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外国人受け入れには「生活者」とみての対策が必要と提言する國松孝次氏


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■──國松孝次・未来を創る財団会長(元警察庁長官)に聞く──


深刻な人手不足には真摯な対応策を!!
「定住外国人の受け入れ」提言の重み

■少子化の影響で、日本各地で人手不足が露呈している。このままでは地域経済が回らなくなるのも目前に迫っている。いや、すでに回らなくなっているところさえある。だが、対応策はある──

 元警察庁長官で駐スイス大使を務めた國松孝次氏が会長を務める一般財団法人「未来を創る財団」が2016年12月末に「定住外国人の受け入れ」に関する提言をまとめた。
 提言の柱は、(1)政府としての明確な定住外国人受け入れ方針の策定、(2)定住外国人を「生活者」として受け入れる理念の明確化、(3)国の責任で日本語教育を行うことの明示、(4)地域の定住外国人交流拠点を整備、(5)未来投資会議等の下に「定住外国人政策委員会(仮称)」の設置──の5つ。
 提言書は國松氏らによって、山本幸三・内閣府特命担当大臣、塩崎恭久・厚生労働大臣、杉田和博・内閣官房副長官らに手交された。また、12月21日には記者会見が行われ、多くのメディアが集まった。
 提言の背景を國松氏に聞いた──。

全国各地の意見交換会で
技能実習制度の矛盾露呈


──なぜ、今、外国人受け入れという提言をされたのですか。
國松 欧州でのシリア難民問題を引き金に、英国のブレグジッド(英国のEU離脱)や米国でのトランプ大統領誕生という流れになり、移民への風当たりが強まっています。一方で日本は、少子化の影響で人手不足がどんどん深刻化し、このままでは社会活動そのものがもたなくなりつつある。こういう時だからこそ、日本として定住外国人の問題を真正面から議論すべきだと思うのです。提言書を読んでいただければ分かりますが、われわれも、どんどん外国人移民を受け入れろと言っているわけでは決してありません。ここで避けなければならないことは人手不足の結果、なし崩し的に外国人が入ってくることです。外国人が多くなること自体が、社会の不安定化をもたらすようなことを言う人がいるが、そんなことはありません。問題なのは、諸々の生活条件が整えられないまま、ズルズルと不安定な生活を始めざるをえなかった外国人が、ストレスを高め、不安や不満を嵩じさせて、それが、社会の不安定要素につながっていくということです。この悪循環を生じさせないように、外国人の生活面への手当をきちんと取ることは、社会の安全・安心のためにも肝要なことです。そのためにも、政府が定住外国人の受け入れ方針を明確にして、きちんとした格好で受け入れていくことが必要だと考えているのです。

──「未来を創る財団」では2015年1月から「定住外国人政策研究会」を設置、國松氏が座長を務めて議論を進めてきました。15年秋には第1次提言をまとめ、それをベースに16年春から全国各地域で「意見交換会」を実施、16年11月12日に「東京ラウンド」を開 催しています。それらの議論を集約したのが今回の提言(正式には2次提言)となったのですね。
國松 東北地方から九州まで、全国各地域で意見交換会を行いました。驚いたのはさまざまな地域で人手不足が深刻化して、働き手としての外国人を求めていたことです。意見交換会を開いた兵庫県豊岡市の城崎温泉では、宿泊希望があり、旅館の部屋も空いているのに予約が受けられない例が増えている。仲居さんが不足しているからです。外国人を受け入れようとしても、仲居さんとしては雇えない。技能実習の対象にも入っていないのです。一方、城崎からすぐそばのカニ漁をする船には大勢のインドネシア船員がおり、彼らなしにはもはや操業できないところまで来ている。これも技能実習という建前なので、数年で帰国せざるをえない。本格的に外国人の雇用を解禁してほしいという声は、各地でたくさん聞きました。

──11月の「東京ラウンド」には秋田県仙北市の門脇光浩市長や同県大潟村の高橋浩人村長らもパネラーとして参加しました。大潟村では米価の下落によって今後は野菜栽培などに切り替えていく必要に迫られますが、その際の最大のネックは人手不足です。村内はもちろん県内の周辺地域にも働き手はいないのが現実です。外国人の季節労働者を解禁してほしいというのが大潟村の要望でした。
國松 その一方、静岡県浜松市や愛知県など、外国人受け入れの先進地域では、外国人が戦力として不可欠になっている中でさまざまな社会問題も起きていることがわかりました。中でも深刻なのが教育です。労働力としてやってきた日系ブラジル人の子供が、きちんとした教育を受けなかったために、母国語であるはずのポルトガル語も、住んでいる国である日本語も両方満足にできない状態のまま育っている例が出てきているという話を聞いて驚きました。ダブルリミテッドと言うのだそうです。両親がブラジル人ではきちんとした日本語は教えられません。一方でポルトガル語による教育も日本ではなかなか受けられないのです。

──日本に住む外国人の子供も、日本の義務教育年代の場合、地域の小中学校が受け入れることになっています。しかし、実際の対応はすべて地域の自治体任せです。外国人子弟を教育するための教師の増員や、別枠事業を行うための経費やノウハウの養成が地方の大きな負担になっています。そこには誰の責任で教育を行うのかが明確ではないという問題があります。
國松 提言では、日本で生活するために不可欠な日本語教育を徹底するために、国が責任を持つべきだとしています。特に義務教育世代の子供の教育は、国の責任で義務化すべきです。日本語が十分にできない子供たちを放置すれば、それがいずれ大きな社会問題につながっていきます。そうならないためにも、日本で生活し、きちんと仕事をしていくうえで十分な日本語教育を施すべきです。

──今回の提言では「生活者として受け入れる」という1つの視点が貫かれています。これまで、日本の外国人労働政策は、技能実習制度などによって一定期間が過ぎたら帰ってもらうというのが前提になっていました。短期の人手不足を補う「労働力」としてしか外国人を見てこなかったわけですが、それを定住して日本で暮らす「生活者」としてとらえています。
國松 労働者として外国人を受け入れても、ひとたび日本国内に入ってくればその時点から生活者です。外国人を生活者としてどのように処遇していくのか、という視点がこれまで明確ではありませんでした。その理念を明確にしていくことが大事だと考えたのです。

             ◇

本音と建前の使い分けは
もはや限界にきている?


 日本語にしても、教育にしても、日本国内で生きていく「生活者」としては不可欠な技能である。税金や社会保険の用語、病院にかかった際の言葉など、「生活者」として外国人が困難に直面する例は数多い。こうした問題はこれまで、ほとんどが地域のNPOなどボランティア組織に支えられてきた。そこにもっと国が関与すべきだ、というのが國松氏らの主張なのである。
 安倍晋三首相はこれまで「いわゆる移民政策は取らない」としながらも、外国人労働者を受け入れる姿勢は見せている。日本の労働事情はまぎれもなく労働者不足。人手不足に対応するには、もはや外国人抜きには考えられないところまで来ているという現実がある。だが、その対応策を考える時、ことさらに不足の穴埋めのための「労働力」であることが強調される傾向がある。國松氏らの提言は、その点を危惧して「生活者」としての受け入れを強調しているのだ。
 朝日新聞は1月10日付のオピニオン欄に、「外国人との共生 生活者として受け入れを」と題する社説を掲載した。単純労働者は受け入れないとしながら技能実習制度などで事実上門戸を開く「本音と建て前の使い分け」はもはや「限界ではないか」と書いている。「未来を創る財団」のシンポジウム参加者の声なども取り上げており、國松氏らの提言がメディアの論調にも影響を与えたのは間違いない。
 未来を創る財団の理事事務局長の麻植茂氏は、「地方の声を東京のメディアの方々に聞いていただくのも、私たちの東京ラウンドの狙いでした。今後も、広く国民が議論するきっかけを作れればと思っています」と言う。朝日の社説もこう結んでいる。「まずは現実を直視し、議論を始めたい。政府と国民がともに考えるべき課題である」。まさにその通りだろう。

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