ダミー
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 拉致問題解決で支持回復狙う首相の賭け

 先の米朝首脳会談を受け、安倍晋三首相が日朝首脳会談に強い意欲を示していることに、政府の外交当局者の1人はこうつぶやいた。「拉致問題の解決のめどが立っていないのに、期待感だけが膨んでおりリスクが大きすぎるな」
 安倍氏の念頭に9月の自民党総裁選があることは間違いない。確かに政界では安倍氏の総裁三選が有力視されてはいるものの、「安倍氏が第1回投票で過半数を制するのは容易ではない」(自民党執行部関係者)。このため首相としては「日朝交渉を使って支持率回復を図ろうとしている」(自民党閣僚経験者)わけだ。
 ただ、拉致問題は2002年に拉致被害者5人が帰国した後、全く進展していない。日本政府が認定した残る拉致被害者12人のうち、北朝鮮は「8人は死亡、4人は入国していない」と主張。今回の米朝協議の後も「解決済み」と改めて言い張っており、「政府認定の有無にかかわらず、全ての拉致被害者の帰国を求める」(菅義偉官房長官)とする日本政府の立場とは大きく乖離している。
「今後、日朝対話の動きが進み、総裁選の時点で安倍氏の続投以外に選択肢はないという空気が作れる。それが圧勝への弾みになる」。首相周辺にはこんな楽観的な見方もある。
 しかし、最終的に拉致問題が行き詰まったり、国民が納得できる結果が出なかったりした場合、首相は拉致被害者側から激しい批判を受けるに違いない。首相にとって北朝鮮との対話路線への転換は大きな賭けと言える。


 米朝首脳会談に見る米大統領の2つの過ち

 先の米朝首脳会談はトランプ外交の危うさを露呈してしまった。
 1つはポンペオ国務長官の最側近で、常に彼の傍らで仕切ったCIA高官のアンドリュー・キム氏の存在だ。国務省やシンクタンクの朝鮮半島の専門家を嫌ったトランプ氏は、CIA中心でこれまで対北朝鮮の交渉を担わせてきた。
 しかしこの人物の危ういところは韓国の文政権の高官たちと姻戚関係にあり、また、高校の同級生が数多くいることから、極めて文政権の意向になびく傾向があった。また、文政権のこうした高官スタッフは北朝鮮にシンパシーを感じる者が多く、交渉過程でも北の主張が入りやすい素地になってしまい、ポンペオ氏もそれに引きずられた感がある。
 2つ目には、トランプ氏が密かに考えているグランドデザインが誤った歴史観に基づくものだからだ。彼の考えは、北を親米国家に変えることだ。そのモデルは日本にある。今や世界一の親米国家である日本だが、その原点はGHQのマッカーサー元帥と昭和天皇の会見だ。その時、天皇の誠実な人柄を見抜いた彼は、戦争責任を問わず民主化を進めて日本を復興させた。
 しかし北の金正恩委員長は同じタイプの人物ではなく、また、敗戦国でもないのでこのモデルが通用するわけがない。歴史を勉強しないトランプ氏の直観に頼る外交は、結果的に同盟国との関係を危うくし、中国と北を利する格好となっている。


 創価学会実力者の横槍で自公の間に生じたひずみ

 与野党対決となった新潟県知事選は、自民、公明両党が支持する前海上保安庁次長の花角英世氏が、野党五党が推薦した前県議の池田千賀子氏を小差で破り初当選した。9月の党総裁選を控える安倍晋三首相の痛手とならず、本来なら万々歳だが、自民、公明両党間に「しこりが残った」(自民党筋)との声がもっぱらだ。
 自民党関係者によると、同党新潟県連が副知事経験のある花角氏を担ぎ出した際、公明党側と「政党色を前面に出さない。県民党で戦う」ことで合意。それぞれが花角氏を支援することを確認した。その後、乗り込んできたのが、公明党の支持母体・創価学会の選挙を一手に取り仕切り、沖縄での成功体験を持つ佐藤浩副会長。「新潟県知事選でも合同選対を組もう」と提案したという。
 これに自民党県連サイドは、「政党は1歩引いて支援に全力を挙げることで合意している」と説明、丁重にお断りしたところ、創価学会側から「自民の県連幹部から、協力を拒否された」との情報が流された。
 結局、自民党本部の二階俊博幹事長が調整に乗り出し、両党が「推薦」より支援態勢が緩い「支持」を出すことで決着。危機感を募らせた二階氏は、自身が運輸相の時に秘書官だった「花角氏を落とすわけにいかない」と二階派の総力を挙げて組織固めを図り、接戦を制した。とはいえ、自民党県連内には「アイツは何様のつもりだ」と不満が消えないという。
 佐藤氏は、政策面でも党の頭越しに菅義偉官房長官と直接調整ができる創価学会の実力者。かつての創価学会なら、選挙で公明党が敗北すれば、幹部のだれかが詰め腹を切らされてきた。しかし現在では、「佐藤氏以外、政権中枢に太いパイプのある実力者がいない」ことが幸いして、不問に付された。
 自民党とのしこりは残ったものの、新潟知事選勝利により、公明党・創価学会内で、佐藤氏の存在感がさらに増すのは間違いなさそうだ。


 米朝会談の非核化合意で在日米軍削減の可能性

 朝鮮半島の非核化を目指した米朝首脳会談の合意を受けて、トランプ米大統領はこの夏に予定される米韓合同演習の中止に言及、さらに将来的な在韓米軍の縮小・撤退にも踏み込んだ。在韓米軍が撤退した場合、在日米軍はどうなるのだろうか。
 軍事専門家の意見は、日本が極東の最前線となることから、在日米軍は強化されるとの見解を示す人が多い。だが、北朝鮮が核・ミサイル開発を進めていた2000年代前半でも、米政府は在日米軍の縮小を日本政府に持ちかけた実例がある。
 03年から日米で議論が始まった米軍再編で、米側は日本側に(1)在日米軍司令部を兼ねる第5空軍のグアム移転、(2)米ワシントン州にある陸軍第1軍団司令部を日本に移転し、在日米軍司令部とする、の2点を申し入れた。
 日本側の受けた衝撃は大きかった。現代の戦争は、ミサイルを駆使した航空戦から始まる。第5空軍の撤退は、日本に差し迫った脅威はないと米政府が見ていることを意味するからだ。米軍から日本に駐留する根拠の1つを否定されたに等しかった。
 第5空軍の移転は日本側の強い反対で消えたが、残る第1軍団の日本移転は、在韓司令部のあるソウルの米陸軍第8軍を廃止して日本に移転した後の第1軍団司令官が兼務する方式だった。米政府は日本と韓国の米軍を統一して指揮したい方針だが、日本政府は、米側の主張を受け入れた場合、日米安全保障条約の規定を越えるとして反対。第1軍団の受け入れのみが実現することになった。
 しかし、現実にはイラク戦争に疲れた第1軍団は日本に移転してくることはなく、第1軍団フォワードという名前の小規模な司令部がキャンプ座間に誕生したにすぎない。
 これら大規模な在日米軍の改編案は、北朝鮮が核・ミサイル開発を進めている間の03年から06年の間に議論しており、米政府が「北朝鮮の脅威」を歯牙にもかけていないことがわかる。
 さらに米政府は09年4月、青森県の三沢基地に置かれているF16戦闘機部隊の全面撤退を打診し、日本側の反対で残ることになったいきさつがある。
 三沢のF16部隊はワイルド・ウィーゼル(野生のイタチ)と呼ばれ、戦争の初期にミサイル基地やレーダー基地を破壊する専門部隊。万一、朝鮮半島で戦争が起きれば最初に派遣される部隊だが、朝鮮戦争が終結すれば、あらためて撤退が浮上する可能性は高い。
「北朝鮮の脅威」をフルに利用したい日本政府に対し、軍事合理性で割り切り、戦力削減も辞さない米政府との間で綱引きが始まりそうだ。


 金融庁・森長官退任で遠藤新長官に厳しい課題

 金融庁の長官在任が3年に達し、「歴代最強」という評価もあった森信親氏が7月で退任、後任に遠藤俊英監督局長が就くことになった。
 森氏といえば、現状維持に流れがちな霞が関の官僚には珍しく、新しい金融秩序を模索、金融界に改革を求める挑戦的な姿勢で知られていた。それを如実に示すのが、2016年10月に打ち出した「フィデューシャリー・デューティー」という舌を?みそうな行政方針である。これは「顧客本位の業務運営をせよ」という勧告で、金融業もサービス業なのだから「顧客本位」は当然ながら、それがなされないから地盤沈下を続けているという指摘である。特に森氏が検査局長時代から危機感を持って改善を求めてきたのが地方銀行だった。
 そのため持続可能性に問題がある銀行には再編を促す一方、各地銀に規模が小さくとも潜在的な顧客ニーズを掘り起こして高い収益力を維持するような業態変換を求めた。
 その森氏の“お眼鏡”に適ったのがスルガ銀行だった。事業規模では地銀中上位に位置する程度だが、個人向け貸し付けを軸に収益力は抜群。貸出金利回りは他行の3倍近い3.6%で、昨期まで6期連続の増収増益を続け、森氏は、「個性的なビジネスモデルは評価に値する」と、絶賛していた。
 かつての金融処分庁から金融育成庁に舵を切ったわけだが、仮想通貨に対しても「育成」の観点を優先。金融庁は、世界に先駆けて改正資金決済法で仮想通貨交換業者を登録制にした。これにより市場参入者が増え、日本は仮想通貨大国となった。
 ただ業態を変えれば副作用もある。
 スルガ銀行の高収益は、「かぼちゃの馬車」などシェアハウス業者の審査書類改ざんに代表される詐欺紛い商法によって成り立っていた。
 また、仮想通貨交換業に「みなし登録業者」も認めたことで、まともに鍵をかけずに管理していた大甘なみなし登録業者のコインチェックから580億円分が盗み取られ、仮想通貨バブルは弾けた。
 森金融庁は、スルガ銀行に金融検査を入れ、「みなし」を含めた登録業者を全てチェックするなど厳しく対応して事態の収拾を図っているが、「育成」から「処分」へと先祖返りすればいいという単純な話ではない。育成しつつどう管理するか──。後任の遠藤新長官は、厳しい課題を突きつけられたようだ。


 ネットフリックス旋風で国内メディアも再編か

 動画配信サービスのネットフリックス──。先に時価総額がウォルト・ディズニーを上回り、瞬間風速だが、世界最大の企業価値を持つメディア企業になるまで急成長している。同社は従来のテレビや映画産業から客を奪い、国境や業種を越えたメディア大再編を巻き起こしつつある。そのメディア界の「台風の目」が日本市場の本格開拓に乗り出し始めた。
 ネットフリックスの3月末の世界の利用者数は1億2500万人。うち、ほぼ半数を抱える米国では圧倒的なシェアを持つが、2015年に進出した日本では苦戦が続く。大手調査会社によると、ネットフリックスの動画配信市場における17年のシェアは約7%。NTTドコモの動画配信サービスなど、スマートフォンやネット販売で顧客基盤を持つ競合に差をつけられている。
 ただ、ここにきてケーブルテレビ最大手のジュピターテレコム(J:COM)やKDDIと提携するなどしたことから、動画配信ビジネスは急拡大するようになった。
 デジタルコンテンツ協会の調べによると、国内の17年の動画配信市場は1815億円。5年で2倍近くに増えた。若い世代を中心にスマホで動画を見る習慣が浸透し、「テレビ離れ」が加速しているのだ。
 通信サービスを巡っては、速度が現行の百倍になる次世代通信規格「5G」が、早ければ19年にも商用化される。CATVなどの回線がなくても高精細な映像を視聴できるようになり、通信と放送など業界の垣根を崩すとされる。競争の主軸はインフラ設備ではなく、「コンテンツの魅力」にシフトする。
 すでにネットフリックスなど動画配信サービスの登場で、人々はテレビやパソコンだけでなく、スマートフォンなど携帯端末でも映画やドラマを楽しめるようになった。
 ネットフリックスは分厚い会員数をテコに独自のコンテンツ作りにも力を入れている。ネットフリックスに代表されるネット動画配信の普及・拡大は、映画やテレビ離れはテレビ局、さらにはTSUTAYAなどレンタルショップの経営を直撃する。すでにTSUTAYAの店舗は閉鎖や規模縮小を迫られている。
 米国では通信大手のAT&Tがタイムワーナーを10兆円で買収、CATV大手のコムキャストが21世紀フォックスのコンテンツ部門の買収を米ウォルト・ディズニーと争うなど、通信・放送・映画・TVというメディアの垣根を越えた再編が相次いでいる。ネットフリックス旋風が日本で巻き起これば、日本のメディア業界も再編を迫られるのは間違いない。


 上場で話題のメルカリに立ちはだかる2つの課題

 日本最大のユニコーン企業「メルカリ」(山田進太郎会長兼CEO)が6月19日、満を持して東証マザーズ市場に上場。初値は5000円だった。「いきなりミクシィを抜きマザーズトップ銘柄に躍り出た」(大手証券幹部)と、沸きたつ市場の期待とは裏腹に、「メルカリの将来には大きな課題が立ちはだかる」と金融関係者は指摘する。それは同社の成長に欠かせない米国市場での苦戦と、コンプライアンス(法令順守)への対応に伴うコストアップである。
 メルカリは上場で630億円もの資金を調達。その使途について山田CEOは、「まず海外事業への投資に振り向ける」とする。狙いは、「日本の10倍と言われる米国フリマ市場で、イーベイに挑戦すること」(ITアナリスト)。しかし、米国市場で新参者のメルカリが存在感を高めることは容易ではない。
 同社は2016年から米国市場で手数料の徴収を開始しているが赤字で、収益の足を引っ張っている。「日本国内ではアプリをダウンロードしたうちの1割程度が実稼働しているが、米国は数%に留まる」(同)とされる。1年前にフェイスブック元副社長のジョン・ラーゲリン氏を招いてテコ入れの戦略を練っているが、成果はこれからだ。
 課題はまだある。メルカリのビジネスモデルは消費者と消費者をダイレクトに結ぶ「C2C」で、プラットフォーマーとして出品者の売上高の1割を販売手数料として徴収する。だが、当初は出品者の身分証明が不要だったことから盗品の出品も少なくなく、逮捕者も出た。また、闇金融まがいの出品も相次いだ。このため本人確認を厳格化したが、「プラットフォーマーに対する監視は世界的に厳しくなっている。EUの一般データ保護規則もあり、法令順守に伴うコストアップは不可避だ」(同)。また、金融事業としてスマホ決済「メルペイ」の強化を打ち出しているが、マネーロンダリング対策に神経を尖らせる金融庁の目は厳しい。
 上場日の日刊紙朝刊に全面見開きで野茂英雄投手を絵柄にした山田CEOの意見広告が躍った。日本人初の本格的大リーガーとなった野茂英雄投手になぞらえ、「メルカリは世界挑戦を続ける」と語る山田氏。果たして米国でもスター企業になれるか……。


 メガバンクと地銀が新しい段階の連携へ

 日銀のマイナス金利政策が思わぬ副産物を生んでいる。メガバンクが地銀との新たなクループ形成に動いているのだ。「ウィン・ウィンの関係ができるのであれば、従来の系列にとらわれずに相手を選ぶ」と地銀幹部は語る。相互補完できるなら、過去の歴史やしがらみを超えて手を結ぶというのである。
 かつて両者の関係は、株式の持ち合いに始まり、人材の交流や資金の融通、共通のシステムの採用など多岐にわたった。「まず投資余力がある都銀がIBMや富士通、日立製作所などの有力企業と試験的にシステムを開発し、それを系列の地銀がカスタマイズして使用するケースが多かった」(都銀の元役員)というほどだ。
 しかし、その関係が一変しようとしている。
 口火を切ったのはみずほと静岡銀行だ。両行はリテール業務で提携し、信託業務や住宅ローン、フィンテックなどの分野で連携することで合意した。これに神経を尖らせたのは三菱UFJだ。静岡銀行は、三菱UFJの「火曜会」の主要メンバーで、三菱UFJは静岡銀行の大株主でもある。「みずほが三菱UFJの地盤に手を突っ込んだことに不快感を募らせている」(関係者)という。
 また、みずほはマイナス金利の圧力から、東北地方など低採算の地方のリテール業務から撤退し、その業務を地元地銀に委託する動きも見せている。人口が減少し、マイナス金利が継続する中、「系列にとらわれていたのでは生き残れない」という地銀の危機と、多様な機能・人材は持つものの、効率を追求しなければ競争力を維持できないメガバンクの思惑が一致した組み合わせだ。


 業務改善命令を連発、金融庁の真の狙いは

 金融庁は6月2日、2018年3月期決算で七年ぶりに純利益が赤字に転落した福島銀行に業務改善命令を出し、「コア業務純益」が2年連続で赤字となった島根銀行に対しても業務改善命令発出を検討している。
 福島銀行の赤字転落は、マイナス金利政策に起因する資金利鞘の縮小に加え、含み損を抱えた投資信託の解約・売却に伴う損失処理(19億円)が大きかった。
 この投資信託の含み損の早期解消は、金融庁の指導によるもの。赤字の責任をとって、森川英治社長や幹部が辞任した。
 その後任社長には、地元のライバルである東邦銀行の元専務で、「とうほう証券」社長であった加藤容啓氏が就く。関東の大手地銀幹部は、「福島銀行を東邦銀行に救済合併させようという金融庁の意図を感じる」と語る。業務改善命令は、その布石として、福島銀行の人件費等の経費削減のテコになり得るというわけだ。
 一方、島根銀行について業務改善命令が検討されているのは、03年から11年間トップを務め、会長から相談役に就いてもなお、取締役として院政を敷いていた元頭取に対する事実上の解任命令である。島根県は人口減少が最も進む地域で、同行の収益基盤は脆弱化しつつある。にもかかわらず元頭取は強引に新本店の建設を推し進めるなど、ガバナンスに問題があった。
 本業の預貸で収益が望めない中、大半の地域銀行は海外の有価証券投資に乗り出したが、世界的な金利上昇局面で損失を被ったところが少なくない。「今期のコア業務純益予想を上回る評価損を抱えている地域銀行もある」と金融関係者は指摘する。


 「日本製鉄」復活も“内弁慶”脱皮が課題

 来年4月、「日本製鉄(にっぽんせいてつ)」が69年ぶりに復活する。旧新日本製鉄と旧住友金属工業が統合し新日鉄住金が発足して5年半が経過、当時は「強者連合」といわれたが、中国勢の台頭で世界での存在感は薄れている。
 日本の鉄鋼業は防戦続きだ。2000年代初頭にインド出身のラクシュミ・ミタル氏が世界の鉄鋼会社を次々と買収。06年には欧州の名門のアルセロールを手に入れ旧新日鉄を抜き、業界首位アルセロール・ミタルが生まれた。一方、中国は政府主導で大規模な再編に着手、あっという間にミタルに迫る規模に巨大化した。旧新日鉄の三村明夫社長時代にはミタルからの買収の危機にもさらされ、防衛策として旧住金や神戸製鋼所と株の持ち合いを強化し対抗した。あれよあれよという間に新日鉄住金は気がつけば中国勢にも抜かれ、1990年代には世界トップだったが、現在は4位にまで転落した。
 その後も、中国の過剰生産による安値輸出で市況が悪化。新日鉄住金の利益は統合前の合計の利益にも届かないどころか、2年前には赤字に転落して大幅減益となった。
 この時期に社名変更に踏み切った背景について新日鉄住金の幹部は、「市況も安定し、ミタルや中国勢も息を吹き返してきた」と言う。新日鉄住金は国内4位の日新製鋼を完全子会社化したが、日新製鋼程度のメーカーを取り込んでも規模では到底太刀打ちできない。そこで、プレーヤーが少なく安定して利益を上げられる日欧の特殊鋼メーカーを同時に買収して取り込んだ。さらに日新製鋼とはステンレス事業も統合した。
 しかし、まだ懸案は残る。社内に根強く残る“内弁慶”体質だ。国内ではシェアで50%近くを占める新日鉄住金だが、国内市場は先細りが必至。成長のためには当然、海外展開が不可欠だ。しかし現在、入札に参加しているインドの鉄鋼会社買収案件でも、意欲を燃やすのはミタルだ。新日鉄はミタルとはライバル関係にあるが、米国では合弁会社を設立、共同運営していることからインドでもミタルと組んだわけだが、「ミタルから申し出があったから参加した」(新日鉄住金幹部)という消極的な対応だ。
 インドは自動車市場が急成長、近く日本を抜く見通しだ。モータリゼーションの進展で車用鋼板の需要も増える。スズキと組んでトヨタ自動車も現地での展開を急ぐが、肝心の新日鉄住金の動きは鈍い。「鉄は国家なり」との強烈な自負を持って財界にも多くの人材を輩出してきた同社だが、産業構造の高度化で今やオールド・インダストリーとなった“内弁慶”体質から脱皮して、新たな風を吹き込めるかが問われている。


 三菱マテ品質不正問題に「グループの恥」の声も

 このほど、品質不正問題で竹内章社長が退任した三菱マテリアル。しかし会見は開かれず、竹内氏は「一連の品質問題の責任を明らかにする」とコメントを出しただけだった。「竹内氏はまだ会長にとどまるのか」「三菱グループの恥だ」。同じ三菱グループの幹部は一連の対応にこう憤る。
 三菱マテは2017年11月以降に子会社の不正が発覚。不正製品の出荷先は延べ800社を超えた。神戸製鋼所は一連の不正を受けて「ワンマン」で知られた川崎博也会長兼社長が辞任した。三菱マテは神鋼より不正件数が多いのにもかかわらず会長が居座ることに批判が絶えない。
 社内からも竹内氏の一連の対応に不満がくすぶっている。不正が発覚した子会社のトップはいずれも竹内氏によって解任されている。3月に第三者委員会の最終報告書を受けて会見に出た竹内氏は子会社のトップ更迭に比べ社長以下、三菱マテ本体の幹部の処分が甘いとの指摘に対し「本体は不正に一切関与していない」との理由をあげた。しかし、6月に発覚したのは、本体の直島製錬所(香川県直島町)だった。銅製錬の副産物であるコンクリート用の骨材で、日本工業規格(JIS)から外れた製品を規格内として試験成績書に記載。2回やるべき製品試験も1回しかやっていなかった。JIS取り消しの事業上の影響は軽微とみられるが、直島製錬所は年間20万トン以上の銅を生産する主力拠点。17年に創業100百周年を迎え、銅事業の源流でもある。「さすがに三菱グループで誰も竹内氏をかばう人物はいなくなった」(三菱グループ幹部)。
「代わりに社長に就く小野直樹副社長も責任の一端がある」と社内から不満が漏れる。直島での不正は、遅くとも竹内氏が続投を表明した3月時点で把握していながら発表を見送っている。この際に、コンプライアンス担当として竹内氏と事の解決にあたっていたのは他ならぬ小野氏だ。
 15年に社長に就いた竹内氏は人事や法務部門の経験が長く、統治強化を期待されていた。だが現場を知らないため求心力が低く不正は拡大した。今回は社外取締役を含め統治がほとんど機能していなかった。
 三菱マテは今では存在が薄くなったが、三菱グループの源流企業の1つだ。かつては同社のトップであった永野健氏が日経連の会長を務めたこともある。「これ以上、三菱の名を汚さないでほしい」(同)との三菱グループ各社の思いは通じるだろうか。


 口達者だが中身がない東芝・車谷会長の評判

 東芝の車谷暢昭会長の評判が良くない。ペラペラ口ばかりが達者で、中身がないというのだ。
 車谷氏は旧三井銀行に入行し、同行のエリートとして秘書、企画部門を歩んだ。住友と合併後は、“ラストバンカー”こと西川善文頭取から「日経や読売にリークしすぎだ」と不興を買い、王子支店に飛ばされたことがあったが、奥正之氏に取り入って副頭取まで上り詰めた。しかし、そうした経歴からうかがえるのは「彼は実力者にへつらうのは上手だが、何か仕事で実績を上げたことはない」(元同行役員)という点だ。
 経営再建中の東芝はかなりの事業売却をやったとはいえ、それでも事業領域はメガバンクなどよりずっと広い。技術や製造など専門知識も必要だ。不正会計以降の経営の迷走によってすさんだ社員の心のケアも大切な役割だ。だが、そうした泥臭いことは車谷氏は苦手なのだ。
 車谷氏は、東芝会長に就くことを「1つの天命」「まさに男子の本懐」と大げさに語り、日経は、東芝が過去に外部から迎え入れた石坂泰三、土光敏夫両氏(ともに経団連会長)と比較したが、とてもではないが「器」が違う。「軽い人という印象を受けました」(東芝の現役社員)。
 車谷氏に経営の方向性をうかがうと、「IoTやAIでラップアップする形でソリューションを提供することが必要ですし、ハードとソフトをインテグレイトし、そしてソリューションをプロバイドしていくビジネスモデルにしたい」などと、わけのわからぬことを言う。
 こんなビジネス書の受け売りのような知識をひけらかすトップで大丈夫か。広報部も困惑しているようだ。


 急膨張しても死屍累々のソーシャルレンディング

 インターネット経由で資金を集めるクラウドファンディングの1種のソーシャルレンディングが、急膨張している。企業に融資して利息を受け取る貸付型だが、各社、高利回りを約束、平均利回りが年7〜8%ということもあって、2017年の市場規模は前年比2.5倍の1300億円超となった。
 だが、不思議な話である。7〜8%の金利を一般投資家に支払って成り立つビジネスとは何か。高収益を確保できる企業なら、その半分以下の利率で喜んで貸すのではないか。
 そうした疑問に、悪い方向で応えたのが45億円を集めたみんなのクレジット(みんクレ)である。17年3月に業務停止命令を受け、18年2月に債権回収は困難であるとギブアップ。投資家は泣き寝入りするしかなかったが、貸付先の大半がみんクレの親会社であることに、投資家は怒りを募らせた。
 同じ不動産運用のラッキーバンクは、今年3月に業務改善命令を受けているが、ここも同社社長の親族が経営する不動産業者に貸し付けていた。要は、貸付先の開示義務がないのをいいことに、「好き勝手に使っている」(金融庁関係者)というのが、一部のソーシャルレンディングの実態である。
 不動産だけでなく、再生可能エネルギーに特化したグリーンインフラレンディングは、6月11日からバイオマス発電ファンドなどへの募集を停止した。海外などとタイアップした電力事業も多く、「これまで問題化した不動産運用とは違う」と目されていただけに、投資家の落胆は大きい。
 同社は19日、ホームページ上で「募集停止を継続、経過観測を続ける」と表明。投資家の落胆はさらに大きくなった。今後、問題はソーシャルレンディング全体に広がりそうだ。


 ホンダは車も製造する航空機メーカーになる?

 6月6日、普段は本決算の説明会にも姿を見せないホンダの八郷隆弘社長が、同社のビジネスジェット機を日本国内でも販売する発表会に、登壇した。
 多くの記者は「クルマで“ホンダらしさ”が色褪せていると指摘されて久しいが、先進的なイメージを回復させるために日本での販売を決めた」と思ったはずだ。
 ホンダといえば、1970年代には小型車の「シビック」、80年代はクーペの「プレリュード」、90年代は「オデッセイ」や「ステップワゴン」のミニバンとSUVの「CR-V」、2000年代に入ると大ヒットしたコンパクトカーの「フィット」と、時代を先駆けるクルマを世に送り出してきた。
 それが2010年代は、車種別販売ランクで首位を走る「N-BOX」があるものの、トヨタやルノー・日産連合(三菱自動車も含む)には規模で水をあけられ、さりとてマツダやSUBARUのように個性的なメーカーというわけでもない。
 そんな折に発表したのがビジネスジェット機である。
 とはいえ、日本は海外マーケットと違って、ビジネスジェット機の需要は極端に小さく、大手のオーナー経営者でさえ保有している人は数少ない。採算面を考えれば、明らかに企業イメージ向上を狙ったものである。
 ホンダは将来、クルマも製造している航空機メーカーになるのか。


 奈良県が先行するのか? 地域ごとに違う診療報酬

 奈良県が「地域別診療報酬」を検討することを発表して波紋が広がっている。国民健康保険は市町村単位だったが、今年度から都道府県単位とされた。それに合わせ、高齢化の進み具合が早い奈良県は、医療費抑制策として2018年度から始める「第3期医療費適正化計画」を策定した。23年度の医療費を16年度比で199億円増の4813億円に抑える目標を立て、病院機能を地域医療構想に基づく連携・協力体制に構築することや後発医薬品の使用割合を23年度には全国一にする、医薬品の多重多剤投与を改善する、などの具体策を設定した。目標が達成されない場合は、国が例外的に認める地域別診療報酬の導入を積極的に検討するという。
 医療機関での診察や検査、手術、薬局で受け取る調剤等の料金は全国一律に1点10円の点数で表示され、患者は3割を自己負担し、残りの7割は保険と税金で賄われている。地域別診療報酬はこの点数の料金を引き下げることができる特例制度で、奈良県は1点9円に引き下げることも検討するというのである。
 荒井正吾知事は「目標が達成されない場合は保険料値上げか、診療報酬引き下げかの2者択一に迫られる。あるいは、折衷案になるかもしれないが、保険料を値上げするという政策は抑制したい。診療報酬引き下げをする場合は整形外科だけとか糖尿病関連だけとか、個別の病気の診療報酬だけを引き下げることはできない。やるとすれば、診療報酬を一律で引き下げるしかない」と説明する。
 地域別診療報酬が実現すると、隣接する京都府民や大阪府民が「病院やクリニックに行くなら奈良県のほうが安い」「かかりつけ医は京都府内でも処方薬は奈良県で調剤してもらうと1割引きになる」などということが起こるかもしれない。
 それはともかく、県の方針に慌てたのが県医師会だ。臨時代議員会を開き、「医師が県外に流出してしまう」「医療機関の経営が悪化する」。さらにその結果、「県民が良質な医療を受けられなくなる」と全員一致で地域別診療報酬の導入に反対する声明を発表した。
 中央でも財務省の財政制度等審議会が社会保障改革案に全国一律の診療報酬を都道府県別に設定することを盛り込むべく検討中だった。厚生労働省は奈良県の取り組みを支援する一方、この動きに困惑している。
 もっとも、地域別診療報酬導入には中医協(中央社会医療協議会)で審議し、厚労省が決めることになっているため、実現のハードルはかなり高い。果たして政治力抜群の医師会の反対を押し切って蟻の一穴となるか。


 築地本願寺裏にある謎の地下トンネルの由来

 今春、晴海までの延伸(首都高晴海線、2.7キロメートル)が立案から半世紀を経てやっと実現した首都高湾岸線。建設費300億円を投じた不採算路線だが、これはせめて2020年の東京五輪選手村の予定地・晴海までは通すというメンツゆえだ。しかし、晴海から分岐して都心側へと延伸し、都心環状線と築地・新富町で結ばれる計画がすでにある。しかも、未開通ながら半世紀前に「着工」されていた事実を知る者は少ない。
 さらに、ほぼ知られていないが、新富町より築地本願寺裏手まで約600メートルの幻のトンネルが完成している。高速道となる幅8メートル級のコンクリート製のボックスカルバートの高速2車線分を築地や新富町の随所に埋め込んであるが、利用されていない。
 築地・新富町の未完の高速道路計画は新富町で分岐し、築地川の緑道の真下を抜けて築地本願寺の脇を通り、築地市場の脇から隅田川を渡って湾岸線へ至る。上り線は築地本願寺前で分岐し、晴海通りに沿って再び銀座付近で接続という計画だ。
 すでに着工した周辺で工事を再開すれば、晴海から都心方向に延伸可能で、都心環状線とも接続可能だ。しかし、驚くことに、すでに事実上できている区間がある一方で、築地場外市場部分だけは、用地買収に向けては何の手当てもされていない。土地や建物の権利関係は複雑で、延伸計画が動き出せば、店舗移転問題が騒動になることは避けられないからだ。このため、東京都や中央区、首都高速会社は、公式にも非公式にも再着工は、「未定」というばかり。この区間の路線はバブル崩壊後の1993年に都市計画決定した。この本来の計画はいつ実現するのか?
 中央区は、この区間について「実現の可能性が低い」として、都市計画の見直し(都市計画の決定の事実上の撤回)を求めているが、公共事業天国の日本では、1度都市計画として決定されれば、実現せずに何10年経っても道路計画が白紙撤回されることがない。そのため、着工分が取り壊されることもない。それゆえ、部分的に開通した“幻”の首都高が、五輪後に廃墟マニアにだけは注目されそうという皮肉だ。
 ちなみに高速と接続するはずの環状2号線の湾岸区域(新橋─有明間)も都市計画の決定から25年経つ。が、環2の本線開通は、小池百合子知事が「立ち止まって考える」として止めた市場移転の延期で、20年夏の五輪に間に合わなくなっている。


 ネットで携帯会社を変更、ウザい“残留工作”一掃

 携帯電話の電話番号を変えずに契約会社を乗り換えることができる「番号持ち運び制度(MNP)」の手続きが、すべてネットでできるようになりそうだ。通信会社にとって、店頭や電話での直接対話は解約を防ぐための最後の砦だけに、手痛い一撃となろう。
 総務省は、有識者会議「モバイル市場の公正競争促進に関する検討会」が4月末にまとめた「報告書」を受け、6月6日「携帯電話・PHSの番号ポータビリティの実施に関するガイドライン」の改正案を発表した。
 そこでは、MNPの移行手続きについて、契約している通信会社による過度な残留工作ができないようにするため、店頭や電話だけでなく、ネットでも完結できるようにする旨を追加した。
「ガイドライン」の改正は2004年の策定以来初めてで、パブリックコメントの募集を経て7月中にも改正し、通信会社には19年春までに対応するよう要請する段取りだ。
 現在、MNPを利用しようとすると、まず契約している通信会社に、新しい通信会社と契約を結ぶための「予約番号」を発行してもらわなければならない。このタイミングで、通信会社は、契約者の心変わりを期待して、あの手この手の引き留め工作を図っている。店頭の担当者の執拗なまでの引き留めトークにへきえきした利用者は少なくないだろう。
MNPは、16年度で約168万件、累計では約4270万件に達している。ネットによる移行手続きが導入されれば、利用者は対面手続きの引き留め工作から解放され、もっと手軽にMNPを利用するようになるとみられる。
 通信会社にしてみれば、「2年縛り」の契約形態の是正に加え、契約会社変更のハードルが下がり、契約者の囲い込みに黄信号が灯りかねない。もっとも、「大手3社で2兆3000億円強の利益を上げているのだから、少々の出血は痛くも痒くもないはず」という声も聞こえてくる…。


 長生きするか否かを決めるのは「握力」?

 握力が衰えると、心臓病や脳血管疾患、がんなどになりやすく、死亡率も高くなる──。こんな気になる調査が権威ある英国の医学雑誌BMJ「ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル」誌(2018年5月号)に掲載され、話題を呼んでいる。
 英国グラスゴー大学の研究報告で、40歳から69歳まで約50万人(男女比はほぼ半々)もの一般市民を対象とした調査で、同世代の人より握力の弱い人は、心臓病や循環器疾患、呼吸器疾患、がんの死亡率が高い結果が出た。特に大腸がんや肺がん、女性の乳がんで顕著だった。
 発症率も同様で、心血管疾患、呼吸器疾患がんとも握力が平均より5キログラム低下すると発症率も上昇する。男性の場合、前立腺がんの発症率も上がるとか。若いほど握力の低下の影響が大きくなる傾向も確認された。
 元来、筋肉はたんぱく質を貯蔵し、糖やエネルギーの代謝を担っているが、がんや呼吸器疾患、慢性腎臓病、感染症などに罹患すると、筋肉量が減少することが知られていた。
 この研究報告は筋肉量と寿命の関係がこれまで考えられていた以上に密接であることを示す結果となった。
 健康診断で血糖値や血圧、BMI値(肥満指数)などに加えて、握力を測定し、自分の筋肉量をチェックしてみたらどうだろう。


 米大統領の首を絞める3つのトラブル

 トランプ大統領の頭の中は11月の中間選挙をいかにして勝つかの1点だ。仮に敗北するとその時点で一挙にレームダックになり政権が成り立たなくなる可能性が高い。しかも、現状では国内外ともに彼への風当たりは強い。話していることの中身の7割がフェイクだとメディアから批判され、彼の首を絞めかねないこれまでの3つのトラブルで司法手続き協力が進行している。
 まず、ニューヨーク州司法長官によるトランプ財団への訴追だ。大統領と3人の子供たちが非課税のこの財団を選挙運動で違法に使ったという疑惑だ。2つ目はマナフォード元選挙対策本部長がロシア介入疑惑で再び勾留されたことだ。3つ目は最も重要で、大統領が辞任に追い込まれる可能性があるとされるコーヘン弁護士の捜査当局への協力だ。
 長年トランプ氏の裏取引を担ってきた彼が当局に真実を話せば、大きな打撃になる。トランプ陣営は罪を認めれば大統領の恩赦があることや、経済的支援での生活保証で司法取引に応じないよう説得している。だが、司法取引に応じて罪に問われなければ弁護士資格は維持される。そのためコーヘン氏の捜査協力はあり得るとの見方が出ている。
 さらに対外的にもトランプ大統領が進める貿易戦争が世界中で通商問題の混乱と経済への低迷を招く可能性が高くなってきた。白人労働者の仕事を確保するためと貿易赤字を減らす意図から、中間選挙用に打ち出した貿易問題だが、結局は関税の引き上げは増税分として跳ね返り、米国の消費者には利益をもたらさないことはわかっている。特に深刻なのは、500億ドルの対中国への関税を発表したが、これに中国も報復関税を決め、今後1000億ドル規模の貿易戦争になる可能性が高い。
 内政外交のすべてをニューヨークの不動産取引の感覚で処理するこのやり方がいつまで続けられるのか、不安視する声が強くなっている。


 6カ国首脳会議開催で中露が水面下で駆け引き

 朝鮮半島をめぐる外交で、日本と同様に乗り遅れたロシアのプーチン大統領が、9月初めに「6カ国首脳会議」の主催を目論んでおり、一気に主導権を握りたい構えだ。
 9月11〜13日に極東のウラジオストクで恒例の「東方経済フォーラム」を開催し、安倍晋三首相、文在寅韓国大統領、習近平中国国家主席のほか、北朝鮮の金正恩労働党委員長を招待している。このうち、安倍、文両首脳は出席を決めており、これに中朝首脳が参加すれば、5カ国首脳が一堂に会することになる。さらに、トランプ米大統領の飛び入り参加も水面下で働きかけているようで、実現すれば、歴史的な「6カ国首脳会議」の開催となる。
 しかし、トランプ大統領は中間選挙を控え、ロシア・ゲート疑惑の捜査もあり、その時期のロシア訪問は好ましくない。ただノーベル平和賞につながるとおだてられれば、参加する可能性も十分にありそうだ。
 問題は中国である。「習主席がいきなり行くとは思えない。中国はこれまで6カ国協議の議長役として苦労してきただけに、おいしいところをプーチン大統領に奪われるのは腹立たしいところです」(北京特派員)
 金委員長が出席すれば、安倍首相との初顔合わせとなるが、ロシアの突出を警戒する中国が参加しないよう働きかける可能性もある。水面下の駆け引きが続きそうだ。


 6カ国首脳会議開催で中露が水面下で駆け引き

 そのプーチン大統領は外交に懸ける。6月10日、中国山東省の青島で開催された上海協力機構に飛んで正式メンバー入りしたインド、イランを横目に習近平主席と固い握手、西側の制裁に対する強烈な演出を見せつけた。一度は親しかったメルケルが反ロシアを主張する事態の中、今やプーチン氏の強い味方は、トランプ米大統領だ。
 トランプ氏はカナダG7の席上「ロシアを正式メンバーに復帰させるべきだ」と発言し欧州諸国からは総スカンを食らった。
 メディアは表面的には貿易戦争で自由貿易に抵抗する狭窄な指導者像としてのトランプを印象づけた。だが、報復関税、保護主義的貿易政策をめぐって米国はG7で孤立した。
 その元凶と批判されたトランプの本当の狙いはロシアを復権させ、究極的中国封じ込め戦略にロシアを巻き込むという思惑がある。
 だが、圧倒的人気で3選を果たした直後からプーチン氏の旗色が悪い。
 第1に強面、傲岸な強硬イメージが薄くなり欧米への挑発的態度が希釈され、強さを求める国民に反する。
 第2にシリア支援、イラン支援があまりに露骨になって外交的孤立。
 第3は欧米の制裁の効き目だ。プーチンの親友ら大富豪の在米資産凍結がじわりと効いてきた。
 ところが皮肉なことに旧ソ連圏の東欧諸国でプーチン人気がにわかに上昇している。移民政策でEUを批判してやまないハンガリーのオルバン首相、チェコのゼマン大統領、この列にセルビアとブルガリアが加わる。国際政治は奇妙な現象を伴うものである。


 観光地タイが目指す医療ツーリズム立国

 タイの医療ツーリズムが好調だ。先進国並みの医療レベルと病院施設に加え、世界有数の観光立国である特徴を生かし、観光と結び付けた患者の誘致に成功している。政府はさらに医療環境を充実させ、医療ツーリズムによる外貨獲得につなげたい考えだ。
 有力シンクタンク、カシコン研究センターによると、タイの病院で今年、診察を受ける外国人は342万人と見込まれている。このうち、外国から訪れる患者は250万人、在留外国人が92万人。昨年はそれぞれ240万人、90万人の計330万人だった。
 伸びが期待されているのは中国人だ。2016年に医療目的で外国を訪れた中国人は前年比5倍増の50万人。今年は65万人に達すると予想されているが、このうちタイで治療を受けるとみられるのはわずか4万人。伸びしろは十分にある。
 現在、アジアの医療ツーリズムでは日本と韓国、マレーシアが先頭を走っており、タイは4番手。カシコン研究センターは病院に魅力を高める自助努力を促している。
 こうした声に応え、医療ツーリズムのブームを一気に加速させようと、バンコクのパヤタイ2国際病院は1億バーツ(約3億4000万円)以上を心臓病センターに投資。最先端機器を導入し、「アジアの心臓病治療のハブ」を目指している。24時間対応可能で、15カ国語の医療通訳を用意。ウェブサイトは英語のほか、日本語と中国語で施設を紹介している。中国やカンボジア、ミャンマー、ベトナムの富裕層を主要ターゲットに、外国人患者の割合を15%にまで増やす計画だ。


 主導権争いを繰り広げるポンペオ氏とボルトン氏

 中間選挙を前にして、共和党は民主党との論争もさりながら、むしろ党内で、トランプ組対反トランプ組の間に激しい候補者指名争いがある。
 州によっては茶会、ネオコンの影響力が強く、トランプ寄りの候補者が選ばれ、これに反撥する穏健保守組やウォールストリート派が反発、収拾がつかない州もある。
 こうした保守の主導権争いの嵐を横目に、ホワイトハウスでも外交の主導権争いが起こっている。それを象徴するのが、トランプ・金正恩会談の評価をめぐっての論争だ。
 保守論客としては古参組がジョン・ボルトン国家安全保障担当大統領補佐官(元国連大使)である。ボルトン氏は高校生のときからゴールドウォーター選挙を手伝った筋金入り。レーガンを右旋回させた上院議員ジェシー・ヘルムズの補佐官を経て国連大使に抜擢された。イェール大学首席卒業という輝かしい学績もある。
 他方、ワシントン政界では比較的新参者でありながら出世頭となったのがマイク・ポンペオ国務長官だ。2人は揃ってシンガポールの米朝首脳会談で並んだが、舞台裏ではどちらが大統領に近いかで主導権争いを演じた。
 特にトランプ当選以後、国務長官候補の最右翼だったボルトン氏が1年以上も冷や飯を食わされたのは、左翼リベラルからの攻撃ばかりか共和党保守派から非難されて立ち往生したためだった。ティラーソン国務長官が飛ばされてもその空席はボルトン氏に回らず、議会承認が不必要な補佐官に抜擢された。
 CIA長官から横滑りとなったポンペオ氏は、軍隊出身のたたき上げで茶会の推薦を受け飛ぶ鳥を落とす勢いだ。密使として北朝鮮を秘密訪問して首脳会談の道を開いたパフォーマンスは、かつてのキッシンジャー氏を彷彿させるものだった。
 宗教的にはボルトン氏はルーテル教会、ポンペオ氏はプロテスタント福音派だが、2人に共通するのは北朝鮮、イランに厳しくイスラエル贔屓であり、そのうえ日本の拉致問題に関心が高いことだ。
 結果、米朝首脳会談で妥協を急いだポンペオ氏主導の、具体策を欠落させた共同声明となった。ボルトン氏の憮然とした顔が印象的だった。


 人口減に悩む中国が「産児制限の廃止」へ

 いま中国国務院が進めているのが「産児制限の廃止」政策だ。遅くとも年内には「産児全面自由」の方針が実施されるという。
 これまで中国は「1人っ子」、「2人っ子」政策がとられてきたため、人口減少が顕著でその流れは止まらない。昨年は4000万人の人口減少となった。このままいけば、2050年には総人口が7億人を割ることが確実視されている。今の中国の人口が13億5000万人であることを見れば、いかに激しい人口減少かが想像できるだろう。
 産児制限の弊害は、極めて大きいものがある。15年に「2人っ子」政策が実施されたが、依然として労働人口の減少は続いている。国務院は「計画生育委員会」を廃止したが、何ら効果は出ておらず、将来深刻な問題になることがわかっている。
「2人っ子政策」の効果もそれが表れるのは数十年後となるため、今後の中国を見るには人口問題が大きな課題になっていることを忘れてはいけない。


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