巻頭言
枝廣淳子の


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枝廣淳子氏
(東京都市大学教授/
幸せ経済社会研究所所長)





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望ましいエネルギーの
未来創りを考える時

 原発事故。パリ協定。不安定な世界情勢。私たちの暮らしや経済に必須のエネルギーを、日本はどのように確保し、利用していけばよいのでしょうか?
 資源エネルギー庁では、エネルギー基本計画に関する総合エネルギー調査会「基本政策分科会」を開催し、議論を開始しました。
 また、2050年視点での長期的なエネルギー政策の方向性を検討するため、「エネルギー情勢懇談会」が新たに設置されました。私はこの「情勢懇」に参加することになりました。よい機会なので、できるだけ勉強し、考え、伝えていきたいと思っています。
 よく聞かれるのが、「基本政策分科会とエネルギー情勢懇談会はどう違うのですか?」という質問です。日本のエネルギー政策基本法では、エネルギー基本計画を策定し、3年ごとに検討することを定めています。2014年に策定された現行のエネルギー基本計画を、法律に基づいて検討するのが基本政策分科会です。
 それに対して、エネルギー情勢懇談会は、パリ協定の「今世紀後半のできるだけ早い時期に温室効果ガス排出量を実質ゼロにする」という目標を受けて、あらゆる選択肢の追求を視野に議論を行い検討します。
 日本は、長期的目標として2050年までに80%の温室効果ガスの排出削減をめざしていますから、それが実現でき、かつ経済や社会の発展や安定と両立するエネルギーを考えていくことになります。海外の地政学的動向や技術革新など、さまざまな不確実な要因があることを認めながらも、日本の今後のエネルギーの大きな方向性が議論できれば、とワクワクしています。
 情勢懇のメンバーは8人。東京大学の五神真総長、三井物産の飯島彰己会長、日立製作所の中西宏明会長、小松製作所の坂根正弘相談役、アジア経済研究所の白石隆所長、アジア・パシフィック・イニシアティブの船橋洋一理事長、そして女性が2人で、宇宙飛行士の山崎直子さんと私です。
 私は、この懇談会で少しでもお役に立つために、3つの視点から議論に参加したいと考えています。
 第1は、環境の視点です。この情勢懇自体、パリ協定の野心的な目標を前提としていますから、温室効果ガス排出量は十分に議論されるはずですが、エネルギーはそれ以外にもさまざまな環境問題につながっています。
 第2に、地域の視点です。人口減少と高齢化が進む日本では、地域のエネルギーをどのように賄うかが今後ますます重要になってきます。
 2050年になっても、今と同じように、大型の発電所から全国津々浦々の家庭まで長い送電網で送電しているとは思えません。大容量の安定した電力を必要とする工業用途は2050年になってもまだ大規模発電所に依存しているかもしれませんが、家庭では屋根上の太陽光発電とその頃には安価になっているであろう充電池、または電気自動車を電池代わりに利用することで、多くの家庭がエネルギーの自給自足を実現しているのではないでしょうか。
 そして、それぞれの地域が、地域内で発電した電力を地域内で融通する仕組みを持っていて、送電ロスもなく、海外情勢による輸入エネルギーの途絶があっても地域の暮らしや経済が混乱することもなく、レジリエンスの高い地域になっていると思うのです。
 第3が、市民の視点です。原発事故から六年以上たち、エネルギーに関する意識や、市民が議論する場も減っています。
 これを機会に、できるだけわかりやすく情報や情勢を伝え、みなさんが考え、議論するきっかけを提供したいと考えています。
 望ましいエネルギーの未来を創り出すためには、専門家だけに頼るのではなく、私たち一人ひとりが知り、考え、議論し、発言することが何よりも大事なのです。
(東京都市大学教授/幸せ経済社会研究所所長)


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