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 財政再建策が議論されない自民総裁選に財務省の焦り

 この秋の自民党総裁選で、安倍晋三首相が掲げるアベノミクスに対抗して財政再建策が議論されるかどうか、財務省が気を揉んでいる。深刻さを増す財政赤字の解消策が先送りされかねないためだ。対抗馬と目される岸田文雄政調会長、石破茂元幹事長、野田聖子総務相は明確な対抗軸を示していない。このため、森友学園への国有地売却をめぐる疑惑で、同省が過去の国会答弁をひっくり返す資料や見解を次々に打ち出しているのは、業を煮やしての反乱との観測が霞が関で流れている。
 財政再建の指標となる「国と地方の基礎的財政収支」(プライマリーバランス)は、高い成長を見込んだ場合でも、2020年度の赤字幅が昨年七月の試算時より2兆6000億円も拡大して10兆8000億円になる。「中長期で名目3%以上」との高い成長率で税収を見込んでいる前提が崩壊。消費税による税収増のうち1兆7000億円を借金返済に回すことにしていたのに、安倍首相が昨年秋に衆院解散を表明した際に教育無償化などに回したことが響いている。
 岸田氏は「党財政再建特命委員会」の委員長に就任。「財政健全化の道筋を示すことは大事だ」と強調する。しかし、総裁選に自身が出馬するのか、肝心のところを明らかにしていない。特命委が削減策をどこまで具体化できるか心許ない限りだ。
 党内では歳出削減が不人気で、「経済を成長させ、財政の健全化を図る」とする安倍首相の主張の受けがいい。これが石破、野田両氏に財政再建策の打ち出しをためらわせている。両氏は財政再建の先送りを懸念する野田毅・党税調最高顧問や村上誠一郎・元行革相が立ち上げた勉強会のメンバーだが、もの言いは慎重だ。
 安倍首相はプライマリーバランスを20年度に黒字化するとの目標の断念を表明している。歳出の抑制策を打ち出さない限り、黒字になるのは従来の試算から2年遅れて27年度になる。
 総裁3選を果たしても、任期は21年まで。「財政再建の達成時期を任期後に先送りするのは無責任だと批判できるのに」。ベテラン議員は総裁候補たちの不甲斐なさを嘆いている。
 一方、焦りを募らせる財務省には、「反乱」説が流布されている。森友学園との交渉の記録について、佐川宣寿国税庁長官は理財局長時代に「すべて廃棄した」と国会で答弁していたが、同省は重要な記録を開示し始めた。しかし、佐川氏1人を悪者に仕立てるのでは、同省の責任に跳ね返る。答弁が安倍政権に強いられてのことだったと立証できるかに、成否がかかっている。


 自衛隊機墜落の原因解明は米側の「好意」次第?

 陸上自衛隊のAH64戦闘ヘリコプターが佐賀県神崎市に墜落した事故は、4枚のメインローターを束ねるメインローター・ヘッドが空中で分解したことによる異常事態だったことが明らかになった。故障したメインローター・ヘッドを米ボーイング社に送付して修理したもので、問題なく安全に使えるはずだった。
 機体の不具合を発見するや乗員自らの安全を第一に考える米軍と異なり、自衛隊は住民に対する被害を最少にすべく最後まで努力するのが当たり前だ。しかし、メインローターが空中でバラバラになれば飛行機の翼が吹き飛んだことと同じことになり、揚力が失われ、墜落する以外、何もできない状態だった。
 AH64のメインローター・ヘッドは1750時間ごとに交換することになっているが、事故機の同ヘッドは845時間使用したところで取り付け部が緩み、米国の製造元であるボーイング社に送り返し、修復されたばかりだった。
 問題はどこまで米ボーイング社の修復が正確に行われたかにある。米陸軍では2015年以降、AH64のメインローター・ヘッドが故障したことによる2件の墜落事故が起きており、構造的な問題である可能性は否定できない。
 いわば中古品を使った理由について陸上自衛隊は「交換までの飛行時間が残っており、修理して使うのは珍しくない」と話す。回収しフライト・データ・レコーダーも大破しており、こちらも米ボーイング社に送付し解析を求めることになった。
 事故原因の解明を米企業にゆだねることになるため、どこまで正確な分析が日本側に提供されるかは米側次第となる。これらは米国製の武器を買う際につきまとう共通した問題といえる。
 AH64の場合、富士重工業(現スバル)のライセンス生産とはいえ、日本側が手出しできないブラックボックス化された部品が数多く組み込まれ、安全対策を含めて米側に頼らざるをえないのが実情だ。
 防衛省幹部は「国産の武器なら国内の防衛産業と綿密なやり取りができる。しかし、外国製、特に秘密部品を数多く搭載した米国製の場合、米側の対応に一任せざるをえない」と話す。
 米国製武器は性能が高く、日本を含め世界中の国々が購入しているが、いずれの国々も肝心の安全対策や部品の供給を米側の「好意」に頼らざるをえず、世界の多くの武器は米国の「手のひら」に載せられている。


 再生エネ重視に舵切る東電「陰のトップ」の名

 今や経済産業省の電力政策の実験場と化している東京電力で、また新たに経産省肝いりの新機軸が始まった。それが今、電力業界で話題になり、業界関係者の間でベストセラーになっている『エネルギー産業の2050年 Utility3.0へのゲームチェンジ』(日本経済新聞出版社)という本に表れている。
 同書の目玉は、2050年の電力産業は、再生エネルギーのコストが飛躍的に下がって発電の主軸を形成するとともに、家庭に電力自動車が広まることで、電力自動車の蓄電池を利用して再エネで発電した電気を家庭でためることができるようになる、と予測している点である。すなわち遠隔地に大型の発電所を建設し、大消費地の都会まで長距離を送電するという従来の電力会社のビジネスモデルとまったく真逆の、環境に負荷が少ない分散型の地産地消のモデルを謳っているのである。
 中心執筆者は、東電が電力業界の新たな伝道者として育ててきた竹内純子・国際環境経済研究所理事。元東電社員だが、退職後は電力業界の主張に寄り添う論陣を張るオピニオンリーダーとなり、再エネにも否定的な評価を与えてきた。しかし、その彼女が「一転して宗旨替えしたのでびっくり」(資源エネルギー庁の元課長)。さらに東電内では、脱原発派からも評価が高い改革派の岡本浩・東電パワーグリッド副社長、経営中枢にいる戸田直樹・東電ホールディングス経営戦略調査室チーフエコノミストらが分担して執筆している。
「社内で長期的な構想を描こうと勉強会をしていくうち、西山さんが『どうせならきちんとした形にして世に問おう』と言い出した」。東電の部長級幹部はそう打ち明ける。西山氏とは経産省から14年に東電ホールディングスに送り込まれた同社取締役で、小早川智明社長を操る陰の東電トップのことである。
 西山氏は、先日亡くなった立教大の西山千明名誉教授の長男。千明氏はマルクス主義経済学が全盛の時代にミルトン・フリードマンら自由主義経済学を広めることに貢献した。息子の圭太氏も一九八五年入省後は同省内での自由化派の中心的な人物として知られてきた。
 日本政府はパリ協定締結後、2050年に温暖化ガスの80%削減を目標にしている。西山氏の古巣の経産省はこれを受け、再エネ重視に突如舵を切り始めた。そうした親元の路線転換の動きをいち早くキャッチし、業界内の体質改革に乗り出したのが今回の1件とみられている。


 永守氏後継決定で波紋? 難しいカリスマ世代交代

 日本電産は吉本浩之副社長が社長兼最高執行責任者(COO)に昇格すると発表した。永守重信会長兼社長は代表権のある会長兼最高経営責任者(CEO)に就く。吉本氏は双日(旧日商岩井)からカルソニックカンセイ、日産自動車を経て日本電産に入社してきた「スカウト」組だ。事業転換を進める同社にとってはまさにうってつけの人材だ。しかし、吉本氏以外にも外部から同社にスカウトされた幹部は多い。「永守氏の後継になれなかったことで、日本電産を去る幹部も出てくるのではないか」(日本電産幹部)との声もある。
 吉本氏は2012年に日産自動車に入社後、タイ日産自動車の社長を務めるなど、経営者としての実績を積んだ。日本電産では変速機を手掛ける日本電産トーソクの社長に起用された。トーソクはもともと日産系の部品メーカーだ。日本電産が力を入れる電気自動車(EV)の駆動用モーター開発の重要拠点で、そこでの手腕が買われた。
 ただ、日本電産に入り、わずか3年程度の吉本氏の「社長」昇格が社内で波紋を呼ぶ懸念がある。永守氏の人材の「一本釣り」は有名だ。同じ副社長にはシャープから呼んだシャープ元社長の片山幹雄氏や、大西徹夫氏、財務を担当する佐藤明氏が名を連ねる。「片山氏や佐藤氏らはシャープや日産での実績は吉本氏より格段に上」(同)との指摘もある。吉本氏が選ばれたのは「永守氏のあとについて反射的に盲従する、永守氏にとって使いやすい人物だから」(同)と言われる。
 日本電産でかつて永守氏の後継ナンバーワンといわれた日産出身の呉文精氏は最高執行責任者(COO)になったのもつかの間、永守氏と対立して日本電産を去った。今はかつて永守氏が買収を仕掛けた半導体大手のルネサスエレクトロニクスのトップに転じた。永守氏はかねてから世襲をしないことを公言している。「シャープの経営不振を招いたとして追われた片山氏は日本電産で一矢報いようとの野心を抱いている。自分より格下だと思われている吉本氏のトップ昇格は面白くないはずだ」との声が社内外から漏れる。今回の人事でトップになれなかった片山氏を筆頭に「いい転職先があれば狙っている幹部は多い」(同)とされる。
 カリスマの世代交代は難しい。ファーストリテイリングの柳井正氏も玉塚元一氏を後継に選んだが、成功しなかった。孫正義氏もニケシュ・アローラ氏には大枚を払いながら後を継げなかった。呉氏の後継失敗から何を永守氏は学んだか、改めて問われている。


 商工中金事件で露呈した政府系金融の民業圧迫

 「民業圧迫という点では不正事件を契機に検討が進んだ商工中金以外の政府系金融機関のあり方についても改善が必要であると考えている。この点も併せて引き続き検討いただきたい」
 新年の金融庁幹部との会合で、ある地銀首脳はこう改めて要望した。政府系金融機関・商工中央金庫による不正事件は、政府系金融機関全般についてのあり方に疑問を投げかける契機となっている。
 全銀協などが加盟銀行を対象に行ったアンケート結果から浮かび上がった民業圧迫事例830件では、日本政策金融公庫が502件で最も多く、次いで商工中金238件、日本政策投資銀行32件、その他58件となっている。最も多かった日本政策金融公庫では、(1)金利について口外しないよう指示した上で、0.05%程度の超低利で融資を獲得した。(2)地銀が資金繰りを支えてきた業績不振企業に対し、業績が回復した途端に低利融資を提案して獲得した。(3)地銀が日本政策金融公庫に協調融資を打診したところ謝絶した上で、当該農林業者に対し実質ゼロ金利で融資を獲得した──などの事例が列挙されている。
 会計検査院も政府系金融機関による民業圧迫の実態調査に乗り出している。全銀協の平野信行会長は1月18日の記者会見で政府系金融機関のあり方について、「政府金融全体で見ると、平時の制度融資で民が対応できる領域や危機時の対象事象の整理などについて、私ども民間金融機関の意見も反映させながら、あり方の見直しの検討が必要ではないかと考えている」と述べている。
「民の補完」であるべき政府系金融機関のあり方が改めて問われている。


 東芝トップ交代の背後に経産省の意向

 東芝は2月14日、元三井住友銀行副頭取の車谷暢昭氏(現・CVCキャピタル・パートナーズ日本法人会長)を4月1日付で、会長兼 CEO(最高経営責任者)として迎えると発表した。「事実上のトップ交代」(関係者)で、現社長の綱川智氏は社長兼 COO(最高執行責任者)に就く。
 この人事について、車谷氏の出身母体である三井住友銀行は直接には関与していない。「事前に車谷氏や東芝から連絡はなかった」(三井住友銀行関係者)という。東芝と車谷氏の相対で決まった人事で、東芝の指名委員会が決め、1月に打診した。だが、その背後には経産省の意向も働いている。
 世耕弘成経産大臣と車谷氏は、世耕氏がNTTの広報マン時代からの知り合いで、現経産の嶋田隆事務次官と車谷氏は昵懇の間柄だ。「車谷氏は東日本大震災による福島第1原発事故を受け、経営危機に瀕した東電に対し、3メガバンクなど2兆円の緊急融資をまとめあげた功労者。経産省にはその貸しがある」(経産省関係者)という。
 東電、東芝はともに旧三井銀行がメインバンクで、車谷氏は旧三井のエースとして取引の中心にいた。特に東芝が昨年秋に行った増資後に大株主となった外資系ファンド等との交渉、原発事業が鍵を握る東芝の先行きに、車谷氏の手腕はうってつけという見方もある。
 車谷氏は就任会見で、「東芝は多くの世界初の技術を開発し、大きな事業として展開してきたというすばらしいDNAがある。そのDNAを、その企業魂を蘇らせ、早期に復活させる」と強調した。三井住友銀行を離れて1年弱、旧三井銀行のエースが再び日本経済の最前線に復帰する。


 依然として権力争い続く「善光寺騒動」の行方

 長野県の名刹「善光寺」で、1年半にわたり小松玄澄貫主が本堂に上る「昇堂」を自粛していた問題は、時期を見て小松貫主が引退することを条件に1月末から再開され、2月3日の「節分会」も小松貫主が取り仕切った。しかし、権力争いは続いており、「3月末の今年度をもって貫主を引退させようという動きが、善光寺内にもそれを支える外部の総代会にもある」(善光寺関係者)という。
 善光寺は傘下25寺院でつくる「天台宗一山」で運営されているが、小松派と反小松派に分かれた争いが続いており、小松派が劣勢。その中でパワハラ、セクハラ、差別発言といった反小松情報が流れたのだという。
「もう10年以上も、小松貫主の悪材料が流され、それが怪文書になったり週刊誌などで報じられたりして、善光寺のイメージも悪くなってしまった。事態を重く見た総代会などの勧告もあり、貫主は活動を自粛していた。反小松派が再開を認めたのは『引退の花道』のつもり。本人も84歳になるし、地位に恋々とするつもりはないが、せめて名誉回復はして辞めたいと思っている」(前出の関係者)
 小松貫主は、最近のインタビュー記事などで、引退は否定しないものの「名誉回復が先決」と明言している。バッシング情報が、誰のどんな意図のもとに流されたかを明らかにしたいようだが、最終的に「言った、言わない」の話になると、小松貫主の居座りは続き、「小松下ろし」が始まって、また混乱するかもしれない。


 NHKに業界から批判、平昌五輪のネット同時配信

 平昌冬季五輪で日本人選手の活躍をもっとも歓迎したのが、ほかならぬNHK。「実験」と称して本格的に実施した放送の「ネット常時同時配信」に注目が集まったからだ。
 NHKの番組配信サイト「NHKオンライン」の「ピョンチャン2018」特集を開くと、視界に飛び込んでくるのが「放送同時・実験」と銘打った大画面。ワンクリックすると、テレビと同様の鮮明な動画が動き出す。通信サービスにありがちなストレスはほとんどない。テレビを見なくなった若年層も含めて、多くの視聴者がパソコンやスマートフォンで目にしたに違いない。
 NHKが直前に発表した「2018-2020年度経営計画」では、ネットにも全面展開する「『公共メディア』への進化」を最大の重点目標に掲げ、20年の東京五輪で「最高水準の放送・サービスを提供」とうたい、「ネット常時同時配信」の「本番」をもくろんでいる。
 だが、開会式当日の2月9日、NHKの意気込みに冷や水を浴びせるかのように、日本新聞協会は「抜本的に業務範囲の見直しと受信料水準を見直す視点が欠けている。『公共メディア』の具体像が見えないまま、肥大化の懸念だけが強まる内容となった」と経営計画を厳しく批判する見解を表明した。民放各局も一様に反発、民放連の井上弘会長は「圧倒的な受信料財源を背景としてインターネット業務を無制限に拡大することは、公正な競争の観点などから避けていただきたい」と苦言を呈した。
 お目付け役の総務省も抑制的な運用を求めているだけに、NHKがはしゃぎすぎると、「ネット常時同時配信」実現の大前提となる放送法改正がすんなりとはいかず、「本番」を迎えられない事態にもなりかねない。


 商社広報マンが2度驚嘆、元三菱商事広報マンの転身

 1月19日、大手商社の広報部内はどこもどよめいた。三菱商事の役員人事を巡ってである。話題の人物は常務で関西支社長を務めていた廣田康人氏が辞任したのだ。
 廣田氏は、若くして三菱商事の広報部長を務め、明るく闊達でスピード感のある仕事捌きは社内外から一目置かれた。その後、役員になってからも広報、総務、法務や人事を担当してきたとはいえ、現役の商社の広報マンたちが「あの廣田さんが今日付で突然辞任とは、いったい何があったのか」と一様に驚いたものだ。
 そして2度目の驚きは、突然の辞任劇から一転、廣田氏自身がアシックス社長(3月末就任予定)に転じるという仰天人事だった。
 同氏は出張先にもウエアやシューズを持っていくほどのランニング好きと言われ、そういう意味ではアシックスには親近感はあったかもしれない。だが、アシックスと三菱商事には資本関係がないのはもちろん、商社との取引では三菱商事よりも丸紅のほうが厚いと言われていた。
 関西支社長となった廣田氏のキャリアを鑑み“一本釣り”したのが、アシックス社長の尾山基氏らしい。業界関係者には、「商社首位の三菱商事で代表取締役常務執行役員だった人が就くポストとしては、売り上げが4000億円ぐらいのアシックスでは物足りない印象」と語る向きもある。だが、61歳という社長適齢期の廣田氏には、最後の仕事人生は、もう上の命令を聞かなくてよい、社長というポストで持てる経験を最大限花咲かすのが似合いそうだ。


 選考過程どこまで開示? みずほFGトップ交代劇

 みずほフィナンシャルグループ(FG)は1月15日に、次期社長にみずほ証券社長の坂井辰史氏(58)が就く人事を発表した。坂井氏の起用について佐藤康博FG社長は、「証券と銀行の関係というのはものすごく重要になってくると我々は思っていて、証券会社の社長がトップになるということは非常に大きな意味を見出している」と語った。佐藤、坂井の両氏は旧みずほコーポレート銀行時代を通じて10年以上も一緒に仕事をしており、「2年前に坂井氏がみずほ証券社長に就いたのも佐藤氏の抜擢人事だった」(みずほ関係者)と言われる。
 一方、新社長となる坂井氏は、1月9日に佐藤社長から指名委員会の意向を聞いた。「まったく想定外」だったが、佐藤氏から「天命と思って引き受けるべし」と強く言われたと明かした。
 佐藤、坂井の両氏はともに東大時代には文学に傾倒した間柄で、「佐藤氏はショートショートに近い文章を書いて身を立てようと考え、坂井氏は駒場文学という同人誌に参画していた」(関係者)という。2人とも村上春樹氏の大ファンだ。
 みずほFGのトップ人事は、すべて社外取締役で構成される指名委員会(委員長・川村隆東電ホールディングス会長)で決められた。現社長の佐藤氏といえどもその意思決定には係われない。「人選は人物本位で、基本的に年次も関係ない。独立性の高い人事コンサルタントの評価も入れ、人となりを知るために本人には分からないように指名委メンバーとの飲み会もセットされる」(みずほ関係者)。坂井氏登用はこの指名委員会の全会一致で決まった。
 メガバンクで最も早く委員会設置会社に移行したみずほは、いわばガバナンスのフロントランナー。今回のトップの人選は透明性の高い「サクセション・プラン」(後継者計画)に基づき決定された。「指名委員会の議論は公開する」(佐藤社長)という。開示は「要旨」に留まるとの見方もあるが、
「指名委員会の中身を、大筋としてどのような意思決定がなされたのかについて公開して、株主の付託に応えていくつもりだ。特にみずほにとっては、3行の雑音が入ったようなトップの選び方ではないということを、内外にも示していくことは非常に重要な意味がある」(同)
 かつて3トップの弊害を身に染みて痛感している佐藤氏の言葉は重い。


 トランプ流セールスで干上がる日本の防衛産業

 北朝鮮への対応から、政府は2018年度予算案で過去最高の防衛費を盛り込んだ。本来なら、三菱重工業や川崎重工業、IHIなど国内の防衛関連メーカーにも恩恵があるはずだが「トランプ大統領の就任で、このままでは干上がってしまう」(三菱重工幹部)との声が漏れる。「アメリカ・ファースト」を掲げるトランプ大統領が「北朝鮮との有事に備え、米国製の高額な防衛装備品の購入を矢継ぎ早に迫っているほか、FMSと呼ばれる武器の取引条件の変更で日本の防衛費を米国にむしり取られている」(同)ためだ。
 FMS(対外軍事有償支援制度)とは、重要な機密を含む装備品を扱う場合、米政府が窓口となって契約を進める政府間取引。米国外への技術流出への懸念や自国の防衛産業の保護から米政府はFMS契約を積極的に採用。11年度に431億円だったFMSの調達額は16年度には4858億円と激増した。
 FMS契約は、価格は米国政府が決め、代金は日本政府が前払いする。装備品を提供する時期は決めず、契約内容が変わる場合もあるなど、米国側が取引の主導権を握る。ライセンス供与も原則認められない。これまでは米国製の防衛装備品を調達する場合、ライセンスを受けて生産することが多かった。日本企業はライセンス料を支払うものの組み立てなどを担えるほか、日本製部品の採用やコスト管理もしやすいため、国内防衛産業の生産・技術基盤の強化にも貢献する「互恵的」な取引だった。
 FMSの弊害は以前から指摘されている。会計検査院は17年9月、最新鋭のステルス戦闘機「F35」で採用予定だった日本製部品が搭載されていないと防衛装備庁に指摘した。IHIは元請けの米国企業から部品の供給が遅れて試作品の品質確認を受けられなかった。
 日本の防衛産業の市場規模は現在1.8兆円あるが、FMSによる米国からの装備品調達の増加で輸入の割合が高まる一方、国内防衛産業のシェアは縮小している。
 FMSは今後も増える公算が大きい。日本が19年度以降に2基導入する「イージス・アショア」は1基あたり約1000億円。高性能レーダーを搭載すればさらに金額が膨らむ。トランプ大統領が昨年11月の日米首脳会談で日本に米国製装備品の購入を増やすよう迫ったのも、FMSの増額につながりそうだ。
 朝鮮半島の緊張が高まるなか、米国の傘の下で守られている日本政府も「トランプ氏の要請にはある程度従わざるをえない」(防衛省幹部)と漏らす。北朝鮮有事にかこつけたトランプ流の「セールス」に、日本政府も今のところ打つ手はない。


 ツイッターに一斉に群がる「イナゴ投資家」にご用心

 かつての仕手筋が暗躍したバブル崩壊直後の市場を思わせる株価の暴騰、急落が市場の話題をさらっている。名付けて「イナゴ投資家」。大量発生したイナゴが穀物を食い尽くしては農地を移動する様に似ていることからこう名付けられた。イナゴ投資家が過ぎ去った市場にはぺんぺん草も生えないボロ株だけが残される。
 この「イナゴ投資家」を先導するのは、「カリスマ」トレーダーのツイッターだ。彼らの囁きに「イナゴ投資家」が一斉に群がり、取り上げられた銘柄は急騰する。そのチャートは「イナゴタワー」と称される。急騰直後に急落するため、チャートは絶壁のような山を形成する。
「イナゴタワー」が頻発するのは、わずかな売買でも値動きがしやすい小型株市場で、時価総額が百億円未満の銘柄に集中している。しかも赤字だったり利益額が小さい銘柄に多い。こうしたキワモノ銘柄に、「カリスマ」トレーダーが「○○が期待できる」「何株買い」といった手口をツイートとするだけで、多くのフォロワートレーダーが一斉に買いで追随するというパターンだ。
 SNS(交流サイト)時代を象徴するようなこうした動きについて、今、デイトレーダーの間で注目されているのは、正体不明の「岡三マン」(写真)のツイートだ。黄色い安全ヘルメットをかぶったプロフィール画像以外、正体は不明だが、「とにかく情報の発信が早い。スピードが勝負のデイトレードで最も重宝している情報源」(あるデイトレーダー)という。複数の人間がチームを組んで発信しているのではないかとの見方もあるが、名称を使われている大手証券の岡三証券は「当社とは一切関係ない」と関与を否定している。
 こうしたツイッターを駆使した新手の投資家扇動は、「株価操縦」と紙一重の危ない橋でもある。「カリスマ」トレーダーや正体不明の「岡三マン」が自身の持ち高調整のために、ツイッターで囁き、売り抜けているとしたら法に触れかねない。少なくとも一般の個人投資家が参戦するようなトレードではないことは確かだ。
 二月初旬の米国株急落を受けて、日本株も乱高下が止まらない。米国のヘッジファンドの中には、高い株価の変動率(ボラティリティ)をうまく利用して巨額な利益を上げているところも少なくない。日本の市場でも新手の「イナゴ投資家」が跋扈し始めたことは、株価の混乱に拍車をかけかねないと懸念される。


 銀行窓販による外貨建て、保険商品のトラブル続出

 銀行窓販による保険商品のトラブル、とりわけ(一時払い)外貨建て保険に関する「苦情」や「相談」が相変わらず多い。
 国民生活センターでは「昨年4月から11月に当方に寄せられた苦情や相談は前の年の同じ時期に比べ3割近く減ったが、それでも229件という高水準。相談者の八割近くを高齢者が占めている」とし、「保険契約していることへの消費者の認識が浅い」「消費者の希望に沿わない保険の勧誘や契約が行われている」「外貨建てはクーリング・オフしても損失が発生する可能性がある」などと持ち込まれる苦情の内容からその原因を分析している。
 外貨建て保険に関するトラブルはなぜ続出しているのか。外貨建て保険には「年金型」と「終身型」がある。国民生活センターの「相談者の8割が高齢者」から推察するに、契約者の「老後、子供たちに金銭的負担をかけたくない」という思いが浮かぶ。
 外貨建て保険は顧客から預かった資金を銀行が「米国債」「豪州債」といった利回りの高い商品で運用し、年金・保険金・解約返戻金は米・豪ドル(外貨)で支払われる。それを契約者は「円」に換える。ちょっと冷静になればリスクを取りにいく商品、つまり投資商品であることは明白。投資をした時期に対し、保険金等を受け取る際の為替相場が「円安」になっていれば換金資金はかさ上げされる。逆に「円高」なら目減りすることは容易に分かる。が「投資である以上は自己責任」で終わらせてしまえない現状があるのも事実。
 銀行の窓販現場や国民生活センターには親族が父母に同行し「窓販窓口は為替リスクについて説明したというが、70歳になろうという高齢の母がきちんと理解し契約・購入したとは思えない」と談判するケースがほとんどだという。親族者のクレームにも一理ある。
 金融商品の銀行窓販が全面解禁となって昨年12月で丸10年。事情通の言を借りれば「投資型商品のクレームが多くなったのは2013年以降。16年のゼロ金利政策導入を挟んで超の字がつく低金利時代が本格化してから」。事情通の言わんとすることは、こういうことであろう。
「銀行自体が経営苦に晒されている。T銀行のサラ金化Uと非難を浴びた銀行カードローンの残高膨張も、苦を補う手だて。(公表の義務はないが)割高とされる販売手数料が得られる外貨建て保険の巧妙な販売もその一環」
 金融庁も「窓販手数料の調査を始めている。外貨建て保険を投資商品と説明して販売していないなら問題だ」というコメントを発している。


 東大病院も敷地内に薬局、名ばかりの医薬分業

 東京大学医学部附属病院に予想される「敷地内薬局(門内薬局)」への出店をめぐり水面下で調剤薬局の争奪戦が始まっている。東大病院が南研究棟中庭に「病院利用者のためにアメニティ施設の整備・運営する事業」を公表しているからだ。
 周知のように、医薬分業でほとんどの病院、クリニックは院外処方になり、病院の前には“門前薬局”が軒を連ねている。が、国立大学は独立行政法人化され、“カネが欲しかったら自前で稼げ”ということになったため、「患者の利便性のために」という名目で敷地内に商業施設をつくり調剤薬局を公募、入居権利金と家賃収入を得る方法を考案。2013年に新潟大学医歯学総合病院が敷地内にアメニティモールをつくり調剤薬局2店を誘致したのを皮切りに、滋賀医科大学附属病院、千葉大学附属病院、島根大学病院、筑波大学附属病院…と続き、大学以外でも日赤医療センターなどに広がっている。薬剤師会は「医薬分業に反する」と反対しているが、鳥取赤十字病院が募集した敷地内薬局に県薬剤師会会長が経営する調剤薬局が出店。医薬分業は有名無実化している。
 そんな状況の中で今度は東大病院がアメニティ施設を計画。事業提案・運営事業者を公募する予定である。むろん、調剤薬局を誘致するかどうかは明らかにしていないが、調剤薬局関係者の間では「今まで大学病院がつくったアメニティ施設には必ず調剤薬局が出店している。病院利用者のためのアメニティ施設とは調剤薬局誘致の大義名分。東大病院も誘致するはず」と見ているのだ。
 なにしろ、東大という権威だけでなく、東大病院は病床数1000床もあり、発行する処方箋は年間35万枚にも上る。敷地内薬局になれば、その処方箋の大半が持ち込まれる、と皮算用を弾いているのである。加えて、全国の大学病院が東大に倣ってアメニティ施設をつくることになり、敷地内薬局に出店が見込めると見ているのだ。
 そんな思惑から東大の寄付講座に大手、中小の調剤薬局が競って寄付しているという。たとえば、医学系研究科の「地域医薬システム学講座」にはクオールやアイセイ薬局、薬樹、ファーマクラスターなどの調剤薬局チェーンが資金を寄付し、薬学研究科の「育薬学講座」にはアインファーマシーズ、阪神調剤、わかば、メディカル一光などが寄付している。昨秋、事業計画を公募するための予定地見学会が開かれた折には、デベロッパーや設計者に交じって調剤薬局関係者の姿が見られたともいう。水面下では敷地内薬局出店をめぐる運動が佳境に入っている。


 健康面の女男格差は男性の貧困化が原因

 日本人の死因の上位である「がん」「心疾患(心筋梗塞や狭心症)」「肺炎」は男性の方が患者数は多い。死にやすい病気にかかりにくいことが、女性の寿命が男性より長い一因といえる。女性と男性の「健康格差」は今後どうなっていくのか?
 世界経済フォーラムの17年版「ジェンダー・ギャップ指数」で、日本は健康(受けられるヘルスケア分野)では世界で1番、男女格差の少ない堂々の一位。日本は女性が健康でいられる国の代表だ。
 肥満度を測るBMIは(体重・キログラムを身長・メートルの2乗で割った数値)を見ると、男性では全年代で「肥満」が増え、「やせ」が減る一方、女性では全体的に「肥満」が減り、「やせ」が増えている。とくに中高年女性でそれが顕著だ。中年男性は若いころより飲酒は減っても肥満は増える傾向にある一方、中高年女性では飲酒は逆に増えているが、男性と比べるとはるかに量が少ないため、肥満の増加にはつながっていない。
 男性の肥満割合は、すべての年齢層(世代)で上昇し、40代以降の悪化が顕著だ。女性は40歳代以上で低下しており、50〜60歳代の低下が目立つ。中高年夫婦では、妻はスリムな美魔女で夫はデブという組み合わせになったが、こうした容姿と健康の男女格差も、女性の婚外恋愛(昼顔族)の要因のひとつではないだろうか。
 肥満が社会格差や貧困の象徴となった米国のトランプ型社会に日本も近づきつつあり、社会格差問題も新たな局面を迎えている。経済格差が健康格差にまで波及しているのだ。
 厚労省の国民健康・栄養調査によると、世帯の所得が低いと、喫煙や肥満の割合が高いことが分かった。さらに世帯の所得が低いほど、野菜の摂取量が少ないうえ、穀類の摂取量が多く、一日の歩数が少ない。その生活では肥満にもつながりやすく、低所得者ほど生活習慣リスクを抱える。それが続くと、低所得者ほど生活習慣病にかかる。「男性の貧困化」は寿命も縮めるというわけだ。
 スポーツなどの日常の運動や、新鮮な野菜の摂取など健康を考えた食生活を実践するには、お金や時間の余裕度も関係する。自身への先行投資という面がある一方、男性の雇用や収入が不安定な「男性不況」の中、将来のことまで考える気になれないだろう。すでに日本では健康面の「男性優位」はなくなっており、「女男格差」は今後、ますます広がる可能性が高くなっている。


 女性産婦人科医は医師の働き方改革のモデル

 安倍内閣の目玉「働き方改革」をめぐって医療界でも波紋が広がっている。ある私立大学病院の病院長はこう嘆く。
「厚生労働省から出された医師の働き方改革の指針は、現場の実情を無視している。これをやられたら、病院は成り立たない」
 個人営業である開業医は別として、病院勤務医は「労働者」でもあるため、厚労省は「医師の労働時間短縮に向けた緊急的な取り組み」を打ち出したが、医師は一般の会社員とは違う。自分の担当患者の容体が悪化しているのに「時間だから」と帰ることはできない。加えて、医師の偏在による病院の医師不足もあり、今の医療は医師の長時間労働を前提として成り立っているのだ。
 その一方で、医師の働き方を見直そうという動きも出始めている。日本産婦人科医会勤務医委員会では分娩を取り扱っている病院調査を行い、女性産婦人科勤務医の働き方が、医師の働き方改革のヒントになることを報告した。
 現在の周産期医療の現場は女性医師が増加しており、特に、妊娠・育児中の増加が目立っている。そのため、二十四時間体制の周産期医療機関でも、女性医師が働きやすい環境を整えており、妊娠・育児中でも現場で活躍している医師が多いことがわかった。具体的には、院内保育や病児保育の実施、勤務時間や当直などで柔軟に対応できる勤務体制などだ。そのおかげで女性医師が退職せず勤務を続けやすくなったという。報告した委員の1人は言う。
「妊娠・育児中の医師が現場の足を引っ張るという従来の常識は、環境整備や勤務体制の多様化で克服できることがわかった。この実績は男性医師も含めた働き方改革のヒントになるはずだ」


 全国チェーンも出現、定着するかジビエ料理

 「牛じゃなくて鹿」「豚じゃなくて猪」。こんな呼び込みフレーズが正面入り口のガラス戸に白い字で大書されている。東京、広島、福岡などに最近次々と開店しているジビエ専門居酒屋「焼ジビエ 罠」である。
 中に入ると壁にずらりとジビエの木札が掛かっている。鹿肉、猪肉、兎、樋熊、真鴨、ヒヨドリ…。そしてカウンター前のガラスケースには、モモ、ロース、バラ、ヒレ、ハツ、レバーの表示のついた部位が並べられ、客の注文を待っている。客席には20〜30代の若い男女が目立つ。
 害獣として駆除される鹿や猪などの肉が、ジビエとして有効利用されるようになったのは、農林水産省が2007年12月に「鳥獣被害の防止に関する法」を制定してから。同法により、ジビエの処理加工施設を設置する自治体に補助金が交付されるようになった。焼ジビエ 罠はこういった全国のハンターと契約を結び、適正衛生規準によって処理された安全ジビエを、必要な量だけ年間通じて入手できるルートを確立、今後も店舗を増やす方針だ。
 ジビエには独特の風味や硬さがあるが、それが魅力と評価する若い客が増えている。肉の新鮮さの保持、熟成技術、薬味による調理方法が確立されてきたからだ。これに低脂肪、高タンパク、高鉄分といったジビエ本来の特長もプラスとなり、固定ファンが形成されつつある。
 徐々に拡大している最近のジビエブームは、一過性ではなく日本の食文化として定着する気配がある。


 文政権の本質露呈と中東情勢の変化懸念

 朝鮮半島情勢は南北対話の一方の主役である韓国の文在寅大統領の極端な北朝鮮寄りの姿勢が確認されたことで、韓国は米国、日本、中国のそれぞれの首脳たちからは基本的な信頼感を失ってしまった。
 韓国外務省はソウル大卒で、アメリカンスクール出身者が主流派だが、今回、文大統領と青瓦台の側近たちが画策した対北重視と日米への冷淡な扱いは、省内でも今後の韓国外交に大きな汚点を残したのではないかとの深い懸念が広がっている。
 しかし、左翼政権の本質を露呈し始めた文政権は、延世大学出身で通訳上がりの康京和外交部長官を使い、省内の不満分子のリストを作成するなど、外務省の締め付けを強化している。
 現在、経済制裁の強化は実質的に北朝鮮を追い込んでおり、今年は、輸出高が九割減るとも予想され、圧力は確実に効いてきているのは確かだ。目下の北の狙いは、3月のパラリンピック終了後に再開される米韓合同軍事演習を再度延期させ、軍事パレードで見せた新型ICBMの実戦配備を行うための時間稼ぎだ。
 そのためには文大統領の訪朝など韓国を盾にとってあらゆる手立てをはかる予定だ。また核とミサイルで北朝鮮と水面下でつながっているイランはイスラエルと極端な緊張関係になりつつあり、戦火を交える状況が出てきた。そこではイスラエルを支援しなければならないアメリカも、空母をはじめ中東へも軍事力を割かねばならない。いよいよ複雑だ。


 海外投資家の懸念は日銀を批判できないマスコミ

 日米でマーケットは下降トレンドだ。その原因に米国10年債の長期金利の上昇を挙げる声が強いが、構造的な背景がある。
 昨年度の米国の最終GDP値が2.3%に修正されたが、オバマ政権の八年間の平均の2.6%より低い数値だ。当然トランプ政権では急ぎ分析を行った。その原因は双子の赤字、特に貿易赤字が経済成長を妨げているとの結論に達し、以下の二つの対応策を取ることにした。
 1つはTPPに入ること、2つ目は貿易黒字の国の中で中国と日本に対し通貨調整を要求することだ。その結果、日本は円高を強いられ、為替のレンジが10円切り下がり、輸出企業に大きな売りが出た。加えて財政赤字は減税とインフラ投資で中間選挙を乗り切ろうとするトランプ政権と共和党の狙いのため、金利上昇には政治サイドから歯止めがかからなくなると予想されている。
 日本のマーケット不安は、海外の投資家から見れば黒田東彦日銀総裁の再任が契機となっている。最初の5年間の公約だったインフレ率2%は達成できず、いまだゼロ金利に固執する人物が次の出口戦略を今後の5年間でどうやって転換していくのかという疑問があるからだ。
 ところが、そういう人物の金融政策をまともに分析、評価できないのが日本だ。日銀の記者クラブや日経新聞はじめ有力マスコミが次のあるべき金融政策を議論することなく政府や日銀の政策に迎合していく。この状況に期待が持てないとの疑問の声が対日投資の専門家たちの間で広がっているからだ。


 カンボジアで不敬罪導入、狙いは政権批判封じ込めか

 カンボジアのフン・セン政権が強権姿勢を強めている。最大野党を解党に追い込んだのに続き、不敬罪の導入を決定。政府批判を「合法的に」抑えて7月に予定される下院選挙を乗り切り、世界でも異例の長期政権を敷く構えだ。
 同じ王国である隣国のタイが王室批判を不敬罪で厳しく取り締まっているのに対し、カンボジアではこれまで、比較的自由に王室にもの申すことができた。方針転換は、表向きは王族批判を抑えて秩序を維持するのが目的。しかし、不敬罪を理由に政府批判を封じ込めるのが真の狙いとの見方が強い。
 不敬罪は時の政権の都合でいかようにも運用できる。政権の座に就いてから33年になるフン・セン首相が下院選での勝利を確実にするため、恣意的に利用する可能性も指摘される。カンボジア人権センターのチャク・ソピアップ代表は「不敬罪はあらゆる政府批判を禁じる効果をもたらし得る。カンボジア社会における自由で開かれた議論の最後の余地をなくす意図がある」と分析。「表現の自由に対する深刻な脅威だ」と懸念を示した。
 不敬罪の導入の法改正は下院で全会一致で可決された。といっても、与野党の総意ではない。2013年の前回下院選で議席を獲得したのは、フン・セン首相の与党・人民党と最大野党の救国党のみ。このうち救国党は昨年11月、政権転覆を図ったとして解党に追い込まれており、下院は親フン・セン派の御用議会。
 カンボジアでは昨年六月にプノンペンで救国党の政治集会を取材中、上空にドローンを飛ばしたオーストラリアの映画監督が「外国のために情報収集したスパイ容疑」で逮捕され、拘束が続く。国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチは「カンボジア政府の政治弾圧は民主主義体制を消滅させた」と非難している。


 中韓露が先行、日は出遅れ北極圏開発競争が花盛り

 毎年10月にアイスランドの首都レイキャビックで世界の政府首脳・閣僚や実業家、科学者、学生など2000人以上が参加する北極政策関連会議が開かれている。「いくら事務局が優秀でも毎年これだけの人数は集まるはずがない。人が集まるのは北極開発という人を惹きつける魅力的なテーマがあるからこそだ。今年の総会では河野太郎外相にぜひ基調講演を行ってもらいたい」と生みの親のNPO組織「北極サークル」のグリムソン議長(前アイスランド大統領)が来日し、外相を招請した。
 昨年開かれた第5回北極サークルには日本の井出敬二北極担当大使や北川靖彦駐アイスランド大使が参加。分科会やジャパン・ナイトを開催し、宣伝に努めているものの、韓国や中国に比べれば出遅れ感は否めない。
 韓国が2013年にまとめた「北極総合政策」を受け、韓国造船大手の大宇造船海洋が世界最高レベルの砕氷技術を備える砕氷液化天然ガス(LNG)運搬船三隻を受注(共同発注は商船三井)した。北極海に面するロシア・ヤマルLNGプロジェクト向けで、通年にわたり世界各地にLNG輸送に当たる。中国は今年1月、「北極政策白書」を発表し、北極海を渡る航路を「氷上のシルクロード」と呼び、広域経済圏構想「一帯一路」と結びつけた。資金難に陥ったヤマルプロジェクト(総投資額270億ドル)に中国が資金を提供し、17年12月にはLNGの出荷を開始した。同地は軍事的な要衝でもあり、中国の関心は強い。
 北極海はグリーンランドなど陸地を含めるとアフリカ大陸に相当する広さ。温暖化の影響で海の氷が溶け、クルーズ船などの利用も拡大している。またグリーンランドは鉱物資源やレアメタルなど地下資源も豊富で魅力的だ。ロシアはパイプラインによる欧州向け天然ガス輸出が大きな割合を占めており、LNG輸出でも世界一の座を狙っている。


 高齢化中国で老齢年金・社会保障が早くもパンク

 経済が右肩上りなら、各種の年金基金は黒字である。保険料収入はうなぎ上り、支出は微々たるものだから余裕が生まれ、投資に回せる。
 中国で民間の生命保険会社が認められたのは1990年代。死亡保険の受け取りは少なく、労働人口は膨張。ふんだんな余裕資金は、海外へ溢れ出した。典型は安邦保険だ。米ニューヨーク・ウォルドルフ・アストリア・ホテルを買収。不動産取得に際し北海道の土地を買い漁った。
 ところが、1人っ子政策の煽りで労働者人口が激減する一方、急速に高齢化を迎えた中国ではいきなり年金受給者が急増し、昨年ついに基金が赤字に転落した。昨年だけでも10兆円の赤字。今後ますます肥大化していくだろう。
 中国の年金、医療保険は国家が運営し、その基金の割り当ては省によって異なる。年金、医療、障害、失業、出産の五種類あり、赤字は国家財政が補填する仕組みとなっている。
 保険料支払いが不足すれば国が穴埋めするのだから財政負担はうなぎ上りになることは火を見るよりも明らか。すでに黒竜江省では積立金も取り崩して債務超過となっている。
 主因は出稼ぎ労働者や自営業者の保険料支払いが急増したため。もっとも赤字幅が大きかったのは「住民基本医療保険」だった。なぜなら収入の安定しない出稼ぎ労働者が多い上、老齢化が激しいためである。
 あまつさえ黒竜江省、吉林省など貧困地域では不動産開発ブームが去って建設現場も激減、失業者が町に溢れているからだ。
 財政穴埋めを続けない限り、老人たちが反乱を起こすかもしれない。


 朝鮮半島情勢の行方を占う緊急シンポ開催へ

 韓国の平昌冬季五輪に続いてパラリンピックが3月18日に終了するのを受け、延期されていた米韓軍事演習が再開され、反発する金正恩・北朝鮮政権がどう出るのかが焦眉の課題となっている。そうした朝鮮半島情勢の行方を占う緊急シンポ「緊迫する朝鮮半島情勢と習近平・中国の行方」(主催=中嶋嶺雄研究会、後援=アジア・ユーラシア総合研究所)が3月17日午後、都内渋谷区千駄ヶ谷の桜美林大学四谷キャンパスで開催される。伊豆見元・東京国際大学教授、小針進・静岡県立大学教授の2人が半島情勢に関して報告し、他のパネリストと討論する。
 後半は2017年秋の党大会で再選を決めた習近平総書記が3月上旬の全人代(国会)を経て国家・政府要人の人事を決めた習政権の将来を占う。井尻秀憲・東京外国語大学名誉教授と曽根康雄・日本大学教授が習近平体制の政治・外交、経済課題について報告し、他のパネリストと討論する。中国軍事問題が専門の小原凡司・笹川平和財団上席研究員も参加する。
 当面は金正恩委員長とトランプ米大統領の出方がカギだが、中国も重要なプレーヤーだ。朝鮮半島を巡る日・米・韓3カ国の足並みの違いと北朝鮮、中国の出方を参加者7人が熱く語る緊急シンポだ。参加費用は2000円。申し込みは下記のURLへ。
http://www.nakajimaworks.com/〈Works Nakajima Mineo 諸論説〉


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