巻頭言
池 東旭の


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池 東旭氏
(ソウル在住/
国際ジャーナリスト)





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東アジア覇権再編のドラマ

――左派天下の韓国
 東アジアで今、米国と中華の覇権交代という巨大なドラマが進行中だ。20世紀後半、パクス・アメリカーナ(米国による国際秩序)がソ連、中国など共産圏の一部をのぞき世界をとりしきった。だが、2001年ニューヨークの同時多発テロをきっかけに米国の衰退と中国の崛起が始まった。オバマ大統領は14年「米国は世界の警察官の役割から降りる」と言明。トランプもアメリカ・ファーストを掲げて当選した。米国大統領自らパクス・アメリカーナの終焉を宣言したのだ。
 東アジアにおける覇権再編は徐々に現実になっている。朝鮮半島南北の首脳は4月27日板門店で和解と協力を宣言した。6月12日シンガポールでのトランプ・金正恩会談は、70年間続いた敵対関係終息のショーを演出した。その直後(6月13日)、韓国各級選挙で南北融和ムードの追い風にのった文在寅政権は圧勝を収め、左派勢力は国政の主導権を握った。保守政党は元大統領(朴槿恵、李明博)の逮捕、断罪という最悪の状況の中、敵前分裂して惨敗した。保守残党のこの体たらくに有権者は愛想をつかした。保守再生の視界はゼロだ。容共左派の天下は次期総選挙(20年)と大統領選挙(22年)まで続く。

――中華に吸収される朝鮮半島
 シンガポール会談のシナリオ通り北の非核化が進めば朝鮮半島の終戦宣言と平和協定、駐韓米軍は撤収する。韓国ではすでに高麗連邦など南北統一方策も云々されている。北はもともと中国の縄張りにある。駐韓米軍の撤収で朝鮮半島は中国の勢力圏に組み込まれる。すでに韓国と中国は貿易で米国より密接に結びついている。貿易依存度86%の韓国で17年貿易総額1兆520億ドル(輸出5739億ドル、輸入4781億ドル)のうち、中国は22.5%(輸出26%、輸入19%、以下同)の比率だ。米国の11%(11%、11%)日本の8%(6%、10%)など日米両国の合計を上回る。
 韓国は保守政権の時ですら中国にひれ伏した。しかも韓国は孤立主義に回帰する米国に裏切られた思いだ。習近平は太平洋の勢力圏で米中分割案を提唱した。トランプには韓国での既得権放棄もありうる。海洋勢力・米国の防衛ラインは日本列島と台湾を結ぶ線に後退する。日本は大陸勢力・中国の圧力をもろに受け止める最前線に立たされる。日本は中国と対決か妥協かの選択に直面する。

――永世中立論
 もっとも東アジアで中国の覇権によるパクス・シネカ(中国による国際秩序)が確立するかは疑問だ。左派勢力全盛の韓国でも中国への反感は根強い。中国の壓制に虐げられた歴史の記憶もある。自由民主主義を経験した韓国人は共産党独裁の中国を不信する。米国、カナダに移住した韓国人(コメリカン)280万人の影響力も大きい。貿易面で中国依存度は高いが、韓国経済は世界のあらゆる地域、分野で中国と競合するライバルだ。
 金正恩も就任後5年間対中関係で疑心暗鬼だった。最近、米朝接近の動きを警戒した習近平と対米交渉で後ろ盾が欲しい金正恩の打算が一致して両人は蜜月ぶりを誇示した。だが中国はすぐ隣、北の独走を内心警戒する。
 南北の両政権は米・中覇権のどっちにも加担したくない、中立がホンネだ。しかし半島という地政学的条件のゆえ列強の衝突に巻きこまれ、惨禍を浴びた。日清、日露戦争でも韓国は中立を宣言したが、非力のゆえ中立は侵犯された。
 韓国人の悲願は覇権国の争いに巻き込まれない、関係国が保障する永世中立だ。しかし他力本願の中立は脆い。自国の中立を担保する抑止力は核武装だ。でも覇権国はそれを容認しない。歴史の教訓が1つある。有史以来、朝鮮半島に介入した国々(隋、明、清、露、日)はそろって衰亡した。半島に手を出さないこと、その中立を保障するのが関係国にとって賢明な選択であるまいか?
(ソウル在住/国際ジャーナリスト)


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