巻頭言
枝廣淳子の


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枝廣淳子氏
(東京都市大学教授/
幸せ経済社会研究所所長)





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企業に問われる
分岐点とその先

 先日、主宰している異業種勉強会で、サステナビリティやCSRといった視点から、「2017年は日本の企業にとって分岐点となった年として歴史に残るだろう」と話しました。
「自ら選んで進み始めた企業」「立ちすくむ企業」「分岐点にあるという意識もない企業」の三グループに分かれてきたと見ています。
 分岐点の先には2つの道があります。
 ルート1は、「国内的な軋轢を乗り越え、グローバル経済を先導する動向についていく」道です。具体的には、再生可能エネルギー100%に向かっていくことを宣言したRE100に名乗りを上げる、温暖化対策を先導的に進める企業グループJapan-CLPに参加する、長期的で大胆なビジョン(例えば2050年にCO2ゼロを目指す)を打ち出す、などです。
 このようなグローバル経済の先進的な動向についていき、そこで戦っていくという意思表示をしている企業がいくつかあります。
 RE100やJapan-CLPに名乗りを上げるには、社内的にも社外的にもいろいろな軋轢や反対の声もあることでしょう。なぜならば、現在の日本の経済を牛耳っている主流派は、こういった動きを支援するより、妨げようとすることが多いからです。
 ルート2は、そういった足を引っ張る動きに負けてしまう、またはそれ以前に、「国内の主流派=デファクト」という旧態依然とした価値観から脱せず、経団連や経産省の言う通りにやっていればよい、と思考停止状態のまま、グローバル経済から取り残され、ゆるやかに沈んでいく道です。
 最近、この「分岐点」と「沈みゆく日本と日本企業」を痛感する二つの動向があります。
 1つは、資源循環に関する政策や企業の取り組みです。日本は昔から「循環型社会」を謳い、リサイクルの法律も技術も世界に先行するものが多くあります。それは素晴らしいことです。しかし、日本での資源循環はあくまでも「環境政策」です。つまり、最終処分場の延命が必達目標で、そのために最終処分地へ送る廃棄物を減らさなくてはならない、そのために3R(リデュース、リユース、リサイクル)が必要だ、という環境政策としての位置づけなのです。
 それに対して、「サーキュラー・エコノミー」の国家ビジョンやロードマップを次々発表している欧州諸国、中国などは、資源循環を「産業政策」として位置づけています。バージン原材料の価格が2000年を境に上昇基調を強めており、今後も枯渇性のバージン原材料に依存していては、企業の競争力を損なうことになります。だから、資源循環を進めることで、自国の企業が枯渇性資源の価格変動に左右されることなく安定的に安価な原材料を入手できるように、という取り組みです。
 日本には、「日本の産業界の今後の原材料をどう安定的・安価に入手できるようにしておくか」という大きな産業政策としての国家ビジョンはありません。
 もう1つは、「日本の常識は世界の非常識」になりつつある「カーボン・プライシング」に対するスタンスです。CO2に価格をつけて、排出量削減のインセンティブとする制度です。日本では、経産省も経団連も「カーボン・プライシングは日本企業にとってコストアップになり、経済成長や国際競争力を損なうため、反対」というスタンスです。
 それに対して、世界では多くの国や自治体でカーボン・プライシング制度を導入しています。導入後数年たって、「経済成長を阻むどころか、導入した州のほうが経済成長している」などの結果が出ています。
 先日のエネルギー情勢懇談会では化石燃料会社であるシェル社が、「自分たちは、数年前から政府に対してカーボン・プライシング導入を要請している。製品コストに炭素価格を含めることで、シェルも含めて、企業は合理的な経済判断ができるようになる」と発言。御社は分岐点のどちら側でしょうか?
(東京都市大学教授/幸せ経済社会研究所所長)


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