ダミー
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 政界を吹き荒れる根拠なき早期解散説

 秋近しになって自民党内で「9月22日衆院解散・10月22日総選挙」説が突如として出てきた。
 その第1の理由は、10月22日に衆議院の愛媛3区と青森4区、さらに8月14日に長島忠美氏が死去した新潟4区とトリプル補欠選挙が行われる。ここで負けると「安倍おろし」が加速しかねないため、同時に総選挙をやってしまおうということ。第2の理由は、野党第1党の民進党が枝野幸男氏と前原誠司氏が争う代表戦(9月1日投開票)を控え、党内が分裂気味で衆院選の準備どころではないことだ。東京都議選で圧勝した小池新党が、本格的な国政選挙の準備に入る前にやってしまおうという魂胆も働く。
 また、来年の衆院選では“追い込まれ解散”のイメージが強くなる。来年秋の解散を言っていた公明党の山口那津男代表がいつの間にか「常在戦場の心構えで臨もう」と言い出した、などとってつけたような理由も並ぶ。いずれにしても、次が議席を減らす選挙ならこの時期が最も負けが少ないというわけなのだ。
「解散風」には言い出しっぺがいる。国会議員なのか、自民党職員なのか、報道関係者なのか。本人が名乗り出るわけでないから無責任なものである。アドバルーンを揚げて後は成り行き任せなのだ。ただし、今度の解散風は「台風」にまで発達しない。
 安倍晋三首相は内閣改造後の記者会見で「原点に戻って経済再生に傾注したい」と述べている。安倍内閣にとって最大の政策課題は「1に経済、2に経済、3に経済」であるのは、菅儀偉官房長官が常日頃言っていることだ。
 ところが、改造で経済再生相に抜擢した茂木敏充担当相が事務方に経済対策の策定を指示したという話は聞こえてこない。ニューヨーク株式市場のダウ平均株価は金余りと堅調な企業業績で過去最高の時価総額近辺であるのに、東京市場は米朝関係悪化のあおりをまともに受け、日経平均が2万円を割り込んで1万9500円前後まで落ち込んだ。こんな状況下で早期解散の選択肢はあり得ない。
 さらに、首相官邸は9月に安倍首相の外遊日程をどんどん入れてきている。6日に安倍首相はロシア・ウラジオストクで開催される第3回東方経済フォーラムに出席、プーチン大統領と会談する。中旬にはインドを訪れ、モディ首相と会談、インド版新幹線建設など経済案件について協議する予定だ。下旬にはニューヨークの国連総会に出席するほか、サウジアラビア、アラブ首長国連邦など中東訪問も検討されている。今の安倍首相の腹の中には選挙の「セ」の字もないはずだ。


 石破外しがじわじわ効果、菅官房長官に「黒幕説」

 内閣改造で河野太郎外相の抜擢、野田聖子総務相の起用とともに目を引いたのが、小此木八郎国家公安委員長、梶山弘志地方創生相、斎藤健農水相の3人の初入閣。来年9月の自民党総裁選への出馬が確実視される石破茂元幹事長の力をそぐ狙いが明らかで、その「仕掛け人」とみられているのが菅義偉官房長官だ。
 石破派の斎藤氏は衆院当選3回。派内には閣僚未経験の先輩議員が多数おり、斎藤氏の入閣で石破氏の面子は丸潰れだ。また、小此木、梶山両氏はもともと石破氏と近かったものの、石破派の結成には加わらず、距離を置き始めていた。入閣させることで、両氏を石破氏から完全に離反させようとの計算が読み取れる。そして、政界関係者からは「安倍晋三首相に知恵をつけたのは、菅氏に間違いない」との声が漏れ伝わる。
 菅氏の実家は秋田の農家で、父親はもともと改革志向だったが、邪魔したのが地元の農協。それを見て育った菅氏は農協改革に熱心で、農林部会長としてこれを進めた斎藤氏を評価しているとされる。また、菅氏は高校卒業後に上京し、段ボール工場勤務を経て、小此木氏の父・彦三郎元建設相の秘書となって政治のイロハを学び、横浜市議に転身。国政進出の道を切り開いている。
 一方、彦三郎氏と梶山氏の父・静六元官房長官は盟友関係にあった。1991年に海部俊樹首相退陣のきっかけとなった、政治改革関連法案を廃案にしたのも、当時衆院特別委員長の彦三郎氏と国対委員長の静六氏のコンビだ。菅氏は秘書時代から静六氏と面識があり、こうした関係から、96年の衆院選に初出馬した際、静六氏は現職の官房長官として応援に駆け付けている。菅氏にとって2人は政治の師。八郎、弘志両議員は恩師の息子だ。
 もともと菅氏は石破氏との関係も深かった。第2次安倍政権発足直後、周囲に「いつかはわからないが、安倍首相の次のリーダーは石破さんだ」と漏らしていた。2012年の総裁選で決選投票の末に逆転で敗れ、幹事長に就いた石破氏も、苦手な安倍首相への報告は遠のきがちだったが、必要な情報は伝わるよう、菅氏とは頻繁に連絡をとっていた。
 それだけに菅氏の今回の仕掛けは、石破氏を完全に見限った証しでもある。石破氏もわからないはずもない。石破派関係者によれば、改造当日の石破氏は、入閣した3人の能力を評価しつつもたいそう不機嫌だった。


 事故多発のオスプレイ容認、対米追従ここに極まれり

 オーストラリアで3人が死亡する墜落事故を起こした米海兵隊の垂直離着陸輸送機「オスプレイ」が、飛行中止を求める地元住民を無視する形で北海道での日米共同訓練に参加した。事故を受け、飛行自粛を求めた防衛省は一転して飛行を容認し、対米追従の姿勢を鮮明にしている。
 オーストラリアで墜落したのは沖縄の普天間基地所属の機体で、昨年12月には別の機体が沖縄の海岸に墜落した。1年足らずの間に損害額が200万ドルを超える「クラスA」の事故が2回起きたことになる。
 防衛省はオーストラリアでの墜落事故翌日の8月6日、米側に飛行自粛を要請したが、在日米軍は翌7日から普天間基地で飛行を再開させ、さらに米海兵隊が9日付でオスプレイの「安全」宣言を出すと一転して11日、飛行再開を容認した。
 事故原因が明らかになっていないにもかかわらず、防衛省は「米軍の初期調査で安全性を確認した」「機械的・構造的およびシステム上の欠陥はないと米軍が認識している」と米軍の言い分を鵜呑みにするだけ。
 オスプレイの安全性をめぐり、対米追従するのは今回が初めてではない。開発段階で墜落事故が相次いだオスプレイが2012年に普天間基地に配備されるのに合わせて、防衛省は「オスプレイの『クラスA』の事故率は1.93で、海兵隊全航空機の事故率より低い」とするパンフレットを作成し、防衛省のホームページにも掲載した。
 この数字をもとに防衛省は国会や沖縄県でオスプレイの安全性を強調してきた。ところが、海兵隊は最近5年間のデータをもとにオスプレイの「クラスA」の事故率は3.44で、海兵隊全航空機の平均2.63件を上回ることを公表している。その上で防衛省が採用した数字について「誤りがある」としている。
 こうした事実を日本の複数の新聞が報道しているにもかかわらず、防衛省は「米国防総省から提供された数字」と開き直って事故率の数字を訂正せず、「オスプレイに重大事故は少ない」という事実無根の話を撒き散らしているのだ。
 防衛省幹部は「問題は米軍への配慮だけではない。陸上自衛隊もオスプレイを17機購入することになっており、佐賀空港への配備を計画している。今さら『危険な飛行機です』などと言えるはずがない」と話す。
 実は自衛隊のオスプレイ導入は海兵隊のオスプレイ配備に反対する沖縄を説得するための政治決定であり、自衛隊は導入について検討さえしていなかった。日本政府はどこまで米国の言いなりなのか。


 働き方改革で格差縮小へ企業は経営改革の中心に

 安倍政権の「働き方改革」が具体化に向け動き出す。長時間労働・残業や低生産性などが経済成長の足枷になるとして多種多様な働き方が広がる中で、残業規制など労働時間短縮に取り組む。昨年8月3日に発足した第3次安倍第2次改造内閣で「働き方改革担当相」が新設された。推進役である「働き方実現会議」の議論を踏まえ、去る8月3日に発足した第3次安倍第3次改造内閣は、その関連法案の成立を目指す。
 大手企業は独自の働き方改革に動いている。主に自動車、運輸、情報通信などの業界のほか、過重労働が問題とされる宅配便業界では、配達料の値上げ、再配達規制、配達時間指定の見直しなど労働時間対策を打ち出した。他の業界でも深刻な人手不足への対応としてAI、ICTなど先進技術の導入を急ぎ、就業構造の転換を加速させようとしている。
 同時に人材開発や流動性を高め、より質の高い人材確保が必要になる。
 働き方改革は経団連や連合といった大企業向けだけでなく、投資増やネットワーク強化に単独で取り組めない中小企業に政府が手厚い支援を行うことが大事だ。そのためには生産性向上、経済成長のみを優先するのではなく、所得格差の縮小による労働者の生活満足度を高める施策が重要だ。さらに教育費の支援拡大で若者の進学率を高め、優秀な人材を輩出する大学教育の質的向上も必要だ。次の臨時国会では関連法案に対して活発な議論をするとともに、企業は経営改革の中心に位置づけ、労使で日本の新たな働き方の姿を作り上げることが重要だ。


 審議委員はリフレ派一色、日銀の資産膨張どこまで

 日銀の総資産は、6月末で502兆円と国内総生産(GDP)とほぼ並んだ。ドル換算でFRB(米連邦準備制度理事会)を上回る規模で、現状のペースが維持されれば、来年にはECB(欧州中央銀行)を抜き世界最大の中央銀行となる。
 その鍵を握る政策委員会審議委員の木内登英氏が7月23日に5年の任期を終え、古巣の野村総合研究所に戻った。木内氏は一貫して黒田東彦総裁が進める異次元緩和に警鐘を鳴らし、国債の年間買い入れ額を80兆円規模から45兆円に減額するよう提案していた。
 木内氏が日銀入りしたのは民主党政権下の2012年7月。白川方明前総裁時だった。リーマン・ショック、東日本大震災と続いた危機の最中、日銀は矢継ぎ早に金融緩和に踏み切るが、1ドル=79円を記録するなど急激な円高は止められなかった。
 総選挙を経て安倍政権が発足、日銀総裁に黒田氏が任命されるや、打ち出されたのが、「バズーカ砲」と呼ばれた異次元緩和だった。黒田総裁は「2年程度で、消費者物価上昇率を2%にする」と豪語し、戦力の逐次投入はしないと言い切った。
「木内氏は本来、金融緩和論者だが、2年程度と期限を切って消費者物価2%達成は困難と見ていた。2年程度の期間を削除した独自案を提示するなどし、日銀内では木内の乱と呼ばれた。結果は木内氏の見立てが正しかった」(日銀ウオッチャー)
 圧巻は、昨年1月29日のマイナス金利導入を決めた政策決定会合で、5対4の小差で執行部案が承認された時だ。反対した木内氏をはじめとする4人は、すべて白川総裁時代の任命者だった。木内氏と同時にやはり大規模緩和に慎重だった佐藤健裕氏も退任し、日銀の審議委員はすべて安倍政権発足以降の任命者となり、リフレ派一色で染められた。日銀の膨張はどこまで続くのか。


 ETF買い増す日銀に出始めた「苦情」

  その日銀は、昨年7月に上場型株式投信(ETF)の年間買い入れ額を3兆3000億円から6兆円に増額した。あれから1年余りが経つ。
 ETFの買い入れは白川方明総裁時代の11年6月に始まった。08年のリーマン・ショック後の金融緩和策の一環だった。買い入れ額は年間で4500億円。それが黒田体制になると周知の通り「異次元的金融緩和」が展開される中でETFの買い入れ規模も段階的に増額されていった。
 今、改めてその功罪が問われ始めている。6兆円への増額から1年余りで(日経平均)株価は、2割方上昇した。黒田東彦総裁は「時価総額で保有比率は非常に少ない。言われているような副作用は起こっていないと認識している」としている。
 しかし、「(我々の試算では)日経平均の構成銘柄中14企業で日銀は、実質的に10%以上の株式を保有する大株主として君臨している。株価形成や企業統治の面で歪みをもたらしていると言わざるをえない」とするニッセイ基礎研究所の出井真吾チーフ株式ストラテジストだけでなく、有識者の指摘は共通している。
 そしてついに親戚筋(?)からも「苦情」が出始めた。日本取引所グループの最高経営責任者の清田瞭氏が、放置できぬとばかりにこう切り出した。「(ETF買いは)長期的に続けるべきではない」──。現時点で黒田総裁は黙殺。だが、有識者は清田CEOと黒田総裁のやりとりを強く望んでいる。


 危機感の薄い地銀に一喝、金融庁長官の懸念が顕在

 異例の3年目に突入した金融庁の森信親長官。続投が決まった直後の7月中旬、全国の地銀頭取たちを前に、森長官は次のように言い放った。
「引き続き人口の多い地域に出て行き、低金利攻勢により量的拡大を図るというものも存在しているが、他の銀行よりコスト競争力が著しく高い銀行は別として、金融機関の本質的な価値や競争力の向上に結び付くとは思えないことをなぜ続けようとするのか、正直疑問に思っている」
 こうした森長官の懸念はすでに現実のものとなっている。上場地銀82行・グループの今年4〜6月決算は、半数以上となる45行・グループが減益となり、純利益の合計額は前年同期比で25%も減った。日銀のマイナス金利政策の影響が大きく、利鞘は縮小する一方だ。森長官が指摘するように低金利攻勢をかけて量を求める経営に将来はない。
 カードローンやアパートローン、投信や保険の販売についても森長官は、「顧客の利益を顧みないビジネスは長続きしない。顧客の利益をないがしろにすることにより、地域金融機関の本質的な力の源泉である顧客との信頼関係を損なうことを心配している」と強調する。
 森長官の念頭にあるのは、近い将来、日銀が出口戦略に移行する過程で、不測の金利上昇が起こり、金融機関が有価証券投資で過大な損失を被りかねないこと。、低金利貸出に胡坐をかいていた債務者の中には、返済に窮する企業・個人も出かねない。地域金融機関のサバイバルは時間との戦いになっている。


 ベストセラーになっても憂鬱な村上氏の胸の内

 日本で最も高名な投資家といっていい村上世彰氏の初めての書き下ろしである『生涯投資家』(文藝春秋)が売れている。
 インサイダー事件で逮捕される際、「カネ儲けって悪いことですか」と言ってのけた村上氏のコーポレートガバナンスと市場原理を徹底的に優先する投資哲学が披露されている。しかし、不可解なのは執筆動機のアパレル大手「T&Iホールディングス」の株価操縦事件について、一切、触れられていないことだ。
 株価操縦疑惑そのものは、「週刊東洋経済」などの経済マスコミを中心に、「不正はなかった」とする論調が多く、村上氏は前回のバッシング報道の時と比べれば、「自分の主張が受け入れられる下地ができた」と感じるとともに、家族の名誉回復のためにも、「コーポレートガバナンスの浸透と徹底」が、日本経済のためにもなるという自らの信念を書き残したかったという。
 であれば、直近の嫌疑であるT&I株の売買に違法性がなかったことを説明すべきだが、過去の東京スタイル(T&Iの前身)時代の話には1章を割いているのに、2015年の証券監視委調査には一切、記述していない。この件について証券監視委関係者は次のように推測する。
「まだ、調査が継続し、結論が出ていないからだ。カラ売りは違法ではないと主張したのだろうが、『不当な利益を得るため』という動機があり、売買高の5割を超えるような大量売却で市場を乱したとすれば、検察への刑事告発の対象となる。調査継続案件だけに証券監視委を刺激したくないのだろう」
 当局の村上氏に対する目は厳しく、著書がベストセラーになっても村上氏の憂鬱は晴れそうにない?


 ノンバンクに与信を頼る銀行カードローンを問題視

 「多くの銀行では実質的な与信判断を保証会社の審査に依存していることが確認されている」──。こう金融庁幹部が問題視するのは、広告等の自粛にもかかわらず増勢を続ける銀行のカードローンだ。
 銀行が直接融資するカードローンと系列消費者金融会社などノンバンクが焦げ付きを補填する「信用保証」分を合算した5月末のカードローン残高は前年同月比で11%増え、約5兆9000億円と過去最高を記録した。特にノンバンクの「信用保証」残高の伸びは著しく、日本貸金業協会によれば今年4月時点で、ノンバンクが直接融資する1.4倍にまで膨れ上がっている。
 こうしたカードローン急増の一方で、過剰な融資が多重債務者を生んでいるとの社会的批判も高まった。
 銀行がカードローンに力を入れる背景には、マイナス金利政策の導入もあり法人向け融資で利鞘が確保できないという追い詰められた現状がある。特に人口減少で地域経済の縮小に喘ぐ地域銀行では、「すべての地域銀行でカードローンは販売され、一部の地域銀行では収益の柱と位置づけられている」(金融庁幹部)という。言うまでもなく「カードローン金利は平均して年8〜10%程度と高く、利幅の大きい有望市場」(地銀幹部)であるためだ。
 改正貸金業法では、貸付上限金利が29.2%から20%へ引き下げられ、借り入れ可能額も年収の1/3までに制限された。だが、この制限も銀行は対象外。しかも銀行のカードローンには系列の貸金業者の保証が付いており、仮に焦げ付いても銀行の収益には響かない形となっている。
 社会的な批判を受け全銀協では3月に借り入れを煽る広告自粛を申し合わせたほか、加盟行を対象に5月にアンケート調査を実施し、その結果を一部公表し、加盟各行に詳細なフィードバックを行った。
 また、金融庁では地域銀行でカードローンの残高の多いところや伸び率の高い銀行を中心に、サンプル的にヒアリングを実施している。
 その結果からは、「いくつかの銀行では、銀行自身が信用情報機関から個人信用情報を取得し、保証会社とは別に銀行独自の審査モデルで審査を実施しているケースや、保証会社から全体的な代弁率に加え、地域別・チャネル別の代弁率の情報を入手し、具体的な営業方針の見直しに活用している銀行もあった」(金融庁幹部)という。
 しかし、多くの銀行は実質的な与信判断を保証会社の審査に依存しており、全銀協では「秋以降には再度アンケート調査を実施するなど、必要なアクションをとっていきたい」(平野信行会長)としている。


 海外基準キャッシュレス、ペイウェーブは根付くか

 去る7月18日、ビザ・ワールドワイド・ジャパン(以下Visaジャパン)が都内ホテルで開催した「Visaデビット発行500万枚記念イベント」では、Visaデビットのカードを発行している15行の担当者が壇上に整列した。
 ひと口に500万枚といっても、あくまで発行枚数であり、実際に使用しているアクティブ・ユーザーは、まだその一部であろう。また、同じデビットカード採用といっても、セブン銀行ではJCBのデビットを採用し、Visaは採用していない。おそらく手数料等の条件が、Visaジャパンは最大手だけに強気なことが推測されており、セブン銀行はJCBを選択したのではないか。
 話を戻すと、500万枚イベントで挨拶したVisaジャパンの安渕聖司社長は今後の課題の中で「ペイウェーブ」を掲げていた。
 曰く「ペイウェーブはクレジットカード、デビットカード、プリペイドカードすべてに対応し、今年3月には、2018年からマクドナルド全店の約2900店で、ペイウェーブに対応していただけることも発表しています」とし、ペイウェーブ拡大を宣言していた。要は、来年からマクドナルドでペイウェーブ機能を搭載した電子マネーほかのカードで支払いができるというわけだ。
 ペイウェーブとは、海外では一般的な決済方式。対して、日本では日本特有の規格であるフェリカ、平たく言えばおサイフケータイや「ナナコ」「ワオン」「スイカ」など、電子マネーでの決済方式が主流で、昨秋、iPhoneがフェリカを採用したことで、今後の拡大が見込まれている。さらに、フェリカ陣営はインバウンド需要も睨み、海外から来る人たちが持つスマホにもフェリカを搭載させたい意向を持っている。
 翻ってVisaはグローバルでワールドワイドな決済ブランド。東京五輪も3年後に迫り、デビットカードの利用やペイウェーブの利用を、日本でも何としても拡大したいというわけだ。前述のマクドナルドほか、三井住友銀行のVisaデビットにもペイウェーブを搭載している。
 ちなみにペイウェーブの利用率は、豪州で76%、ニュージーランドで51%、シンガポールで35%、英国で32%だという。キャッシュレス化競争の中、Visa陣営のペイウェーブは、果たしてどこまで日本に根付くのか──。


 底入れ感の製鉄大手だか先行きは米中の動向次第

 ようやく底入れの兆しが見えてきた国内製鉄メーカー。2017年3月期は急騰した原料価格の製品への転嫁が遅れ、各社の業績が軒並み悪化。新日鉄住金は単体で4期ぶりに営業赤字に転落した。18年3月期は新日鉄住金が72%増の3000億円、神戸製鋼所は550億円の黒字転換(前期は191億円の赤字)と、それぞれ業績が大きく改善する。新日鉄住金とJFEHDは、原料市況の行方が不透明だとして、今期の業績見通しを公表していなかった。
 しかし、まだ安心するのは早い。日本鉄鋼連盟の進藤孝生会長(新日鉄住金社長)が定例記者会見で「中国経済がやや過熱している。ソフトランディングができるか関心を持って見ている」と語ったのは7月のこと。
 世界鉄鋼協会によると、今年1〜6月の世界粗鋼生産は過去最高を更新。牽引したのは世界の粗鋼生産の半分を占める中国だ。同国も過去最高を更新した。公共投資などが堅調なためだが、「秋の共産党大会で人事が大幅に刷新される。このため、地方政府は自らをアピールしようと、地元経済が堅調であることを誇示する。しかし、党大会が終わると、一気に落ちるかもしれない」(新日鉄幹部)と中国の“お化粧”相場を気にかける。
 また、米トランプ政権の通商政策も懸念材料だ。トランプ政権が中国に鉄鋼輸入制限を検討している。米国は世界最大の鉄鋼輸入国だ。中国の対米輸出は1〜5月で11.6%減の31万トンと減っている。しかし、秋の共産党大会が終わり、米国から閉め出されて余った割安な中国製鉄鋼製品が世界中に溢れれば市況下落に直結する。実際、16年春まで続いた中国発の「鉄冷え」で世界の鋼材市況は値崩れした。
 また、トランプ政権が輸入制限を発動すれば、その影響は鉄鋼製品の需給面だけの問題にとどまらない。欧州連合(EU)は米の鉄鋼製品の輸入制限に対する報復措置を検討している。「EUが別の産業で報復する事態になれば『パンドラの箱』を開けることになる」(鉄連の進藤会長)と危機感を強める。
 日本勢は生産全体の4割を輸出に依存しており、報復の連鎖で保護貿易の動きが広がれば影響は大きい。かつて新日鉄住金を買収しようとしていた最大手のアルセロールミタルの業績も復活してきた。規模に劣る新日鉄住金がどう対抗するか。
 業績がようやく回復してきた国内製鉄各社は、息つく間もなく中国や米国の動向に振り回されそうだ。


 先端デジタル機器分野は落日の日本、独走の韓国

 落日の日本勢を尻目に、先端デジタル機器分野で韓国勢が勢いづいている。サムスン電子、LGディスプレーが7月にそれぞれ発表した巨額の設備投資計画がそれを象徴している。事業再建の道筋も定まらず、身動きの取れない日本勢とは対照的で、優勝劣敗の構図が一段と鮮明になってきた。
 サムスンは韓国国内での半導体生産拡大に向けて新たに約2兆円の投資を決めると同時に、中国・西安の半導体工場にも約1兆円を投じる計画も打ち出した。スマートフォンなどで画像や文書を記録するNAND型フラッシュメモリーの増産が狙いだ。LGも負けじと積極投資に乗り出す。中国と韓国で約9600億円を投じ、有機ELパネル生産を増強する。中でも中国においては、広東省広州市に中国企業との合弁で、中国初となる大型有機ELパネル工場を新設する。合弁先や生産開始時期は未定ながら、有機ELパネルは今後、液晶パネルに置き換わる成長分野であり、先行する有機ELパネル事業を一段と加速する。
 積極投資に動く韓国勢に対し、デジタル機器分野で日本勢は完全に出遅れた。東芝、さらにジャパンディスプレイ(JDI)は、ともに経営再建策のとりまとめに追われるのが精いっぱいで、韓国勢の独走になす術がない。
 フラッシュメモリーの世界シェアでサムスンに次ぐ第2位の東芝は、売却する半導体事業をめぐって合弁相手の米ウエスタンデジタル(WD)と係争中であり、政府主導による「日米韓連合」を含めた売却先もいまだ定まらない。JDIに至っては赤字経営からの脱却が急務で、8月9日に全社員の3割に当たる約3700人の人員削減と国内外の工場統廃合などからなる構造改革計画を発表したばかりだ。東入来信博会長兼最高経営責任者(CEO)は「これが最後のチャンス」と収益基盤確立を急ぐ。しかし、主力のスマホ向け小型パネルは米アップルなどが液晶から有機ELに切り替えており、JDIが有機ELパネルの量産に対応できていない中で、サムスン、LGの2強を巻き返すのは困難だ。
 デジタル機器分野はスケールメリットを追求した大型投資を、先行きの需要を睨みながらスピード感を持って決断することで勝負が決まる。東芝が四日市工場での半導体投資について、WD抜きに単独で踏み切る判断をしたのも危機感の表れだ。日本勢の“敵失”の隙を突くような韓国勢の猛攻を前に、ライバルの背中はどんどん遠ざかる一方だ。


 大手旅行代理店が後手、インバウンドへの対応

 訪日外国人・年間3000万人の大台乗せも視野に入る中、JTB、近畿日本ツーリストや、クラブツーリズムを傘下に持つKNT?CTホールディングスなど、老舗の大手旅行代理店の業績が振るわない。インバウンド取り込みの対応の遅れと、民泊の普及がその原因だ。
 インバウンド需要を取り込むためには、それぞれの国でマーケティングをして訪日旅行ニーズに対応した商品を作る必要があるが、「ほとんど手つかずの状態」(証券アナリスト)だという。現地に多数のスタッフを置いているものの「ほとんどが海外を訪れた日本人への対応に終始している」(同)のだそうだ。
 さらに、民泊の普及も既存の代理店を脅かす。ホテルより宿泊料金が安く、特にリピーターからの要望が高い「コト消費」に関しては民泊に大きく分がある。来年には民泊が全国で解禁される法改正もあり、米エアビーアンドビーや、中国の最大手途家(トゥージア)などもさらに営業エリアやサービス拡張に乗り出している。いずれもネットからの申し込みで、昼夜を問わずできるため、「旅行代理店の長蛇の列にイライラしたり、高い手数料を取られる心配もない」(ネット旅行会社幹部)。
 KNTはかつて日本旅行と経営統合を検討したが、主導権をめぐって頓挫した経緯もある。ネットや民泊の台頭といった業界の構造問題に対応できない場合、生き残りのための再編を迫られるかもしれない。


 またぞろ始まった小池知事の人材使い捨て

 豊洲市場への移転問題を検証した東京都の市場問題プロジェクトチーム(PT)は、小池百合子知事に第2次報告書を提出して解散。小池都知事の人材使い捨てが始まる。手始めは小島敏郎PT座長(弁護士、元青山学院大学教授)だ。小島氏は座長としてPTをまとめ上げられず、知恵袋のPT委員だった建築エコノミスト森山高至氏の小島氏への「抗議辞任」を許し、都議選に出馬させた不手際がある。
 それにしても小池知事は、豊洲市場の場外市場の「千客万来」の整備(業者は撤退検討中)、築地場外市場の振興、豊洲移転後5年を目途として築地市場の市場機能復活計画、市場跡地への「食のワンダーランド」の設置など「共倒れリスク」のある事業のリップサービスてんこ盛り。小池都政の政策乱立を懸念するのは、共産党も自民党も同じ。小島氏も複雑な気持ちだろう。
 都議会を与党化した小池知事は都議選後、都議会の市場問題特別委の廃止を決めた。豊洲も汚染ゼロ化は不可能とさじを投げ、再アセスメントは不要とした。この知事の変貌ぶりには、市場問題でいじめ抜かれ、少数野党に転落した自民党都議団も開いた口がふさがらない。だが、小島氏をはじめ顧問団の“忠犬”たちは最後まで尾を振る。とはいえ市場移転が決まっては後の祭り。小島氏も女帝の弾除けに過ぎなかったのか。
 都の新市場建設協議会は、7月末に反対派の仲卸向けに「裏協議会」を設けたが、都から出てきたのは知事代理人の小島氏。「卸売市場法が改正されたら、仲卸は壊滅する」という恫喝的な説得も飛び出し、築地残留派の小池シンパだった関係者は「小小」両氏に対して「平気で嘘をつく人間だったな」と思い始めている。仲卸団体の東卸は8月16日の臨時理事会で、小島氏が事前に示した移転を急ぐ知事への協力方針をあっさり多数で否決した。


 詐取で逮捕されたイチローの先輩経営者

 「名古屋のワルの出世頭。グループ売上高90億円、4000台の物流ネットワークを築き、若手経済人として期待される存在だったのに、なんとバカなことをしたものか」
 こう肩を落とすのは、8月8日、静岡県警に逮捕された愛商物流代表の阿部観容疑者を知る物流会社社長。逮捕容疑は、会社で使うと偽って携帯電話96台を詐取したこと。その内60台が指定暴力団山口組系弘道会の組員に流れていたという。
 阿部容疑者は名古屋の野球の名門「愛工大名電」の元高校球児。愛工大名電は、イチロー、工藤公康、山崎武司といったスタープレーヤーを生んでおり、それだけでなく社会に出て成功した人も多い。そこには中村豪元監督の厳しい教えがあったということで、阿部容疑者は『最強の人材育成メソッド』(総合法令出版)という本も上梓している。
 高校卒業後、愛知県内でさまざまな職業に携わった後、20代後半で上京、東京都町田市で軽貨物運送業「有限会社アクティサービス」を設立したのが成功の第1歩だった。阿部容疑者が目指したのは、軽貨物運送業のグループ化。ドライバーの自主性を尊重して独立を応援。そして、首都圏ナンバーワンの軽貨物物流組織を構築し、ヤマト運輸、佐川急便などと業務委託契約を結んでいた。
 そこそこのワルであったのは、阿部容疑者本人が自著の中で認めている。しかし、愛商物流を立ち上げてからは事業に没頭、その種の付き合いが“御法度”なのは、誰よりも知っていたはず。「断ち切れない関係」が残っていたのか。


 フェイスブックに若者離れ、日本の特異性浮き彫りに

 日本でフェイスブックの若者離れが進んでいる。総務省の調べで、2016年は10〜20代の利用率が落ち込む一方、中高年層の伸びが目立っていることが明らかになった。全世界で前年比20%増の約20億人が利用する巨大ソーシャルメディアだが、日本の特異性が浮き彫りになった。
 総務省が最近発表した「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」によると、フェイスブックの16年の利用率は、32.3%で前年に比べてやや減少した(0.2ポイント減)。これを世代別に見ると、20代が6.8ポイントも減って54.8%、10代も4.4ポイント減の18.6%と、若年層の利用が激減。30代51.7%、40代34.5%は、ほぼ横ばい。これに対し、50代は4.8ポイントも伸びて23.5%、60代も1.2ポイント増の10.6%になった。
 利用世代の中心である若者にとって、中高年層の増加は両親や上司の世代が新たに参加することを意味する。そのため「親に交友関係を知られたくない」「上司や先輩から友達リクエストが来るのがイヤ」「同級生や仲間だけで情報を共有したいのに……」など、若者がフェイスブックから離れる傾向は以前から指摘されていた。それが、今回の調査で数字の上から裏付けられた。
 一方、ツイッターの利用は、10代61.4%、20代59.9%に対し、30代以上は30%以下に過ぎない。日本の若者は、実名制でリアルな友人関係が特徴のフェイスブックから、著名人や芸能人の興味などでつながるツイッターにシフトしているようだ。


 ブルーライトが主原因、若者を襲うスマホ健康障害

 現代社会の必需品になったスマートフォン。便利さの一方で、最近は健康に与える悪影響が医学界から指摘されている。特に、若者への影響が大きいという研究が次々に報告されている。
 中でも特に影響が現れやすいのが睡眠と目だ。睡眠障害を研究している精神科医の間では、スマホやパソコンによる睡眠障害が中高生に増加しており、学業や日常生活に支障をきたし、治療が必要なケースが多いという。
 その代表的なものが「既日リズム障害」だ。睡眠障害の1つで、朝起きて夜眠るという自然な睡眠リズムが乱れて、朝、無理に起きると頭痛や眠気、倦怠感などの身体的な不調が出るというもの。そのため、不登校や遅刻、欠勤などを繰り返し、社会生活ができなくなってしまう。
 その原因が、スマホなどの通信機器の液晶ディスプレーから出ているは青色光(ブルーライト)だ。波長が380〜500ナノメートルのこの光は、発光ダイオードで有名だが、睡眠に関係するホルモン、メラトニンの分泌に悪影響を与えることが研究から明らかになりつつある。
 また、以前から問題になっている「スマホ老眼」は、本来なら老眼にはならない30代以下の若者に、近くが見えないという老眼症状が出るというものだ。これは画面を見続けることで、ピント調整能力が低下するのが原因で、ブルーライトとは直接関係はない。
 ブルーライトの悪影響は他にも、認知機能の低下や肥満、がんのリスクを上げるという研究もあり、若者が夜遅くまでスマホを使う生活はできるだけ避けるほうが無難だ。


 日本郵船の独禁法違反に豪当局が初の刑事罰適用

 オーストラリア連邦裁判所はこのほど、日本郵船が自動車の海上輸送運賃をめぐりカルテルを結び競争・消費者法(独占禁止法)に違反したとして、2500万豪ドル(約22億円)の罰金支払いを命じた。独禁法違反の罰金としては、同国で2番目に高額。同国では2009年にカルテルに対する刑事罰規定が導入されたが、これが適用された初めてのケースとなった。日本郵船は昨年開かれた公判で有罪を認めていた。
 日本郵船は09〜12年の間、アジアや北米、欧州などからオーストラリア向けの自動車の海上輸送運賃で他社と調整していた。日本郵船が運んでいたのは日本メーカー製の自動車。競争・消費者委員会のシムズ委員長は「オーストラリアでは自動車の多くを輸入に依存しており、長年にわたるカルテルは極めて懸念すべき問題だ」と批判した。
 これまでカルテルをめぐるオーストラリアの刑事法規制は複雑で、簡素化が求められていた。今回、刑事事案で勝訴したのを受け、独禁当局がカルテルの摘発に積極的に動き出すのではないかとみられている。
 ただ、日本郵船は米国でも14年に自動車の海上運賃を不正に調整したことを認め、5940万米ドル(会社発表では約70億2300万円)の罰金支払いに同意。日本の公正取引委員会からも131億円の課徴金納付命令を受けている。海運カルテル摘発の動きは国際的な広がりを見せており、オーストラリアの独禁当局にとっても比較的扱いやすい事案だった可能性がある。
 オーストラリアではカルテルに関与した企業だけでなく、個人についても刑事罰が問われるようになり、最長10年の禁錮刑が科される。今回、個人は訴追されなかったが、今後は日本の幹部社員が大量に収監されている米国同様、日本企業の社員に実刑が科されるリスクも出てきた。


 ティラーソン国務長官も? トランプ政権は離脱続出

 トランプ政権の混乱が増している。バノン首席戦略官までもが退任した。バノン氏は保守系ニュースサイト「ブライトバート・ニュース」の会長に復帰し、外からトランプ大統領のために戦うと発言しているが、主要閣僚とトランプ大統領の間の信頼感は大きく損なわれている。
 最大の注目は国務長官のティラーソン氏で、年末までには辞任する可能性も取り沙汰されている。彼の不満は彼を補佐する国務省内の主要人事が進まない上、トランプ氏が国務省の予算を大幅に削っているために外交政策を支えるスタッフが十分でない点にあるといわれる。
 だが、もっと大きな問題はトランプ氏への信頼感の欠如だ。きっかけは先のG20の首脳会議での夕食会だった。ここでトランプ氏がプーチン大統領と2回目の会談を行った。その際、ロシア人通訳のみを入れた話し合いだったために米国側に記録がなく、ロシアがトランプ氏の弱みをかなり握っており国務長官にも話せないことが隠されていると実感したためだというのだ。
 セッションズ司法長官も、ロシア疑惑は深刻で、これは正しく解明されなければならないという確信を持つようになっている。彼はアラバマ州出身の上院議員でトランプ氏を最初に支持したことで有名だが、そもそもはバノン氏のほうがトランプ氏よりも大統領候補にふさわしいと考えていたほどだ。政権内で有能な閣僚を使いこなせないトランプ氏の暴君ぶりで任期は全うできるのか。


 ロシアと北朝鮮のハッカー集団の実態

 北朝鮮のハッカー部隊が中国遼寧省の丹東と瀋陽のビジネスホテルに長期滞在し、世界に向けてハッカー行為を行い他人の銀行口座から預金を横取りしている。専門部隊は6000人と推測されている。先般の「ワナクライ」事件では世界99カ国で被害が確認された。
 このハッカー集団は「ラザルス」と呼ばれ、世界の銀行を狙うが、ロシアのセキュリティー専門企業カスペルスキーラボの調査で北朝鮮だと確定されておりサイバー攻撃の技術は相当向上していると報告された。
 ロシアのハッカー軍団も米国大統領選挙では民主・共和両党の選対本部にハッカー攻撃を仕掛けた。
 英紙ロンドンタイムズ(8月15日付)によればロシアのハッカー部隊「ファンシー・ベア」は欧州の豪華ホテルに陣取り、ホテルのW??F?を使って宿泊客の情報を盗んでいるという。客の多くが大物政治家、外交官、国際機関や大企業幹部で、貴重な情報をホテルで発信する可能性が高いからだ。判明しただけで欧州の7カ国にまたがり、中東1カ国のホテルでの暗躍も判明した。
 しかしサイバー部隊の世界最大は中国だ。ネット監視のアルバイトを含めると総勢200万人がうごめく。米連邦政府職員とCIA、FBI等と契約する人々(機密情報にアクセスできる資格を持つ)2200万人の個人データを盗み出してきた。
 ところが過去2年間で中国からのサイバー攻撃が下火となった。「90%減った」と報告されている。どうやら重要情報はすでに手に入れたからではないのか。


 ベトナム実業家の拉致疑惑、当事国・ドイツが制裁検討

 共産党による一党独裁が続くベトナムで国営企業に損失を与えた疑いをかけられた実業家が、逃亡先のドイツでベトナムの公安当局に拉致されて同国に強制連行された疑いが浮上している。スパイ映画さながらの出来事に、舞台となったドイツは「ドイツの法律にも国際法にも違反する」と反発。実業家をドイツに戻すようベトナムに強く要求しており、両国関係が険悪化している。
 拉致されたとみられているのは国営石油・ガス企業ペトロベトナム傘下の建設会社のチン・スアン・タイン元会長。会長時代に経営判断を誤り、3兆3000億ドン(約165億円)の損失を発生させたとして責任を追及され、汚職容疑もかけられた。タイン元会長は昨年、国外に逃亡。ドイツに亡命を申請していたが、今年7月23日にベルリンで拉致されたとみられる。ベルリン西部の高級ホテル前で、チェコ・ナンバーの自動車で連れ去られたとの目撃情報がある一方、救急車に押し込められて東欧のある国に運ばれ、そこから空路、ベトナムに連れて行かれたという報道もある。
 ベトナム政府は、元会長は自主的に出頭したと主張し、拉致疑惑を全面的に否定。元会長は7月31日にベトナム国営テレビに登場し、「思慮が浅く、逃亡を企てたが、真実に直面すべきだと考え直した。非を認め、謝罪する」と語った。
 これに対し、元会長のドイツの弁護士は「自白の強要だ。ドイツの警察も政府も拉致された事実を知っている」と訴えた。ドイツのガブリエル外相も「決して受け入れられない」と非難し、制裁措置を検討していることを明らかにしている。


 フジモリ元大統領の長女と次男が主導権争い

 ペルーのフジモリ元大統領の長女ケイコ氏と次男ケンジ氏の政治主導権争いが本格化している。ケイコ氏は最大野党「フエルサ・ポプラル」(FP)の党首で、昨年の大統領選決選投票でクチンスキ現大統領と最後まで接戦を演じた。一方ケンジ氏は昨年の国会議員選挙で再選され、同じくFPの有力リーダーとして存在感を急速に増している。
 姉弟の確執が表面化したのは今春頃から。党の国会対策をめぐって対立したのをはじめ、FPが当時の経済・財政相を辞任に追い込んだ不信任投票にケンジ氏が欠席。その後、同氏は党内の会合に欠席を繰り返した挙げ句、マスコミにFP批判の意見を表明した。ケイコ氏の神経を逆なでしたのは、収賄容疑で収監中のウマラ前大統領にケンジ氏が面会を求め、和解の手を差し伸べたこと。ウマラ氏は2011年の大統領選決選投票でケイコ氏を破ったという因縁があり、FPにとっては政敵。
「弟の駄々っ子ぶりを大目に見ていたケイコも堪忍袋の緒が切れた」(リマの政界筋)とみられ、先頃、ケンジ氏のFP党員資格の60日間停止処分を決定した。ところが、父親のフジモリ元大統領がケンジ氏を全面的に擁護する声明をツイッターで発表したことで、単なる姉弟喧嘩から政界を揺るがす出来事に発展。リマの政治アナリストの間では、21年の次期大統領選をにらみ、ケンジ氏が父親の支援を得てFPの主導権を姉から奪おうとしているとの見方が有力だ。
 フジモリ家の内紛はペルー政治の行方とも絡んで、一層、興味深い。


 ベネズエラがデフォルト? 最大債権国・中国の危機

 原油価格が低迷し、南米の“資源リッチ”ベネズエラで政情不安が続いている。インフレ率が1600%、治安は乱れ、商店襲撃、強奪が続く。石油鉱区を買いまくって強気に投資してきた中国が真っ青になる危機的状況に陥り、中国人移民が音を上げて数万人も逃げ出した。
 中国開発銀行(CDB)1行だけでベネズエラに370億ドルを貸与。他の中国の銀行を含めると推計で450億ドル。ベネズエラの債務は650億ドルだから、デフォルトをやらかすと金融災禍は中国を襲う。
 ベネズエラの通貨ボリバスは07年に100ドル=4600ボリバスだった。現在は80万ボリバス。実に1/174に減価している。
 経済がピークの時代、ベネズエラ全土で不動産開発、ビルラッシュが続いた。建機、健材、セメント、トラックなどを中国が輸出し、しかも首都カラカスの輸入業者は中国人だった。16年にあらかたの新参華僑は故郷の広東へ逃げ帰った。
 中国自慢の「新幹線」プロジェクトも進んでいたが、総額75億ドル、総延長462キロメートルの鉄道建設予定も「将来性がない」として16年に放棄された。ニカラグア運河は中国企業が着工したが、突然、資金繰りがつかず工事が中断した。
 リビアでカダフィ政権がついえたとき、中国人労働者3万6000人が逃げ帰った。100近い中国主導のプロジェクトは砂漠で置き去りにされ、後始末の交渉さえ始められていない。
 実は今、アルジェリアとアンゴラもベネズエラの二の舞いとなりそうな状態だ。いずれも中国企業が食い入っており、アンゴラには5万人の中国人移民のチャイナタウンがある。果たしていかなる結末になるのか。


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