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元木昌彦(もとき まさひこ)
編集者。1945年生まれ。「週刊現代」や「フライデー」の編集長として権力批判の誌面づくりを貫いた。メディア規制の動きに反対の論陣を張る。2006年11月、講談社を退社。オーマイニュース元社長。上智大学、明治学院大学、大正大学などで講師。インターネット報道協会代表理事。


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佐渡島 庸平(さどしま ようへい)
1979年東京都生まれ。中学時代は南アフリカ共和国で過ごす。灘高校から東京大学文学部に進学。2002年同大学卒業、講談社に入社。週刊モーニング編集部で、井上雄彦『バガボンド』、安野モヨコ『さくらん』『働きマン』等を担当。03年に立ち上げた三田紀房『ドラゴン桜』は600万部のセールスを記録。また、小山宙哉「宇宙兄弟」は累計1,900万部を超えるメガヒット作品に育て上げ、TVアニメ、映画実写化を実現。漫画以外にも、伊坂幸太郎『モダンタイムス』、平野啓一郎『空白を満たしなさい』など、小説の連載も担当する。12年10月に講談社を退社し、作家のエージェント会社、株式会社コルクを設立。


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■元木昌彦のメディアを考える旅 240
 今月の同行者/佐渡島庸平氏(編集者、コルク代表取締役社長)


人間の知識欲や感情がある限り
出版産業がなくなることはない

出版界のスティーブ・ジョブズになれる逸材――

 佐渡島庸平(38)という快男児がいる。講談社の私の後輩だが、彼は『宇宙兄弟』『ドラゴン桜』などのメガヒット作を手掛けた編集者である。五年前に、これからは欧米のように、作家にはエージェントが必要だと、講談社を飛び出して「コルク」という会社を立ち上げた。
 現在は安野モヨコや小山宙哉、三田紀房などの売れっ子漫画家や芥川賞作家・平野啓一郎、編集者で児童文学者の吉野源三郎が八十年前に書いた『君たちはどう生きるか』を漫画化し、大ベストセラーになった羽賀翔一らと仕事をしている。
 佐渡島さんが2015年に書いた『ぼくらの仮説が世界をつくる』(ダイヤモンド社)は、見事な編集者啓発の書である。
 出版不況と言われるが、佐渡島さんは「昨今の出版不況は、作品の質が落ちているせいで起きているわけではなく、本について、語る場、語る習慣がなくなってきているのが原因」との仮説を立て、出版がどうなるのかではなく、出版をどうするかを考え、精力的に活動している。
 贔屓ではなく、彼は出版界のスティーブ・ジョブズになれると思っている。落ちこぼれ編集者である私は、カリスマ編集者の言葉に、気づかされ、ただ頷くだけであった。

            ◇

元木 佐渡島さんには、私が明治学院大学で教えている時にゲストで来てもらいましたね。漫画については優秀な編集者だということは知っていたけど、編集とは何かについて話してくれて、学生と一緒に聞いていて、感心したことがあります。それからだいぶ経って、あなたが講談社を辞めたと聞いて、OBとしては正直、残念な思いがしました。あの頃から将来は独立すると考えていたの?
佐渡島 あの頃は一切そういうことを考えたことはなかったですね。
元木 講談社では以前、『金田一少年の事件簿』の編集担当をやっていた樹林伸さんが辞めたけど、彼はそもそも『金田一少年の事件簿』の原作者でもあったから、独立に驚きはなかった。あなたの場合は、何人かの作家と一緒にエージェントをつくるというので、驚いたとともに、ようやくこういう人が出てきたのかと、思いました。
 私も、講談社にいる時から、上の人間に、これからは作家を育てるだけではなく、作家のマネジメントもするエージェント機能を持たないと、出版社は生き残れないと何度か言ったことがあります。だけど、いつも返ってくる返事は「講談社がやると影響が大きい」という言葉でした。影響が大きいところがやらなければ、他は動かないのにね。
佐渡島 僕は、ダメな産業というのは存在しないと思っているんです。一時、アパレルは産業として終わっていると言われていたけれど、ユニクロやZARAなど圧倒的に儲ける人たちが出てきました。人が服を着なくなることはないので、人が必要としている限り、アパレルが産業としてダメになることはないんです。産業がダメになるのではなくて、ダメになる会社の集合体が現れるだけだと思っています。

出版の本質は
人の心を満たすもの


元木 出版産業は?
佐渡島 出版も同じで、人が知識を欲したり、人が物語によって感情を揺さぶられたりという気持ちは、ずっと昔からあるし、これが人間からなくなることは絶対にないですよ。馬車がなくなったり、車がなくなることはあり得るけれども、移動そのものはなくなりませんからこれにかかる産業はなくなりません。
 僕がなぜ出版社に入ろうと思ったかというと、新聞とかは流れていくニュースなので、そこには価値がないと思ったんです。それに対して物語などはストックできるものなので、そこには価値がある。その価値に近いところと考えて、出版社を選んだんです。
元木 その選択は間違っていなかった?
佐渡島 物語の価値は減っていないし、逆に増しているぐらいだと思います。ただ、人はどうしても習慣の中で生きてしまう。だから出版業界は紙の本を売って売り上げを上げる業界だと思っていて、もう1つ手前にある知識や物語によって人の心を満たすものだというところが出版の本質だと捉えている人は、講談社の中でも少ないですね。
 例えば、テレビは総務省からもらっている電波を使って人を楽しませるだけの会社ではないはずです。動画メディアによって人の心を満たす会社だと定義をすると、フジテレビが「Netflix」になっていた可能性だってあると思います。だから、事の本質から離れないというのが、すごく重要なんです。
 コンビニという産業が立ち上がって、セブン-イレブンの後にファミリーマートやローソンが全部パクっていってコンビニ産業が大きくなっていく。産業というのは誰かがつくって、あとはコピーなんです。そのコピーには常に賞味期限があるので、そこを常に刷新しないといけない。だから出版不況ではなくて、たまたま、紙の本を流通させる構造に賞味期限がきている。IT革命によって、さまざまな産業の賞味期限が早まってきているということなんです。
元木 あなたは「自分のやりたいことを決めて、それから情報を集める」そうですが、講談社にいる時から、そうしていた?
佐渡島 僕が講談社にいる時、社内で尊敬する人に会って話を聞くということをしていました。そうやって編集を学んできました。元木さんのところにも話を聞かせてくださいと言って、聞かせていただいたし、栗原良幸さん(講談社元重役)や五十嵐隆夫さん(同)にも会いに行きました。その方々は本質を捉えているって思ったんです。
(以下、本誌をご覧ください)
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