巻頭言
池 東旭の


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池 東旭氏
(ソウル在住・
国際ジャーナリスト)





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Brexit、Jexit
そしてAmexit

 Brexit(英国のEU離脱)の成り行きに世界が注視している。英国は2016年6月、ヨーロッパ連合(EU)離脱を問う国民投票(離脱賛成=51.9%、反対=48.1%)で僅差だが離脱を決めた。第2次世界大戦後、ヨーロッパ諸国は政治、経済統合を目指し1965年にヨーロッパ共同体(EC)が発足したが、英国は逡巡の末、8年後に加盟した。ヨーロッパ統合は1991年のドイツ再統一で弾みがつき、93年ECを拡大再編したEUが誕生、99年にヨーロッパ共通の通貨、ユーロの流通が始まった。だが英国はユーロを採択せずポンド貨を固守した。
 Brexitは移民流入など英国の主権が脅かされかねない危機感とEU支配への反発だ。英国はヨーロッパ諸国と昔から反りが合わない。梅毒を英国はフランス病と呼び、フランスは英国病という。法制も英国は慣習法が主流で成文憲法もない。大陸は成文法が基本だ。英国は大陸と一線を画す名誉ある孤立の伝統を誇り、7つの海を支配したプライドもある。だがEUで英国の発言権は29会員国の1つに過ぎない。強大な経済力と貿易黒字をバックにしたドイツと、それに追従するフランスがEUを主導している。積もり積もった不満の挙句、英国は経済的不利益を覚悟の上で離脱を決めた。離脱期限は2019年3月だが、交渉は手切れ金(EU分担金の清算)などで難航している。メイ首相は離脱期限の2年間猶予を呼びかけたが、EUの反応は冷たい。英国内で離脱を悔やむ世論も強い。だが復帰しても出戻りは肩身が狭い。

──蔓延する「非韓3原則」
 日本で今、「韓国を助けない、教えない、関わらない」との非韓3原則論が蔓延している。韓国の反日ムード高調、北朝鮮の核・ミサイル脅威に触発された嫌韓感情の噴出だ。その底辺に日本が韓半島と関わって碌なことがなかったとの思いがある。古くは白村江の戦い、元寇、文禄、慶長の役しかり。近代では1894年から1945年まで半世紀の間、清國、ロシアと戦い、シベリア出兵で失敗。満州事変の後、再び中国、ソ連と戦火を交えた。総括すれば韓半島関与は失敗だらけで、帳尻は持ち出しの赤字で終わった。その上、今なお後遺症が続いている。
 非韓3原則は韓半島から離脱、ひいては韓半島と関わる大陸からの離脱だ。Brexit同様の Japan exit(Japexit or Jexit)である。1885年に福沢諭吉は「脱亜入欧論」で「清国と朝鮮とは隣国という理由で特別な関係を持つのでない。ほかの国と同じように付き合い、日本は独自に近代化を進めるべき」と説いた。1920年代には石橋湛山も「小日本主義」で日本の膨張を批判して満韓放棄論を唱えた。これもJexit論の一種だ。

──離脱しても断絶せず
 英国は対岸の大陸諸国と一衣帯水だが、長年付かず離れずの局外中立を守り、超然たるスタンスをとった。日本と大陸との関係もそのパターンが望ましいという主張である。地理的隣接は必ずしも価値観の共有でない。日本も英国も海洋国家だ。英国が大陸に介入せず海洋に舵を切って大英帝国を築いた。日本もフィリピン、インドネシア、オーストラリアなど東南アジアの島国と連携を強めるべきとの意見である。離脱するが断絶しない。
 経済、文化交流は続ける。関心を持つが、深入りしない。敬して遠ざける。江戸時代の善隣友好がそのモデルだった。英語でいう丁重なる無視(benign neglect)である。しかしBrexitを決めた英国もロシアの脅威に対処するNATO(北大西洋条約機構)は脱退しない。北の脅威が深刻な今、日本は厳しい現実に直面している。米国は1950年のアチソン声明で韓国を防衛ラインから除外して、北の南侵を誘った。米国は韓半島を放棄しないという。だが日本の核武装を容認して、北東アジア安保の責任を肩代わりさせ、アジア大陸から戦略的離脱(Amexit)することもありうる。歴史は常にまさかの連続なのだ。
(ソウル在住・国際ジャーナリスト)


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