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元木昌彦(もとき まさひこ)
編集者。1945年生まれ。「週刊現代」や「フライデー」の編集長として権力批判の誌面づくりを貫いた。メディア規制の動きに反対の論陣を張る。2006年11月、講談社を退社。オーマイニュース元社長。上智大学、明治学院大学、大正大学などで講師。インターネット報道協会代表理事。


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望月 衣塑子(もちづき いそこ)
1975年東京都生まれ。2000年3月慶應義塾大学法学部卒業。同年4月中日新聞社東京本社入社。千葉、神奈川、埼玉の各県警、東京地検特捜部などで事件を中心に取材する。2004年、日本歯科医師連盟のヤミ献金疑惑の一連の事実をスクープし、自民党と医療業界の利権構造を暴く。東京地裁・高裁での裁判取材を担当し、その後、経済部記者、社会部遊軍記者として防衛省の武器輸出、軍学共同などをテーマに取材。17年4月以降は森友学園・加計学園問題の取材チームの一員となり、取材をしながら官房長官会見で質問し続けている。著書に『武器輸出と日本企業』(角川新書)、『武器輸出大国ニッポンでいいのか』(あけび書房、共著)、新著『新聞記者』(角川新書)がある。2児の母。


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■元木昌彦のメディアを考える旅 239
 今月の同行者/望月衣塑子氏(東京新聞社会部記者)


権力側に使われている今の記者は
果たすべき役割から逸脱している

■安倍政権のメディア選別、世論操作の流れを変えた功績――

 記者クラブは諸悪の根源。閉鎖的、なれあい体質、取材対象との距離感のなさを、われわれ雑誌屋は批判し続けてきた。
 安倍晋三首相と菅義偉官房長官は、さらにポチ・メディアと批判メディアを選別&排除することで、世論を操作してきた。
 だが、1人の勇気ある記者が現れたことで、流れが変わった。菅官房長官が露骨に嫌がるそぶりを見せるのにも怯まず、真っ当な質問をぶつけ続け、内閣記者会に巣くう古狸たちをも青ざめさせたのである。
 東京新聞社会部、望月衣塑子(いそこ)記者がその人だ。彼女は、日歯連(日本歯科医師連盟)から自民党首脳たちへの迂回献金リストなど数々のスクープをものにしてきた敏腕記者で、森友・加計学園問題を取材していた。
 菅官房長官の会見で、記者たちが聞かなければいけないことを聞かず、菅官房長官も「壊れたラジオ」のごとく、木で鼻をくくったそっけない答えを繰り返すのを見て、ならば「私が聞く」と、政治部の巣窟へ乗り込んだ。
 彼女の鋭い質問に、時には顔を歪め、うすら笑いを浮かべる菅官房長官の様子がテレビで流れ、彼女は一躍脚光を浴びた。
 彼女は自著(『新聞記者』=角川新書)で書いているように、記者として当たり前のことをやっただけである。その行為がこれほど囃されるのは、記者や所属するクラブが、権力を監視する役割を放棄し、国民の知る権利に応えていなかったため、国民の不満が鬱積していたからである。
 銀座の喫茶店で会った望月記者は、ブン屋さんとしては珍しい華のある女性だった。見とれていて質問を忘れがちだったが、記者の果たすべき役割と、これからのメディアのあり方について聞いてきた。

            ◇

元木 望月さんは子供の頃、練馬区が主宰する児童劇団に入っていて、そこで6年生の時『アニー』の主役をやられたそうですね。実は、9月号のこのインタビューで山尾志桜里さんに出てもらったのですが、舞台は大きいですが、やはり『アニー』の主役をしています。インタビューの後、弁護士との不倫疑惑が報じられ、先の衆議院選では無所属で出て僅差で当選して永田町に戻ってきました。
 不倫については、記者会見で否定したままですが、彼女がもし会見を開くと言ったら、望月さんはどんな質問をしたいですか。
望月 以前、細野豪志さん(現希望の党衆議院議員)と山本モナさんが「フライデー」に撮られたことがありましたね。あの時からモナさんはテレビに出なくなりましたし、やはり不倫を報じられたベッキーさんも以前のようにはテレビに出ていません。お笑い芸人の宮迫さんは、ほとんど非難もされずに終わりました。
 男性のほうは「すいません」で済まされますが、女性のほうはそうはいきません。山尾さんも選挙中、応援に行った弁護士に聞くと、「何であんなことをしてくれたんだ」との反発が強くて、当初はこれで勝てるのかと思ったそうです。今回は休めばいいという声がある中で、彼女は出馬を決意し、非難を受けながらも闘い抜きました。「最後は女性に支えられて当選できた、感謝している」と言っています。支えた女性たちは、不倫問題がどうだったかよりも、国政で彼女の論戦力を生かして安倍政権と対峙してほしい、そう思ったのでしょう。
元木 元検事ですからね。
望月 そうですね。それに大舞台の『アニー』で培われた度胸や表現力も優れているとお会いして感じました。政治家は質問する力だけでなく、国民に伝えていくためにも論じる力、表現する力が大切だなと改めて思わされました。
 今回の衆院選で当選した中で女性議員は全体の10%ぐらいしかいません。女性議員の割合は先進7カ国(G7)の中で最下位で世界で193カ国中163位と散々な数字です。女性議員が少ない現状は、結果として、男性優位、男性目線の政治が続く今の政治が肯定され続けることになります。彼女のように政治家としての資質を評価され、逞しい女性議員がどんどん増えていくことが、日本社会を変えていくのではないでしょうか。
 私も一女性として、そこに期待したい思いは強いので、不倫について聞く必要はもはやないと思っていますし、そんなことよりも、再選を受け、政治家としてこれから何を国民に訴えていくのか、政治をどう変えていきたいのか、そのことを問い続けたいと思っています。
元木 ただ、今回の衆院選で、安倍自民党を大勝させてしまったT戦犯”は山尾さんと小池都知事だと思います。そうしたことも含めた何らかの説明責任は果たすべきだと、私は思います。
望月 選挙への影響という意味でなら、説明の仕方などについては私から質問できるかもしれないですね。

質問制限容認はメディアの自殺行為

元木 強面で会見では「壊れたラジオ」のように同じことしか答えなかった菅官房長官を、鋭い質問でたじたじとさせて、時の人になった望月さんですが、一番の功績は、記者クラブと権力側のなれあい構造を国民に知らしめたことだと思います。
望月 日本の政治部記者って、菅番とか首相番といわれて、菅さんや首相から情報を取ることだけが“使命だ”と思っている人も多いのかもしれません。実際、その人から情報を取ることが、何よりも重要視されているところがありますよね。
 特にテレビの記者は、地方の支局で揉まれて鍛えられ、権力を批判するという訓練を経ないで、いきなり政治部へ配属されてしまうような記者もいると聞きますから、当初は権力を監視するという志を持っている人がほとんどだと思いますが、上から、「とにかく菅さんから情報を取ってこい」などと言われ、それが大命題になってしまうのではないでしょうか。
 たぶんテレビの記者もモリカケ(森友学園・加計学園)問題があれだけフィーバーしていた時は、「え? これはどういうことなんだろう!?」と思うこともたくさんあっただろうし、聞いてみたい質問もあったと思うんです。でも、そこで私のように突っ込んで、菅さんの機嫌を損ねたら、その後が大変だとか、かなりT忖度Uをしてしまっていたのではないでしょうか。
元木 記者クラブが二重構造になっている。会見は一応聞いておいて、その後のオフレコ会見や、夜討ち朝駆けの時に聞けばいいというんでしょう。
望月 そっちがメインみたいな。
元木 でも今は、主要な会見はネットで中継します。私が代表理事を務めている「インターネット報道協会」にはニコニコ動画が加盟していますが、ここは会見のネット中継がメインになっています。終わってからもYouTubeで望月さんの質問動画が見られるし、望月批判、菅擁護の動画もやたらあります(笑)。記者会見そのものがオープンになっているのに、記者たちは気づいていなかった、または気づかないフリをしていた。もちろん望月さんのやったことはすごいことだけれども、記者クラブ批判をやってきた雑誌屋に言わせてもらうと、まだこんなことをやっているのかと思いました。
望月 こんなことで有名になること自体が恥ずかしい話なのですよね。今は会見でどこの記者がどんな質問をしているのか、国民がチェックできるわけですが、そういう自覚は確かに私たちに足りなかったですね。
 私自身が遅ればせながら入って行って、あれだけ反響があったのは、知りたいことを聞いてくれてないという不満を相当持っていた人が多かったことの裏返しです。私を「がんばれ」という人たちは、同時に「今まで何をやっていたんだ」と思っているのでしょう。大いに反省させられた点でした。これでは政治家にだって舐められますよ。モリカケ問題も、新聞は騒いでいるけど、自分の周辺の記者は言わないし、秘書官が苦言を呈することも、ほとんどないでしょうから首相本人もこれでいいと思っていたはずです。
(以下、本誌をご覧ください)
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