コンコルディアにとっても悪い話ではない。が、いずれにしてもカギは金融庁が握っている。


 「なぜ今?」の疑問が湧く日銀のネット通販レポート

 日銀が「インターネット通販(以下、ネット通販)の普及拡大が国内の物価上昇を抑制している」との報告書をまとめた。調査統計局のレポートの要点は以下の通り。
「家計に占めるネット通販による購買比率は、顕著に上昇している。支出額を品目別にみると、最近は日用品や衣類などの増加が目立つ。前年比1〜3割増の勢いで伸びている」
「ネット通販拡大の背景には、共働き世帯の増加が指摘できる。実店舗に出向くことなく24時間いつでも買い物ができるという、ネット通販の利便性を評価する消費者が増加していることのあらわれといえる」
「また場合によっては同じ商品を実店舗より割安に購入できるということも、ネット通販への消費者のシフトに繋がっているものとみられる」
「2017年の家計消費に占めるネット通販比率をもとにした試算では、生鮮食品・エネルギーを除くコア物価上昇率で0.1〜0.2%分の押し下げが認められる」
 メディアは「日銀がネット通販の現状・物価への影響を詳しく分析したのは初めて」と伝えている。が、この程度の内容の「報告書」ならば官公庁の資料・データを駆使できる日銀調査統計局にとっては、容易な作業といえる。
 そこで抱かざるをえない大いなる疑問は、日銀はなぜこのタイミングでこのレポートを発表したのかだ。大手新聞の日銀金融記者クラブ担当の記者は「4月のコア物価上昇率が0.4%にとどまり、前の月に比べ0.1ポイント縮小したのが契機」とした上で、こうも言及した。
「今回の調査結果は7月の金融政策決定会合(30〜31日)で報告される。果たして議論の中でどう使われるのか興味深い。公表されるいわゆる展望レポートで、18年度以降の物価見通しを下方修正する論拠とされる公算も否定できない」
 レポートが表面化した直後『物価上昇率2%、簡単には達成困難 日銀雨宮副総裁』という見出しの朝日新聞デジタル版が配信された。
 日銀の黒田東彦総裁は「目標:2%の物価上昇」に到底及んでいない現状に対しこれまでは、「デフレ心理の重さ」を強調してきた。FRB・ECBに比べ(金融緩和の)出口論のタイミングで大きく水をあけられている今、日銀の今回のレポートが「その場逃れの場当たり的に使われた」としたら、「愚」としか言葉が浮かばない。


 無責任体質露呈の築地移転、引っ越し日でも混乱中

 10月11日の築地市場の豊洲移転を控え、築地や豊洲では大混乱が続いている。引っ越しを10日までに終える方針を都が撤回し、11日から17日まで引っ越し調整期間として決めて関係者や地元に文書で説明したために「引っ越しは17日まででいい」という「解釈」が独り歩きを始めた。都は7月中旬になっても、この文書を広報しなかったため、地元住民や都庁記者クラブの記者の多くも知らず、混乱の火種になった。
 こうした課題は過去の問題の繰り返しで、「都の事務方に学習効果がない」(仲卸業者)というところが特徴だ。庁内では「その時点で説明に誤りはなかった」「ちゃんと手続きをした」という役人らの言い訳が幅を利かせるが、上司だけを向いて仕事をしているにすぎない。
 五輪時にも本線開通できない環状2号線の扱いも、都の建設局、知事周辺、中央卸売市場などの関係部局間で見解や本音が違ったうえ、速やかな決定は苦手なため、二転三転した。こうした事態を予測した地元の中央区も「言わんこっちゃない」とあきれ顔だ。
 5月には「業者からの引っ越しのための要望を受け、都は当初、環2の暫定道路のうち上り線のみ豊洲開場と同時に開通させる」と新聞にリークしたが、その時点で、区と建設局が主張していた「上下線の開通時期を分けることは交通管理の面で無理」という点を認めて撤回するまでかなりの時間がかかり、「移転」を17日まで先延ばしするムードにつながる。
 これまで混乱は、すべて市場移転を「立ち止まって考える」と宣言した小池知事のせいにできた。しかし、移転する業者とろくな折衝や下準備もできない市場部門が問題という認識も浸透してきた。業者と対峙する市場部局には「配属されたくない」という都職員の事なかれ体質で、世界最大級の水産卸売市場を経営する資質はあるのか? 市場部門を悪者にするのはいいが、都庁の外から見ると全くの無責任体制だ。
 豊洲市場の問題は、▼市場建物でターレの通る道の勾配が10度であるのに、道幅が非常に狭く対面交通で危ない、▼青果部門以外で駐車場が足らない、▼業者に課せられた豊洲市場の入構に不可欠なICタグの配布が大幅な遅れ、▼換気が悪くカビが生えやすいなどきりがない。
 現場を知らない日建設計による建物設計の構造的問題は指摘されたが、都が改善措置を講じたのはわずかだ。これからも「日建のせい」という陰口で片付く問題は1つもない。


 ケフィア事業振興会、第2の豊田商事化も

 公称220万人の会員を抱え、年商1000億円をあげる会員制通販サイト「ケフィア事業振興会」で会員への支払いが遅延し、訴訟に発展している。金融界では「第2の豊田商事事件」になるのではないかと囁かれ始めた。
 ケフィアは、「かぶちゃん農園」などグループ企業から農産加工品を仕入れ、会員制通販サイト「ケフィアカルチャー」で販売しているが、この農産物の販売は年商の1割、約100億円にすぎない。残る900億円の売上高は、会員と売買契約を結ぶ「オーナー制度」やケフィアと金銭消費貸借契約を結ぶ「サポーター募集」、およびグループ企業約40社からの経営指導料が占める。
 オーナー制度は、農産物ごとに1口5万円でオーナーを募り、1年後に5万5500円または、5万7600円が分配される仕組み。会員にとって年10%を超す高利回りの運用となるが、一部会員へ昨年11月頃から支払いが遅延している。また、「ケフィアは会員に太陽光発電所の太陽光パネルオーナーになるよう勧誘していたが、発電所の一部不動産をソーシャルレンディング大手の「maneo」(東京都千代田区)に担保提供し、昨年7月以降、ケフィアグループ会社を債務者として20億円の資金を調達。一部の調達金利は年利15%の高金利ものもあった」(大手信用情報機関)とされる。
 その「maneo」は、7月17日までに、金融庁から金融商品取引法に基づく業務改善命令を受けている。投資の勧誘時の説明と異なる目的に資金が流用されるなど管理体制に不備があったと判断された。国民生活センターには、ケフィア関連の相談が今年1〜5月に537件も寄せられるなど急増している。
 ケフィアは遅延理由を「システムの入れ替えに伴うもの」と説明しているが、会員の一部はケフィアへの仮差し押さえや返金を求める訴訟を起こしており、トラブルが表面化している。また、ケフィアを通じて一部会員が取得した太陽光パネルを含む太陽光発電所の土地や賃借権を他社へ売却したり譲渡するなど、資産を現金化する動きもみられる。
 ケフィアは銀行借り入れがなく、オーナー制度などを介して集めた資金を元に事業を展開しており、資金繰りに懸念がもたれている。「会員の多くは高齢者で、オーナー制度は少なくとも数万人が会員になっているとみられる」(大手信用情報機関)
 7月10日には、「ケフィアグループ被害対策弁護士団」が組成された。被害弁護団は、ケフィアの破産申し立てや刑事告発も検討している。


 英首相退陣論を懸念する原発計画「基本合意」の日立

 英国のメイ首相の退陣論に火がつきかねない状況だが、このことに懸念を寄せるのが日立製作所だ。日立は英国の中部アングルシー島で2基の原子力発電所の建設を計画しており、6月に英政府は日立と基本合意に至ったと発表。総事業費3兆円超のうち、2兆円超の融資を英政府が全額負担する。事業会社に対し、英政府・企業連合が3000億円を出資し、1500億円をリスク対策費として拠出することを検討する。
 問題は原発稼働に際して英政府が日立側に支払う電力買い取り価格だ。英政府は高コストの原発事業を支援するため稼働後の一定期間売電価格を高めに設定する差金決済取引(CFD)を採用している。計画が先行するヒンクリーポイントC原発では2016年に市場価格の2倍近い価格で35年間という破格の契約を仏電力大手EDFや中国企業が出資する事業主体と結び、議会などで批判を浴びた経緯がある。「メイ首相が議会の圧力に折れて、買い取り価格を低く設定すれば日立は撤退を考えざるを得なくなる」と、日立幹部は苦しい胸の内を明かす。
 仮に現時点で日立が撤退しても2000億円もの損失を計上しないといけない。この英国の原発プロジェクトが破綻するようだと、「開発費がさらに当初計画より膨らんでいるもっと困難なトルコでの問題に波及するのは不可避で、安倍政権が掲げるインフラ輸出の目玉が頓挫する」(官邸筋)。EU離脱交渉の実質期限となるのが十月。メイ首相がこの時まで持つか。日立も固唾をのんでその行方を見守っている。


 自販機で巻き返し狙うサントリーの「宅弁」

 コンビニ同様、基本定価販売の飲料自販機市場が伸び悩む中、知恵の絞り合いの様相を呈してきた。飲料自販機は全国に約250万台ある中、仕掛けたのは飲料業界2位のサントリー食品インターナショナル(以下サントリー)。ぐるなびと組んで始めた「宅弁」がそれだ。
 サントリーでは頭打ちの自販機ビジネスは今後、屋外に設置された自販機は淘汰され、オフィス内に設置した法人向け自販機に活路ありとしてきた。そこで今回考えついたのが、オフィス近隣にあるレストランと契約して、自販機から弁当を注文できるようにしたこと。その際、お茶やミネラルウオーター、コーヒーのついで買いを誘うというのが大きな狙いだ。
 サントリーでは弁当を注文して飲料を買った場合は飲料を10円引きにもするというが、同じ飲料がスーパーならかなり安く売られているわけだから、定価が基本の自販機から十円引きで売っても数が出れば元は取れる。主要顧客は、昼食時に高層ビルでエレベーター渋滞する大企業勤めの人や、終日パソコンと向き合うプログラマーなどIT系企業で働く人。ゆえに大都市圏での展開が多くなり、当面は「宅弁」対応自販機1000台が目標になるという。
 飲料業界は首位のコカ・コーラをサントリーが追う構図だが、今後はAIやIoTの技術を駆使して、飲料と親和性が高い弁当などの食品のみならず、非食品分野でも何かが注文できたり、自販機自体も飲料以外を扱ったりするケースが出てくるかもしれない。当面は、サントリーに対抗して自販機の数でも首位のコカ・コーラ陣営が、どんな策を見せるのかが注目される。


 米ウォルマートが傘下の西友売却に本腰

 米小売り大手のウォルマートが傘下の西友の売却に向けて動き出した。
 日本市場は人口減少で縮小が見込まれる一方、アマゾン・ドット・コムに象徴される業態を超えた小売業の競争は激しくなっている。ウォルマートは西友の売却を複数の流通大手などに打診し始めたが、「買う価値はない」(大手小売り幹部)との声が大半だ。全国で2万人を超える従業員は、漂流する西友の行方に不安を抱えながら職場に就く毎日だ。
 今回の西友売却で想定される売却額は3000億〜5000億円と高額だ。西友の店舗は国内335カ所に広がり、従業員数は2万人超。売上高は非開示だが7000億円前後と、総合スーパーで国内有数の規模を持つため、ウォルマートも高値での売却を狙う。駅前の好立地に多い店舗の約半数は自社所有とみられており、資産価値も高いとされる。
 ウォルマートが有望な売却先として考えているのがイオンだ。仏カルフールや英テスコの日本事業を吸収し、ダイエーなども買収したイオンが最有力候補に浮かぶ。だが「ダイエーの再建のほうが優先だ。重複する店舗も多く、リストラは不可避。さらに店舗が老朽化しているのにもかかわらず買収額も高い」(イオン幹部)と消極的だ。
 次に候補に挙がるのが、グループ会社が扱う食品や日用品の販売先を確保するため出資を通じて小売業との関係を強める総合商社だ。三菱商事はローソンを子会社化、最近では伊藤忠商事がユニー・ファミリーマートホールディングスを子会社にする予定など、急速に小売業に接近している。
 しかし、三菱商事はすでにOKやライフを傘下に持つほか、伊藤忠商事や住友商事も関西スーパーやサミットを抱える。「まるまる全部を買うことはあり得ない。店舗網で穴が空いているところを補う程度」(三菱商事幹部)と消極的だ。
 残る候補としてウォルマートが期待を寄せるのが楽天だ。楽天は1月にウォルマートと提携、「楽天西友ネットスーパー」を共同で今夏にも始める。アマゾンへの対抗心を燃やす楽天だが、携帯電話事業に進出したこともあり、基地局の整備などに多額な投資が要る。「西友をまるまる買収する資金も人材も足りない」(楽天幹部)というのが現状だ。
 ウォルマートの本拠地である米国ではアマゾンの台頭、いわゆる「アマゾン・エフェクト」により、多くの店舗が閉鎖に追い込まれている。ウォルマートも通販事業に取り組み始めたが、今のところ効果はまだ出ていない。庶民に慕われてきた西友の看板がいつまで残るか、前途は視界不良だ。


 日産でまたデータ改ざん、西川CEOへの批判渦巻く

 日産自動車は追浜工場(神奈川県横須賀市)など国内5つの完成車工場で、新車の出荷前に実施する排出ガスデータの検査で測定値を改ざんしていたことを明らかにした。
 決められた試験環境と異なる条件で測定をしていたほか、排ガスの成分値の一部を書き換えており、不正の対象は1171台。日産は2017年9月に無資格者が完成検査をする不正が発覚している。一向に止まらない検査不正に対し、日産社内では「現場に責任を押しつける西川広人社長兼最高経営責任者(CEO)に対するT無言の抵抗Uではないか」との声も出ている。
 調査対象はデータが確認できた13年4月から18年6月で、自主点検を進める中で明らかになった。不正は新車の性能を検証するため、抜き取りで実施する検査で行われた。排ガス測定で想定した結果が出ない場合、都合のいい数値に書き換えた可能性がある。試験の走行速度や温湿度が決められた数値に収まっていないのに、有効な測定結果として取り扱っていた事例もあった。
「お詫び会見」は夕方、記者たちを横浜市の日産本社まで呼ぶ形で開かれた。「マスコミ嫌い」で知られる西川氏は今回も姿を現さなかった。
 その西川氏はこのほど開かれた株主総会で前年よりも3割多い5億円もの報酬を得ることが決まった。
「トップらしい仕事をせずに、肩書が社長兼CEOになっただけで5億円はありえない」と日産の社員は人目をはばからずこう言う。特に、同じ検査不正を機に当時の社長が退任し、さらに日産の傘下に入った三菱自動車にとっては「開いた口がふさがらない」(三菱自幹部)と話す。
 前回の不正問題の際に西川氏が「検査の制度が時代遅れだ」という趣旨のことを発言し激怒した監督官庁の国交省も厳しい処分を求める考えだ。国交省幹部は「三菱自の不正が発覚した際に、国内自動車メーカー全社にもう1度チェックするように要請した。この際にスズキは不正を申告し、トップの鈴木修氏はCEO職を息子の俊宏氏に譲った。日産は不正を申告しないばかりかそれを機に三菱自を傘下に取り込んだ」と怒りをあらわにする。
 今回の騒動を受けても「西川氏は一切やめる気はない」(日産幹部)という。しかも今期は純利益も大きく前年を下回る見通し。「このままでは日産はルノーにのみ込まれる」(同)との懸念もくすぶる。


 サッカーW杯成功でもプーチン支持率は急降下

 自国開催のサッカーW杯でのロシア・チームの大活躍で、4期目に入ったプーチン大統領の支持が拡大と思いきや、支持率は急降下しつつある。世論基金の調査では、3月の大統領選当時80%だったプーチン氏の支持率は7月初めに61%まで低下した。全ロシア世論調査センターの信頼度調査でも、3月に55%だった大統領の信頼度は、7月初めに38%まで低下した。
 人気低下の理由は、W杯の盛り上がりの裏で、不人気な政策を次々に発表しているためだ。
 メドベージェフ首相は6月15日のW杯開会式直後、来年1月から付加価値税を18%から20%に引き上げると発表。食料品などは10%の軽減税率が維持されるが、物価上昇につながる。電気・水道など公共料金も一斉に値上げが発表され、庶民生活直撃となった。
 首相はまた、年金制度改革も併せて発表し、受給開始年齢を男性は60歳から65歳に、女性は55歳から63歳へ段階的に引き上げることも公表した。経済苦境で年金基金が枯渇しつつあるためだが、国民にとっては定年後も働き続けねばならず、不興を買っている。
「年金受給年齢引き上げや付加価値税のアップは事前に予測されていましたが、W杯開幕直後の発表には驚きました。地方で散発的な抗議デモが起きていますが、夏休み明けの9月に反政府運動が本格化しそうです」(モスクワ特派員)
 原油価格の高騰にもかかわらず、株安、通貨安は続いたままで、欧米の経済制裁が効いているようだ。
「経済苦境が続けば、プーチン氏のレームダック化が早まるかもしれません」(同)


 白人層支持率は高いが内部崩壊進むトランプ政権

 米国のオバマ前大統領が最近、「自分は20年早く大統領になってしまったのかもしれない」と周囲に漏らしているという。
 この[20年]の意味は、これからの20年で米国社会は白人層がマイノリティーになり、これまで築き上げてきた白人優位の社会構造が確実に崩れる期間だ。オバマ氏は大統領になる前は上院議員100人の中で最もリベラルと言われて、在任中にもさまざまな進歩的政策を打ち出したが、それは逆に白人層の危機感に火をつけ、トランプ大統領を生んだ要因ともなった。
 白人層から局面打開を期待され登場したトランプ氏は、当初から過半数以上の支持率を獲得することを諦め、コアの支持者層に受ける政策を打ち出すことで11月の中間選挙では負けない戦略を取っている。現在、支持率は44%前後で推移しており、その内、白人層の支持率は七割と目下のところその戦略は成功している。
 その一方で、トランプ政権の内部崩壊は確実に進行している。政権の要である首席補佐官のケリー氏の辞任は確実視されており、重要閣僚のマティス国防長官の去就も注目されている。すでにマティス氏を支えてきた国防総省の政策スタッフの多くは国防政策に一貫性のないトランプ氏に嫌気をさして、シンクタンクに移っている。またその後の米朝協議を巡りポンぺオ国務長官の評価が急降下、北朝鮮の術中にはまってしまったとの声が強い。


 WTO脱退ちらつかせるトランプ大統領の本気度

 そのトランプ米大統領が、世界貿易機関(WTO)からの脱退をちらつかせている。トランプ政権は環太平洋連携協定(TPP)から離脱、「パリ協定」からも離脱を表明するなど、国際的な枠組みを軽視してきた「前科」があるだけに、はったりとは言えない側面がある。
 発端となったのは、米新興メディアのアクシオスの報道だ。アクシオスは6月末、トランプ大統領がWTOにおける米国の扱いに不満を持っており、脱退を望んでいると報じた。
 WTOは関税貿易一般協定(GATT)の後継機関で、1995年、多角的な貿易自由化交渉の推進と、貿易摩擦の解消を目的に発足した。加盟国はWTOのルールに従い、不公平な貿易慣行の撤廃と市場開放を推進することになる。しかし自他ともに認める経済大国、米国が仮に脱退すれば、ルールに基づいた貿易体制は崩壊のリスクにさらされる。
 トランプ大統領は脱退報道について「現時点では考えていない」と否定した。しかし、アクシオスは、トランプ政権が、国際貿易ルールに基づかず、独自に関税を適用できる権限を大統領に付与する法案を作成していたとの続報を流した。法案はトランプ大統領が指示したもので、WTOの枠組みに縛られず国同士の個別交渉で関税率を設定できる一方的な権限を大統領に与える内容という。議会の同意を得られるか不透明なため保留状態だが、最終結論は出ていないという。
 トランプ大統領は7月2日には、訪米中のルッテ・オランダ首相との会談の冒頭に記者団の質問に応じ、「米国は長年にわたってWTOで不当な扱いを受けてきた」と改めて述べ、「適切に扱われなければ何かすることになる」と警告。WTO不信の根深さをうかがわせた。


 タイ洞窟救助の場でPRか、イーロン・マスク氏に批判

 タイ北部チェンライ郊外の洞窟に閉じ込められたサッカー少年ら13人の遭難は、全員救出で幕を閉じた。この洞窟に駆け付け、「最新技術を駆使して少年らを救出する」と触れ回ったものの貢献できないまま静かに去っていった御仁がいる。世界的な起業家で、米電気自動車(EV)メーカー、テスラのイーロン・マスクCEO(最高経営責任者)だ。
 洞窟入り口から4キロメートル超入った地点に待避していた潜水経験のない少年らの救出が危険な作業だったことは周知の通り。マスク氏は7月6日、直径1メートルのナイロン製の管を通して空気で膨らませ、中を通って脱出させる案を提示。「やってみる価値はある」とツイッターに書き込んだ。翌7日には一転、少年1人がぎりぎり入れるミニ潜水艦を使った脱出方法を披露し、「狭い空間も通り抜けられ、とても頑丈。潜水士2人で運べる」と自賛した。9日にはプールの底につくった狭い空間に潜水艦を通す実験の映像を公開。マスク氏自身も現地入りした。しかし、救助隊は8日に救出作業に着手し、10日までに全員を助け出した。マスク氏の潜水艦は日の目を見ずに終わった。
 これに対し、救出活動に当たった英国人潜水士、バーノン・アンスワース氏は「宣伝のためのスタンドプレーだ。潜水艦は洞窟内では50メートルも進めない」とマスク氏を厳しく批判した。「マスク氏は洞窟内の構造を全く知らない。潜水艦は1.7メートルあった。入り組んだ洞窟内では曲がれないし、障害物も避けられない」と指摘。「使える可能性はゼロだった」と断じた。マスク氏はむしろ、救出作業の障害になっていたという。
 マスク氏は救助隊に頼まれて策を講じたと反論するが、少年ら全員が救出されると、すぐに中国に移動。何事もなかったかのように習近平国家主席に次ぐ実力者の王岐山国家副主席と会談し、米中貿易摩擦が激化する中、中国政権中枢に食い込むしたたかさを見せた。


 EV大手のテスラが中国上海に工場建設へ

 そのイーロン・マスク氏が率いるテスラが、中国上海市の自由貿易試験区に100%出資の工場を建設することで市当局と合意した。同社が米国外に工場を建設するのは初めて。米中間で通商摩擦が激化する中、中国市場重視の姿勢を鮮明にした。同工場は研究開発や製造の拠点となり、最終的には年間50万台のEVを生産する計画。来春にも着工し、2、3年後に生産を開始する見通しだ。
 中国政府は、補助金などを通じて「新エネルギー車」の普及を後押し。2017年の新エネルギー車の販売台数は前年比53%増の78万台と、世界最大。今年は100万台突破を目指している。30年までに車両をすべてEV化する目標を掲げており、販売台数はこれからも飛躍的に伸びるとみられている。
 テスラは現在、中国市場向けに年間約1万5000台を輸出している。しかし、中国による知的財産権の侵害を理由に米国が7月初めに追加関税を導入。対抗措置で中国が自動車などに報復関税を発動したのを受け、中国での販売価格の大幅引き上げを余儀なくされている。中国での現地生産が軌道に乗れば、通商摩擦の影響を回避できることになる。
 外国の自動車メーカーが中国で工場を建設するには、これまでは中国企業との折半出資とすることが義務付けられていた。しかし中国政府は、トランプ政権からの圧力を受け、EVについては18年、商用車については20年、乗用車は22年までに規制を撤廃することを決めた。
 すでに中国に進出している日系大手各社は中国側のパートナー企業と良好な関係を維持しているため、全額出資に切り替えることには慎重だが、テスラは新規の進出となるため、追い風となった。
 受け入れ側の上海市当局はテスラの工場建設計画を歓迎、「テスラ工場の建設を全面支援する」と約束した。そして前項の王岐山=マスク会談となった。テスラにとってはお墨付きを得た形で、米中「貿易戦争」のあおりで中国に進出している米企業が報復の標的とされる懸念も取り沙汰されているが、同社に関しては当面安泰と言えそうだ。


 フィリピンがクウェートに女子労働者派遣を再開へ

 悪化していたフィリピンとクウェートの関係が改善されそうだ。間もなく、途絶えていたフィリピンからクウェートへの労働者派遣が再開される。主として女性だ。
 今年初頭、フィリピンのドゥテルテ大統領はクウェートへの労働者派遣を突然中止した。理由は虐待や自殺が頻発するからというものだった。これが最近になり、フィリピン側の軟化で労働者派遣の再開となった。これに合わせて空席となっていた駐クウェート・フィリピン大使も派遣される予定だ。
 中東には多くのフィリピン人労働者が出稼ぎに行っている。英語力があることや勤勉さが買われて高い評価を得ていた。最近は中国大陸へもフィリピン人メイドが多く向かうが、この人材をクウェート側が強く求めたのが今回の関係改善で、年内には2万人が派遣される予定だという。


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