ダミー
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 なぜ? 北ミサイルから原発を守らぬ防衛省

 北朝鮮の弾道ミサイルに対する日本政府の対応の矛盾が目立つ。北朝鮮が8月29日と9月15日に北海道上空を横断するルートで中距離弾道ミサイル「火星12」を発射した際、政府は12道県にJアラートを流し、国民に注意を呼びかける一方、地対空ミサイル「PAC3」で原発を防護する動きがなかったのだ。
 PAC3は自衛隊の弾道ミサイル迎撃システムのうち、日本海のイージス護衛艦から発射する艦対空ミサイル「SM3」で迎撃し、撃ち漏らした場合に対処する最後の砦。ただ、自衛隊は34基を持っているにすぎず、2基1組で運用するため、全国17カ所しか守れない。1カ所あたりの防御直径は50キロと狭く、どこに配備するかが問題だ。
 安倍晋三首相は「火星12」発射直後の記者会見で「発射直後からミサイルの動きを完全に把握し、万全の態勢をとっていた」と強調したが、自衛隊はPAC3を緊急展開させておらず、原発は丸裸だった。
 ちぐはぐぶりは、北朝鮮が8月、グアム島周辺にミサイル発射すると警告したのを受けて緊急展開したPAC3の配置を見てもわかる。防衛省は飛翔ルートの直下となる島根、広島、愛媛、高知四県の自衛隊駐屯地にPAC3を緊急展開したが、ルートに近い島根、上関、伊方の三原発を防護できる地点にPAC3を配備していない。
 9月15日の「火星12」発射後の記者会見でPAC3の展開について問われた小野寺五典防衛相は「中国・四国地方にPAC3部隊を展開させ、また千歳基地や車力分屯基地にも部隊が配備されております」と答えたが、中国・四国は前述通り。千歳や車力のPAC3部隊の防護範囲から北海道の泊原発、青森の大間、東通原発はいずれも外れている。
 防衛省が原発を防護できる地点にPAC3を緊急展開しない理由は、(1)「原発は安全だ」という原発神話を今も信仰している、(2)原発を守れば原発の危険性が注目され、反対派を利することになると考えている、(3)最初からミサイル落下を心配してない、のいずれかとみられる。
 防衛省は来年度防衛費でイージス護衛艦の迎撃システムを地上配備型にした「イージス・アショア」を新たに購入する。手持ちのPAC3の使い方でさえ合理的な説明ができない以上、完全に防ぐことはできない弾道ミサイルの防衛に巨費を投じることの是非は議論されるべきだ。


 米国産牛肉「緊急輸入制限」潤ったのは誰か

 日本政府は今年8月、米国産輸入牛肉の4-6月輸入量が急増したため、あわてて国内畜産農家保護を目的にセーフガード(緊急輸入制限)措置を発動した。ところが、この緊急措置は空回り気味で、反発する米国当局だけでなく、輸入制限で影響を受けた日本の外食産業界も「輸入を抑えるための関税率引き上げで日本政府が唯一潤う皮肉な結果になっている。実態にそぐわないので、早急に輸入制限解除に踏み切るべきでないか」と反発している。
 ことの発端は、急増したのが米国産冷凍輸入牛肉で、担当の農林水産省としてはセーフガード発動基準にもとづいて半ば自動的に発動した。しかし冷凍牛肉はスーパーマーケットなどの現場で影響がすぐ出る冷蔵肉と違って、輸入業者や外食企業は倉庫に在庫を持ち、需給逼迫による価格高騰リスクが比較的少なかった。しかも畜産農家に影響がもろに出る状況でもなかった。
 そして大局的に見た場合、関税率を38.5%から一気に50%に引き上げたことで関税収入が増えた日本政府だけが潤う、という奇妙な事態になったことから、実態無視の安易な政策発動だったのでないか、とのブーイング騒ぎになった。
 確かに、緊急輸入制限のポイントとなる国内卸売価格への影響も少なく、伝家の宝刀を抜いて日米政策当局間に緊張をつくり出す必要もなかったのでないかという見方がある。
 事実、官僚ににらみをきかす首相官邸の外交問題担当者は「北朝鮮問題をめぐって日米安全保障連携が重要な外交課題になっている時に、保護貿易主義が強まる米国をことさら刺激する必要もないだろう」と言う。
 一方で、米国産牛肉の対日輸出に神経をとがらす米国のパッカー(解体から、加工・卸売までを行う精肉業者)は当然、日本政府の緊急輸入制限措置が規定の来年二〇一八年三月末まで続けることに断固反対だ。
 また、米国産輸入牛肉依存度の強い日本国内の外食企業は「国内の畜産農家が大打撃、というならいざしらず、結果として日本政府だけが関税率引き上げで潤っているとしたら問題だ」というブーイングとなった。
 これに対して農水省担当者は「緊急輸入制限措置は、米国産冷凍牛肉の輸入量が一時的に急増したための措置で現時点で政策判断に誤りはない。ただ市場価格動向、国内の畜産農家への影響などを総合的に見てフレキシブルに対応することは重要だと思っている」と述べている。
 日本政府として、緊急輸入制限措置を一時的な措置にとどめるかどうか、今秋に予定されている米国ペンス副大統領と麻生太郎財務相との経済協議での議論が今後のポイントだ。


 北朝鮮マネーを金融庁が封じ込め

 9月中旬から金融庁は新体制による検査に着手した。この中で、金融庁が最重要テーマとして掲げているのが、「北朝鮮マネー」の封じ込めだ。
 金融庁が北朝鮮への資金源を断つ根底には、国連での北朝鮮制裁決議とともに、テロ資金の撲滅を含むマネーロンダリング対策について国際的な協調を進めるFATF(金融活動作業部会)の勧告・指導がある。1989年のアルシュ・サミット経済宣言を機に設立された機関で、マネーロンダリングの監視・撲滅に向けた国際的な枠組みを主導している。
 FATFの勧告を踏まえ、金融庁は北朝鮮への資金送金について徹底した封じ込めに動いた過去がある。2003年に経営破綻し、一時国有化された足利銀行のケースは象徴的な事案で、破綻処理された背景には、北朝鮮とのコルレス(銀行間の外為取引)契約があった足利銀行を通じた資金送金を断つ目的もあったと指摘されている。当時は、拉致被害者問題がクローズアップされており、北朝鮮制裁は政治的なホットイシューとなっていた。
 また、13年にはHSBC(香港上海銀行)を舞台としたマネーロンダリング疑惑に絡み、北陸銀行がロシアの中古車取引で大量のトラベラーズチェックが取引されていたことが発覚し、同行は行政処分を受けた。
 今回の金融庁検査で、再び同様の北朝鮮への送金に絡む金融機関の行政処分が出るのか、金融界は身構えている。一方、中小金融機関では、海外送金の実績がないにもかかわらず、マネーロンダリングへの対応強化を求められることに対し、不要なコストアップを懸念する声もある。


 小泉進次郎氏にJAが反論レポート

 自民党の小泉進次郎氏から、「貸出残高のうち農業の融資に回っているのが0.1%に過ぎない」と批判された農林中央金庫が、その小泉氏に応える冊子「Value Report 2017」を作成した。同誌は、ディスクロージャーではなく、金融機関が作成した初めての本格的な政策開示レポートとなる。
 メガバンクに匹敵する100兆円超もの資産を誇る農林中央金庫だが、一般の知名度は高くない。「陰の日銀」とも評される、知る人ぞ知る存在だ。資金の半分以上は有価証券などで運用しており、貸出残高は約18兆円。うち農家への貸出残高は279億円にとどまる。この面を見る限り小泉氏の発言はまさに正論といっていい。しかし、誤解もあった。
「農林中央金庫と農協は一体のもの。両者を合わせて1つの金融機関であり切り離せない。実際、農林中央金庫がなければ農協がリスクをとって農家に貸し出すこともできなくなる」(与党関係者)という指摘だ。
 農林中央金庫が運用で得た収益の大半は配当などを通じて農協に還元されている。農協は農林中央金庫のいわば株主であり、その農協を支えているのは農家など組合員(出資者)にほかならない。
 また、焦点となる小泉氏の指摘については、「日本の農業関連融資総額4.3兆円のうち、農林中央金庫のみの貸付残高の割合を指したもので、JAバンク全体では日本の農業関連融資総額の約6割に当たる2.5兆円を担っている」(関係者)ことを示し、JA、信農連、農林中央金庫が三位一体で農業関連融資に力を入れていると強調している。


 増税で冷や水浴びる人気の加熱式たばこ

 煙が出ず、健康への影響も少ないとして人気上昇中の加熱式たばこに、思わぬ難題が突き付けられている。通常の紙巻きたばこに比べて税率が低いことから、加熱式への増税論が浮上してきたからだ。毎年年末の税制改正論議に大きな影響力を持つ自民党税制調査会の宮沢洋一会長も、2018年度税制改正に向けて「年末までに答えを出していかないといけない」と前向きな姿勢を示す。
 加熱式は15年秋に米フィリップ・モリス・インターナショナルが「アイコス」を発売し、ブームに火をつけた。日本たばこ産業(JT)はこれに追随し、福岡とオンラインでしか購入できなかった「プルーム・テック」を6月から東京で販売を始め、18年前半までに全国展開を目指す方針だ。また、英ブリティッシュ・アメリカン・タバコ(BAT)も仙台での限定販売としていた「グロー」を10月に全国発売する。国内たばこ市場で加熱式のシェアは既に1割を超えている。
 しかし、加熱式はパイプたばこに該当するため、専用器具で加熱するカプセルやスティックに詰められるタバコの葉の量でたばこ税が決まる。このため、紙巻きは1箱(20本)約240円のたばこ税に対し、3社の加熱式は1箱(同)34〜192円と低く、商品によっても異なる。
 財務省は加熱式への移行による税収減を懸念する一方で、課税強化しても消費が落ちにくいたばこの「担税力」から加熱式への増税を図りたい意向とみられる。ただし、市場に冷や水を浴びせかねない。増税となればブームに乗って普及を加速したい業界は戦略の立て直しも迫られかねず、自民党税調の検討の行方に気が気でない。


 電波オークションに放送・通信業界が戦々恐々

 電波の利用権を競争入札にかける「電波オークション」が再び浮上してきた。
 日本における電波の割り当ては、情報通信行政を担う総務省が裁量で利用者を決め、無償で提供された放送局や通信会社は少しばかりの「電波利用料」を収めてきた。その仕組みは、総務省の「電波行政の力の源泉」になる一方、「電波利権」を生む土壌になるとも揶揄されている。
 これに対し、「電波オークション」は、電波の利用権を入札で最も高値をつけた事業者に与えようというもの。電波配分の手続きが公正で透明になり、併せて歳入確保に寄与しようという狙いがある。米国では2015年前後に3つの周波数帯が計約5兆円で落札されたという。
 経済協力開発機構(OECD)加盟35カ国のうち、「電波オークション」の制度がないのは日本だけ。しかも、電波利用料の収入は15年度で約747億円に過ぎず、最も負担額の多いNTTドコモでも約200億円、放送局は4億円程度。
 このため、政府の行政改革推進本部は5月、警察や消防に割り当てられた周波数の中で有効利用されていない電波を「民間開放」するよう提言、9月の規制改革推進会議では「電波割当制度の改革」を早急に取り組むべき重要事項に位置づけ、すかさず菅義偉官房長官が導入に前向きな姿勢を打ち出した。
 安倍政権に批判的な放送関係者の間では、五年ごとに免許更新される電波がオークションにかけられるのではないかという疑心暗鬼も生まれており、「電波の利用権」をめぐる綱引きがにわかに活発化しそうだ。


 百貨店から貸しビルへJ.フロントが業態転換

 大手百貨店の中で目下、純利益額でトップなのが大丸松坂屋百貨店やパルコを傘下に持つJ.フロントリテイリング。その大きな要因は、同業の中で最も「場所貸し業」に邁進してきたことにある。
 今年4月に開業した、旧松坂屋銀座店は「GINZA SIX(写真)」として生まれ変わったが、銀座という日本一の商業地、また銀座で最も早く百貨店を営業したのが松坂屋であるにもかかわらず、松坂屋という屋号を廃し、上層階はオフィステナント、下層階は多様なファッションブランド店を集めた構成にした。
 同社の山本良一社長は「百貨店業は今後はなかなか難しく、このままでは50年先、100年先はない。なので(GINZA SIXや上野フロンティアタワーのような)開発案件を、手掛けざるを得ない」と語っていた。
 再来年の秋にパルコの旗艦店である渋谷パルコ、さらに大阪・心斎橋では大丸の建て替えという大きなプロジェクトが控えている。パルコのほうはともかく、心斎橋店のほうは大丸という屋号こそ残すだろうが、銀座や上野の開発案件同様、複合高層ビルになることが、まず間違いないだろうし、その後も建て替えを含む大型再開発は出てくることだろう。
 同社ではそうした不動産事業も含めた戦略の総称として、アーバンドミナントという表現をしているが、このまま不動産事業を拡大していくと、近い将来は百貨店という業種区分からも外れていくことになるのかもしれない。


 スマホ決済の台風の目、オリガミペイの課題は?

 会社名オリガミ、と聞いてピンとくる人は、すでにスマホ決済に慣れている人かもしれない。スマホ決済サービスを手掛けるオリガミは、5年半ほど前の、2012年2月に誕生したベンチャー企業で、同社を起業した康井義貴社長は、リーマン・ブラザーズの日本法人や米国のベンチャーキャピタルなどでのキャリアがある。
 そのオリガミが「オリガミペイ」を始めたのは昨年5月のこと。同年10月に「楽天ペイ」を始めた楽天よりも早かった。オリガミペイの特徴の1つはQR(クイック・レスポンス)コードを利用できること。店頭でスマホにインストールしておいたオリガミのアプリをかざすと、QRコードで利用者が登録しておいたクレジットカード番号などが読み込まれ、決済ができる仕組みだ。この方式だと、いちいちカード番号などを入力する必要がないほか、カード情報などの個人情報がむやみに支払い先の加盟店などにも知られずに済む。
 もう1つの特徴は、オリガミペイでは店頭での支払い時に「即時割引」を行っていること。割引率は3〜10%までと幅があるが、利用者にはありがたいサービスであり、オリガミにとっては大きな差別化ポイントになっている。
 今後の課題は、目下加盟店数が拡大中だが、利用シーンの頻度からいえば、大手コンビニ3社すべてでオリガミペイを使えることが望ましい。現時点ではローソンのみが対応しているが、セブン-イレブンやファミリーマートでも使えるようになれば、オリガミの認知度も一気に高まるだろう。また、スマホ決済サービスが増えてくる中で、オリガミが銀行免許などを取ってネット銀行などの自前の金融インフラが持てると、より強いだろう。


 中国のEVシフト鮮明化、ドイツ勢がいち早く接近

 中国政府はガソリン車やディーゼル車の製造・販売を禁止する方針を打ち出した。英仏が7月に2040年までの禁止を表明したことに追随した格好だが、英仏がパリ協定の確実な履行を率先して他国にも環境対策を促そうというのに対し、中国は「EV(電気自動車)の技術を外資などから吸収し、経済的な波及が大きな自動車産業の育成を進める」(中国政府関係者)のが狙いだ。
 この中国政府の思惑に乗じて接近しているのがドイツ勢だ。自動車産業をめぐる中国とドイツのつながりは長い。江沢民・元国家主席が上海市長だった頃から関係を深め、フォルクスワーゲン(VW)に至っては利益の半分近くは中国で挙げている。EVに関しては、技術導入を促す狙いから中国政府は「1社2合弁」(外資メーカーは中国メーカー2社までしか合弁できない)」のルールを改めたが、VWに3社目の合弁を認め、EVの技術導入を約束させた。
 そのVWは先に開かれたフランクフルトモーターショーで2025年までに300万台のEVを販売することを打ち出したが、その半分は中国にするなど「中国政府と組んで、同国のEV推進に力を貸す」(VW幹部)としている。
 EVは日産自動車が「リーフ」で量産型EVを世界に先駆けて売り出したが、まだ世界の累計販売台数でも50万台に満たない。中国がVWなどドイツ勢を通じてEV先進国に邁進すれば、「充電設備の規格や仕様などで日本勢は蚊帳の外に置かれてしまう可能性がある」(日本の大手自動車メーカー)。日本勢は中国へのロビー活動など、新たな戦略を練り直す必要がありそうだ。


 巨人「ダウ・デュポン」に戦々恐々の国内化学大手

 米ダウ・ケミカルと米デュポンがこのほど経営統合を完了し「ダウ・デュポン」が発足したと発表した。ダウとデュポンを単純合算した売上高は約8兆円、従業員は10万人に達する。統合で約3300億円のコスト削減効果を見込み、時価総額は将来15兆円を突破するとの見方もある。世界最大の総合化学グループが誕生し、グローバル展開を狙う日本企業の脅威になる。
 ダウ・デュポンは今後18カ月以内に事業を「農業関連」「素材関連」「特殊製品」に分割し、3つの新会社を独立させる。事業分割を進めてもなお規模は巨大だ。農業関連だけでも売上高は1兆7000億円に達し、総合化学で日本最大手の三菱ケミカルホールディングスの半分強だ。
 この「巨人」出現に日本勢はどう対抗するのか。世界的な電気自動車(EV)シフトで今後、需要が急激に高まることが期待されるリチウムイオン電池の正極材やセパレーター、有機ELパネルの主要材料の発光材といった素材や部品は日本が強みを持つ。軽さと強さを兼ねる炭素繊維は日本の3社が世界シェアの7割を握る。しかし、三井や三菱、住友など財閥系の化学会社に加え、旭化成や東レ、信越化学工業など独立系の化学メーカーがひしめく国内の化学業界は「会社数が多く、過当競争で薄利多売を迫られており、時価総額が低い。海外のメガ化学が株式交換で買収を仕掛ければ対抗できない」(大手証券アナリスト)。
 鉄鋼なども中国大手の統合が政府主導で進むなか、日本の化学業界はどう「業界の巨人」に立ち向かうのか、その答えはまだ見えない。


 ユニクロの不安材料は嗜好多様化と低価格化

 カジュアル衣料大手のファーストリテイリングの不安の種がまた1つ増えてきた。メーンブランドの「ユニクロ」の来客数(国内既存店)は2017年8月期決算では前の期に比べ2.9%増となり4年ぶりにプラスとなったが、逆に客単価は1.8%減とこちらは逆に4年ぶりにマイナスとなった。昨年2月に実施した一部商品の値下げが通年で寄与したためだが「消費者の財布のひもは固く、値下げやセールに頼るしかなかった」(ファストリ幹部)という。
「ユニクロ」の値上げがなかなか浸透しないなか、低価格衣料品店「ジーユー(GU)」も失速してきた。昨期まで2年連続で30%超の増収と絶好調だったが、今期は営業減益に陥る見通しだ。成長の壁にぶつかる「ユニクロ」をこれまで支えてきたが、試験販売してみて好評なものを一気に増産して大量に売りさばく「1本足打法」に消費者がついてこなくなったためだ。
「GUは設立して10年になったが、そろそろ戦略を改めなければならない」とGUの幹部は打ち明ける。「ユニクロ」より低価格品の購買層を取り込み、16年8月期までの4年間で売上高を3倍強、営業利益では4倍強まで引き上げ、グループの成長を支えてきた。
 15年にヒットした「ガウチョパンツ」や、16年のスカートのように見えるパンツ「スカンツ」は「1本足打法」の象徴的な商品だ。
 しかし、最近では「ZOZOTOWN」を運営するスタートトゥディやフリマアプリの「メルカリ」など、ネット通販の台頭で、ユニクロの店舗に足を運ぶ消費者を奪われている。「ZOZOTOWN」の時価総額は1兆円を超え、百貨店最大手の三越伊勢丹の倍にまで大きくなった。さらに「メルカリ」も新規上場を計画、時価総額は「2000億円はくだらない」(大手証券アナリスト)と、株式市場では話題を呼んでいる。
 ファストリの柳井正会長兼社長は「実店舗展開は続ける。その上でネット通販も整備し、顧客の取りこぼしをなくす」と話すが、写真共有アプリ「インスタグラム」で自分の衣装をネットで好んで流す若年層など、「嗜好が多様化するなか、低価格を実現するために画一的な商品開発、大量販売で成長してきたファストリにとって、ネット通販の台頭は頭の痛い問題」(同)だ。
 柳井会長が目標とするスウェーデンのヘネス・アンド・マウリッツ(H&M)と「ZARA」を展開するインディテックス(スペイン)という世界2強の売上高は2兆円を軽く超え、1兆8000億円のファストリを上回る。この分野はまさに「GU」ともろに競合する。さらなる成長に向けて次の一手をどう柳井会長が出すのか、今後のファストリの命運がかかっている。


 ホテル業界で気焔吐くオリックス宮内ジュニア

 オリックスの事実上の「創業者」ともいわれる宮内義彦氏の御曹司、宮内誠氏(48)が興した上場不動産再生会社の「ビーロット」(本社・港区新橋)がホテル業界で恐れられる存在になり、話題を振りまいている。インバウンド向け宿泊施設(訪日外国人向けの宿泊施設)の企画・開発などを、著名建築家の黒川紀章のライバルだった、大江匡氏が率いる「プランテックホールディングス」社が手掛ける高級カプセルホテルの「ファーストキャビン」と事業連携したことで笑いが止まらないのだ。ビーロットは不動産コンサルなども幅広く手掛け、顧客の問題解決にホテルはもってこいなのだ。
 宮内氏は新橋の本社近くの築地で古ビルを手に入れ、「ファーストキャビン築地」として大成功。こうした不動産再生事業を多数展開した。パートナーのプランテック社は、全国でビーロットと同じような高級カプセルの開発案件が爆発的に増え、一時は、数百件のオーダーを抱えるともいわれてきた。引き合いは、大都市の中小ビルオーナーからが多く、ビーロットが不動産再生の顧客とする空室に悩む古ビルオーナーのビル再生の「常備薬」になっている。
 ファーストキャビンは、飛行機のファーストクラスよりやや広く、天井が普通のカプセルより高い分、外国人にも人気が出ている。
 また、建築界でよく知られる大江匡社長は、日本を代表する建築家だった黒川紀章の学生時代からのライバル、好敵手であった。黒川氏作の近未来思考の中銀カプセル(銀座)がメタボリズムの象徴作品として歴史に名を残したことにいたく刺激を受けたのがホテルへのこだわりの始まりだった。
 大江社長はオリックスの宮内(元)会長と旧知の仲で、オリックス系列のクロスホテルなど粋なビジネスホテルの設計が得意だ。ファーストキャビンも、宮内氏の息子が古いオフィスビルを次々に改装してくれたので有名になった。建築費高騰や賃料の伸び悩みに苦慮する一般のビルオーナーのナテント難の「危機感」が人気を煽っている形だ。
 ホテルをオフィスにコンバージョンする10年前からの流れを完全に逆回転させ、オフィスをホテルにする時代をつくった。これは近年で最大のアイデア商品だろう。


 創価学会が会憲制定で「池田後」を引き締め

 公明党の支持母体・創価学会は9月1日、組織運営の新たな最高法規「創価学会会憲」を制定した。「会憲」のポイントを一言で言えば、教義の面で「世界教団」「池田教」の色彩を強めつつある創価学会が「池田(大作名誉会長)後」をにらんで組織を整備したことだ。
「『創価学会会憲』を制定=世界教団としての体制を確立」と報じた9月2日付の機関紙・聖教新聞によると、「会憲」は前文と15条の本文で構成。前文で「『3代会長』の指導・精神を永遠に創価学会の根本とする」ことを確認。本文で「会憲」を創価学会の「最高法規」と位置付け、世界教団たる創価学会の「総本部が世界各国を指導」することを定めた。原田稔会長ら最高幹部は「会憲」を「会の憲法」と指摘。制定の意義を「総本部が世界各国を指導する世界教団として体制を構築する」「学会の宗教的独自性を明確にするもの」などと説明している。
 創価学会は「池田氏の教えを信仰の対象」とする教義の面では、国内も海外も同じ。一方で、組織面では東京・信濃町にある学会本部はあくまでも日本国内の運営に限り、世界で192カ国・地域にある各団体は「創価学会インターナショナル(SGI)」という別組織になっている。
 ただ、創価学会の最高実力者である池田氏がSGIの会長を務めているため、運営面では支障がない。
 ただし、池田氏は来年1月2日には90歳を迎え、公の場に姿を見せなくなって7年半近くが経過、健康不安説は絶えない。もし、池田氏に万が一のことが起きた場合、SGIの運営をめぐり混乱が生じかねず、創価学会総本部による海外組織の指導を明確にすることで、「池田後」の混乱の芽を摘んだ。
 もともと、創価学会は日蓮正宗の一信徒団体として発足した。しかし、宗門と対立し、破門されている。最近では池田氏の教えなるものを前面に掲げ、「池田教化」「世界教団化」を進めている。昨年11月に会則を改正し、「創価学会そのものを仏の存在」と定め、「宗教的独自性を明確に宣言」したことが象徴だ。学会総本部のSGIに対する優位性を定めた会憲の制定は、池田氏の長男・博正主任副会長が将来、SGI会長に就任する布石と思えなくもない。


 反旗を翻した朝日新聞の御用組合

 自社の労組は「御用組合」の範疇にあると思っていたのか。朝日新聞社の経営陣が慌てふためいた。
 7月の定期大会で本部書記長選挙に「押し紙反対」を唱える販売局の元エース社員が突如、立候補した。職場推薦によらないアウトサイダーの候補者が、実に半世紀ぶりに現れた。社員向けの経営説明会で、Y氏が説明会を炎上させるような鋭い質問を社長にぶつけた。それは、新聞社の最大タブーである販売店への「押し紙」(部数水増し)に関することだった。
 さらに朝日労組のトップ、本部委員長選にも朝日労組史上、実に画期的な出来事が起こった。本部に候補を推薦する編集局の経済部にも、独立系の改革派立候補者が現れたのだ。押し紙問題を公取委委員長の会見などで批判してきた50代の切れ者記者で、掲げた運動スローガンが会社側には衝撃的で、ライバル紙労使にも伝わった。
「STOP渡辺社長体制/本業ファースト/朝日新聞を取り戻す」
 昨年来新聞社の財務・経営分析をしたアナリストは「部数が毎年3%、広告収入が5%減り続けたら大手の経営はもたない」という。部数減少で、大手新聞は全国各地の「現地印刷工場」が半ば遊休資産になりつつある。工場の要員人件費は深夜労働から記者並みに高い。「世界一の高給の印刷工」の過剰問題は消えない。朝日などでは年収1000万円、1500万円を守るため現場にしがみつくベテラン印刷工も出ているという。
 各社とも印刷工場を別会社化して、人件費の安い若手を大量採用したが、古い社員は新聞社に籍があり、安い新工場との給与の差額は出向元の新聞社が負担し、従来通りの高給を保証している場合がまだ少なくないのが現状である。
 退職者に支給する手厚い確定給付型企業年金(基礎年金+厚生年金に上積みする分)も重荷だ。高い予定率は引き下げられたが、まだ高い。ある大手新聞では、マイナス金利政策で予定利率を1%以上も大幅に引き下げないと監査を通らないことから、退職者の手厚い年金を守るため、若手の給与を5年で200億円以上、削減したことがあるという。
 新聞社のOBは権利意識が強く、現役世代へ要求する声も大きいため、経営陣も労組も「抵抗勢力」に手を焼く。おまけに、各社とも労組と言えば、委員長・書記長などは本部支部とも1年限りの「素人」が、組合のかじ取りをしているらしい。


 読売と産経がタッグ組み朝日の新聞協会賞受賞潰し

 今年度の新聞協会賞が9月6日決まったが、NHKの防衛省「日報」問題のスクープは妥当にしても、朝日新聞社が申請していた「森友・加計学園の一連の報道」は賛成少数で受賞はならなかった。選考会で読売新聞と産経新聞の異議で朝日は落選。代わって受賞したのが、西日本新聞の博多金塊事件のスクープという福岡県周辺以外ではほとんど知られていないニュースだった。
 各社の編集局長クラスが集まった8月24日の選考分科会では、読売新聞の柴田岳編集局長が森友・加計問題は「総理の介入によって行政がゆがめられたかが核心だ。ただしどちらも核心部分の決着がついていない」と指摘し、産経の乾正人編集局長も「企画としては良い作品だが、ニュース部門としてはどうか」と批判。日経の長谷部剛局長も「安倍政権への影響の大きさは、朝日単独ではなく各社全体の報道によるものだと思う」と追随し、安倍“与党”の3紙はこうして足並みを揃えた。
 これに対して共同通信の梅野修局長が「現在の官僚の政権に対する忖度、安倍一強政治の政策決定の不透明さなどを浮き彫りにした点で新聞の力を世に示すことができた。協会賞候補にふさわしい」と朝日を擁護。山形新聞の佐藤秀之局長も「今年のニュースの中で森友・加計は非常に大きい問題だ。権力の監視という報道機関の役割を果たした点は協会賞に値する」と加勢した。熊本日日の荒木正博局長も「事柄の大きさという点から朝日の森友・加計報道のみを受賞作に推薦したい」と主張した。
 ただし、森友問題は初報が共同で朝日は数日遅れだったため、今回の受賞ではそこを問題視する指摘があった。テレビ東京の吉次弘志報道局長は「一連の報道は、さすが朝日だという作品だ。底力を感じる」と評価したものの、「他メディアの報道による部分もあり朝日単独での受賞には少し物足りないのではないか」と難じた。時事通信の境克彦編集局長も「あれは朝日単独のスクープだったと言えるか疑問だ」と同調した。
 結局、決をとったところNHKの日報問題が8票、西日本の金塊事件が6票、朝日は4票。朝日は日本ジャーナリスト会議(JCJ)の大賞、外国特派員協会の「報道の自由推進」賞は受賞したが、協会賞は逸した。前川喜平元文部科学事務次官の出会い系バー通いをスクープしてまで、問題の矮小化を図る読売は、産経と組んで安倍改憲路線の推進役を任じているようだ。


 「川崎の森友事件」? 消された録音データの謎

 川崎市の市立高校2校の日本史の教科書の採択をめぐって、データの消去で「川崎の森友事件」と称される事案が横浜地裁川崎支部で争われている。決定にあたった会議の録音データの開示を市民から請求されていたのに、市教委の担当課長が消去したのだ。市教委はこの課長個人の責任として決着を図る構えだが、原告側は「背景、理由が分からない」として、渡辺直美教育長の証人尋問などを求めている。
 事の発端は2014年8月の教育委員会議で、実教出版の『日本史A』の採択が退けられたこと。学校ごとに課題や学科に違いがあるため、これまでは学校の求め通りに採択されてきた。今回は異例の出来事だった。傍聴者たちは懸命にメモしたが、委員のひとりが「剃刀の刃が入った封筒が送られてきた」と長広舌を振るうなどで要領を得ず、メモを突き合わせても、正確な内容を把握できなかったという。傍聴者には録音が認められていなかったのだ。そこで、元小学校教諭ら2人が同年9月に会議の録音データの開示を請求。しかし、市教委は「公文書ではない」と拒んだ。
 2人が市の情報公開・個人保護審査会に異議を申し立てると、同年12月に「公文書に当たる」との見解が示された。ところが、担当課長は「すでに消去した」と説明。このため、2人は昨年12月に地裁川崎支部に福田紀彦市長を相手取って提訴した。口々に「川崎で長く教師をしていた。世話になったとの気持ちが強くて、訴訟など起こしたくなかった」と振り返りながらも、「教育の中で人間として許されないことが行われている」と違和感を強調している。
 公判の第一回意見陳述で、開示をめぐる市教委職員との電話でのやり取りを説明した。
「(録音データのことを)聞くと、職員は詰まったような後、『消去した。あくまで補助的なものなので』と答えた。私は驚いた。開示を請求しているのに──。『そんなことがあってはならない。由々しきことです』と言うと、職員は無言でした」
 だが、これらの市教委の説明は虚偽だったことが今年5月の市議会で明らかになった。渡辺教育長が「課長はサーバー内のデータは消去したが、USBで保存していた。昨年3月の異動の直前に、これも消去した」とようやく明かした。電話の時点では、データは存在していたのだ。
 課長は停職3カ月の処分を受けた。また、訴訟で賠償責任を負うとされた場合、市教委は支払いを課長に求めるという。これほどの負担を背負ってまで、課長は誰を、何を守ろうとしているのだろうか。


 前住職の背任容疑で真言宗名刹に家宅捜索

 名古屋地検特捜部は、9月12日、高野山真言宗の別格本山「興正寺」を、梅村正昭前住職らの背任容疑で家宅捜索した。尾張徳川家の祈願寺としても知られる名刹が、総本山金剛峯寺との争いの果て、住職解任騒動に発展、総本山が背任容疑で梅村氏らを告訴するに至った経過は、本誌が2016年10月号で詳述した。
 興正寺は12年、寺有地の一部を隣接の中京大学に約138億円で売却した。本来なら本山管長の承認を受けたうえで礼録(上納金)を納めなければならないが、本山と争っていた梅村氏はそれを拒否。逆に、売却資金を運用等に回した。
 その際の相談相手が、著名コンサルタントのS氏。官庁・実業界の幅広い人脈と中小企業支援の経歴を生かし、興正寺からコンサル会社に42億円の資金提供を受ける一方、融資を求める企業に興正寺資金を流し込んだ。なかには、人気アーティストGACKTの所属事務所元代表向けの1億3000万円など不可解なものがある。総本山では、そうした流出資金70億円強が梅村氏らの背任に相当すると見なしている。
 梅村氏の不正流出には前史がある。1200年も続いた高野山真言宗の古い体質を改革しようという動きがあり、梅村氏の活動は永代供養墓、納骨堂建設、イオンモール内の別院設置など、その改革の流れに沿っており、それが結果的に内局を担う現宗務総長との対立につながった。
 そのあげくの資金逃避だったが、流出先にいるのは海千山千の仕事師ばかりで、資金は溶かされた可能性が高い。なかには梅村氏に還流した資金もあるとされ、今後、特捜部の手で、「名刹の闇」が暴かれる。


 世界初、移植ペニスで性交、妊娠につながる

 3年前、スウェーデンで成功した子宮移植が女性の究極の不妊治療とすれば、男性にとっての究極の不妊治療は、失ったペニスの移植だろう。
 8月、世界的権威の医学雑誌『ランセット』電子版に、ペニスを移植した男性の性行為が妊娠に繋がったという報告が掲載された。これまでペニスの移植手術は中国や米国など4〜5例が実施されているが、妊娠につながったケースは世界初だ。
 今回の手術を行ったのは南アフリカの大学病院。割礼による感染症により18歳でペニスの切断を余儀なくされた21歳の男性に、脳死した男性のペニスを移植した。
 手術は2015年に実施。9時間かけて無事成功し、男性は1カ月で退院。直後に性行為が可能になったという。これまでの移植例では、移植したペニスがうまく機能しないことが多く、中国の例では移植はしたものの壊死してしまった。
 術後3カ月後には、普通の男性と同じように性交が可能に。7カ月後には、ペニスの触覚も正常になった。排尿も性的機能も正常で、男性の満足度も高いという。もちろん、臓器移植後の拒絶反応を防ぐために免疫抑制剤を使用しながらであるが、2年経っても拒絶反応は起きていない。
 さらに驚くべきことに、移植から6カ月後にはパートナーが妊娠3カ月と判明した。ただ、子供は残念ながら出産直前に死亡している。
 手術費用は免疫抑制剤の費用も含めて1カ月、約2万ドル(約200万円)と、大きな成果の割には安い。今後、日本でも実施される可能性もあり、がんや事故でペニスを失った人にとっては朗報となった。


 水面下で中国が協力すれば年末前後に斬首作戦実施か

 北朝鮮情勢は全会一致で国連安保理決議が採択されたものの、その後すぐに北がミサイルを撃ったことで、事態は長引く様相を呈している。北にすれば、ロシアや中国からの情報でトランプ政権が現時点では軍事的に反撃できないことを知っており、しばらくの間、日本上空を越えるミサイルで射程距離を延ばす発射実験を繰り返すと見られている。
 トランプ政権の弱点は、大統領に外交経験がなく、戦略性がないこと。ティラーソン国務長官やマチス国防長官は優秀だが、この2人を支えるアジア太平洋地域の局長クラスがいまだ国務省や国防総省にいないため、実際の軍事的行動の計画が立っていないのが現実だ。しかし、国連総会での各国首脳による対北非難の演説は米国による軍事力行使の大義名分を与えつつあり、北がデッドラインを明らかに越えたと国際社会が思える時点まで推移を見守る予定だ。
 では米国は対北作戦でどんな方法をとるのか。ワシントンの情報筋によれば、マチス国防長官らは瞬時に決着するため、年末前後に金正恩委員長の斬首作戦を実施したい考えだろう。これは中国の協力なしではできない。米国独自では金正恩委員長の所在を正確につかむ能力に欠ける。つまり、平壌に展開している中国情報網が、正確に彼がいつ、どこにいるかを確認した後に作戦が実行される可能性がある。
 その意味では10月18日からの中国共産党大会の中身次第では、習主席が自らの権力維持の見返りに、水面下の協力を取り付けたい米国側の作戦を黙認し、情報を米国サイドに流すシナリオも考えられる。


 中国が本気で検討する北朝鮮攻撃のシナリオ

 国際政治とはある日突然、180度場面が変わり、「考えられなかったこと」が突発する。その1つが、米国ではなく中国が北朝鮮を攻撃するという、日本人には思いつかないシナリオだ。これが俄然、信憑性を帯びてきたのだ。習近平は金正恩になめられており、必ず赤恥をかかせたいという強いインセンティブが背景にある。
 第1に金正恩はまだ1度も北京に挨拶に来ないし、中国は李源潮国家副主席や劉雲江・政治局常務委員を平壌に派遣したが答礼がない。
 第2に4月の「一帯一路フォーラム」初日と9月の「BRICSフォーラム」初日に金正恩はミサイルを飛ばして、習近平の顔に泥を塗った。第3に9月のミサイル実験は3700キロメートルを飛んだ。日米のメディアは「グアムが射程に入った」と騒いだが、中国政府は中国全土が射程に入ったと捉えている。
 したがって米国と同様に小型の核の搭載技術を獲得する前に北朝鮮の核戦力を叩いてしまうことは中国の国益でもあり、習近平は「われわれは朝鮮半島の安定を望んでいるのであり、政権の安定を望んでいるのではない」という発言が暗示するように金正恩の排除を念頭に置いている。
「そのうえ北朝鮮を中国軍に攻撃させることは習近平にとって、もっと大きなメリットがある」と軍事専門家が指摘する。
「掌握できていない旧瀋陽軍区が北朝鮮に攻め込むことになり、毛沢東が旧国民党残党兵士を朝鮮半島で最前線に送り込んだように、習はそれによって軍内の政敵を同時に始末できる。つまり一石二鳥の作戦が存在する」
 あり得ないシナリオではない。


 中国の投資急増に歯止め? EUが企業買収監視へ

 欧州連合(EU)欧州委員会のユンケル委員長はこのほど、仏ストラスブールの欧州議会で行った一般教書演説で、域内のインフラ、ハイテク、エネルギー関連など戦略企業を標的とする域外企業による買収について、EU全体で監視を強化する計画を表明した。近年の中国企業による直接投資の急増を受け、一定の歯止めをかけることを狙っての施策であることは明白だ。
 たとえば中国家電大手の美的集団は2016年、ドイツの産業用ロボット大手クーカを買収。同社はドイツが国を挙げて推進している産業の革新プロジェクト「インダストリー4.0」で中心的な役割を担っていることから、中核技術の流出に対する懸念の声が強まっている。
 ドイツのメルケル首相は今年6月、同国紙に対し、「ドイツ経済は中国に大きく依存している」としながらも、特定の産業については「戦略的に重要な産業」と指定し、域外企業による買収について審査することを検討していると語った。フランスのマクロン大統領はさらに強硬で、中国からの投資について、EUとして拒否権を持つべきだと主張している。イタリアもこれに同調している。
 一方、EU域内でも、オランダや北欧諸国、ギリシャは慎重姿勢を見せている。フィンランドのミッカネン外国貿易・開発担当相は英紙フィナンシャル・タイムズとのインタビューで、EUによる直接投資監視計画について「フランスやドイツを喜ばそうとするものと理解しているが、中国やインド、米国の反発を招く可能性がある」とし、「貿易戦争」につながる恐れがあると警告している。


 演習後もロシア軍の駐留でベラルーシ併合に布石

 ロシア軍が8月、ベラルーシ一帯で冷戦後最大規模の軍事演習「ザーパド(西方)2017」を実施したことは、「将来のベラルーシ併合に向けた布石」(西側軍事筋)と警戒されている。演習終了後もロシア軍がベラルーシ領内にとどまる模様で、恒久的な駐留になる可能性がある。
「西欧と関係改善を進めるベラルーシのルカシェンコ政権はロシアとの演習を望んでいなかった。両国はすでに共同防空体制を敷き、この運用にロシア兵1000人が駐留しており、軍の統合も進みそうです」(モスクワ特派員)
 ロシアとベラルーシは1990年代に名目的な「連邦国家」を創設しており、プーチン政権はこれを盾に、ベラルーシへの影響力を行使している。ベラルーシがこのところ、欧米や中国への接近を強めていることから、プーチン政権は軍事的圧力を強める狙いもあったようだ。
「欧州最後の独裁者・ルカシェンコ大統領がロシアの圧力の防波堤になっていますが、彼が交代すれば、ロシアは国民投票を実施してベラルーシ併合を目指す可能性がある」(モスクワの外交筋)
 英国程度の面積を持つベラルーシがロシア連邦に編入されるなら、3年前のウクライナ領クリミア併合よりはるかに大きな衝撃となる。ロシアはすでにベラルーシ併合の秘密計画を策定中との情報もあり、今後、欧州情勢の焦点になりそうだ。


 中国とは正反対に各国が仮想通貨を容認

 アメリカの著名な経済学者も、モルガンスタンレーも「ビットコインは詐欺」と認定した。
 発足から僅か3年で価値は125万倍に膨らみ、9月15日時点での時価総額は5兆6000億円。このうちの90%を中国人が買った。そして9月8日、中国は3つの仮想通貨の取引所を突然閉鎖した。正確に言うとICO(イニシャル・コイン・オフェリング)を禁止したのである。
 ICOは企業や団体が仮想通貨を発行して資金を集めることだが、これで当局が把握できない資金調達が可能である。独裁体制下では金融政策も通貨供給量も中国共産党がコントロールしているため、ビットコインが「第2の通貨」となると中央銀行は不要になる怖れありと懸念した。
 それでも先進国は仮想通貨決済がますます伸びていくとし、前向きである。その認識は「仮想通貨」というより「デジタル通貨」と呼称し、たとえば英国中央銀行は、金融政策の効力を堅持しながらも市場への導入にいかに取り組むか、積極的な検討に入った。
 ロシアは「イーサリアム」の技術を駆使した新しいシステムを構築し、プーチン政権は「デジタル通貨」発行に前向きだ。スウェーデンは「eクローナ」の発行を一八年に国民投票で決める。エストニアは「エストコイン」の発行計画がある。
 しかし仮想通貨は国籍がなく、したがってリスクがあまりにも大きい。それでも利便性を活用するデジタル通貨を各国の中央銀行が前向きに検討し始めたわけで、中国とは正反対の方向にある。


 中国政府の思惑が絡むロシア資源企業買収

 中国の「民間企業」(事実上は共産党の先兵)である「中国華信能源」(葉簡明CEO)は、ロシア最大の資源企業「ロフネフツ」の株式14.2%を取得し、ロシア政府、BPに次いで第3位の株主となる。買収資金は93億ドルだ。
 中国は5000万ドルを超える海外企業の買収を事実上、禁止してきた。王健林率いる万達集団など、予定していたハリウッド映画や北欧の映画館チェーン買収ができず頓挫している。安邦保険なども海外買収案件のことごとくが暗礁に乗り上げた。なぜこの例外的な買収が可能なのか?
 中国はサウジのアラムコの大株主を目指しており、その取引条件は人民元建て取引。アメリカのドル基軸体制を迂回路で挑戦する野心がある。石油先物取引を人民元建てとする取引所を近く上海に開設する。中国は世界最大の原油輸入国である。つまりロフネフツの株主入りは、こうした資源戦略の一環なのである。
 ロフネフツはロシア最大の資源企業で、世界一の石油とガスの埋蔵量を誇る。ソ連時代からの資源企業といえば、ガスプロムとルークオイルだった。このロフネフツなる新興企業は、ソ連崩壊のどさくさに多くの国有企業がクーポン、バウチャー方式で売りに出され、マフィアと組んだ新興勢力が、旧社員等からそれらを二束三文で買い集め、合法的に旧国営企業を乗っ取った時代に設立された。
 1998年、ミハイル・ホドルコフスキーというユダヤ人が「ユコス」を設立し、買収につぐ買収で有数の資源企業となった。豊富な資金を元にホドルコフスキーはプーチン批判を始め、プーチンの政敵や敵対的政党に多額を寄付した。しかも大統領選挙への出馬をほのめかすなど、プーチンにとって明らかな邪魔となったため逮捕し、ついでにユコスをロフネフツが買収、すぐにプーチン系の大企業に変身した。そのロフネフツの大株主に中国が加わるのである。


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